「お店のようなふわとろオムライスを作りたいのに、いつも卵が破れてしまう」
「ケチャップライスがべちゃっとして、子供っぽい味になってしまう」
このような悩みをお持ちではありませんか? 美しい紡錘形(ラグビーボール型)のオムライスや、ナイフを入れるとトロリと広がるタンポポオムライスは、料理好きなら一度は憧れる到達点です。しかし、いざ家庭で作ろうとすると、火加減の難しさや包む技術の壁にぶつかり、スクランブルエッグを乗せただけのご飯になってしまうことも少なくありません。
結論から申し上げますと、お店のような「ふわとろオムライス」は、特別な銅のフライパンや高級な卵がなくても再現可能です。必要なのは、スーパーで買える食材と、テフロン加工のフライパン、そして「卵の温度管理」と「マヨネーズの乳化作用」を正しく理解することだけです。
この記事では、洋食の現場で20年間、累計5万食以上のオムライスを作り続けてきた私が、家庭のキッチンでプロの味を再現するための全ノウハウを公開します。感覚的な「適当」や「いい塩梅」といった言葉は使いません。論理的な理由と具体的な手順で、あなたのオムライス作りを成功へと導きます。
この記事でわかること
- 洋食歴20年のプロが教える、絶対に失敗しない道具選びと下準備の黄金比
- 時間が経ってもべちゃつかない「極上チキンライス」を作るための炒め順序と化学反応
- 卵が破れない・焦げないための「火加減」と、誰でもできる「包み方」の完全ガイド
準備編:プロが家庭でオムライスを作るなら「この道具」と「この材料」
料理は段取りが8割と言われますが、オムライスにおいては「準備が9割」と言っても過言ではありません。多くの方が失敗する原因の第一位は、実は腕前ではなく「道具選び」と「食材の温度管理」にあるのです。まずは、プロが家庭のキッチンに立つなら何を用意するか、その基準をお伝えします。
【最重要】フライパンは「20〜22cmのテフロン加工」が正解
オムライス作りにおいて、最も重要なパートナーとなるのがフライパンです。プロの厨房では熱伝導率の良い鉄や銅のフライパンを使用することが多いですが、ご家庭で再現する場合、私は迷わず「直径20〜22cmのフッ素樹脂加工(テフロン)フライパン」を推奨します。
なぜプロ用の道具を使わないのか、疑問に思うかもしれません。鉄や銅のフライパンは、油ならし(シーズニング)という工程が必須であり、温度管理が非常にシビアです。家庭のコンロ、特にセンサー付きのガスコンロやIHヒーターでは、火力が安定しにくく、卵が瞬時に張り付いてしまうリスクが高いのです。一方、状態の良いテフロン加工のフライパンであれば、摩擦係数が低いため、卵がスルスルと滑り、成形やトントン(フライパンを振って卵を返す動作)が劇的に簡単になります。
サイズに関しても明確な理由があります。卵2個(Lサイズ)を使用する場合、26cmや28cmの大きなフライパンでは卵液が薄く広がりすぎてしまい、すぐに火が通って「薄焼き卵」になってしまいます。厚みのある「ふわとろ」層を作るためには、卵液がある程度の深さを保てる20〜22cmがベストサイズなのです。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「私が新人の頃、先輩から最初に教わったのは『弘法筆を選ばずと言うが、初心者は良い筆(道具)に頼れ』ということでした。特にオムライスは、フライパンの滑りやすさが成功率に直結します。もしご自宅のフライパンが古く、目玉焼きがくっつくような状態なら、オムライス専用に安いもので構いませんので、新品の小さいフライパンを用意してください。それだけで、あなたの技術は一気にプロレベルに近づきます」
卵はLサイズ2個+「マヨネーズと水」が黄金比
次に卵の選び方と配合です。オムライス1人前に対して、卵はMサイズではなくLサイズを2個使用してください。卵白の量が多いため、ふんわりとしたボリュームが出やすくなります。
そして、ここからがプロの「化学」のアプローチです。溶いた卵には、必ず「マヨネーズ小さじ1」と「水小さじ1」を加えてください。牛乳や生クリームを入れるレシピも一般的ですが、家庭の火力で失敗なく「ふわとろ」を作るなら、この組み合わせが最強です。
マヨネーズに含まれる植物油と酢、そして乳化された卵黄は、加熱時に卵のタンパク質同士が固く結合するのを防ぐ働きをします。これを「乳化作用による軟化効果」と呼びます。この作用により、火が通っても卵が硬くなりにくく、冷めてもふんわりとした食感が持続するのです。味にマヨネーズ感は残りませんのでご安心ください。
