PR

【循環器専門医が解説】動悸とは?危険なサインとストレス・更年期の見分け方

PR

「急に心臓がドクンと大きく跳ねた」「夜、布団に入ると心臓の音が耳に響いて眠れない」「階段を上っただけで息が切れてバクバクする」……。

このような動悸の症状に襲われたとき、誰しもが「もしかして心臓の病気ではないか?」と強い不安を感じるものです。特に40代、50代と年齢を重ねるにつれて、心臓そのものの不調に加え、更年期によるホルモンバランスの乱れや、長年のストレスの蓄積など、原因は複雑に絡み合ってきます。

結論から申し上げますと、動悸の多くはストレスや過労、あるいは良性の不整脈によるものであり、直ちに命に関わるケースばかりではありません。しかし、その中には心筋梗塞や心不全、脳梗塞の原因となる心房細動といった、一刻を争う重篤な病気のサインが確実に隠れています。

自己判断で「ただの疲れだろう」と放置することは、時として取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。一方で、過度に恐れて不安になりすぎることも、交感神経を刺激して症状を悪化させる原因となりかねません。大切なのは、ご自身の症状の特徴を冷静に観察し、「今すぐ動くべきか」「様子を見ても良いか」を正しく判断することです。

この記事では、20年以上にわたり循環器内科の最前線で多くの患者さんを診察してきた専門医の視点から、動悸の正体と対処法を徹底的に解説します。

この記事でわかること

  • 「今すぐ救急車を呼ぶべき」危険な動悸のチェックリストと判断基準
  • 「ドクン」「バクバク」など、感じ方の違いでわかる原因と病気の見分け方
  • 更年期障害やストレスによる動悸の特徴と、自宅でできる適切な対処法

ご自身の、あるいはご家族の心臓を守るための知識として、ぜひ最後までお読みいただき、適切な行動につなげてください。

  1. まず確認!命に関わる「危険な動悸」セルフチェック
    1. 【緊急度★★★】ためらわず救急車を呼ぶべき症状
    2. 【緊急度★★☆】なるべく早く循環器内科を受診すべき症状
    3. 【緊急度★☆☆】様子を見ても良いケースと受診メモの重要性
  2. 「ドクン」「バクバク」感じ方でわかる動悸の原因と種類
    1. 一瞬「ドクン」とする・脈が飛ぶ(結滞)
    2. 突然「バクバク」する・脈が速い(頻脈)
    3. 常に「トクトク」速い・脈が不規則(心房細動など)
    4. 脈は正常だが「ドキドキ」強く感じる(心悸亢進)
  3. 動悸を引き起こす3つの主要原因と見分け方
    1. 原因①:心臓の病気(不整脈、心不全、弁膜症)
    2. 原因②:心臓以外の体の病気(貧血、甲状腺、更年期障害)
    3. 原因③:精神的・生理的な要因(ストレス、パニック障害、薬・嗜好品)
  4. 動悸がした時の正しい対処法と予防習慣
    1. 突然動悸が起きた時の応急処置(姿勢・呼吸法)
    2. やってはいけないNG行動
    3. 自律神経を整える生活習慣と食事
  5. 病院に行く目安と診療科の選び方
    1. まずは「循環器内科」へ!心療内科との使い分け
    2. 病院で行われる主な検査
    3. 医師に伝えるべき5つのポイント(受診メモの作り方)
  6. 動悸に関するよくある質問 (FAQ)
    1. Q. 夜寝る時に動悸がして眠れません。病気でしょうか?
    2. Q. 食後にドキドキするのはなぜですか?
    3. Q. コーヒーやアルコールは控えたほうがいいですか?
    4. Q. 生理前や排卵日に動悸がするのは普通ですか?
  7. まとめ:動悸は体からのサイン。正しく恐れて、適切な受診を

まず確認!命に関わる「危険な動悸」セルフチェック

動悸を感じたとき、最も優先すべきは「緊急性の有無」の判断です。原因を詳しく調べるのはその後で構いません。まずは、現在の症状が生命維持に関わる緊急事態なのか、それとも翌日以降の受診でも間に合うものなのかを見極める必要があります。

循環器内科の救急現場では、患者さんが搬送されてきた時点での「意識状態」「血圧」「随伴症状(動悸以外の症状)」を重視してトリアージ(重症度選別)を行います。一般の方がご自身やご家族の状態を判断するために、以下のフローチャートとチェックリストを活用してください。

