「取引先の役員が亡くなったと連絡が入ったが、メールで『ご逝去』と書いても失礼にならないだろうか?」
「自分の親が亡くなったことを会社に報告する際、『父が逝去しました』と言っていいのだろうか?」
突然の訃報に接したとき、あるいは自身の身内に不幸があったとき、多くのビジネスパーソンが言葉選びに迷われます。特に「逝去(せいきょ)」と「死去(しきょ)」は、どちらも「人が亡くなったこと」を意味する言葉ですが、その使い分けを一つ間違えるだけで、相手に対して大変な無礼となったり、あなた自身が常識を疑われたりするリスクがあります。
結論から申し上げますと、「逝去(せいきょ)」は他人が亡くなった際に敬意を表す尊敬語であり、「死去(しきょ)」は身内が亡くなった事実を伝えるための言葉です。この基本原則さえ押さえておけば、大きな失敗は防げます。しかし、実際のビジネス現場や冠婚葬祭の場では、「ご逝去」という表現は二重敬語ではないかという議論や、状況に応じた「永眠」「他界」といった類語の使い分けなど、より繊細な配慮が求められる場面が多々あります。
本記事では、葬儀業界で20年にわたり数多くのお別れの場に立ち会い、企業の慶弔マナー研修も担当してきた1級葬祭ディレクターである私が、教科書的なマナーだけでなく、現場で培った「相手の心に響く言葉選び」について徹底的に解説します。
この記事を読むことで、以下の3点が明確になります。
- 一目で迷いがなくなる「逝去」と「死去」の使い分け早見表と判断基準
- 【そのまま使える】取引先・上司へのメール・弔電・お悔やみ例文集
- 「ご逝去」は本当に二重敬語なのか?プロが教える現場の常識とマナー
言葉は、故人への最後の敬意であり、遺族への最大のいたわりです。いざという時に慌てず、自信を持って大人の振る舞いができるよう、ぜひ最後までお読みください。
1分で解決!「逝去」と「死去」の決定的な違いと基本ルール
訃報は予期せぬタイミングで訪れます。今すぐに正しい言葉を知りたいという方のために、まずは「逝去」と「死去」の決定的な違いと、絶対に守るべき基本ルールを解説します。このセクションの内容を理解するだけで、ビジネスや公的な場での致命的なミスを回避することができます。
逝去(せいきょ)=「他人」への尊敬語
「逝去(せいきょ)」という言葉は、「逝(ゆ)く」と「去(さ)る」という漢字から成り立っています。この言葉は、亡くなった相手に対して敬意を表す「尊敬語」です。したがって、主語は必ず「自分以外の誰か(他人)」になります。
具体的には、取引先の方、上司、同僚、恩師、あるいはそのご家族など、敬意を払うべき相手が亡くなった場合に使用します。「〇〇様が逝去された」という表現は、故人がこの世を去ったことに対する深い悲しみと、生前の功績に対する敬意を含んだ、非常に丁寧な言葉です。
ビジネスシーンにおいては、訃報を受けた際のお悔やみの言葉や、弔電、お悔やみメールの中で最も頻繁に使用されます。「逝去」を使うことで、あなたは相手(故人とその遺族)に対して、「私は故人を尊重し、丁重にお見送りしたいと思っています」というメッセージを伝えることができるのです。
死去(しきょ)=「身内」への謙譲語・事実説明
一方で「死去(しきょ)」は、単に「死んで去ること」を意味する言葉であり、そこに敬意のニュアンスは含まれません。この言葉は、主に自分の身内が亡くなった事実を、他者に伝える際に使用します。自分側の出来事をへりくだって伝える、あるいは客観的な事実として伝える性質を持つため、文脈によっては「謙譲語」に近い役割を果たします。
「父が逝去しました」と言ってしまうと、自分の身内に対して尊敬語を使っていることになり、日本語として誤りであるだけでなく、「身内を敬う常識知らず」と受け取られかねません。自分の親族が亡くなり、会社や知人に連絡をする際は、必ず「父が死去いたしました」や「母が亡くなりました」と表現するのが正解です。
また、新聞の訃報欄(お悔やみ欄)や、著名人の死亡記事など、メディアが事実を淡々と伝える際にも「死去」が使われます。これは、報道機関が客観性を保つために、あえて敬意を含まないフラットな表現を用いているためです。