ご飯は「温かいもの」を用意すべき科学的理由
チキンライスに使うご飯は、炊きたて、もしくは電子レンジで温めた直後の「熱々の状態」を用意してください。「チャーハンは冷やご飯が良い」という説がありますが、オムライスのチキンライス(ケチャップライス)においては逆効果です。
冷えたご飯はデンプンが老化(β化)しており、硬くパサついています。これを炒めながらほぐすには、多量の油と時間が必要です。炒める時間が長くなればなるほど、具材から水分が出てべちゃつく原因になります。一方、温かいご飯はデンプンが糊化(α化)しており、粘り気はあるものの、油馴染みが良く、短時間で調味料と混ざり合います。
手早く炒めて米粒一つ一つをコーティングするには、最初から熱いご飯を使い、フライパンの中での滞在時間を極力短くすることが、パラパラでふっくらしたチキンライスを作る秘訣です。
具材はシンプルに。鶏肉と玉ねぎだけで旨味を出すコツ
具材は欲張らず、鶏もも肉(50g)と玉ねぎ(1/4個)の2つに絞りましょう。マッシュルームやピーマンを入れるのも美味しいですが、具材が増えれば増えるほど、野菜から出る水分(ドリップ)の処理が難しくなり、失敗のリスクが高まります。
鶏肉は1cm角に切り、玉ねぎは粗めのみじん切りにします。ここで重要なのは、鶏肉と玉ねぎだけで十分に「旨味のベース」を作ることです。鶏肉からはイノシン酸、玉ねぎからはグルタミン酸が出ます。これらをしっかりと炒め合わせることで、コンソメなどの化学調味料に頼りすぎなくても、奥深い味わいのライスが出来上がります。
調理開始前の準備物チェックリスト(クリックして確認)
| カテゴリ | 準備項目 | 備考 |
|---|---|---|
| 道具 | 20〜22cmのテフロンフライパン | 傷がないか確認 |
| 道具 | 耐熱ゴムベラ | 木べらよりきれいに取れる |
| 道具 | 濡れ布巾(ぬれぶきん) | コンロの横に広げて置く |
| 食材 | 卵(Lサイズ2個) | 常温に戻しておく |
| 食材 | ご飯(茶碗1.5杯分) | 温かい状態にする |
| 調味料 | ケチャップ、バター、マヨネーズ | 計量して手元に置く |
ライス編:ケチャップライスが「べちゃつく」問題を解決するプロの技
オムライスの土台となるチキンライス(ケチャップライス)。多くのご家庭で「どうしても水分が出てべちゃっとしてしまう」「酸味が強くて子供が残してしまう」という悩みを耳にします。これは、炒める「順序」を変えるだけで劇的に改善します。
プロは、ご飯を入れてからケチャップを入れることはほとんどありません。先にケチャップを「焼き切る」ことで、水分を飛ばし、旨味を凝縮させているのです。ここでは、冷めても美味しい極上ライスの作り方を解説します。
手順1:具材を先に炒めて「水分を飛ばす」
フライパンにサラダ油(小さじ1)を引き、中火で鶏肉と玉ねぎを炒めます。ここでのポイントは、「玉ねぎが透き通り、鶏肉に少し焦げ目がつくまで」しっかりと火を入れることです。
野菜や肉に含まれる余分な水分は、この段階で完全に飛ばしておきます。水分が残ったままご飯やケチャップを入れると、後から水分が染み出し、全体が水っぽくなる原因になります。塩コショウを軽く振り、下味をつけるとともに浸透圧で水分を出やすくしましょう。
手順2:ケチャップはご飯より先に投入し「焼き切る」
具材に火が通ったら、ここでご飯を入れるのではなく、先にケチャップ(大さじ3)を投入します。これが最大のポイントです。
具材とケチャップを合わせ、フライパンの上でグツグツと煮立たせるように炒めてください。ケチャップの水分を蒸発させ、ペースト状になるまで1分ほど加熱します。これにより、ケチャップ特有のツンとする酸味が飛び、トマトの甘味と旨味が凝縮されます。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「これは『メイラード反応』と呼ばれる化学反応を応用したテクニックです。トマトに含まれる糖とアミノ酸が加熱によって結びつき、香ばしさと深いコクが生まれます。色が鮮やかな赤から、少し深みのあるレンガ色に変わる瞬間があります。それが、酸味が旨味に変わったサインです。この工程を経ることで、ソースをかけなくても美味しい濃厚なチキンライスになります」
