「腰が痛くて動けないけれど、どこに行けばいいのかわからない」
「整骨院に通っているけれど、なかなか痛みが引かない」
「整形外科に行くとすぐに手術を勧められるのではないかと怖い」
このような悩みや不安を抱えて、インターネットで検索をされている方は非常に多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、整形外科は骨・関節・神経などの「運動器」を診療し、レントゲンやMRIを用いて医学的な「診断」と「治療」を行える唯一の場所です。
長引く痛みや手足のしびれは、体が発している重要なサインです。自己判断で様子を見たり、適切な診断を受けずにマッサージだけで対処しようとしたりすることは、時に症状を悪化させ、取り返しのつかない事態を招くリスクさえあります。まずは医師による正確な診断を受けることが、完治への最短かつ確実な近道です。
この記事では、現役の整形外科専門医である私が、以下の3つのポイントを中心に、患者さんが抱える疑問に徹底的にお答えします。
- 整形外科と整骨院・接骨院の決定的な違いと、賢い使い分け方
- 「様子見」は危険?すぐに受診すべき痛みのサイン(レッドフラッグ)
- 手術は怖い?整形外科で行われる「保存療法」の実際と効果
正しい知識を持つことで、痛みへの不安を解消し、適切な治療への第一歩を踏み出していただければ幸いです。
整形外科は何を診る場所?対象となる症状と診療範囲
このセクションでは、まず「整形外科とは具体的に何を診る場所なのか」という基本について解説します。
多くの患者さんが、内科や外科との境界線、あるいは形成外科や美容外科との違いについて曖昧なイメージを持たれています。自分の症状が整形外科の守備範囲なのかを正しく理解することは、適切な医療を受けるための第一歩です。
「運動器」のスペシャリスト:骨・関節・筋肉・神経の病気とケガ
整形外科を一言で表すならば、「運動器(うんどうき)」のスペシャリストです。
運動器とは、人間が体を動かすために必要な骨、関節、筋肉、靭帯、腱、そしてこれらを支配する神経(脊髄や末梢神経)の総称です。
内臓(心臓、胃腸、肝臓など)の病気を扱うのが「内科」であるのに対し、整形外科は四肢(手足)と脊椎(背骨)の形と機能を扱う診療科です。
私たちが普段、立ったり、歩いたり、物を持ったりできるのは、この運動器が正常に機能しているおかげです。
整形外科医は、これらの部位に生じた病気やケガに対して、解剖学的な知識と医学的な根拠に基づいて診断を下し、機能を回復させることを目的としています。
単に「痛みを取る」だけでなく、「元の生活に戻れるように機能を回復させる」ことこそが、整形外科医療の真髄です。
よくある受診理由:腰痛、肩こり、手足のしびれ、打撲・捻挫
実際に整形外科を受診される患者さんの訴えとして最も多いのは、やはり「痛み」と「しびれ」です。
具体的には以下のような症状が代表的です。
- 腰痛:ぎっくり腰のような急激な痛みから、長年続く慢性的な鈍痛まで。
- 肩こり・首の痛み:デスクワークによる筋肉の緊張だけでなく、頚椎(首の骨)の異常が原因の場合も。
- 関節痛:膝が痛くて階段がつらい、股関節が痛くて歩きにくい、肩が上がらない(五十肩)。
- 手足のしびれ:手がビリビリする、足の裏に何かが張り付いているような感覚がある。
- 外傷(ケガ):転倒による打撲、スポーツ中の捻挫、骨折、脱臼、切り傷。
「ただの肩こりで病院に行ってもいいの?」と遠慮される方がいらっしゃいますが、医学的な観点からは「もちろん受診すべき」です。
なぜなら、患者さんが「ただの肩こり」だと思っていても、レントゲンを撮ってみると「変形性頚椎症」や「頚椎椎間板ヘルニア」といった骨や神経の病気が隠れていることが頻繁にあるからです。
自己判断で「疲れのせい」と決めつけず、症状の原因を特定するために整形外科を利用してください。
