健康診断の結果を受け取り、血液検査の項目に「H(高値)」や「L(低値)」のマークがついているのを見て、不安を感じている方は少なくありません。特に「赤血球数(RBC)」やそれに関連する「ヘモグロビン(Hb)」「ヘマトクリット(Ht)」の異常は、単なる体調不良から、背後に隠れた重大な疾患のサインまで、その原因は多岐にわたります。
結論から申し上げますと、赤血球の数値異常は、当日の脱水状態や喫煙習慣、ストレスといった生活習慣による一時的な変動であることも多い一方で、貧血や多血症、あるいは消化器系の出血や骨髄の病気が潜んでいる可能性も否定できません。重要なのは、数値が高いか低いかだけで一喜一憂するのではなく、関連する他の検査値と組み合わせて総合的に評価することです。
この記事では、血液内科の現場で長年診療にあたってきた専門医の視点から、以下の3点を中心に徹底的に解説します。
- 赤血球数(RBC)の基準値と、数値が変動するメカニズム
- 「高い(多血)」「低い(貧血)」それぞれの原因と病気のリスク
- 再検査・精密検査が必要なラインと、日常生活での具体的な改善ポイント
ご自身の検査結果を手元に置きながら、一つひとつ確認していきましょう。正しい知識を持つことが、健康を守るための第一歩です。
赤血球(RBC)とは?検査でわかる体の状態
まず、赤血球とは具体的にどのような役割を果たしており、なぜその数値が健康のバロメーターとなるのか、基礎的な知識を整理しておきましょう。私たちの血液が赤く見えるのは、この赤血球が無数に含まれているからです。血液検査の結果表には「RBC」という略称で記載されることが一般的です。
血液内科専門医のアドバイス
「赤血球は、全身の細胞に酸素を届ける『酸素のトラック』だとイメージしてください。トラックの台数(赤血球数)が多すぎれば道路(血管)は渋滞しますし、少なすぎれば物資(酸素)が届かず、街(体)は機能不全に陥ります。重要なのは数だけでなく、トラックの大きさや積載量といった『質』も保たれていることなのです」
赤血球の主な役割と寿命
赤血球の最大の役割は、肺で取り込んだ酸素を全身の組織や臓器に運び、代わりに不要となった二酸化炭素を回収して肺に戻すことです。このガス交換の主役となるのが、赤血球の中に含まれる赤い色素タンパク質「ヘモグロビン(Hb)」です。
赤血球は骨の中心にある「骨髄(こつずい)」という工場で作られます。造血幹細胞から分化し、成熟した赤血球として血管内に放出されると、約120日間(4ヶ月間)体内を循環し続けます。寿命を迎えた赤血球は、主に脾臓(ひぞう)で破壊・処理され、その成分はリサイクルされたり排出されたりします。
健康な状態であれば、毎日新しく作られる赤血球の数と、寿命を迎えて壊される赤血球の数はほぼ一定に保たれています。しかし、何らかの原因で「作る量が減る」「壊される量が増える」「出血で失われる」といった事態が起きると数値が低下し、逆に「作る量が増えすぎる」「血液の液体成分が減る」といったことが起きると数値が上昇します。
健康診断で測定される3つの関連項目(Hb, Ht, RBC)
健康診断の血液検査では、赤血球の状態を正確に把握するために、通常以下の3つの項目をセットで測定します。これらは「赤血球の3兄弟」とも言える密接な関係にあります。
- 赤血球数(RBC): 血液1マイクロリットル(μL)中に含まれる赤血球の個数です。トラックの「台数」を表します。
- ヘモグロビン濃度(Hb): 血液中のヘモグロビンの量です。酸素を運ぶ能力そのものを示すため、貧血の診断で最も重要視される指標です。トラックの「積載能力」を表します。
- ヘマトクリット値(Ht): 血液全体に占める赤血球の容積の割合(パーセンテージ)です。血液の「濃さ」を表します。
これらの数値は連動して動くことが多いですが、病態によっては「赤血球数は正常だがヘモグロビンだけ低い」といった乖離が見られることもあり、それが診断の重要な手がかりとなります。