手順3:ご飯を投入し、切るように混ぜ合わせる
ケチャップがねっとりとしたペースト状になったら、温かいご飯を投入します。ゴムベラや木べらを使い、ご飯を切るようにして、赤いペーストをご飯一粒一粒に纏わせていきます。
すでにケチャップの水分は飛んでいるため、ご飯が水分を吸って柔らかくなりすぎることはありません。鍋肌に押し付けるのではなく、空気を含ませるようにサックリと混ぜ合わせることで、パラリとした食感に仕上がります。
隠し味に「バター」と「醤油」を一滴垂らす理由
全体が均一に混ざったら、仕上げにバター5gと醤油を数滴加えます。
バターは最初から入れて炒めると、香りが飛んでしまい、焦げやすくなります。最後に加えることで、芳醇な香りをライスに閉じ込めることができます。また、醤油はトマトの旨味成分(グルタミン酸)との相乗効果を生み出し、味の輪郭をキリッと引き締める役割を果たします。「洋食に醤油?」と思われるかもしれませんが、日本人の舌に合う「ご飯に合う味」にするための魔法の一滴です。
【成形テクニック】お皿ではなくフライパンの縁を使って形を整える方法
出来上がったチキンライスをお皿に盛る際、ただ山盛りにするのではなく、この段階でオムライスの形(ラグビーボール型)に整えておくと、後の工程が非常に楽になります。
フライパンの奥の縁(カーブしている部分)にご飯を寄せ、ゴムベラで押し当てながら形を作ります。フライパンを逆手に持ち、お皿の上にパカッと伏せるように盛り付ければ、きれいな楕円形の土台が完成します。この土台がしっかりしていると、卵を乗せた時に形が崩れにくく、見栄えが格段に良くなります。
卵液編:お店のような「ふわとろ食感」を生むための仕込み
いよいよオムライスの主役、卵の準備です。ここでは、技術不足を補い、誰が焼いても「ふわとろ」になるように、科学的なアプローチで卵液(アパレイユ)を調整します。単に卵を割って混ぜるだけでは、プロの味には到達できません。
卵を常温に戻さないと失敗する理由
まず、調理を始める30分前には冷蔵庫から卵を出し、常温に戻しておいてください。これは絶対に守っていただきたいルールです。
冷たい卵を熱いフライパンに入れると、急激な温度差によりフライパンの表面温度が一気に下がります。すると、卵がフライパンにくっつきやすくなり、火の通りにもムラができます。また、冷たい卵液は流動性が低く、素早く全体に広がらないため、厚みにバラつきが出やすくなります。常温に戻すことで、短時間で均一に火を通すことができ、「半熟」のコントロールが容易になります。
マヨネーズと水を加えることで起きる「乳化」と「タンパク質変性」の抑制
準備編でも触れましたが、Lサイズ卵2個に対し、マヨネーズ小さじ1と水小さじ1を加えます。
卵のタンパク質は熱を加えると凝固し、水分を排出して硬くなる性質があります。ここにマヨネーズ(植物油と酢の乳化粒子)が入り込むと、タンパク質の結合が緩やかになり、ふんわりとした状態を保ちやすくなります。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「なぜ牛乳ではなく『水』を推奨するのか、よく質問を受けます。牛乳や生クリームはコクが出ますが、乳脂肪分が焦げ付きの原因になることがあります。また、家庭の火力では水分が蒸発しきれず、卵が破れやすくなることも。水を使うと、その水分が蒸気となって卵の中で膨らみ、スフレのように軽い口当たりを生み出します。初心者の方ほど、水での調整をおすすめします」
白身を切るように混ぜるが、泡立ててはいけない
卵を混ぜる際は、菜箸をボウルの底につけ、左右に直線的に動かして「白身を切る」ように混ぜます。円を描くようにカシャカシャと泡立ててしまうと、卵液の中に気泡が入り込みます。
気泡が多い卵液を焼くと、表面に穴(ピンホール)が開いたり、口当たりがザラついたりする原因になります。白身のドロッとした塊(濃厚卵白)がなくなり、全体がサラサラになるまで、しかし泡立てないように静かに、徹底的に混ぜ合わせてください。
ザルで濾す(こす)ひと手間で、見た目の美しさが劇的に変わる
もし余裕があれば、混ぜた卵液を一度ザルや茶こしで濾してください。このひと手間をかけるだけで、仕上がりの美しさがプロ級に変わります。