▼ 動悸の緊急度判定フローチャート(クリックして展開)
【START】動悸を感じている
Q1. 意識が遠のく、目の前が暗くなる、または気を失ったことがあるか?
YES

【緊急度★★★】
救急車を要請
NO

Q2へ進む
Q2. 胸が締め付けられるような激しい痛み、冷や汗、呼吸困難があるか?
YES

【緊急度★★★】
救急車を要請
NO

Q3へ進む
Q3. 安静にしても動悸が治まらない、脈が明らかに乱れているか?
YES

【緊急度★★☆】
早急に受診
NO

【緊急度★☆☆】
様子を見て記録

【緊急度★★★】ためらわず救急車を呼ぶべき症状

以下の症状が一つでも当てはまる場合は、心筋梗塞(しんきんこうそく)や致死性の不整脈、あるいは大動脈解離などの一刻を争う病態である可能性が極めて高いです。自家用車やタクシーでの移動は移動中に容態が急変するリスクがあるため避け、迷わず救急車を呼んでください。

  • 意識消失・失神:一瞬でも気を失った、または気が遠くなり倒れそうになった場合。脳への血流が途絶えている証拠であり、心停止の前兆である可能性があります。
  • 激しい胸痛:胸を万力で締め付けられるような圧迫感、焼けつくような痛みが数分以上続く場合。
  • 冷や汗:暑くないのに脂汗のような冷たい汗が全身から噴き出る場合。これは血圧が急激に低下しているショック状態のサインです。
  • 強い息苦しさ(呼吸困難):横になると息ができず、座っていないと呼吸が苦しい場合(起座呼吸)。急性心不全の典型的な症状です。
  • ピンク色の泡状の痰:肺に水が溜まっている(肺水腫)危険な兆候です。

これらの症状は、心臓のポンプ機能が破綻しかけていることを示しています。「夜中だから迷惑かもしれない」「もう少し様子を見よう」という遠慮は、命取りになりかねません。

【緊急度★★☆】なるべく早く循環器内科を受診すべき症状

救急車を呼ぶほどではないものの、放置するのは危険な状態です。可能な限り当日中、夜間であれば翌朝一番に循環器内科を受診してください。

  • 安静にしても治まらない:座って深呼吸をして休んでも、15分〜30分以上動悸が続く場合。
  • 脈が完全にバラバラ:手首で脈をとったとき、リズムが全く不規則で、速くなったり遅くなったりする場合(心房細動の疑い)。
  • 足のむくみを伴う:すねを指で押すと跡が残るようなむくみがあり、最近急激に体重が増えた場合(心不全の疑い)。
  • めまい・ふらつき:回転性のめまいではなく、フワフワと浮くような浮動性のめまいが動悸とセットで現れる場合。

特に「心房細動」という不整脈は、心臓の中に血栓(血の塊)を作りやすく、それが脳に飛ぶと重篤な脳梗塞を引き起こします。症状が軽くても、脳梗塞予防のために早急な治療開始が必要なケースがあります。

【緊急度★☆☆】様子を見ても良いケースと受診メモの重要性

以下のような特徴がある場合は、緊急性は低いと考えられます。しかし、「異常なし」と自己診断するのではなく、症状の頻度や変化を観察することが大切です。

  • 一瞬だけ「ドクン」となる:一瞬胸が詰まるような感覚があるが、すぐに普段通りのリズムに戻る場合。
  • 明確な誘因がある:激しい運動直後、極度の緊張(プレゼン前など)、驚いた直後、多量のカフェイン摂取後などに起こり、安静にすると数分で落ち着く場合。
  • 痛みや息切れを伴わない:動悸だけで、他の身体症状がない場合。

この場合でも、症状が頻繁に起こるようになったり(週に数回など)、1回の持続時間が長くなったりするようであれば、一度検査を受けることをお勧めします。その際、「いつ」「どのような状況で」「どのくらい続いたか」をメモに残しておくと、医師の診断が非常にスムーズになります。

循環器専門医のアドバイス
「救急の現場にいると、『こんな夜中に大したことない症状で来て申し訳ない』と恐縮される患者さんがいらっしゃいます。しかし、私たち医師にとっては、手遅れになる前に来ていただくことが何よりの願いです。特に『冷や汗』と『吐き気』を伴う胸の不快感は、心筋梗塞の重要なサインです。胸が痛くなくても、動悸とともに胃のあたりがムカムカし、冷や汗が出る場合は、躊躇せず助けを求めてください。『我慢』が最大のリスクファクターであることを、どうか忘れないでください。」