なぜ数値に異常が出ると問題なのか(酸欠とドロドロ血液)
赤血球の数値が正常範囲を逸脱すると、体にどのような悪影響があるのでしょうか。大きく分けて「少なすぎる弊害」と「多すぎる弊害」があります。
数値が低い場合、つまり「貧血」の状態では、全身への酸素供給能力が低下します。体は酸欠状態となり、それを補おうとして心臓が激しく動くため、動悸や息切れが起こります。脳への酸素が不足すれば、めまいや立ちくらみ、集中力の低下、強い倦怠感が生じます。慢性的な貧血は心臓への負担を増大させ、心不全のリスクを高めることもあります。
逆に数値が高い場合、つまり「多血(多血症)」の状態では、血液の粘り気(粘度)が高くなります。いわゆる「ドロドロ血液」の状態です。血液の流れが悪くなると、細い血管が詰まりやすくなり、高血圧の原因となるほか、最悪の場合は脳梗塞や心筋梗塞といった血栓症(血管が詰まる病気)を引き起こすリスクが跳ね上がります。赤血球の異常は、単なる数字の問題ではなく、全身の循環機能に直結する重大な問題なのです。
【男女別・年齢別】赤血球数の基準値と異常値の判定ライン
ご自身の検査結果がどの程度のリスクにあるのかを判断するためには、正確な基準値を知る必要があります。赤血球数やヘモグロビン値は、性別によって明確な差があるのが特徴です。一般的に男性は女性よりも高い値を示します。これは男性ホルモン(テストステロン)に造血を促す作用があるためです。
一般的な基準範囲(男性・女性)
多くの医療機関や日本人間ドック学会などが採用している一般的な基準範囲は以下の通りです。ただし、検査機関や測定機器によって多少の誤差があるため、必ずお手元の検査結果表に記載されている基準値も併せて確認してください。
| 検査項目 | 単位 | 男性の基準値 | 女性の基準値 |
|---|---|---|---|
| 赤血球数 (RBC) | 万/μL | 430 ~ 570 | 380 ~ 500 |
| ヘモグロビン (Hb) | g/dL | 13.5 ~ 17.5 | 11.5 ~ 15.0 |
| ヘマトクリット (Ht) | % | 40.0 ~ 52.0 | 34.0 ~ 45.0 |
この範囲内に収まっていれば、ひとまずは「異常なし」と判断されます。しかし、ギリギリの数値である場合や、前回の健診結果と比べて急激な変動がある場合は注意が必要です。
「要経過観察」と「要再検査・要精密検査」の境界線
基準値を外れた場合、その乖離の度合いによって判定が異なります。「少し高い/低いけれど、直ちに病気とは言えない」レベルなのか、「明らかに異常であり、医療機関での確認が必要」なレベルなのかを見極める目安を紹介します。
- 要経過観察(軽度異常):
- 基準値からわずかに外れている場合(例:男性でRBC 580万、Hb 13.0など)。
- 自覚症状がなく、他の項目に異常がなければ、生活習慣(水分摂取や食事)を見直して次回の健診で変化を見る段階です。
- 要再検査・要精密検査(中等度~高度異常):
- 多血傾向: 男性でHb 18.0g/dL以上、Ht 55%以上。女性でHb 16.0g/dL以上、Ht 50%以上の場合などは、病的な多血症の疑いが高まります。
- 貧血傾向: 男女ともにHb 10.0g/dLを下回る場合は、明らかな貧血として原因精査が必要です。特に7.0g/dL以下は重度であり、輸血を検討するレベルの緊急性がある場合もあります。
数値は日内変動や体調で変わる?(脱水の影響など)
血液検査の結果を見る際に最も注意すべき点は、赤血球の数値が「血液の濃縮度合い」によって容易に変動するという事実です。
例えば、夏場の健診や、朝食を抜いて水分も摂らずに採血に臨んだ場合、体は軽度の脱水状態になっています。血液中の水分(血漿)が減ると、相対的に赤血球の密度が高まり、見かけ上の数値が上昇します。これを「相対的多血」と呼びます。逆に、点滴を受けた直後や水分を大量に摂取した後は、血液が薄まり数値が低く出ることがあります。