濾すことで、溶ききれなかった白身の塊や「カラザ」が取り除かれ、シルクのようになめらかな卵液になります。均一な卵液は、火の通りも均一になり、焼き上がりの表面がつるっとして光沢が出ます。「お店のオムライスはどうしてあんなに肌がきれいなの?」という疑問の答えは、この「濾す」作業にあるのです。
解説:濾した卵液と濾さない卵液の違い
| 比較項目 | 濾さない場合 | 濾した場合 |
|---|---|---|
| 見た目 | 白身の白い筋が残り、色ムラができる | 全体が均一な黄金色で、艶がある |
| 食感 | 所々固い部分やドロッとした部分がある | 舌触りが滑らかで、口溶けが良い |
| 焼きやすさ | 火通りにムラができやすい | 均一に固まるため破れにくい |
焼成編:ここが勝負!卵を破らずに「半熟」で仕上げる火入れの極意
ここがオムライス作りにおける最大の難所であり、勝負の瞬間です。卵をフライパンに入れてからお皿に移すまでの時間は、わずか30秒〜1分程度。この短い時間に、いかに適切な判断と操作を行えるかが鍵となります。秒単位の感覚と、視覚・聴覚を使った判断基準を詳しく解説します。
予熱の目安は「菜箸につけた卵液がジュッと音を立てる」まで
フライパンを中火〜強火にかけ、しっかりと予熱します。温度が低いと卵がくっつき、高すぎると一瞬で焦げてしまいます。
最適な温度を確認する方法は、菜箸の先に卵液を少しつけ、フライパンの表面に触れさせることです。「ジュッ!」という鋭い音がして、つけた卵液が瞬時に白く固まれば準備完了です。「ジュー…」と鈍い音だったり、固まるのに時間がかかる場合は、まだ温度が低すぎます。
バターを入れたら「泡が小さくなる」タイミングを見逃さない
予熱ができたら、バター10gを投入します。バターは溶け始めると大きな泡を出して音を立てますが、水分が飛ぶにつれて泡が細かくなり、音も静かになっていきます。
泡がクリーミーな細かい泡に変わり、ほんのりと香ばしい香りがし始めた瞬間が、卵液投入のベストタイミングです。これより早いとバターの水分で卵がくっつきやすく、遅いとバターが焦げて茶色いオムレツになってしまいます。
卵液を一気に入れたら、左手でフライパンを揺すり、右手で大きくかき混ぜる
バターが良い状態になったら、火加減は強火のまま、卵液を一気に流し込みます。ここからはスピード勝負です。
左手でフライパンを前後に細かく揺すりながら、右手で菜箸を大きく円を描くように動かし、卵液全体を激しくかき混ぜます。外側から固まってくる卵を内側に入れ込み、内側の生の部分を外側に送るイメージです。この動作により、全体に空気を含ませながら、細かいスクランブルエッグ状の層を作ります。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「プロが菜箸を激しく動かすのは、単に混ぜているわけではありません。フライパンの底にできた『薄い膜』を剥がしては混ぜ、剥がしては混ぜることで、層を重ねているのです。菜箸の先でフライパンの底を傷つけないよう、箸先を少し浮かせるか、シリコン製の菜箸を使うのがコツです。『の』の字を書くように、手早く、大胆に動かしてください」
「半熟とろとろ」の状態で一度火から外す勇気を持つ
全体がかき混ざり、卵液の8割が半熟のスクランブルエッグ状になったら、まだ液体が残っている状態で一度火から外します。多くの失敗は、ここで「まだ生っぽいから」と火にかけ続けてしまい、完全に固まってしまうことで起きます。
フライパンの余熱(蓄熱)だけでも卵にはどんどん火が入っていきます。「少し早すぎるかな?」と思うタイミングで火から離す勇気が、ふわとろ成功の鍵です。
濡れ布巾(ぬれぶきん)を用意し、フライパンの温度を急冷させて固まりすぎを防ぐ
火から外したら、用意しておいた濡れ布巾の上にフライパンの底を一瞬(1〜2秒)当てます。ジューッという音がしますが、これによりフライパンの温度が急激に下がり、卵への過剰な加熱をストップさせることができます。
この「温度のリセット」を行うことで、焦らずに落ち着いて成形の工程に移ることができます。プロの現場でも、繊細な火入れが必要な時は必ず行うテクニックです。このひと手間が、家庭での失敗率を大幅に下げてくれます。
成形編:トントンしなくてOK!家庭でできる「包む」テクニックと「のせる」選択肢
テレビで見るような、フライパンの柄をトントンと叩いて卵を回転させる技術は、一朝一夕で身につくものではありません。無理に真似をして卵を落としてしまっては元も子もありません。ここでは、プロの技術を使わずに、確実に美しく仕上げるための現実的な方法を2つ提案します。
