就職活動や転職活動を始めたばかりの方が、最初に直面するビジネスマナーの壁。それが「相手の会社をどう呼ぶか」という問題です。「御社(おんしゃ)」と「貴社(きしゃ)」、どちらも相手企業を敬う言葉ですが、この2つを混同して使ってしまうと、採用担当者に「マナーの基本ができていない」という印象を与えてしまう可能性があります。
結論から申し上げますと、「御社」は面接や説明会などの話し言葉として使用し、「貴社」は履歴書やメールなどの書き言葉として使い分けます。このルールさえ覚えておけば、基本的には問題ありません。しかし、実際の就職活動の現場では、「メールのような会話形式のチャットではどうする?」「銀行や病院の場合は?」といった、判断に迷うシーンが数多く存在します。
この記事では、キャリア支援歴15年、延べ3,000人以上の採用面接を担当してきた元人事責任者が、教科書的なマナーだけでなく、現場で本当に評価される言葉遣いのポイントを徹底解説します。単なる言葉の定義だけでなく、緊張する面接本番で言い間違えてしまった時の対処法や、業界別の特殊な呼び方まで、あなたの不安を完全に解消するための情報を網羅しました。
この記事を読むことで、以下の3つのことが明確になります。
- 一目でわかる「御社」と「貴社」の使い分け早見表で、瞬時に判断できるようになる
- 銀行・病院・公務員など、迷いやすい業界別の正しい呼び方をマスターできる
- 面接で言い間違えても動じない、採用担当者が教えるプロのリカバリー法を知ることができる
言葉遣いは、あなたの熱意や誠意を伝えるためのツールに過ぎません。マナーへの不安を自信に変え、選考の場でのパフォーマンスを最大化させるために、ぜひ最後までお読みください。
1秒で確認!「御社」と「貴社」の使い分け早見表
まずは、最も重要な結論から確認しましょう。就職活動や転職活動において、企業の呼び方は「話しているか」「書いているか」というコミュニケーションの手段によって明確に区別されます。このセクションでは、忙しい就活生やビジネスパーソンのために、一目でわかる早見表を用意しました。まずはこの基本ルールを頭に入れ、迷ったときの判断基準として活用してください。
使い分けクイックチェック表
以下の表は、シーンごとに適した呼び方をまとめたものです。スマートフォンでこの記事を読んでいる方は、面接直前の最終確認としてこの表を活用してください。
| シーン・媒体 | コミュニケーション形式 | 使うべき言葉 |
|---|---|---|
| 面接(対面・WEB) | 話し言葉(口頭) | 御社(おんしゃ) |
| 電話・会社説明会での質問 | 話し言葉(口頭) | 御社(おんしゃ) |
| グループディスカッション | 話し言葉(口頭) | 御社(おんしゃ) |
| 履歴書・職務経歴書 | 書き言葉(文章) | 貴社(きしゃ) |
| エントリーシート(ES) | 書き言葉(文章) | 貴社(きしゃ) |
| メール・送付状 | 書き言葉(文章) | 貴社(きしゃ) |
このように、口から発する言葉はすべて「御社」、紙や画面上の文字として残るものはすべて「貴社」と覚えておけば、9割の場面で正しく対応できます。
なぜ使い分ける必要があるのか?(同音異義語の回避)
そもそも、なぜ同じ相手企業を指す言葉なのに、「御社」と「貴社」という2つの表現が存在するのでしょうか。これには日本語特有の「同音異義語」の問題が深く関わっています。
もともと、相手の会社を敬う言葉としては「貴社(きしゃ)」が一般的でした。しかし、「きしゃ」という音は、日本語の中に多くの同音異義語を持っています。
- 帰社(会社に帰ること)
- 記者(新聞や雑誌の記者)
- 汽車(蒸気機関車)
もし面接の場で「きしゃの理念に共感し…」と発言した場合、文脈で判断できるとはいえ、耳で聞いた瞬間に「記者の理念?」「帰社?」と脳内で変換する作業が必要になり、話の内容がスッと入ってこないリスクがあります。特に面接官は一日中多くの学生と話しているため、聞き間違いによるストレスを避ける必要があります。