▼ クリックして確認|「逝去」vs「死去」使い分け判断テーブル
亡くなったのは誰ですか?以下の表に従って言葉を選んでください。
| 亡くなった対象(主語) | 関係性 | 適切な言葉 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| 取引先・顧客 | 社外(他人) | 逝去 | 「貴社〇〇様のご逝去を悼み…」 |
| 上司・同僚・部下 | 社内(他人) | 逝去 | 「営業部〇〇殿のご母堂様が逝去されました」 |
| 自分の親・配偶者・子 | 身内 | 死去 | 「昨日、父〇〇が死去いたしました」 |
| 著名人・歴史上の人物 | 第三者(報道) | 死去 | 「作家の〇〇氏が死去」 |
意外と知らない?「身内」の範囲と定義
「身内には『死去』を使う」と説明しましたが、ではどこまでが「身内」に含まれるのでしょうか。一般的に、ビジネスや冠婚葬祭のマナーにおいて「身内」として扱う範囲は、自分と血縁関係にある親族、および配偶者の親族を指します。
具体的には、両親、祖父母、配偶者、兄弟姉妹、子供はもちろんのこと、同居している義理の両親なども「身内」として扱います。これらの人々が亡くなったことを社外の人に伝える場合は、「死去」または「亡くなりました」を使います。
少し判断に迷うのが、普段あまり付き合いのない遠い親戚(いとこ、はとこなど)の場合です。しかし、基本的には自分側の人間として報告する以上は、へりくだって「死去」を使うのが無難です。逆に、親しい友人や知人の場合は、血縁関係がないため「他人」となり、敬意を表して「逝去」や「亡くなられた」という表現を使います。
ここで重要なのは、「誰に対して話しているか」という視点です。社外の人に対して話すときは、たとえ社長であっても自社の人間は「身内」扱いとなり、敬称を付けないのがビジネスマナーですが、生死に関わる表現では、社内の人間(上司など)が亡くなったことを社外に伝える場合、「逝去」を使うこともあれば、事実として「死去」と伝えることもあります。これについては後ほどのセクションで詳しく解説します。
葬儀業界歴20年の1級葬祭ディレクターのアドバイス
「実は、私も新入社員時代に一度、冷や汗をかく失敗をしたことがあります。祖父が亡くなり、当時の上司に電話で報告した際、動揺していたこともあって『祖父が昨晩、逝去しまして…』と言ってしまったのです。
その場では上司も『それは大変だったね、急いで帰りなさい』と温かく送り出してくれましたが、後日落ち着いてから先輩に『自分の家族に尊敬語を使うのは、身内びいきで恥ずかしいことだよ』と優しく諭されました。
悲しみの中では冷静な判断ができなくなるものです。だからこそ、『自分の側は死去、相手側は逝去』というシンプルなルールを、普段から頭の片隅に置いておくことが大切です。」
【相手別・シーン別】「逝去」の正しい使い方とNG例
基本ルールを理解したところで、次は具体的なシチュエーション別の正しい使い方を見ていきましょう。言葉というものは文脈によって適切さが変わります。ここでは、ビジネスパーソンが遭遇しやすい4つのケースを取り上げ、それぞれの正解とよくあるNG例を解説します。
ケース1:取引先やお客様の訃報に接したとき
最も失敗が許されないのが、取引先やお客様に関する訃報です。ここでは最大限の敬意を表す必要があります。
正解:逝去
相手(故人)は社外の方であり、敬うべき対象です。「逝去」を使用し、さらに丁寧にするために「ご逝去」という表現を用いるのが一般的です。
- 正しい例:「〇〇様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。」
- 正しい例:「突然のご逝去に、言葉を失っております。」
- NG例:「〇〇様が死去されたと聞き、驚いています。」(敬意が不足しており、事務的な印象を与えます)
- NG例:「〇〇様が亡くなられました。」(間違いではありませんが、ビジネス文書としてはやや稚拙で、敬意の深さが伝わりにくい場合があります)