【初級】包まなくていい!とろとろ卵をスライドさせて乗せる「タンポポオムライス風」
最も失敗が少ないのは、そもそも「包まない」という選択です。いわゆる「タンポポオムライス(開くオムライス)」のスタイルです。
半熟状態に仕上げた卵を、フライパンから滑らせるようにして、成形しておいたチキンライスの上にそっと乗せます。ゴムベラを使って形を整え、ナイフで中央に切れ込みを入れれば、とろりと卵が広がり、見た目も豪華な仕上がりになります。包んでいないことは誰にもわかりませんし、食べた時の「ふわとろ感」は最高レベルです。
【中級】ゴムベラを使って「手前に折りたたむ」確実な包み方
「やっぱり王道の包むオムライスが作りたい」という方は、トントンするのではなく、ゴムベラを使って物理的に折りたたむ方法を試してください。
- 半熟状になった卵を、フライパンの向こう側の縁に寄せます。
- 手前の空いたスペースにチキンライスを乗せます。
- 向こう側の卵の端を、ゴムベラを使ってご飯にかぶせます。
- 手前の卵の端も、ゴムベラで持ち上げてご飯にかぶせます。
つまり、フライパンの中で卵をご飯に巻き付けてしまうのです。これなら空中で卵を舞わせる必要はありません。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「フライパンからお皿に移す時、フライパンの柄を『逆手(さかて)』に持つと手首が返しやすくなります。順手(上から握る持ち方)だと手首の可動域に限界があり、最後の一回転がうまくいきません。逆手(下から握る持ち方)に変えて、フライパンを被せるように動かすと、コロンときれいに転がってくれますよ」
皿に移す時の「V字返し」テクニック
フライパンからお皿に移す瞬間も緊張します。ここで役立つのが、フライパンとお皿をV字にするテクニックです。
お皿を持ってフライパンに近づけ、フライパンの縁とお皿の縁をくっつけて「V字」を作ります。その支点をずらさないようにしながら、フライパンを急角度で傾け、お皿の方を水平に戻していくと、卵が自然と重力で転がり落ちて着地します。距離をゼロにすることで、落下による衝撃や型崩れを防ぎます。
キッチンペーパーを使って、乗せた後の形を整える「最後の整形術」
お皿に乗った時点で、形がいびつでも、卵が少し破れていても、まだ諦めないでください。プロも実践する最終手段があります。
清潔なキッチンペーパーをオムライス全体にかぶせ、その上から手で優しく包み込むようにして形を整えます(ラグビーボール型に撫でる)。熱いうちであれば、卵は柔軟に変形します。ペーパーの上から軽く押さえることで、表面の凸凹が馴染み、破れ目も目立たなくなります。ペーパーをそっと剥がせば、そこには美しいオムライスが完成しています。
仕上げ編:家にある調味料で3分で作れる「絶品ソース」2選
オムライス本体が完成したら、最後はソースで彩りましょう。市販のケチャップをそのままかけるのも素朴で良いですが、少し手を加えるだけで洋食屋の味になります。
ケチャップ+ウスターソース+バターで作る「簡易デミグラス風ソース」
デミグラスソース缶がなくても、家にある調味料で濃厚なソースが作れます。オムライスを作った後のフライパン(洗わずにそのまま)で作ると、残った肉汁やバターの風味も活かせます。
- ケチャップ:大さじ3
- ウスターソース:大さじ1
- 水:大さじ1
- バター:5g
これらをフライパンに入れて弱火で煮詰め、とろみがついたら完成です。ウスターソースのスパイシーさとバターのコクが加わり、ご飯が進む味になります。
生クリーム不要!牛乳とコンソメで作る「ホワイトソース」
「今日はクリーミーな気分」という時は、電子レンジで作れる簡易ホワイトソースがおすすめです。
- 牛乳:100ml
- 小麦粉:小さじ1
- バター:5g
- コンソメ顆粒:小さじ1/2
耐熱容器にバターと小麦粉を入れてレンジで30秒加熱して混ぜ、牛乳を少しずつ加えて溶かし、コンソメを入れます。再度1分ほど加熱してとろみがつけば完成。ケチャップライスとの紅白のコントラストが美しく映えます。
失敗した時のリカバリーQ&A:洋食料理長が答える「困った!」への処方箋
どんなに準備しても、予期せぬトラブルは起こるものです。しかし、プロは失敗を失敗に見せない「リカバリー技術」を持っています。よくあるトラブルの解決策をまとめました。