そこで、話し言葉(口語)としては、他の言葉と聞き間違える可能性が極めて低い「御社(おんしゃ)」が使われるようになりました。一方で、文字で書く場合は漢字で表記されるため、「貴社」と書いても「帰社」や「記者」と読み間違えることはありません。そのため、文章(文語)では伝統的な「貴社」がそのまま使われ続けているのです。
この背景を理解しておくと、単なる暗記ではなく「相手に誤解を与えないための配慮」として使い分けが定着するはずです。
「弊社(へいしゃ)」と「当社(とうしゃ)」の違いもセットで覚える
「御社」と「貴社」は相手を敬う「尊敬語」ですが、逆に入社後、自分の会社を指す「謙譲語」や「丁寧語」についても触れておきましょう。面接では、面接官が自分の会社のことを「弊社」や「当社」と呼ぶ場面に遭遇します。この違いを知っておくことで、ビジネスシーンでの理解度がさらに深まります。
- 弊社(へいしゃ): 自分側の会社をへりくだって言う言葉(謙譲語)。社外の人に対して使う。
- 当社(とうしゃ): 自分側の会社を丁寧に言う言葉(丁寧語)。社内の人や、対等な立場での説明、報道などで使う。
面接官が「弊社の強みは…」と話しているときは、あなた(応募者)を尊重すべき相手として扱っている証拠です。逆に、会社説明会などで「当社の実績は…」と説明される場合は、客観的な事実として自社を紹介しているニュアンスになります。
まだ応募者の段階であるあなたが「弊社」「当社」を使うことはありませんが、入社後は必須の知識となりますので、今のうちにセットで覚えておくと良いでしょう。
現役採用コンサルタントのアドバイス
「言葉遣いは単なるルールではなく、コミュニケーションの潤滑油です。『御社』と『貴社』の使い分けは、相手に対する『わかりやすく伝えようとする配慮』から生まれています。面接官として多くの学生と接してきましたが、この使い分けが自然にできている方は、『相手の立場に立って物事を考えられる人』というポジティブな印象を無意識に与えています。まずは『話すときは御社、書くときは貴社』という基本を体に染み込ませましょう。それだけで、第一印象における安心感が大きく変わります。」
【シーン別】失敗しない「御社」と「貴社」の具体的な使い方
基本ルールを理解したところで、次は具体的なシーンごとの実践的な使い方を見ていきましょう。就職活動や転職活動では、履歴書の作成から面接、内定後のメールのやり取りまで、様々なフェーズが存在します。それぞれの場面でどのように使い分けるべきか、具体的な例文やテンプレートを交えて解説します。
履歴書・エントリーシート・送付状:文字に残るものはすべて「貴社」
履歴書や職務経歴書、エントリーシート(ES)など、選考書類を作成する際は、必ず「貴社」を使用します。これらは公式な文書として扱われるため、書き言葉としての正しい敬語が求められます。
特に志望動機欄や自己PR欄では、相手企業を指す回数が多くなります。ここで「御社」と書いてしまうと、文章全体が話し言葉のような稚拙な印象を与えてしまう可能性があります。また、履歴書を郵送する際に同封する「送付状(添え状)」においても同様に「貴社」を用います。
以下に、そのまま使える具体的な書き出しの例文をご紹介します。自分の状況に合わせてアレンジして活用してください。
▼そのまま使える!志望動機の書き出し例文(クリックして展開)
【企業の理念に共感した場合】
「貴社が掲げる『顧客第一主義』という企業理念に深く共感し、私もその一員として社会に貢献したいと考え、志望いたしました。」
【事業内容に魅力を感じた場合】
「貴社の〇〇事業における革新的な取り組みに将来性を感じ、私の強みである語学力を活かして海外展開に貢献したいと考えております。」
【社風や環境に惹かれた場合】
「会社説明会を通じて感じた貴社の風通しの良い社風と、若手から挑戦できる環境に強く惹かれました。」
【送付状での使用例】
「拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。この度、貴社の求人に応募したく、下記の通り応募書類を送付いたします。」
このように、文中で企業を指すときは一貫して「貴社」を使います。作成後は、必ず「検索・置換」機能や目視チェックで「御社」が混ざっていないか確認することをおすすめします。
面接・電話・会社説明会:口に出すときはすべて「御社」