特にメールや弔電などの文字に残る媒体では、「死去」という言葉は絶対に使わないよう注意してください。冷淡な印象を与え、今後の取引関係にひびが入る可能性すらあります。
ケース2:上司や同僚の親族が亡くなったとき
社内の人間関係においても、親しき仲にも礼儀ありです。上司や同僚の親族が亡くなった場合、その親族はあなたにとって「他人」であり、敬意を払うべき対象です。
正解:逝去
上司に対してはもちろん、同僚や部下であっても、その家族が亡くなったことに対しては尊敬語を使います。
- 正しい例:(上司に対して)「お父様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。」
- 正しい例:(同僚に対して)「この度は、ご母堂様のご逝去、心よりお察しいたします。」
- NG例:「お父さんが死んだと聞いて、びっくりしたよ。」(あまりに直接的で配慮に欠けます。「死んだ」という言葉は、お悔やみの場では禁句に近いものです)
ここでは、相手との距離感に応じて「ご逝去」と堅苦しく言うか、「亡くなられた」と少し柔らかく言うかを使い分けることもあります。しかし、迷ったら「ご逝去」を使っておけばマナー違反になることはありません。
ケース3:自分の親族が亡くなり、会社へ報告するとき
自分自身が当事者(遺族)となるケースです。忌引き休暇の申請や、業務の引き継ぎなどで会社に連絡を入れる必要があります。
正解:死去、または永眠・他界
前述の通り、身内の死は謙譲の対象です。
- 正しい例:「実父が昨夜、病気のため死去いたしました。」
- 正しい例:「父がかねてより病気療養中のところ、他界いたしました。」
- NG例:「父が逝去しました。」(手前味噌な敬語となり、教養を疑われます)
- NG例:「父が亡くなられました。」(これも尊敬語が含まれているため誤りです。「亡くなりました」であれば許容範囲です)
電話口などで「死去」という言葉が硬すぎると感じる場合は、「亡くなりました」「息を引き取りました」という表現を使うと、自然かつ丁寧な印象になります。
ケース4:社葬や公的な通知における表現
会社の創業者が亡くなり社葬を行う場合や、役員の訃報を取引先に通知する場合など、会社として公式に発信する文書のケースです。
正解:死去(事実として伝える場合)または 逝去(儀礼的な挨拶の場合)
ここは非常に判断が難しい部分ですが、基本的には「通知」の性格を持つ文書では、客観的事実として「死去」を使います。
- 通知文の例:「弊社 代表取締役社長 〇〇〇〇 儀 かねて病気療養中のところ X月X日 死去いたしました。」
このように、「儀(ぎ)」という言葉を名前の後に付け、その後に「死去」と続けるのが伝統的なビジネス書式です。ここでは、故人は自社の人間(=身内)という扱いになるため、社外に対してはへりくだって「死去」とします。
一方で、葬儀委員長などが述べる挨拶文や、追悼文の中では、故人の功績を称える文脈になるため「ご逝去」が使われることもあります。しかし、訃報通知(死亡通知)においては「死去」がスタンダードであると覚えておきましょう。
▼ クリックして確認|【相手別】正解ワードマトリクス表
| 相手(誰に伝えるか) | 自分の立場 | 亡くなった人 | 正解ワード |
|---|---|---|---|
| 取引先・顧客 | 担当者 | 取引先関係者 | ご逝去 |
| 取引先・顧客 | 会社代表 | 自社役員 | 死去(通知文) |
| 上司 | 部下 | 自分の親族 | 死去・他界 |
| 上司 | 部下 | 上司の親族 | ご逝去 |
| 友人・知人 | 友人 | 友人の親族 | ご逝去・他界 |
そのまま使える!ビジネスで恥をかかないお悔やみ例文集
「違いはわかったけれど、実際にメールを書こうとすると筆が止まってしまう」という方のために、そのままコピー&ペーストして使える(一部修正して使える)実践的な例文集をご用意しました。状況に合わせて活用してください。
【メール】取引先への訃報に対する返信・お悔やみ