Q. 卵がフライパンにくっついて剥がれません。原因は?
A. フライパンの温度不足か、テフロンの寿命です。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「最も多い原因は、予熱不足です。怖がらずにしっかり煙が出る直前まで温めてください。それでもくっつく場合は、残念ながらテフロンの寿命です。その場合は、無理に剥がそうとせず、スクランブルエッグとして仕上げてご飯の上に乗せ、『ふわとろ卵丼』として美味しくいただきましょう。決して失敗ではありません」
Q. 中のご飯が冷たいままになってしまいました。
A. ソースを熱々にしてかけましょう。
ご飯の中心まで温まっていなかった場合、再度フライパンに戻すのは困難です。その代わり、仕上げのソースを沸騰するほど熱くして、たっぷりと回しかけてください。ソースの熱でご飯も温まり、違和感なく食べることができます。
Q. 卵に火が通りすぎて、ただの薄焼き卵になってしまいました。
A. 潔く「昔ながらのオムライス」に切り替えます。
半熟にならなかった場合は、しっかりと焼いてご飯を包み、形を整えてください。そして、上からケチャップを一直線にかけます。これはこれで「昭和レトロなオムライス」として完成された料理です。「今日はクラシックスタイルにした」と堂々と食卓に出しましょう。
Q. 破れてしまった卵を隠す方法はありますか?
A. トッピングとソースで「演出」に変えます。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「破れた箇所には、たっぷりとソースをかけ、その上にパセリや粉チーズ、あるいはプチトマトやブロッコリーを添えて隠してしまいます。プロの世界でも、少しの傷をソースのデザインでカバーすることはあります。料理は見た目のバランスが良ければ、中身の小さなミスは気にならなくなるものです」
まとめ:失敗の積み重ねが「家庭の味」になる
ここまで、プロの視点から「ふわとろオムライス」を作るための論理と技術をお伝えしてきました。最後に、オムライス作り成功のための重要なポイントを振り返りましょう。
- 道具:20〜22cmのテフロンフライパンを用意する。
- 準備:卵は必ず常温に戻し、マヨネーズと水を加える。
- ライス:具材とケチャップを先に炒めて水分を飛ばす。
- 焼成:半熟の状態で火から外し、濡れ布巾で温度を止める。
- 成形:無理にトントンせず、ゴムベラやキッチンペーパーを活用する。
オムライスは、一見シンプルですが、火加減やスピード感が求められる奥深い料理です。最初から完璧にできなくても落ち込む必要はありません。今回ご紹介した「卵の温度管理」や「水分の飛ばし方」を意識するだけで、あなたのオムライスは確実にレベルアップしています。
洋食歴20年の総料理長のアドバイス
「私が何千回とオムライスを焼いてきて思うのは、一番の調味料は『食べてくれる人を喜ばせたい』という気持ちだということです。形が少し崩れても、卵が少し破れても、あなたが一生懸命作った熱々のオムライスは、間違いなく美味しいはずです。ぜひ、失敗を恐れずに、楽しみながらフライパンを振ってください」
さあ、今夜のキッチンで、あなただけの「極上オムライス」に挑戦してみてください。
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