「ドクン」「バクバク」感じ方でわかる動悸の原因と種類

患者さんが診察室で訴える「動悸」の表現は実に多様です。「心臓が口から飛び出しそう」「胸の中で金魚が暴れているよう」「一瞬だけエレベーターで急降下したような感じ」など、その感じ方(オノマトペ)には病気の特徴が色濃く反映されています。

医師は、患者さんのこうした言葉のニュアンスから、「不整脈の種類」や「心臓以外の原因」にあたりをつけていきます。ここでは、代表的な動悸の感じ方と、そこから推測される原因を解説します。

一瞬「ドクン」とする・脈が飛ぶ(結滞)

可能性が高い原因:期外収縮(きがいしゅうしゅく)

「突然、胸がドクン!となる」「脈が一拍抜ける感じがする」「喉の奥が詰まるような不快感」と表現されることが多い症状です。これは、本来の心臓のリズムよりも少し早いタイミングで、予定外の電気信号が発生して心臓が収縮してしまうために起こります。

なぜ「ドクン」と強く感じるのでしょうか。それは、予定外の早い収縮のあと、心臓はリズムを整えるために少し長い休み(代償性休止期)を取ります。この休んでいる間に心臓の中に血液がたっぷりと溜まり、次の正常な収縮でその大量の血液を一気に送り出すため、通常よりも強い衝撃を感じるのです。

危険度:
多くの場合、心臓に基礎疾患(心筋梗塞の跡や心筋症など)がなければ「良性」の不整脈であり、治療の必要はありません。ストレス、睡眠不足、過労、カフェインの摂りすぎなどが引き金になります。ただし、頻度が極端に多い場合や、連発してめまいがする場合は精査が必要です。

突然「バクバク」する・脈が速い(頻脈)

可能性が高い原因:発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく)、洞性頻脈(どうせいひんみゃく)

「スイッチが入ったように突然脈が速くなり、また突然止まる」というのが最大の特徴であれば、発作性上室性頻拍の可能性があります。脈拍数は1分間に150回〜200回にも達することがあり、安静にしていても全力疾走しているような状態になります。

一方、運動や緊張、発熱などに伴って「徐々に速くなり、休むと徐々に収まる」場合は、洞性頻脈と呼ばれ、これは生理的な反応(正常な反応)であることがほとんどです。心臓が体の要求に応えて、酸素を多く送ろうと頑張っている状態です。

危険度:
発作性上室性頻拍は、命に直結することは稀ですが、強い不安感やめまい、血圧低下を招くことがあります。カテーテル治療(アブレーション)で根治が期待できる不整脈の一つです。

常に「トクトク」速い・脈が不規則(心房細動など)

可能性が高い原因:心房細動(しんぼうさいどう)

「脈のリズムが全くバラバラ」「速くなったり遅くなったり不規則」「胸の奥で細かく震えている感じ」と表現されます。心臓の上側の部屋(心房)が痙攣したように細かく震え、十分な血液を送り出せていない状態です。

この不整脈の最大の問題点は、心房の中で血液がよどみ、血栓ができやすくなることです。高齢者に多いイメージがありますが、40代・50代の働き盛りでも、高血圧や飲酒、肥満、睡眠時無呼吸症候群などを背景に発症するケースが増えています。

危険度:
要注意です。放置すると心原性脳塞栓症(重症化しやすい脳梗塞)のリスクが通常の5倍に跳ね上がります。自覚症状が乏しい「隠れ心房細動」の人も多いため、健康診断の心電図やスマートウォッチでの検知が発見のきっかけになることもあります。

脈は正常だが「ドキドキ」強く感じる(心悸亢進)

可能性が高い原因:貧血、甲状腺機能亢進症、心因性

脈拍数は正常範囲(1分間に60〜100回程度)であるにもかかわらず、心臓の鼓動を強く、あるいは大きく感じる状態です。これは「心悸亢進(しんきこうしん)」と呼ばれます。

心臓自体に問題があるというよりは、心臓以外の要因で心臓が「強く叩く」ことを強いられている状態です。例えば、貧血の場合は薄くなった血液で酸素を全身に届けるために、一回ごとの拍出量を増やそうとして心臓が強く収縮します。また、バセドウ病などの甲状腺疾患では、代謝が活発になりすぎることで心臓が過活動状態になります。