取引先から訃報の連絡(メールやFAX)が届いた場合、できるだけ早く返信するのがマナーです。ただし、相手は取り込み中であるため、長文は避け、要件を簡潔に伝えます。
▼ 件名・本文のテンプレート(取引先宛て)
件名:【お悔やみ】〇〇様のご逝去を悼み、心よりお悔やみ申し上げます
本文:
〇〇株式会社
〇〇部 〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の佐藤です。
貴社 〇〇様のご逝去の報に接し、大変驚いております。
生前は多大なるご厚情を賜り、深く感謝しております。
本来であればすぐにでも参上し、お悔やみを申し上げるべきところではございますが、
略儀ながらメールにて、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
なお、ご返信のお気遣いは無用でございます。
ご多忙の中と存じますので、どうぞご自愛くださいませ。
————————————————–
株式会社〇〇 営業部
佐藤 健二
————————————————–
【メール】上司・同僚への気遣いメール
社内の人間が忌引きに入る際、業務連絡を兼ねてお悔やみのメールを送ることがあります。業務のことは「こちらで対応するので安心してください」と伝え、相手の心理的負担を減らすことが最大の配慮です。
▼ 件名・本文のテンプレート(社内宛て)
件名:お悔やみ申し上げます(営業部・佐藤)
本文:
〇〇課長
お疲れ様です。佐藤です。
ご尊父様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
突然のことで、深い悲しみの中にいらっしゃることとお察しいたします。
お仕事のことは部内全員でフォローいたしますので、
どうぞご心配なさいませんようお願い申し上げます。
お力落としのこととは存じますが、どうぞご無理をなさらないでください。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
(返信は不要です)
【弔電】会社として送る場合の標準的な文面
葬儀に参列できない場合や、会社として公式に弔意を示す場合は弔電(電報)を送ります。弔電は式典の中で読み上げられる可能性があるため、格式高い表現が好まれます。
- 標準文例1:「ご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。」
- 標準文例2:「ご生前のご厚情に深く感謝するとともに、故人のご功績を偲び、謹んで哀悼の意を表します。」
- 標準文例3(急死の場合):「突然の悲報に接し、驚きを禁じ得ません。ご遺族様のご心痛いかばかりかとお察し申しあげます。安らかにご永眠されますようお祈りいたします。」
【電話・口頭】受付や電話口で伝える第一声
葬儀会場の受付や、電話で訃報を聞いた直後の第一声は、短く、小さな声で伝えるのがマナーです。はっきりと大きな声で話すのは、悲しみの場にはふさわしくありません。
- 受付での挨拶:「この度は、誠にご愁傷様でございます。心よりお悔やみ申し上げます。」
- 電話での第一声:「この度は、突然のことで…なんと申し上げてよいか、言葉もございません。」
「ご愁傷様(ごしゅうしょうさま)」は口頭での挨拶に特化した言葉であり、メールや文書ではあまり使いません。口頭では「ご逝去」という硬い言葉よりも、「この度はご愁傷様です」や「お悔やみ申し上げます」が自然です。
葬儀業界歴20年の1級葬祭ディレクターのアドバイス
「数多くの弔電を拝見してきましたが、遺族の心に最も響くのは『定型文+一言の思い出』です。
例えば、『ご逝去を悼み…』という定型文の後に、『〇〇様には、新入社員の私にいつも温かいお言葉をかけていただきました。あの笑顔が忘れられません』と一文添えるだけで、その弔電は単なる儀礼ではなく、故人への『手紙』に変わります。
ビジネスの関係であっても、もし故人との具体的なエピソードがあれば、ぜひ短く添えてみてください。それが、ご遺族にとって何よりの慰めになります。」
「ご逝去」は二重敬語?プロが教える許容範囲と注意点