血液内科専門医のアドバイス
「健診当日の『水分不足』が数値に与える影響は意外と大きいです。特に夏場や、前夜にお酒を飲まれた方は脱水になりやすく、実際には正常なのに『多血症疑い』と判定されてしまうケースが後を絶ちません。再検査の際は、十分に水分を補給した状態で採血を行うことで、本来の数値を確認することができます」
「赤血球が多い」と言われたら?考えられる原因と多血症
健康診断で「赤血球が多い」「多血症の疑い」と指摘された場合、ペルソナである佐藤さんのように「脳梗塞になるのではないか」と不安になる方は多いでしょう。しかし、赤血球が増える原因は一つではありません。生活習慣によるものから、骨髄の病気まで、原因を正しく分類することが対策の第一歩です。
ストレス多血症(相対的多血症):脱水・肥満・ストレス
最も頻度が高いのが、実際には赤血球の総量は増えていないのに、血液が濃縮されて数値が高く見える「相対的多血症」です。別名「ストレス多血症」とも呼ばれ、働き盛りの男性に多く見られます。
主な原因は以下の通りです。
- 脱水: 水分摂取不足、発汗、下痢、利尿剤の使用などにより、血液中の水分(プラズマ)が減少する。
- 肥満・ストレス・喫煙・飲酒: これらが複合的に作用し、血管の収縮や循環血液量の減少を引き起こすと考えられています。特に「Gaisböck(ガイスベック)症候群」と呼ばれ、高血圧、肥満、喫煙習慣のある中年男性に典型的に見られる病態です。
このタイプの場合、治療の基本は「生活習慣の改善」です。減量、禁煙、節酒、そして十分な水分摂取を行うことで、数値が正常化することがほとんどです。
二次性多血症:喫煙・呼吸器疾患・睡眠時無呼吸症候群
次に考えられるのが、体の酸素不足(低酸素血症)を補うために、体が反応して赤血球を増やしてしまう「二次性多血症」です。赤血球を作る指令を出すホルモン「エリスロポエチン」が増加することで起こります。
最大の原因は「喫煙」です。タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、ヘモグロビンと強力に結びつき、酸素の運搬を阻害します。体は常に「酸欠状態」と錯覚し、酸素を運ぶトラック(赤血球)を無理やり増やそうとします。ヘビースモーカーの方で数値が高いのは、体が悲鳴を上げている証拠なのです。
また、以下のような病気が隠れている場合もあります。
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS): 寝ている間に呼吸が止まり、夜間の酸欠が続くことで赤血球が増加します。いびきがうるさい、日中の眠気が強い方は要注意です。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD): 長年の喫煙などで肺機能が低下し、酸素を取り込めなくなる病気です。
真性多血症(骨髄増殖性疾患):治療が必要な病気の特徴
最も注意が必要なのが、骨髄の造血細胞そのものに遺伝子変異が起こり、赤血球が勝手に作られ続けてしまう「真性多血症(真性赤血球増加症)」です。これは血液のがんの一種(骨髄増殖性腫瘍)に分類されます。
この病気の特徴は、赤血球だけでなく、白血球や血小板も同時に増加することが多い点です。また、入浴後に体がかゆくなる(入浴後掻痒感)、顔が赤らむ、脾臓が腫れるといった症状を伴うことがあります。エリスロポエチンの値が逆に低下しているのが診断の決め手の一つとなります。この場合は、血液内科での専門的な治療(瀉血療法や薬物療法)が生涯にわたって必要となります。
脳梗塞や血栓症のリスクが高まるメカニズム
原因が何であれ、赤血球が異常に多い状態(ヘマトクリット値が高い状態)が続くと、血液の粘度が上昇します。ドロドロの血液は血管内をスムーズに流れることができず、血流が滞りやすくなります。