循環器専門医のアドバイス
「診察の際、患者さんに『どんなふうにドキドキしますか?』と伺うと、机を指で叩いてリズムを教えてくださる方がいます。実はこれが非常に診断の助けになります。『トン、トン、……(休み)……、ドクン!』なら期外収縮、『トトトトトトッ!』と規則正しく速いなら頻拍発作、『トントト、トン、トトト、トン』とバラバラなら心房細動、といった具合です。ご自身の脈のリズムを手首で確認し、そのリズムを医師に伝えていただくだけで、検査前からある程度の予測がつきます。」

動悸を引き起こす3つの主要原因と見分け方

動悸の原因は多岐にわたりますが、大きく分けると「心臓そのものの病気」「心臓以外の体の病気」「精神的・生理的な要因」の3つに分類できます。特に40代〜50代の女性の場合、更年期障害の症状として動悸が現れることが多く、心臓病との区別に悩む方が少なくありません。

ここでは、それぞれの原因の特徴と、見分けるためのポイントを解説します。

原因①:心臓の病気(不整脈、心不全、弁膜症)

心臓が原因の動悸は、まさに「ポンプの故障」や「電気系統のトラブル」です。

  • 不整脈:前述の通り、脈のリズムが乱れる病気です。電気回路のショートや異常興奮が原因です。
  • 心不全:心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な血液を送れなくなる状態です。動悸に加え、「動いた時の息切れ」「足のむくみ」「夜間の頻尿」がセットで現れるのが特徴です。
  • 心臓弁膜症:心臓の中にある弁の開閉が悪くなる病気です。血液の逆流や滞留が起こり、心臓に負担がかかって動悸が生じます。聴診器で心雑音が聞こえることで発見されることが多いです。

見分けるポイント:
「労作時(階段や坂道、重い荷物を持った時)」に症状が悪化するかどうかが重要です。体を動かした時に動悸や息切れが強くなる場合は、心機能の低下を疑う必要があります。

原因②:心臓以外の体の病気(貧血、甲状腺、更年期障害)

心臓は正常でも、全身の状態に合わせて無理をして働いているケースです。

  • 貧血:特に月経のある女性や、子宮筋腫をお持ちの方に多い原因です。血液中のヘモグロビンが不足し、酸欠状態を防ぐために心臓が早鐘を打ちます。顔色が悪い、爪が白い、立ちくらみがあるなどの症状を伴います。
  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など):喉仏の下にある甲状腺からホルモンが出過ぎる病気です。常に全力疾走しているような代謝状態になり、安静にしていても脈が速く、汗をかき、体重が減少します。
  • 更年期障害:女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により、自律神経のバランスが崩れて起こります。ホットフラッシュ(ほてり・発汗)と共に動悸が出現するのが典型的です。
▼ 【比較表】更年期の動悸 vs 心臓病の動悸 特徴の違い(クリックして展開)
特徴 更年期障害による動悸 心臓病による動悸
発症のタイミング 安静時、就寝前、会議中など
いつでも起こりうる。
精神的ストレスで誘発されやすい。
運動中、階段昇降、重い物を持った時など
体に負荷がかかった時に起こりやすい。
(不整脈は安静時にも起こる)
持続時間 数分〜数十分でおさまることが多い。
一日中ダラダラ続くことは稀。
数分で終わるものから、
数時間〜数日続くものまで様々。
労作性の場合は休むと改善する。
随伴症状 ホットフラッシュ(ほてり・発汗)
イライラ、不眠、肩こり
手足の冷え
息切れ、呼吸困難
胸痛、圧迫感
足のむくみ、失神
脈の状態 リズムは一定だが速い(洞性頻脈)
または強く感じる(心悸亢進)。
リズムがバラバラ(心房細動)
脈が飛ぶ(期外収縮)
極端に速い(頻拍発作)

原因③:精神的・生理的な要因(ストレス、パニック障害、薬・嗜好品)

検査で「心臓にも血液にも異常なし」と言われた場合、自律神経の乱れが原因であることが大半です。

  • ストレス・自律神経失調症:過度なストレスは交感神経を緊張させ、心拍数を上げます。
  • パニック障害:突然の激しい動悸と共に、「このまま死んでしまうのではないか」という強烈な恐怖感(予期不安)に襲われます。過呼吸を伴うこともあります。
  • 嗜好品・薬剤:カフェイン、アルコール、タバコ(ニコチン)は全て心拍数を上げる作用があります。また、市販の風邪薬や鼻炎薬に含まれる成分(エフェドリン類など)が動悸を誘発することもあります。