「逝去」という言葉自体が尊敬語であるため、「ご(御)」を付ける「ご逝去」は、文法的に「二重敬語」になるのではないか?という疑問を持つ方がいらっしゃいます。言葉に厳しい方であればあるほど、この点を気にされる傾向があります。
文法的には二重敬語だが、慣習として「定着」している
厳密な文法論で言えば、「逝去」はそれだけで尊敬の意味を持つため、「ご」を付けるのは過剰な敬語(二重敬語)であるという指摘は間違いではありません。同様の例として「ご参上」「ご愛顧」などがあります。
しかし、日本語の敬語表現は時代とともに変化し、定着していくものです。「ご逝去」に関しては、すでに現代日本語において「慣習として完全に定着している表現」と見なされています。文化庁の「敬語の指針」においても、習慣として定着しているものは誤りとは言えないという見解が示されています。
ビジネス文書や弔電では「ご逝去」が最も一般的で丁寧
実際、葬儀の現場やビジネス文書においては、「逝去」単体よりも「ご逝去」の方が圧倒的に多く使われています。「逝去されました」と言うよりも、「ご逝去されました」と言う方が、語呂が良く、より丁寧な響きを持つためです。
特に弔電や、葬儀の司会者が使う言葉としては、「ご逝去」がスタンダードです。「逝去の報に接し」と書くよりも、「ご逝去の報に接し」と書く方が、相手に対する敬意が深く伝わります。したがって、ビジネスシーンで「ご逝去」を使うことを恐れる必要はありません。むしろ推奨される表現です。
過剰な敬語を避けるべきケースとは?
ただし、敬語を重ねすぎることによる「くどさ」には注意が必要です。
例えば、「〇〇様がご逝去なされました」という表現は、「ご~する」+「れる(尊敬)」+「ました」と敬語が幾重にも重なっており、非常に聞き苦しい印象を与えます。
- 推奨:「ご逝去されました」「逝去されました」
- 非推奨:「ご逝去なされました」「ご逝去あそばされました」
シンプルに「ご逝去」を使うことで、十分な敬意を表すことができます。
葬儀業界歴20年の1級葬祭ディレクターのアドバイス
「言葉の正しさを追求することも大切ですが、お悔やみの場で最も優先されるべきは『相手への敬意』と『悲しみに寄り添う心』です。
たとえ文法的にグレーゾーンであっても、多くの人が『丁寧だ』と感じる言葉を選ぶのが大人のマナーです。『ご逝去は二重敬語だから間違いだ!』と目くじらを立てるよりも、相手を敬う気持ちを込めて『ご逝去』と記す方が、円滑なコミュニケーションにつながります。
ただし、もし相手が言葉の専門家であったり、非常に格式を重んじる家柄であったりする場合は、『逝去』とシンプルに書くのも一つの見識です。」
逝去・死去だけじゃない!「永眠・他界・急逝」の使い分け
日本語には、死を表す言葉が数多く存在します。「逝去」と「死去」以外にも、「永眠」「他界」「急逝」などの言葉があり、それぞれ適切な使用シーンやニュアンスが異なります。また、宗教によっては避けるべき表現もあります。
永眠(えいみん):公的な通知や死亡広告でよく使われる
「永眠」は「永(なが)く眠ること」を意味し、死を直接的に表現するのを避けた、詩的で静かな表現です。
- ニュアンス:安らかな最期、永遠の休息。
- 使用シーン:死亡通知状、喪中はがき、新聞の死亡広告、墓碑銘など。
- 例文:「父 〇〇儀 天寿を全うし 安らかに永眠いたしました」
「永眠」は身内にも他人にも使えますが、主に「書き言葉」として、事実を厳粛に伝える際に好まれます。
他界(たかい):直接的な表現を避けたい時の柔らかい表現
「他界」は「あの世(他界)へ行く」という意味で、仏教的な世界観に基づいた言葉ですが、現在では宗教を問わず広く使われています。「死ぬ」という言葉の響きが強すぎる場合に、オブラートに包むために用いられます。
- ニュアンス:少し柔らかい表現。口頭でも使われる。
- 使用シーン:会話の中で身内の死を伝える時など。
- 例文:「先日、父が他界しまして…」
急逝(きゅうせい):突然の不幸を強調する場合
「急逝」は「急に逝く」の通り、予期せぬ突然の死を表します。事故や急病などで亡くなった場合に使われます。