特に動脈硬化が進んでいる40代以降の方が、脱水などでさらに血液が濃くなると、脳や心臓の血管内で血の塊(血栓)ができやすくなります。これが脳梗塞や心筋梗塞の直接的な引き金となります。「水分を摂りましょう」というアドバイスは、単なる気休めではなく、命を守るための物理的な対策なのです。
血液内科専門医のアドバイス
「喫煙者で数値が高い方が、まず取り組むべきことは『禁煙』です。タバコを吸いながら血液サラサラの薬を飲みたいという患者さんがいらっしゃいますが、それはアクセルとブレーキを同時に踏むようなもの。禁煙するだけで、数ヶ月後には驚くほど数値が改善し、血栓症のリスクも大幅に下がります」
「赤血球が少ない」と言われたら?貧血の種類と隠れた病気
「貧血気味ですね」と言われて、鉄分のサプリメントを飲んで安心していませんか? 男性や閉経後の女性における貧血は、単なる栄養不足ではなく、体のどこかで出血が起きているサインである可能性が高く、より慎重な対応が求められます。
鉄欠乏性貧血:最も多い原因と症状(めまい・動悸)
貧血の中で圧倒的に多いのが「鉄欠乏性貧血」です。赤血球の材料である鉄分が不足し、十分なヘモグロビンが作れなくなる状態です。
女性の場合は月経による出血が主な原因ですが、男性や閉経後の女性の場合は、食事からの鉄分摂取不足や、痔、胃潰瘍などからの慢性的な出血が原因となることが一般的です。症状としては、階段を上った時の息切れ、動悸、立ちくらみ、爪がスプーン状に反り返る、氷を無性に食べたくなる(異食症)などがあります。徐々に進行するため、体が慣れてしまい、数値がかなり低くなるまで自覚症状がないことも珍しくありません。
腎性貧血・再生不良性貧血などの血液疾患
鉄分は足りているのに貧血になるケースもあります。これを「二次性貧血」や「造血障害」と呼びます。
- 腎性貧血: 腎臓の機能が低下すると、赤血球を作る指令ホルモン(エリスロポエチン)が出せなくなり、貧血になります。糖尿病性腎症や慢性腎臓病の方に多く見られます。
- 再生不良性貧血・骨髄異形成症候群: 骨髄の機能そのものが低下し、血液が作れなくなる難病です。白血球や血小板も同時に減少することが多いです。
消化管出血(胃潰瘍・がん)の可能性を見逃さない
40代以上の男性にとって、貧血検査は「消化器がんのスクリーニング」としての意味合いも持ちます。胃がんや大腸がんができると、がん組織の表面からじわじわと出血が続きます。便に血が混じっていても、肉眼ではわからない微量な出血であることも多いのです。
「貧血=鉄分不足」と決めつけず、「なぜ鉄が減っているのか? どこからか血が漏れているのではないか?」と疑うことが重要です。男性の鉄欠乏性貧血が見つかった場合、消化器内科での胃カメラや大腸カメラ検査は必須と言えます。
血液内科専門医のアドバイス
「『ただの疲れ』や『立ちくらみ』と放置してはいけない貧血のサインがあります。特に男性の貧血は、体のどこかで出血している警報です。サプリメントで数値を一時的に回復させても、原因となっている胃潰瘍やがんを放置しては意味がありません。必ず医療機関で原因を突き止めてください」
専門医はここを見る!MCV・MCH・MCHCによる精密な分類
健康診断の結果表を詳しく見ると、RBC、Hb、Htの近くに「MCV」「MCH」「MCHC」という項目があるはずです。これらは「赤血球恒数」と呼ばれ、貧血の種類を特定するために専門医が必ずチェックする非常に重要な指標です。
赤血球の「大きさ」と「濃さ」でわかる貧血のタイプ
貧血(ヘモグロビン低値)がある場合、赤血球のサイズが「小さい」のか「普通」なのか「大きい」のかによって、疑うべき病気が全く異なります。そのサイズを示すのがMCV(平均赤血球容積)です。
【貧血分類の簡易フローチャート】
- MCVが低い(80未満):小球性貧血
→ 赤血球が小さい。材料不足で中身がスカスカの状態。