形成外科や美容外科との違い(機能回復か、見た目か)
「整形」という言葉がつくため、よく混同されるのが「形成外科(けいせいげか)」と「美容外科」です。
これらは全く異なる診療科であり、目的と専門領域が明確に分かれています。
整形外科は、前述の通り「骨格や運動機能の回復」を主目的とします。体の内側の構造(骨・関節・筋肉)を治す科です。
一方、形成外科は、体の表面の異常や変形を治す科です。やけどの治療、顔のケガの縫合、皮膚腫瘍の切除などが対象となります。「傷跡をきれいに治す」といった整容的な側面も重視されます。
そして美容外科は、形成外科の一分野から派生したものですが、病気やケガではなく、正常な体をより美しく見せるための処置(二重まぶたの手術や脂肪吸引など)を行います。原則として健康保険は適用されません。
▼[補足] 整形外科で扱う主な代表疾患リストと診療科の違い
| 項目 | 整形外科 | 形成外科 | 美容外科 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 骨、関節、筋肉、神経 | 皮膚、体表面の組織 | 容姿、審美的な悩み |
| 目的 | 機能の回復、痛みの除去 | 形態の修復、傷跡の改善 | 見た目の美しさの追求 |
| 代表的な疾患 | 骨折、ヘルニア、膝関節症 | やけど、あざ、口唇口蓋裂 | 二重整形、豊胸、脱毛 |
| 保険適用 | あり(病気・ケガ) | あり(病気・ケガ) | なし(自費診療) |
整形外科の代表的な疾患例:
- 脊椎疾患:腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、頚椎症性脊髄症
- 関節疾患:変形性膝関節症、変形性股関節症、関節リウマチ、肩関節周囲炎(五十肩)
- 外傷:骨折、脱臼、靭帯損傷(前十字靭帯損傷など)、半月板損傷
- その他:骨粗鬆症、痛風、スポーツ障害(テニス肘、野球肩)、骨軟部腫瘍
このように、同じ「外科」や「整形」という言葉がついていても、扱う領域は全く異なります。
「骨や関節が痛い」「手足がしびれる」「動かしにくい」といった症状であれば、迷わず整形外科を選択してください。
日本整形外科学会認定 整形外科専門医のアドバイス
「『ただの肩こり』と思っていても、実は首の骨(頚椎)に原因があるケースも少なくありません。特に、腕や手にしびれを伴う肩こりは、神経が圧迫されている可能性が高い危険なサインです。市販薬や湿布で痛みが引かない場合は、自己判断を続けず、早めに整形外科で原因を特定することが大切です。早期発見であれば、手術をせずに薬やリハビリだけで治せる可能性がぐっと高まります。」
【徹底比較】整形外科と整骨院・接骨院の決定的な5つの違い
「腰が痛いとき、整形外科に行くべきか、近所の整骨院に行くべきか迷う」
これは、私が診療現場で最も頻繁に耳にする患者さんの悩みの一つです。
街中には多くの「整骨院」や「接骨院」があり、整形外科クリニックも存在します。どちらも痛みを扱っているように見えますが、実は法的な権限、できること、そして安全性において決定的な違いがあります。
このセクションでは、患者さんが適切な選択を行えるよう、その違いを忖度なく、明確に解説します。ここを理解していないと、適切な治療の機会を逃してしまう可能性があるため、非常に重要なパートです。
資格と権限の違い:医師による「診断」ができるのは整形外科だけ
最大の違いは、施術を行う者の「資格」と、それに伴う法的な「権限」です。
整形外科で診療を行うのは「医師(Medical Doctor)」です。大学の医学部で6年間医学を学び、医師国家試験に合格し、さらに臨床研修を経た医療のプロフェッショナルです。
医師には、法律で認められた「診断権」があります。「あなたの腰痛の原因は、第4腰椎の椎間板ヘルニアです」と断定し、診断書を書くことができるのは医師だけです。