面接会場に入室した瞬間から、あるいは電話をかけた瞬間から、コミュニケーションは「話し言葉」モードに切り替わります。ここでは「御社」を徹底します。
面接では緊張のあまり、履歴書に書いた文章をそのまま思い出そうとして、うっかり「貴社」と言ってしまうケースが多々あります。しかし、耳で聞く「貴社」は前述の通り違和感を生みやすいため、意識的に「御社」と言い換えるトレーニングが必要です。
以下のようなフレーズを声に出して練習し、口に馴染ませておきましょう。
- 「本日はお忙しい中、御社の面接の機会をいただき、ありがとうございます。」
- 「御社の〇〇という製品を、私自身も愛用しております。」
- 「御社の強みである〇〇分野で、私の経験を活かせると確信しております。」
- 「もし御社に入社できましたら、まずは営業職として現場を学びたいと考えております。」
また、電話対応においても同様です。面接の日程調整や問い合わせで電話をする際も、「御社」を使います。相手の姿が見えない電話では声だけが情報の全てとなるため、聞き取りやすい「御社」を使うことは、対面以上に重要なマナーとなります。
メール・チャット:基本は「貴社」だが、会話形式なら「御社」も許容範囲?
現代のビジネスシーンで最も判断に迷うのが、メールやビジネスチャットツールでのやり取りです。
【メールの場合】
メールは「手紙の現代版」であり、書き言葉のルールが適用されます。したがって、基本的には「貴社」を使用するのが正解です。「貴社の選考通過のご連絡をいただき…」のように書くのが最もフォーマルで間違いがありません。
【チャットツールの場合】
最近では、選考のやり取りにLINEやSlack、専用の採用アプリを使用する企業も増えています。チャットは「文字による会話」という側面が強く、メールよりもカジュアルなコミュニケーションが許容される傾向にあります。
基本的にはチャットであっても文字である以上「貴社」が無難ですが、ラリーが続く中で会話のようなテンポになった場合、「御社」と入力しても大きなマナー違反とは捉えられないケースが増えています。しかし、リスクを避けるためには、やはり「貴社」で統一するのが安全です。
「書き言葉は貴社」という大原則を守っていれば、どんなツールであっても失礼になることはありません。
現役採用コンサルタントのアドバイス
「メールから面接へ、モードを切り替えるためのコツをお伝えしましょう。多くの就活生が、面接直前までエントリーシートや履歴書を読み込んでいます。すると、頭の中が『書き言葉モード(貴社)』になったまま面接に突入してしまい、第一声で『貴社は…』と言ってしまうのです。面接会場に向かう途中や待合室では、書類を読むのをやめて、頭の中で『御社、御社』とシミュレーションを行うか、心の中で志望動機を『話し言葉』で唱えるようにしてください。この直前の『口慣らし』のリハーサルが、本番でのスムーズな言葉遣いを生みます。」
【保存版】銀行・病院・公務員…業界別の正しい呼び方一覧
「御社」と「貴社」は一般的な企業(株式会社や有限会社など)に対する呼び方ですが、世の中には「会社」ではない組織がたくさんあります。銀行、病院、学校、役所などを志望する場合、「御社」と呼ぶのは適切ではありません。
ここでは、志望者が迷いやすい業界別の正しい呼び方を網羅的にリスト化しました。自分が志望する業界に合わせて、正しい呼び方をチェックしてください。これらを正しく使い分けることで、「業界研究をしっかり行っている」「志望度が高い」というアピールにも繋がります。
銀行・信用金庫(御行・御庫)
金融業界は伝統を重んじる傾向があり、正しい呼称が強く求められる業界の一つです。
- 銀行: 話し言葉は「御行(おんこう)」、書き言葉は「貴行(きこう)」
- 信用金庫: 話し言葉は「御庫(おんこ)」、書き言葉は「貴庫(きこ)」
「御社」と言ってしまっても意味は通じますが、銀行員としての適性をアピールするためには「御行」と自然に言えることが望ましいです。
病院・クリニック(御院)
医療従事者や病院事務を目指す場合、相手は「会社」ではなく「病院」や「医療法人」です。
- 病院・クリニック: 話し言葉は「御院(おんいん)」、書き言葉は「貴院(きいん)」