→ 疑われる病気: 鉄欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血 - MCVが正常(80~100):正球性貧血
→ 赤血球の大きさは普通だが、数が足りない。
→ 疑われる病気: 腎性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、急性の出血 - MCVが高い(100以上):大球性貧血
→ 赤血球が異常に大きい。細胞分裂がうまくいっていない状態。
→ 疑われる病気: ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、過度の飲酒、肝機能障害
小球性(鉄欠乏など)・正球性(出血など)・大球性(ビタミン不足など)の違い
最も一般的な鉄欠乏性貧血では、ヘモグロビンを作るための鉄がないため、赤血球は小さく(小球性)、色も薄く(低色素性)なります。一方で、ビタミンB12や葉酸が不足すると、赤血球が成熟する過程でDNAの合成がうまくいかず、巨大な赤血球(大球性)が作られてしまいます。これを「巨赤芽球性貧血」と呼びます。
また、お酒をよく飲む方は、アルコールの影響でMCVが高くなる傾向があります。貧血がなくてもMCVが100を超えている場合、アルコール性肝障害の初期サインである可能性が高いです。
基準値内でも注意が必要な「隠れ貧血」とは
ヘモグロビン値が基準範囲内であっても、貯蔵鉄(フェリチン)が枯渇している状態を「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」と呼びます。MCVなどの数値にも異常が出ない段階ですが、疲労感や不眠、肌荒れなどの不調が現れることがあります。一般的な健診項目には含まれませんが、不調が続く場合は医療機関でフェリチン値の測定を相談してみるのも一つの手です。
▼詳しい用語解説:MCV・MCH・MCHCの計算式と意味
専門的な内容になりますが、これらの数値は以下の計算式で導き出されています。
- MCV(平均赤血球容積): (Ht ÷ RBC) × 10
赤血球1個あたりの平均的な体積を表します。単位はfL(フェムトリットル)。 - MCH(平均赤血球ヘモグロビン量): (Hb ÷ RBC) × 10
赤血球1個あたりに含まれるヘモグロビンの平均重量を表します。単位はpg(ピコグラム)。 - MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度): (Hb ÷ Ht) × 100
赤血球の体積に対するヘモグロビンの濃さを表します。単位は%。
臨床現場では、これらの数値を組み合わせて、「小さくて薄い赤血球(鉄欠乏)」なのか、「大きくて濃い赤血球(ビタミン欠乏)」なのかを瞬時に判断しています。
「要精密検査」になったら?受診の目安と検査内容
健診結果に「D判定(要医療)」や「E判定(要精密検査)」と書かれていたら、放置せずに必ず医療機関を受診してください。早期発見であれば、生活習慣の改善や簡単な投薬で済むケースが大半です。
何科を受診すべきか?(血液内科と一般内科の使い分け)
受診先として最も適切なのは「血液内科」です。血液の専門家である血液内科医であれば、血液像(顕微鏡での観察)や詳細な凝固機能などを詳しく調べることができます。
しかし、近くに血液内科がない場合は、まずは「一般内科」やかかりつけ医を受診しても問題ありません。そこで再検査を行い、専門的な治療が必要と判断されれば、大きな病院の血液内科を紹介してもらえます。また、明らかに便に血が混じっている場合や胃の痛みがある場合は、「消化器内科」を最初に受診するのも良い判断です。
病院で行われる精密検査の内容(血液像、骨髄検査など)
精密検査といっても、基本は「採血」です。健診よりも多くの項目(フェリチン、ビタミンB12、エリスロポエチン、網状赤血球数など)を調べます。また、採取した血液をスライドガラスに塗り、顕微鏡で赤血球の形や白血球の状態を直接観察する「血液像(末梢血塗抹検査)」を行います。これだけで多くの情報が得られます。