一方、整骨院・接骨院で施術を行うのは「柔道整復師」です。これは医師ではなく、医療類似行為を行う国家資格者です。
柔道整復師には診断権がありません。したがって、「ヘルニアです」と診断することは法律上できませんし、レントゲン撮影や投薬、注射などの医療行為も一切禁止されています。彼らが行うのは「治療」ではなく、あくまで「施術」となります。
検査機器の違い:レントゲン・MRIで体内を可視化できるか
痛みの原因を特定するために不可欠なのが、体の内部を可視化する画像検査です。
整形外科には、レントゲン(X線)、MRI(磁気共鳴画像)、CT(コンピュータ断層撮影)、超音波(エコー)などの検査機器が備わっています(※MRIやCTは施設によります)。
骨折の有無、骨の変形、軟骨のすり減り具合、神経の圧迫状況、腫瘍の有無などは、外から触るだけでは絶対に分かりません。これらを画像で客観的に確認できるのが整形外科の最大の強みです。
対して、整骨院・接骨院では、レントゲンなどの画像検査を行うことは法律で禁止されています。
したがって、整骨院での判断は、視診(見た目)や触診(触った感覚)のみに頼ることになります。「骨がズレている気がする」「筋肉が硬い」といった推測はできても、体の中で実際に何が起きているかを画像で確認することはできません。
治療手段の違い:薬・注射・手術 vs 施術・マッサージ
治すための手段(ツール)の多さも圧倒的に異なります。
整形外科では、あらゆる医学的手段を用いて治療を行います。
- 薬物療法:痛み止め(内服薬)、湿布(外用薬)、神経の薬などの処方。
- 注射療法:関節内へのヒアルロン酸注射、痛みを遮断するブロック注射など。
- リハビリテーション:理学療法士による運動療法、物理療法。
- 手術療法:保存療法で改善しない場合の根本治療。
一方、整骨院・接骨院で行えるのは、柔道整復術という手技療法(マッサージ的な施術)、電気治療、温熱療法などに限られます。
薬を処方したり、注射を打ったりすることはできません。痛みが強くても、医学的な鎮痛処置を行えないため、痛みの緩和に時間がかかる場合があります。
▼[詳細] 整形外科と整骨院・接骨院の比較表
| 項目 | 整形外科 | 整骨院・接骨院 |
|---|---|---|
| 施術者 | 医師(国家資格) | 柔道整復師(国家資格) |
| 診断行為 | 可能(診断名がつく・診断書作成可) | 不可(判断のみ) |
| 検査設備 | レントゲン、MRI、CT、血液検査 | 視診、触診のみ(画像検査不可) |
| 治療・施術 | 投薬、注射、リハビリ、手術、装具療法 | 手技療法、電気療法、冷罨法 |
| 保険適用 | すべての疾患・ケガ(慢性痛含む) | 外傷性のケガ(骨折・脱臼・打撲・捻挫)のみ ※慢性的な肩こり等は対象外 |
保険適用の範囲:慢性的な肩こり・腰痛の扱いに注意
金銭面でのトラブルになりやすいのが、健康保険の適用範囲です。
整形外科では、病気やケガであれば基本的にすべて健康保険が適用されます。慢性の腰痛でも、五十肩でも、骨粗鬆症でも保険診療(1〜3割負担)で治療を受けられます。
しかし、整骨院・接骨院で健康保険が使えるのは、「急性(急に痛くなったもの)」かつ「外傷性(ケガ)」の場合のみと法律で厳格に定められています。具体的には、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷(肉離れ)に限られます。
「昔からの慢性的な肩こり」や「なんとなく腰がだるい」「疲労回復のマッサージ」といった理由で整骨院にかかる場合、本来は保険適用外(全額自費)となります。これを保険適用として請求することは不正請求にあたるリスクがあるため、患者さん側も注意が必要です。
通い方の正解:まずは整形外科で「診断」を受けてから
ここまで解説した通り、整形外科と整骨院は役割が全く異なります。