- ニュアンス:驚き、無念、突然の別れ。
- 使用シーン:弔電、お悔やみの言葉、訃報通知。
- 例文:「突然の急逝に接し、驚きを隠せません」
なお、「急逝」自体に「逝」という字(尊敬の意)が含まれているため、基本的には他人に対して使います。身内の急死を伝える場合は「急死いたしました」や「突然亡くなりました」とします。
【宗教別】キリスト教・神道での適切な言い換え
日本で行われる葬儀の多くは仏式ですが、キリスト教や神道(神式)の場合、死生観が異なるため、使う言葉も変わります。「ご冥福をお祈りします」という言葉は、仏教用語(冥土での幸福を祈る)であるため、キリスト教や神道では使いません。
▼ クリックして確認|類語・言い換え表現一覧表
| 言葉 | 意味・ニュアンス | 主な対象・シーン | 宗教的注意 |
|---|---|---|---|
| 逝去 | 他人への尊敬語 | 他人(全般) | 特になし |
| 死去 | 事実・謙譲語 | 身内・公的通知 | 特になし |
| 永眠 | 安らかな死 | 通知状・墓石 | 特になし(キリスト教でも可) |
| 他界 | 別の世界へ行く | 会話・通知 | 特になし |
| 帰幽(きゆう) | 幽世(かくりよ)へ帰る | 神道(神式) | 神道のみ |
| 帰天(きてん) | 天に帰る | カトリック | キリスト教のみ |
| 召天(しょうてん) | 天に召される | プロテスタント | キリスト教のみ |
訃報を受け取った後の行動マナーと注意点
言葉の使い分けができても、実際の行動でマナー違反をしてしまっては意味がありません。ここでは、訃報を受け取った後にビジネスパーソンが取るべき具体的な行動について、最低限押さえておくべきポイントを解説します。
弔電を打つタイミングと宛名の書き方
弔電は、通夜や告別式に参列できない場合に送るものですが、参列する場合でも、会社として送ることがあります。
- タイミング:訃報を受けたらすぐに手配し、遅くとも告別式の開式前までに届くようにします。通夜の前日や当日の午前中に手配するのがベストです。
- 宛名:原則として「喪主」の名前にします。もし喪主の名前が不明な場合は、「故 〇〇〇〇 様 ご遺族様」とします。受取人は葬儀会場(斎場)気付にするのが一般的です。
香典の相場と包み方(会社関係の場合)
会社関係で香典を出す場合、個人のポケットマネーで出すのか、会社の経費(慶弔費)として出すのかを確認する必要があります。
- 相場(個人で出す場合):
- 勤務先の上司・同僚・部下:5,000円〜10,000円
- 取引先関係者:5,000円〜10,000円
- 表書き:「御霊前(ごれいぜん)」が最も一般的で、多くの宗教に対応できます(浄土真宗やキリスト教プロテスタントなど厳密には異なる場合もありますが、ビジネスでは御霊前が無難です)。会社で出す場合は、会社名を中央または名前の右側に記載します。
供花(きょうか)を送る際の手配手順
葬儀会場に飾る花(供花)を送る場合は、勝手に花屋に注文してはいけません。会場によっては、持ち込み禁止や指定業者のみの対応となっている場合が多いからです。
手順:
- 訃報連絡にある葬儀会場に電話をする。
- 「〇〇家(故人名)の葬儀に供花を出したい」と伝え、担当の葬儀社につないでもらう。
- 葬儀社の指示に従って注文する(FAXや専用サイトなど)。
- 請求書の宛名(会社名など)を正確に伝える。
葬儀業界歴20年の1級葬祭ディレクターのアドバイス
「会社名で供花や弔電を出す場合、必ず事前に総務や秘書課の担当者に確認を入れてください。企業によっては『虚礼廃止』として、儀礼的なやり取りを一切禁止している場合や、逆に『部長クラス以上は必ず出す』といった内規が存在する場合があります。
独断で送ってしまい、後で『会社の方針に反する』と注意されたり、相手側に『御社は辞退と聞いていたのに』と困惑されたりするケースが意外と多いのです。まずは社内ルール(慶弔規定)の確認、これが鉄則です。」
「逝去」に関するよくある質問(FAQ)