血液検査で白血病や骨髄増殖性疾患などの疑いが強まった場合に限り、腰の骨に細い針を刺して骨髄液を採取する「骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)」が行われます。これは最終的な確定診断のための検査であり、いきなり全員に行うものではありませんので、過度に怖がる必要はありません。
受診までの期間に気をつけること
受診日が決まるまでの間は、激しい運動やサウナなど極端に体に負担をかける行為は避けてください。多血症の疑いがある場合は、こまめな水分補給を心がけましょう。貧血の疑いがある場合、市販の鉄剤を自己判断で飲み始めると、検査結果がマスクされて正確な診断ができなくなることがあるため、受診までは通常の食事のみとし、サプリメントの服用は控えるのが賢明です。
血液内科専門医のアドバイス
「『精密検査』という言葉に恐怖を感じて受診を先延ばしにする方がいらっしゃいますが、それは逆効果です。多くの場合は生活指導や投薬でコントロール可能ですし、万が一重い病気が見つかったとしても、早期発見こそが完治への近道です。怖がりすぎず、まずは相談に来てください」
数値を改善するために今日からできる生活習慣
検査結果が「要経過観察」レベルであったり、医師から「生活習慣を見直しましょう」と言われたりした方のために、今日から実践できる具体的なアクションプランをご紹介します。
水分補給の重要性と正しい飲み方(多血傾向の人へ)
赤血球数やヘマトクリット値が高めの方にとって、最も即効性のある対策は「水分補給」です。血液をサラサラに保つためには、一度に大量に飲むのではなく、コップ1杯(約200ml)の水をこまめに飲むことが重要です。
- タイミング: 起床時、食事中、入浴前後、就寝前は必須です。
- 飲み物: 水、麦茶、ルイボスティーなどのノンカフェイン飲料が最適です。コーヒーや緑茶、アルコールは利尿作用があり、かえって脱水を招くことがあるため、水分補給とはカウントしません。
鉄分・ビタミンB12・葉酸を効率よく摂る食事法(貧血傾向の人へ)
貧血気味の方は、造血に必要な栄養素を意識的に摂取しましょう。
- 鉄分: 吸収率の高い「ヘム鉄」(赤身肉、レバー、カツオなど)と、野菜に含まれる「非ヘム鉄」(小松菜、ほうれん草、ひじきなど)があります。非ヘム鉄はビタミンCやタンパク質と一緒に摂ることで吸収率がアップします。
- ビタミンB12: シジミ、アサリ、海苔、レバーなどに多く含まれます。正常な赤血球を作るのに不可欠です。
- 葉酸: ブロッコリー、枝豆、ほうれん草などの緑黄色野菜やレバーに豊富です。
禁煙と適度な運動が血液にもたらす効果
多血症対策として最も効果が高いのは「禁煙」です。禁煙を開始すると、数日で血液中の一酸化炭素濃度が下がり、数週間から数ヶ月で赤血球数が正常化に向かいます。これは薬以上の効果があります。
また、有酸素運動(ウォーキングなど)は血流を改善し、代謝を高めますが、激しすぎる運動は赤血球を破壊(溶血)させたり、発汗による脱水を招いたりするため、適度な強度で行い、水分補給を忘れないようにしましょう。
| 目的 | おすすめ食材・習慣 | 避けるべきもの |
|---|---|---|
| 血液サラサラ (多血対策) |
水、麦茶、青魚(EPA/DHA)、玉ねぎ、納豆 | タバコ、アルコール過多、サウナでの我慢、脂っこい食事 |
| 造血サポート (貧血対策) |
レバー、赤身肉、カツオ、小松菜、ブロッコリー、アサリ | 食事中の濃いお茶・コーヒー(タンニンが鉄吸収を阻害)、偏食 |
赤血球の異常に関するよくある質問 (FAQ)
最後に、診療の現場で患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 赤血球が多いと、献血はできないのですか?