では、どのように使い分けるのが正解なのでしょうか。
医師としての結論は、「痛みや不調を感じたら、まずは必ず整形外科を受診して診断を受けること」です。
なぜなら、痛みの原因が「ただの筋肉疲労」なのか、「骨折」なのか、「腫瘍(がん)」なのか、「内臓疾患の関連痛」なのかは、画像検査なしには判別できないからです。
整形外科で「骨や神経に異常はない。筋肉の緊張が原因だ」という明確な診断(お墨付き)を得た後であれば、補助的に整骨院でマッサージを受けるという選択肢も悪くはありません。しかし、診断のないまま漫然と施術を受け続けることは、重大な病気を見逃すリスクと隣り合わせです。
日本整形外科学会認定 整形外科専門医のアドバイス
「患者さんの中には、長期間マッサージに通って改善せず、当院を受診された時には『いつの間にか骨折(圧迫骨折)』が進行して背骨が潰れてしまっていたり、最悪の場合、背骨への『がん転移』が見つかったりというケースが実際にあります。画像診断なしに患部を強く揉むことは、骨折を悪化させるリスクさえ伴います。まずは整形外科で『骨や神経に異常がないか』を確認し、医学的な安全性を確保してから治療方針を決めてください。」
迷ったらチェック!整形外科をすぐに受診すべき「危険な痛み」のサイン
「病院に行くほどではないかもしれない」「もう少し様子を見よう」
そう考えて受診を先送りにしてしまう気持ちはよく分かります。しかし、中には「一刻も早く受診しなければならない」危険なサイン(レッドフラッグ)が存在します。
これらの症状を見逃すと、神経に不可逆的な(元に戻らない)ダメージが残ったり、将来的に歩行困難になったりする可能性があります。ご自身の症状と照らし合わせて確認してください。
安静にしていても痛む(夜間痛がある)
通常、筋肉痛や軽い関節痛であれば、動いた時に痛みますが、じっとしていれば痛みは治まります。
しかし、「横になって寝ていてもズキズキ痛む」「痛くて夜中に目が覚める(夜間痛)」という場合は要注意です。
これは、炎症が非常に強いか、あるいは骨の中の病気(感染症や腫瘍など)、内臓疾患からの放散痛である可能性があります。安静時の痛みは、整形外科医が最も警戒するサインの一つです。
手足にしびれがある、力が入らない(麻痺)
「痛み」よりも緊急度が高いのが「しびれ」と「麻痺(まひ)」です。
手足がビリビリとしびれる、感覚が鈍い、力が入りにくい(スリッパが脱げやすい、箸がうまく使えない、ボタンがかけられない)といった症状は、神経が強く圧迫されている証拠です。
神経細胞は一度死滅してしまうと、再生することが非常に困難です。圧迫されている時間が長ければ長いほど、手術をしても後遺症が残るリスクが高まります。「痛くないから大丈夫」ではなく、「しびれているからこそ急ぐ」必要があります。
排尿・排便のコントロールがうまくいかない(膀胱直腸障害)
これは緊急手術が必要になる可能性が高い、極めて危険な状態です。
重度の腰椎椎間板ヘルニアなどで脊髄神経の束(馬尾神経)が強く圧迫されると、「おしっこが出にくい」「尿漏れがする」「便秘がひどい」「お尻の周りの感覚がない」といった症状が出現します(膀胱直腸障害)。
この症状が出た場合、24時間〜48時間以内に処置を行わないと、排泄機能障害が一生残ってしまう可能性があります。もし腰痛とともにこのような症状を感じたら、夜間であっても救急外来への受診を検討すべきレベルです。
1週間以上痛みが続いている、または強くなっている
単純な打撲や筋肉痛であれば、数日から1週間程度で自然に痛みは軽快していきます。
もし1週間以上経っても痛みが変わらない、あるいは日に日に痛みが強くなっている場合は、自然治癒が難しい何らかの原因(疲労骨折、腱板断裂など)があると考えられます。
転倒や打撲など、明らかなきっかけがある場合
転んだ、ぶつけた、ひねった等の明らかな外傷のエピソードがある場合は、自己判断せずにレントゲンを撮るべきです。