最後に、「逝去」や「死去」に関して、現場でよく聞かれる質問に簡潔にお答えします。今の時代の空気感も反映した回答となっています。
Q. 友人の親が亡くなった場合も「逝去」でいいですか?
A. はい、問題ありません。
友人の親は「他人」であり、敬意を払う対象ですので「ご逝去」を使います。「お父様がご逝去されたと聞き…」と伝えて失礼になることはありません。親しい間柄であれば「亡くなられた」でも十分です。
Q. 「亡くなる」と「逝去」どちらが丁寧ですか?
A. 「逝去」の方がより改まった、格式高い表現です。
「亡くなる」も尊敬語(「死ぬ」の尊敬語)ですが、日常会話でも使われる柔らかい言葉です。ビジネス文書や弔電など、儀礼的な場面では「逝去」が適しています。会話の中では「亡くなられた」の方が自然な場合も多いです。
Q. 英語でお悔やみを伝える場合はどう表現しますか?
A. “passed away” が最も一般的です。
日本語の「逝去」や「亡くなる」にあたる丁寧な表現が “pass away” です。
- “I was so sorry to hear that Mr. XX passed away.”(〇〇氏が亡くなったと聞き、大変残念に思います)
- “Please accept my deepest condolences.”(心よりお悔やみ申し上げます)
Q. LINEでお悔やみを伝えても失礼になりませんか?
A. 相手との関係性によりますが、近年は許容されつつあります。
親しい友人や同僚であれば、LINEで第一報のお悔やみを送ることはマナー違反とは言えなくなってきています。むしろ、電話で相手の時間を奪うよりも配慮があるとも言えます。ただし、スタンプの使用は避け、丁寧な文章を送るようにしましょう。目上の方や取引先には、やはりメールや電話、弔電が適切です。
葬儀業界歴20年の1級葬祭ディレクターのアドバイス
「SNS時代になり、お悔やみの形も変化しています。LINEでお悔やみを伝える際、最も大切なのは『返信不要』の配慮です。
『返信は気にしないでください』『既読スルーで構いません』といった一言を添えるだけで、多忙な遺族の負担を大きく減らすことができます。ツールは何であれ、相手を思いやる心がマナーの本質であることは変わりません。」
まとめ:正しい言葉選びは、故人と遺族への最大の敬意
ここまで、「逝去」と「死去」の違いを中心に、ビジネスシーンでのお悔やみマナーについて解説してきました。言葉一つで、あなたの教養だけでなく、相手を想う深さが伝わります。
最後に、お悔やみの言葉を送る前の「最終チェックリスト」をまとめました。送信ボタンや投函の前に、ぜひ確認してください。
- 主語の確認:亡くなったのは「他人(取引先・上司の親族)」ですか? → YESなら「逝去」
- 主語の確認:亡くなったのは「身内(自分の親族・自社の人間)」ですか? → YESなら「死去」
- 媒体の確認:メールや弔電など、文字に残るもので「死去」を相手に使っていませんか?(絶対NG)
- 敬称の確認:「ご逝去」はOKですが、「ご逝去なされる」などの過剰敬語になっていませんか?
- 忌み言葉の排除:「たびたび」「重ね重ね」「追って」などの繰り返し言葉や、「死ぬ」「生きる」などの直接的な表現を避けていますか?
- 宗教の確認:相手がキリスト教や神道の場合、「ご冥福(仏教用語)」を使っていませんか?(迷ったら「哀悼の意を表します」が無難)
訃報は悲しい出来事ですが、適切な言葉で対応することで、遺族の悲しみを少しでも和らげ、信頼関係を深めることができます。形式にとらわれすぎず、しかし礼儀を崩さず、故人を偲ぶ温かい気持ちを伝えてください。
コメント