A. 基本的には可能です。むしろ、多血傾向の方にとって献血は、余分な血液を抜くことになるため、一種のデトックス(瀉血効果)となり、一時的に血液の粘度を下げる効果が期待できます。ただし、ヘモグロビン値が極端に高い場合(例えば18.0g/dL以上など)や、治療が必要な病気(真性多血症など)がある場合は、献血をお断りされることがあります。日本赤十字社の基準に従ってください。
Q. お酒を飲みすぎると赤血球の数値に影響しますか?
A. はい、大きく影響します。アルコールは利尿作用による脱水を招き、一時的に赤血球数を高く見せる(多血)一方で、長期的には骨髄の造血機能を抑制したり、ビタミン(葉酸)の吸収を妨げたりして、大球性貧血の原因にもなります。
血液内科専門医のアドバイス
「アルコールは血液にとって二面性を持つ厄介な存在です。多血のリスクも貧血のリスクも同時に高めます。休肝日を設け、適量を守ることが、血液データの安定には不可欠です」
Q. 女性の生理(月経)は検査値にどのくらい影響しますか?
A. 非常に大きく影響します。特に月経期間中や直後は、出血により一時的にヘモグロビン値が下がります。健診日が月経と重なった場合は、問診票にその旨を記載するか、可能であれば日程を変更することをお勧めします。逆に、閉経後の女性で数値が下がってきた場合は、月経以外の出血(消化器など)を疑う必要があります。
Q. 再検査で数値が正常に戻ることはありますか?
A. よくあります。特に「軽度の多血」と指摘された方は、禁煙や十分な水分摂取を意識して再検査に臨むだけで、正常範囲に戻ることが多々あります。これは病気ではなく、生活環境による一時的な変動だったことを意味します。しかし、正常に戻ったからといって元の不摂生な生活に戻れば、リスクも元通りになることを忘れないでください。
まとめ:検査結果は体からのメッセージ。正しく理解して健康管理を
赤血球の数値異常は、体が発している重要なサインです。「高い」と言われたらドロドロ血液による血栓症のリスクを、「低い」と言われたら酸欠による臓器負担や隠れた出血のリスクを教えてくれています。
血液内科専門医のアドバイス
「健康診断の結果は、その瞬間の点数だけでなく、過去数年間の『経年変化』を見ることが大切です。急激に数値が変わっていないか、徐々に悪化していないか。数値に一喜一憂するのではなく、自分の体の傾向を知り、生活習慣を見直すきっかけにしてください」
最後に、今回の結果を受けてどう行動すべきか、チェックリストで確認しましょう。
- 判定区分の確認: 「要経過観察」か「要再検査・精密検査」かを確認しましたか?
- 生活習慣の見直し:
- 多血傾向なら:水分をこまめに摂り、禁煙に挑戦していますか?
- 貧血傾向なら:鉄分やビタミン豊富な食事を意識していますか?
- 再検査の予約: 「要精密検査」の場合は、先延ばしにせず医療機関(内科・血液内科)の予約を入れましたか?
- 再検査時の準備: 検査当日は脱水を避け、普段通りの体調で臨む準備はできていますか?
健康な血液は、健康な生活の基盤です。この記事が、あなたの不安を解消し、適切な行動への一助となることを願っています。
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