- 法人全体を指す場合: 話し言葉は「御法人(おんほうじん)」、書き言葉は「貴法人(きほうじん)」
学校・学園(御校・御学園)
教職員や学校事務の採用試験では、教育機関に対する敬意を表す呼び方を使います。
- 学校(小・中・高・大): 話し言葉は「御校(おんこう)」、書き言葉は「貴校(きこう)」
- 学園全体: 話し言葉は「御学園(おんがくえん)」、書き言葉は「貴学園(きがくえん)」
公務員・役所・組合(御庁・御組合など)
公務員試験や団体職員の面接では、組織の形態によって呼び方が細かく分かれます。
- 省庁・役所: 話し言葉は「御庁(おんちょう)」、書き言葉は「貴庁(きちょう)」
- 市役所・区役所: 「御市役所」とは言わず、「本市(ほんし)」「本区(ほんく)」や「こちらの市」「こちらの区」という表現が一般的です。
- 組合・生協: 話し言葉は「御組合(おんくみあい)」、書き言葉は「貴組合(きくみあい)」
- 協会: 話し言葉は「御会(おんかい)」「御協会」、書き言葉は「貴会(きかい)」「貴協会」
業界・組織別 呼び方対応リスト
主要な組織の呼び方を以下の表にまとめました。志望先がどこに当てはまるか確認してください。
| 組織の種類 | 書き言葉(履歴書・メール) | 話し言葉(面接・電話) |
|---|---|---|
| 一般企業 | 貴社(きしゃ) | 御社(おんしゃ) |
| 銀行 | 貴行(きこう) | 御行(おんこう) |
| 信用金庫 | 貴庫(きこ) | 御庫(おんこ) |
| 病院 | 貴院(きいん) | 御院(おんいん) |
| 学校 | 貴校(きこう) | 御校(おんこう) |
| 省庁 | 貴省(きしょう)・貴庁(きちょう) | 御省(おんしょう)・御庁(おんちょう) |
| 郵便局 | 貴局(ききょく) | 御局(おんきょく) |
| 店舗・ショップ | 貴店(きてん) | 御店(おんてん) |
| 協会・会 | 貴会(きかい) | 御会(おんかい) |
現役採用コンサルタントのアドバイス
「どうしても呼び方がわからない時や、とっさに出てこない時に使える『魔法の言葉』があります。それは『そちら』や『こちらの』という指示語をうまく使うことです。例えば、『御組合』という言葉が噛んでしまいそうな時は、『こちらの組合の理念に…』や『そちらで取り組まれている事業に…』と言い換えても、決して失礼にはあたりません。無理に慣れない専門用語を使って詰まってしまうより、自然な言葉でスムーズに会話を続けることの方が、コミュニケーションとしては評価されます。」
面接官はココを見ている!よくある間違いとリカバリー法
ここまで正しいルールを解説してきましたが、読者の皆様が最も不安に感じているのは、「もし間違えてしまったらどうなるのか?」という点ではないでしょうか。面接という極度の緊張状態では、頭ではわかっていても口が回らないことがあります。
このセクションでは、実際に採用の合否を判定してきた元人事責任者の視点から、現場のリアルな許容範囲と、ミスをした時のリカバリー方法について解説します。結論から言えば、言葉の言い間違いだけで不採用になることは、まずありません。
「御社様」「貴社様」はNG?二重敬語の注意点
丁寧さをアピールしたいあまり、やってしまいがちなのが「御社様(おんしゃさま)」や「貴社様(きしゃさま)」という表現です。
「御社」や「貴社」という言葉自体に、すでに「御(お)」や「貴(き)」という敬意を表す接頭語が含まれています。これにさらに「様」をつけるのは「二重敬語」となり、文法的には誤りです。過剰な敬語は、「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」といった印象や、自信のなさを感じさせる原因にもなります。
ただし、面接官も人間ですので、学生が緊張して「御社様」と言ってしまっても、「丁寧に言おうとしてくれているんだな」と好意的に受け止めるケースがほとんどです。減点対象として厳しくチェックされることは稀ですが、スマートなビジネスパーソンを目指すなら「御社」「貴社」と言い切る勇気を持ちましょう。
面接でうっかり「貴社」と言ってしまったら不採用?