特に高齢の方の場合、尻もちをついただけで背骨が潰れる(圧迫骨折)ことや、足の付け根を骨折することは日常茶飯事です。直後は歩けていても、後から骨折部がずれて動けなくなることもあります。
▼受診推奨セルフチェックリスト
- [ ] じっとしていても痛い、夜眠れないほどの痛みがある
- [ ] 手や足に「しびれ」を感じる
- [ ] 箸を持ちにくい、ボタンがかけにくい、字が書きにくい
- [ ] 歩行中につまずきやすい、スリッパが脱げる、階段が怖い
- [ ] お尻周りの感覚が鈍い、尿や便の出方に異常がある
- [ ] 発熱を伴う関節の痛みがある
- [ ] 痛みが1週間以上続いている
※上記に1つでも当てはまる場合は、早急に整形外科専門医を受診してください。
日本整形外科学会認定 整形外科専門医のアドバイス
「特に『しびれ』は神経からのSOSであり、放置すると後遺症が残る可能性が高い危険なサインです。『痛いのは我慢できるけど、しびれが気になる』という患者さんがよくいらっしゃいますが、医学的には痛みよりも深刻な状態であることが多いのです。神経のダメージが不可逆的になる前に、早急に専門医を受診してください。」
手術は最終手段?整形外科での検査の流れと「保存療法」
「整形外科に行くと、すぐに『手術しましょう』と言われるのではないか」
このような恐怖心から、受診をためらっている方も多いと思います。
しかし、安心してください。整形外科の治療において、手術はいきなり行われるものではなく、あくまで「最終手段」という位置づけです。
実際には、整形外科を受診する患者さんの9割以上は、手術をせずに治す「保存療法(ほぞんりょうほう)」で治療を行っています。ここでは、実際の診療の流れと、手術以外の豊富な治療オプションについて解説します。
まずは問診と画像検査(レントゲン・MRI)で原因特定
受診すると、まずは医師による問診と診察(触診や徒手検査)が行われます。「いつから痛いか」「どんな動作で痛むか」などを詳しく伺います。
その後、必要に応じてレントゲン検査を行い、骨の形状や並びを確認します。神経や椎間板、筋肉の状態を詳しく見る必要がある場合は、MRI検査を追加することもあります。
この「正確な診断」があって初めて、的確な治療方針が決まります。原因が分からないまま治療を始めることはありません。
実は9割は手術なし?薬物療法とブロック注射による痛みのコントロール
診断がついたら、まずは痛みを和らげるための治療を開始します。
- 内服薬・外用薬:
従来の痛み止め(NSAIDs)だけでなく、最近では神経障害性疼痛(神経の痛み)に特化した薬や、血流を改善する薬など、症状に合わせた多様な薬があります。湿布も、抗炎症作用の強い医療用のものが処方されます。 - ブロック注射:
痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬を注入し、興奮した神経を鎮める治療です。激しい腰痛や坐骨神経痛に対して即効性があり、これを数回行うだけで痛みの悪循環が断ち切られ、治癒に向かうことも珍しくありません。 - 関節内注射:
膝や肩の関節の中に、潤滑油の役割をするヒアルロン酸や、炎症を抑えるステロイドを注射します。
根本改善を目指す「リハビリテーション(理学療法)」の重要性
薬や注射で痛みが落ち着いてきたら、次に重要になるのが「リハビリテーション(理学療法)」です。
多くの整形外科クリニックには「理学療法士」という国家資格を持つリハビリの専門家が在籍しています。
彼らは、医師の指示のもと、硬くなった関節を動かしたり、弱った筋肉を鍛えたり、正しい姿勢や動作を指導したりします。
例えば、腰痛の原因が「股関節の硬さ」や「腹筋の弱さ」にある場合、そこを改善しなければ何度でも再発します。リハビリは、単なるマッサージとは異なり、「痛みの出ない体を作る」ための根本治療と言えます。