循環器専門医のアドバイス
「更年期世代の女性で意外に見逃されがちなのが『隠れ貧血』です。健康診断のヘモグロビン値が基準値内ギリギリであっても、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が枯渇していると、動悸や息切れ、疲労感が出やすくなります。心臓の薬を飲むよりも、鉄剤を服用することで嘘のように動悸が治まるケースも多々あります。『更年期だから仕方ない』と諦める前に、一度詳しい血液検査を受ける価値は十分にあります。」

動悸がした時の正しい対処法と予防習慣

実際に動悸が起きてしまったとき、パニックにならずに対処することで、症状の悪化を防ぐことができます。また、日頃の生活習慣を見直すことで、動悸が起きにくい体を作ることも可能です。

突然動悸が起きた時の応急処置(姿勢・呼吸法)

動悸を感じたら、まずはその場で動きを止め、安全な場所に座るか横になってください。

  1. 衣服を緩める:ネクタイ、ベルト、ブラジャー、ボタンなど、体を締め付けているものを緩めます。これだけでも呼吸が楽になり、副交感神経が働きやすくなります。
  2. 楽な姿勢をとる:仰向けよりも、少し上体を起こした姿勢(ファーラー位)の方が心臓への還流血液量が調整され、呼吸が楽になることがあります。クッションなどを背中に当ててみましょう。
  3. ゆっくりと深呼吸をする
    • 「吸う」ことよりも「吐く」ことに意識を集中してください。
    • 口をすぼめて、ろうそくの火を消すように細く長く息を吐き出します(6秒〜10秒かけるイメージ)。
    • 息を吐ききったら、自然に鼻から息を吸います。これを繰り返すことで、高ぶった交感神経を鎮めることができます。
  4. 冷たい水を飲む:コップ一杯の冷水を飲むことで、迷走神経(副交感神経の一部)が刺激され、頻脈が落ち着くことがあります。

注意:以前は「眼球を圧迫する」「首の動脈をマッサージする」といった方法が紹介されることがありましたが、これらは網膜剥離や脳梗塞のリスクがあるため、自己判断では絶対に行わないでください。

やってはいけないNG行動

  • 無理に動く・活動を続ける:「気のせいだ」と言い聞かせて仕事を続けたり、歩き回ったりするのは厳禁です。心臓にさらなる負荷をかけ、症状を悪化させる可能性があります。
  • 過度なカフェイン摂取:気付けのためにと濃いコーヒーや栄養ドリンクを飲むのは逆効果です。カフェインは交感神経を刺激し、不整脈を誘発します。
  • 自己判断での服薬中断:すでに心臓の薬を飲んでいる方が、自分の判断で薬を止めたり、逆に倍量飲んだりするのは非常に危険です。必ず医師の指示に従ってください。

自律神経を整える生活習慣と食事

動悸の予防には、心臓の電気信号を安定させるミネラルの摂取と、自律神経のケアが欠かせません。

  • 睡眠の質を高める:睡眠不足は不整脈の最大の敵です。就寝1時間前はスマホを見ない、入浴で体を温めるなどして、副交感神経優位の状態で眠りにつくようにしましょう。
  • ミネラル(マグネシウム・カリウム)を意識する
    • マグネシウム:海藻類、ナッツ類、大豆製品、未精製の穀物(玄米など)に多く含まれます。心臓の筋肉の収縮・弛緩を調整する重要なミネラルです。
    • カリウム:バナナ、アボカド、ほうれん草などの野菜・果物に豊富です。余分な塩分を排出し、血圧を安定させます。
  • 軽い有酸素運動:激しい運動は避けるべきですが、ウォーキングなどの軽い有酸素運動は自律神経を整え、心肺機能を強化します。ただし、運動中に動悸がする場合は中止してください。

循環器専門医のアドバイス
「動悸に悩む患者さんの多くが陥るのが『予期不安』の悪循環です。『また電車の中で動悸が起きたらどうしよう』と心配することで交感神経が緊張し、本当に動悸を誘発してしまうのです。この悪循環を断ち切るには、『発作が起きても、この対処法(深呼吸など)があるから大丈夫』という自信を持つことが大切です。また、どうしても辛い時は、精神安定剤などを一時的に使用することも有効な治療の一つです。心と体はつながっていますから、メンタルのケアも心臓のケアと同様に重要です。」