面接中に「貴社の強みは…あ、すみません、御社の強みは…」となる場面は、採用現場では日常茶飯事です。断言しますが、面接で「貴社」と言ってしまっただけで不採用になることは100%ありません。
採用担当者が評価しているのは、言葉の正確さそのものよりも、その言葉に乗せられた「内容」と「人柄」です。言葉遣いの些細なミスよりも、以下のような態度のほうがマイナス評価に繋がります。
- 言い間違えを気にして、その後ずっとおどおどしてしまう
- 言葉を選びすぎて、会話のテンポが悪くなる
- マニュアル通りの言葉しか話さず、自分の言葉で語らない
「貴社」と言ってしまっても、話の内容が素晴らしく、熱意が伝われば、そのミスは記憶にも残らないほど些細なことです。
緊張で言葉が出てこない…言い間違えた瞬間の自然な訂正方法
もし面接中に「貴社」や「御社様」と言ってしまい、自分でそのミスに気づいた場合はどうすればよいでしょうか。以下の2つのパターンで対処しましょう。
1. 気づいた瞬間に軽く訂正する
「貴社の…失礼しました、御社の事業展開についてですが…」
このように、短く「失礼しました」と挟んで言い直せば完璧です。これにより、「自分のミスに気づいて修正できる能力がある」というポジティブな評価にすら繋がります。
2. そのまま流して話し続ける
話の流れが盛り上がっている時や、言い直すと話の腰を折ってしまいそうな時は、あえて訂正せずにそのまま話し続けても構いません。前述の通り、面接官は文脈で理解してくれます。いちいち「あ、間違えた」という顔をして止まる方が、コミュニケーションの阻害要因となります。
検証エピソード:採用担当者10人に聞いた「敬語のミスはどこまで減点対象か?」
私の知人である現役の人事担当者10名(IT、メーカー、商社、サービス業など)に、「面接での『御社・貴社』の使い分けミスを気にしますか?」とアンケートをとったことがあります。結果は以下の通りでした。
- 「全く気にしない」:6名
(理由:意味が通じればOK、緊張しているのは当たり前だから) - 「気づくが減点はしない」:3名
(理由:違和感はあるが、合否を決める要素ではない) - 「頻度によっては気にする」:1名
(理由:営業職志望などで、あまりに言葉遣いが乱れていると教育コストを懸念する)
つまり、9割の採用担当者は、この使い分けのミスを「合否に関わる問題」とは捉えていません。過度な心配は不要です。
現役採用コンサルタントのアドバイス
「完璧な敬語よりも評価されるのは、『コミュニケーションの姿勢』です。私が面接官をしていた時、敬語は完璧でも目が笑っていない学生より、多少言葉遣いが拙くても、一生懸命に自分の言葉で想いを伝えようとする学生の方に魅力を感じ、採用を出しました。マナーは大切ですが、それは『手段』であって『目的』ではありません。間違いを恐れて萎縮するのではなく、『伝えたい』という気持ちを最優先にしてください。その熱意があれば、少々の言葉のミスは笑顔でカバーできます。」
「御社」に関するよくある質問 (FAQ)
最後に、「御社」と「貴社」の使い分けに関して、就活生や転職者から頻繁に寄せられる質問にQ&A形式でお答えします。細かい疑問をここで解消し、一点の曇りもない状態で選考に臨んでください。