手術が必要になるケースとは?(QOLの著しい低下など)
では、どのような場合に手術が検討されるのでしょうか。
基本的には、上記の保存療法(薬、注射、リハビリ)を十分な期間(通常3ヶ月程度)行っても症状が改善せず、日常生活に大きな支障が出ている場合です。
具体的には以下のようなケースです。
- 痛みが強すぎて仕事や家事ができない、眠れない。
- 手足の麻痺が進んでおり、放置すると機能が失われる恐れがある。
- 排尿・排便障害が出ている(これは緊急手術の適応です)。
手術をするかどうかは、最終的には患者さんの意思決定(インフォームド・コンセント)によります。医師が一方的に強制することはありませんので、ご安心ください。
日本整形外科学会認定 整形外科専門医のアドバイス
「『ヘルニア=手術』と思っている方は非常に多いですが、これは大きな誤解です。実際には、ヘルニアの患者さんの多くは、投薬と適切なリハビリテーション(保存療法)を行うことで、数ヶ月でヘルニアが自然に縮小し、痛みが消失して日常生活に戻られています。手術はあくまで、保存療法で効果がない場合や、麻痺などの緊急性が高い場合にのみ選択される『奥の手』と考えてください。まずは怖がらずに、保存療法の可能性を探りに来てください。」
失敗しない整形外科クリニックの選び方
いざ整形外科に行こうと思っても、街にはたくさんのクリニックがあり、どこに行けばいいか迷ってしまうものです。
「良い整形外科」を見分けるためのポイントを、医師の視点から3つご紹介します。
「日本整形外科学会認定 整形外科専門医」がいるか確認する
最も確実な基準は、担当医が「日本整形外科学会認定 整形外科専門医」の資格を持っているかどうかです。
この資格は、医学部卒業後、さらに6年間の専門研修を受け、多くの手術症例を経験し、厳しい筆記・口頭試験に合格した医師にのみ与えられます。
ホームページの「医師紹介」の欄を確認し、この資格が記載されていれば、標準的かつ適切な診断・治療能力を持っていることの証明になります。
MRIなどの検査設備やリハビリ施設が充実しているか
設備面も重要です。レントゲンはどの整形外科にもありますが、MRI(磁気共鳴画像)まで備えているクリニックは、より精密な診断が可能です。MRIがない場合、詳細な検査が必要なたびに他院へ撮影に行かなければならない手間が発生します。
また、リハビリテーション施設の広さや、理学療法士の人数もチェックポイントです。物理療法機器(電気や牽引)だけでなく、理学療法士がマンツーマンで運動療法を行ってくれるクリニックの方が、根本的な改善が期待できます。
専門分野(脊椎、関節、スポーツなど)が自分の症状と合っているか
整形外科の中にも、さらに細かい専門分野(サブスペシャリティ)があります。
「脊椎(背骨)」「関節(膝・股関節)」「手外科」「スポーツ整形」など、医師によって得意分野が異なります。
- 腰や首が痛いなら → 「脊椎」専門医
- 膝や股関節が痛いなら → 「関節」専門医
- スポーツでのケガなら → 「スポーツ」専門医
クリニックのホームページには「院長の専門分野」や「得意とする治療」が書かれていることが多いので、受診前に自分の症状とマッチしているか確認すると、より専門性の高い治療を受けられます。
日本整形外科学会認定 整形外科専門医のアドバイス
「『整形外科専門医』は、整形外科医療のベースラインを保証する重要な資格です。看板やホームページで簡単に確認できますので、クリニック選びの最初のフィルターとして活用してください。また、最近は『リハビリ特化型』や『日帰り手術対応』など、クリニックごとの特色も明確になってきています。ご自身のライフスタイルや治療への希望(薬で治したいか、早く手術したいか等)に合わせて選ぶのも良いでしょう。」
整形外科に関するよくある質問 (FAQ)