病院に行く目安と診療科の選び方

「病院に行くべきか迷う」「何科に行けばいいのかわからない」という疑問は、受診を遅らせる大きな要因です。ここでは、スムーズに適切な医療を受けるためのガイドラインを示します。

まずは「循環器内科」へ!心療内科との使い分け

動悸がする場合、最初に受診すべきは「循環器内科」です。

たとえストレスが原因だと思っても、まずは「身体的な異常(心臓病や甲状腺の病気など)がないこと」を確認するのが医療の鉄則です。心臓の病気を見逃したまま心療内科でカウンセリングを受けても、命の危険は回避できません。

  1. 循環器内科:心電図、超音波検査、血液検査などで、心臓や内臓に器質的な病気がないかを徹底的に調べます。
  2. 心療内科・精神科:循環器内科で「心臓には異常がない」と診断され、それでも動悸や不安感が続く場合に受診を検討します。
  3. 婦人科:40代〜50代女性で、ホットフラッシュや月経不順を伴う場合は、婦人科でのホルモン検査も選択肢に入ります。

病院で行われる主な検査

循環器内科での検査は、痛みを伴うものはほとんどありません。安心して受診してください。

  • 12誘導心電図:健康診断でも行われる基本的な検査です。ベッドに横になり、手足と胸に電極をつけて心臓の電気信号を記録します。ただし、検査をしているその瞬間に不整脈が出ていないと「異常なし」となることがあります。
  • ホルター心電図(24時間心電図):小型の記録器を装着し、普段通りの生活を送りながら24時間の心電図を記録します。「夜寝ている時だけ」「仕事中だけ」起こる不整脈や、無症状の心房細動を見つけるのに非常に有効です。
  • 心臓超音波検査(心エコー):超音波で心臓の動きや形、弁の状態をリアルタイムで観察します。心不全や弁膜症の診断に必須です。
  • 血液検査:貧血の有無、甲状腺ホルモンの値、心臓への負担度を示す数値(BNPなど)を調べます。

医師に伝えるべき5つのポイント(受診メモの作り方)

限られた診察時間で正確な診断を受けるために、以下の5点をメモにまとめて持参することをお勧めします。

  1. どんな動悸か(オノマトペ):「ドクンと飛ぶ」「バクバク速い」「トクトク不規則」など。
  2. いつ、どんな時に起きたか:安静時か運動時か、就寝中か、食事前後か。
  3. どのくらい続いたか:数秒か、数分か、数時間か。
  4. 他の症状はあるか:めまい、胸痛、息切れ、冷や汗など。
  5. 既往歴・服薬状況:過去の病気や、現在飲んでいる薬(サプリメント含む)。

もし可能であれば、スマートウォッチで記録した心拍数のデータや、家庭用心電計の記録を見せると、非常に有力な診断材料になります。

循環器専門医のアドバイス
「診察室で医師が一番知りたいのは、『その動悸が命に関わる悪性なものか、生活の質を下げるだけの良性なものか』という点です。その判断のために、発作時の状況描写が不可欠です。『なんとなく変』という抽象的な表現よりも、『昨夜の10時、テレビを見て座っていたら急に脈が速くなり、5分間続いた』といった具体的なエピソードを一つでも話していただけると、診断の精度は格段に上がります。」

動悸に関するよくある質問 (FAQ)

最後に、日々の診療で患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 夜寝る時に動悸がして眠れません。病気でしょうか?

A. 多くは生理的なものですが、注意も必要です。
夜、布団に入って静かになると、副交感神経への切り替わりのタイミングで一時的に自律神経が不安定になったり、周囲の音が消えることで自分の心音が過敏に聞こえたりすることがよくあります(心臓神経症など)。横向きやうつ伏せで寝ると、心臓が胸壁に近づいて鼓動を強く感じやすくなることもあります。

ただし、「横になると息苦しくて咳が出る」「体を起こすと楽になる」という場合は、心不全による「夜間発作性呼吸困難」の可能性があります。この場合は早めの受診が必要です。