Q. 面接で「そちらの会社」と言ってしまった場合は?
A. 大きな問題ではありませんが、次は「御社」と言えるようにしましょう。
「そちらの会社」や「〇〇さん(企業名)の方では」といった表現は、丁寧語ではありますが尊敬語ではありません。そのため、ややフランクな印象や、ビジネススキルが未熟な印象を与える可能性があります。不採用に直結するわけではありませんが、気づいた時点で次の発言から「御社」に切り替える意識を持つと良いでしょう。
Q. 書き言葉で間違えて「御社」と書いて提出してしまったら?
A. 提出済みなら気にしても仕方ありません。面接で挽回しましょう。
履歴書やエントリーシートを提出した後に、「御社」と書いてしまったことに気づくケースはよくあります。しかし、書き直しや再提出を申し出るほどのことではありません。採用担当者も、大量の書類を見る中で「御社」と書かれていることを見落とすこともありますし、気づいても「熱意があれば通す」ことがほとんどです。書類選考を通過したら、面接でしっかりと正しい言葉遣いを示せば問題ありません。
Q. グループ会社や子会社を呼ぶときはどうする?
A. 基本的には親会社も子会社も「御社」で統一してOKです。
グループ面接や、子会社の選考で親会社の話をする場合など、複数の会社を区別したい時はどうすべきでしょうか。基本的には目の前の面接官が所属する会社を「御社」と呼びます。もし区別が必要な場合は、「御社」と「〇〇グループ様」や、「御社」と「親会社である〇〇株式会社様」のように、具体的な社名を出すことで明確に区別するのが最も誤解のない方法です。
まとめ:使い分けはマナーの第一歩。自信を持って選考に臨もう
ここまで、「御社」と「貴社」の使い分けについて、基本ルールから業界別の応用、そしてミスをした時の対処法まで詳しく解説してきました。最後に、記事の要点を整理します。これさえ押さえておけば、もう迷うことはありません。
「御社・貴社」使い分けチェックリスト
- [ ] 話すときは「御社(おんしゃ)」を使えているか
面接、電話、説明会での質問など、口頭でのコミュニケーションはすべて「御社」です。 - [ ] 書くときは「貴社(きしゃ)」を使えているか
履歴書、エントリーシート、メール、送付状など、文字に残るものはすべて「貴社」です。 - [ ] 志望業界特有の呼び方を確認したか
銀行なら「御行」、病院なら「御院」、学校なら「御校」。特殊な業界を受ける場合は必ずチェックしましょう。 - [ ] 二重敬語(御社様)を使っていないか
「様」は不要です。「御社」「貴社」だけで十分な敬意が伝わります。 - [ ] 間違えても動じない心構えはできたか
言い間違えても不採用にはなりません。「失礼しました」と軽く訂正し、笑顔で話を続けましょう。
言葉遣いは、社会人としての基礎力を示す重要な指標です。しかし、それ以上に大切なのは、あなたの「働きたい」という熱意と、相手に対する「敬意」です。正しい使い分けを身につけることは、その熱意をノイズなく相手に届けるための準備に過ぎません。
この記事で得た知識をお守りにして、自信を持って面接会場のドアを叩いてください。あなたが自分の言葉で堂々と想いを伝えられることを、心から応援しています。
現役採用コンサルタントのアドバイス
「就職・転職活動中のあなたへ。マナーや敬語は、最初は誰でも初心者です。私自身、新人の頃は電話応対で『御社様』と言ってしまい、上司に注意された経験があります。しかし、そうした失敗を重ねて、少しずつ『プロの言葉遣い』が身についていきました。今の時点で完璧である必要はありません。『正しく使おう』とするその姿勢こそが、採用担当者の心を動かします。今日から意識を少し変えるだけで、あなたの印象は確実に良くなります。胸を張って、あなたらしさを伝えてきてください。」
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