最後に、初診の患者さんからよくいただく質問にお答えします。
Q. 初診の費用はどれくらいかかりますか?
3割負担の方の場合、初診料、レントゲン検査、投薬処方などを合わせて、おおよそ2,000円〜4,000円程度が目安です。
MRI検査を行う場合は、さらに5,000円〜6,000円程度追加となることが一般的です。リハビリを行う場合や、血液検査、注射などの処置が加わるとその分費用は変わりますが、一般的な初診であれば5,000円札1枚あれば足りることが多いでしょう(MRIを除く)。
Q. 紹介状がなくても大きな病院に行っていいですか?
可能ですが、おすすめはしません。
大学病院や地域の中核病院などの「大病院」を、紹介状なしでいきなり受診すると、通常の診察料とは別に「選定療養費」という特別料金(7,000円以上かかる病院が増えています)を請求されます。
また、待ち時間も非常に長く、軽い症状だと診てもらえないこともあります。まずは近隣の整形外科クリニック(かかりつけ医)を受診し、手術や精密検査が必要と判断された場合に紹介状を書いてもらうのが、最もスムーズで経済的なルートです。
Q. レントゲンとMRIの違いは何ですか?
レントゲンはX線を使って「骨」の状態を見るのが得意です。骨折や骨の変形はよく分かりますが、神経や椎間板、筋肉などの柔らかい組織は写りません。
MRIは磁気を使って、骨以外の「軟部組織(神経、椎間板、筋肉、靭帯)」を詳しく映し出すことができます。ヘルニアによる神経圧迫や、靭帯断裂などはMRIでないと診断できません。
通常はまずレントゲンを撮り、必要に応じてMRIを追加するという流れになります。
Q. どのような服装で行けばいいですか?
患部を出しやすい、ゆったりとした服装がベストです。
膝を見るなら裾をまくり上げやすいズボン、肩を見るなら袖の緩いシャツなどが適しています。ワンピースやボディスーツ、着脱の難しいタイトな服は避けた方が無難です。多くのクリニックでは着替え(検査着)を用意していますが、スムーズな診察のためにご協力いただけると助かります。
日本整形外科学会認定 整形外科専門医のアドバイス
「大病院志向の方もいらっしゃいますが、日常的な腰痛やケガの治療は、実は地域のクリニックの方が得意としていることも多いです。大病院は『手術をする場所』、クリニックは『手術せずに治す場所』という役割分担が進んでいます。まずは通いやすい近所の専門医を見つけ、かかりつけ医として長く付き合っていくことをお勧めします。」
まとめ:自己判断は禁物。痛みの原因を知るためにまずは整形外科へ
ここまで、整形外科の役割や整骨院との違い、受診すべき症状について解説してきました。
最後に、今回の記事の重要ポイントを振り返ります。
- 整形外科は「診断」と「治療」ができる場所:医師によるレントゲン・MRI診断と、薬・注射・リハビリ等の医学的治療が受けられます。
- 整骨院は役割が異なる:マッサージ等の施術が主であり、診断やレントゲン撮影はできません。慢性の痛みは保険適用外となる点にも注意が必要です。
- 危険なサインを見逃さない:「安静時痛」「しびれ・麻痺」「排尿障害」がある場合は、迷わず整形外科へ急いでください。
- 手術はあくまで最終手段:多くの症状は、適切な診断のもとで行う保存療法(リハビリ等)で改善を目指せます。
痛みやしびれは、体があなたに送っている「助けてほしい」というメッセージです。
「そのうち治るだろう」と自己判断したり、診断のないまま漫然とマッサージを受け続けたりすることは、根本的な解決を遠ざけるだけでなく、将来の健康を損なうリスクすらあります。
整形外科医は、あなたの痛みの原因を突き止め、痛みから解放された生活を取り戻すためのパートナーです。
手術への不安がある方も、まずは相談するつもりで、お近くの「日本整形外科学会認定 整形外科専門医」のいるクリニックを訪ねてみてください。
正確な診断を受け、自分の体の状態を正しく知ること。それが、不安を安心に変え、健康な体を取り戻すための最初の一歩となります。
ぜひ今日から、ご自身の体からのサインに耳を傾け、適切な行動を始めてみてください。
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