Q. 食後にドキドキするのはなぜですか?

A. 消化活動の影響や、血糖値の変動が考えられます。
食事をすると、消化吸収のために胃腸へ大量の血液が集まります。その分、全身への血流を維持しようとして心臓が頑張って働くため、脈拍数が上がります。また、糖質を多く摂った後に急激に血糖値が上がり、その後インスリンが過剰に出て血糖値が急降下する(反応性低血糖)際にも、交感神経が刺激されて強い動悸や冷や汗が出ることがあります。ゆっくりよく噛んで食べる、野菜から先に食べるなどの工夫で緩和できることがあります。

Q. コーヒーやアルコールは控えたほうがいいですか?

A. 個人差がありますが、誘発因子になるなら控えましょう。
カフェインやアルコールに敏感な方は、少量でも期外収縮や頻脈が誘発されることがあります。特に「飲酒後の夜間や翌朝」に心房細動の発作が起きるケースは非常に多いです(ホリデーハート症候群)。ご自身で「これを飲むと調子が悪い」と感じる場合は、カフェインレスコーヒーを活用したり、飲酒量を減らしたりすることをお勧めします。

Q. 生理前や排卵日に動悸がするのは普通ですか?

A. ホルモンバランスの変化による影響と考えられます。
排卵後から生理前にかけて分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)には、体温を上げたり水分を溜め込んだりする作用があり、これが心臓への負担となって動悸を感じやすくさせます。PMS(月経前症候群)の一症状としてよく見られます。生理が始まると治まるようであれば、過度な心配はいりませんが、症状が辛い場合は婦人科や内科で相談してください。

循環器専門医のアドバイス
「最近はApple Watchなどのスマートウォッチで『心房細動の通知が来た』といって受診される方が増えています。これは早期発見に非常に役立っています。もし通知が来たら、その画面を保存したり、PDFを印刷したりして持参してください。症状がない時のデータこそ、私たち医師にとっては宝の山なのです。」

まとめ:動悸は体からのサイン。正しく恐れて、適切な受診を

動悸は、心臓だけでなく、全身の状態や心のバランスを映し出す鏡のようなものです。「怖い病気かもしれない」と不安になる気持ちは痛いほど分かりますが、恐怖心だけで塞ぎ込んでしまうと、ストレスがさらなる動悸を呼んでしまいます。

今回解説した通り、動悸には「様子を見ても良いもの」と「すぐに対処すべきもの」の明確な境界線があります。

最後に、もう一度重要なアクションプランを確認しましょう。

  • 緊急性の判断:意識消失、激しい胸痛、冷や汗、息苦しさがある場合は、迷わず救急車を呼ぶ。
  • 症状の観察:「ドクン」なのか「バクバク」なのか、脈のリズムを確認する。
  • 生活習慣の見直し:睡眠不足、ストレス、カフェイン過多を改善する。
  • まずは循環器内科へ:自己判断せず、心電図などの検査で「器質的な異常がないか」を確認し、安心を得る。

「検査を受けて異常なしと言われたけれど、まだ動悸がする」。そんな時は、「心臓は大丈夫なんだ」と自信を持ってください。その安心感が、自律神経を整え、結果として動悸を減らす一番の薬になります。

あなたの心臓は、あなたが思っている以上にタフで、毎日休まず働き続けてくれています。その小さなサインを見逃さず、適切なケアをしてあげることで、不安のない穏やかな毎日を取り戻しましょう。

動悸受診前チェックリスト(スクリーンショット保存推奨)

  • [ ] どのような動悸か(ドクン、バクバク、トクトク)
  • [ ] いつ起きたか(日時、安静時/運動時)
  • [ ] 持続時間はどのくらいか
  • [ ] 伴う症状はあるか(胸痛、めまい、息切れ)
  • [ ] 既往歴・現在服用中の薬
  • [ ] 血縁者に心臓病の人はいるか
この記事を書いた人

「まんまる堂」は、日々の生活をより豊かにするための情報を発信する総合ライフスタイルメディアです。

当編集部では、徹底したリサーチとデータ分析に基づき、読者の皆様の「知りたい」に答える記事を制作しています。特定の分野においては、その道の有資格者や実務経験者の監修・協力を得て、正確かつ信頼性の高い情報提供に努めています。

【編集方針】
・客観的なデータと事実に基づく執筆
・ユーザー目線での公平な比較・検証
・最新トレンドと専門的知見の融合

ガジェット、生活雑貨、美容、ライフハックなど、幅広いジャンルで「役立つ」コンテンツをお届けします。

まんまる堂編集部をフォローする
エンタメ

コメント