就職活動での履歴書送付や、ビジネスシーンで取引先に書類を送る際、宛名の書き方で手が止まってしまうことはありませんか?特に「御中」と「様」の使い分けは、間違えると相手に失礼になるだけでなく、「ビジネスマナーが身についていない」と判断されかねない重要なポイントです。
結論から申し上げますと、「御中」は会社・部署などの組織宛、「様」は個人宛に使用し、これらを併用することは絶対にNGです。宛名書きは、封筒やメールを開封する前に相手が目にする「第一印象」そのものです。ここで正しいマナーを示すことができれば、その後のコミュニケーションも円滑に進みます。
この記事では、年間150回以上の新人研修に登壇し、元採用担当として数多くの応募書類を見てきた筆者が、以下のポイントを徹底解説します。
- 迷いをゼロにする「御中・様・各位」の正しい使い分け判断基準
- 担当者名が不明な場合や「採用係」宛など、実務で困るケースの正解
- 封筒・返信ハガキ・メールごとの、スマホを見ながら書ける具体的な書き方見本
これを読めば、もう宛名書きで迷うことはありません。自信を持って書類を送り出し、ビジネスの第一歩を成功させましょう。
「御中」と「様」の決定的な違いと使い分けの基本ルール
ビジネス文書や郵便物を送る際、最も基本的かつ重要なのが「敬称」の使い分けです。多くの人が何気なく使っている「御中」や「様」ですが、これらには明確な定義と役割分担が存在します。まずは、この基本原則を完全に理解し、どのような状況でも即座に判断できる基礎を固めましょう。
「御中」は組織宛、「様」は個人宛が鉄則
「御中」と「様」の使い分けにおける最大の原則は、宛先が「組織(団体)」なのか「個人(特定の人)」なのかという点に尽きます。これ以外の判断基準は存在しないと言っても過言ではありません。
まず「御中(おんちゅう)」ですが、これは「御(組織の)中(にいるどなたかへ)」という意味を持っています。つまり、特定の誰かを指名するのではなく、「その会社や部署に所属する皆様のどなたか」に宛てて送る場合に使用します。会社名、部署名、課名、係名など、組織を表す名称の後ろには必ず「御中」を付けます。
一方、「様」は個人に対する敬称です。相手の氏名がわかっている場合はもちろん、役職名(社長、部長など)の後ろに氏名が続く場合も、最終的な宛先は「人」であるため「様」を使用します。ビジネスシーンにおいては、個人名が判明している場合は組織名ではなく個人名を優先して宛てることが一般的であり、そのほうが相手に確実に届きやすく、丁寧な印象を与えます。
この「組織なら御中、個人なら様」というルールは、封筒の宛名書きだけでなく、メールの宛名、返信ハガキ、社内文書など、あらゆるビジネスシーンで共通する絶対的なルールです。
同時に使うのはNG!「御中様」がマナー違反である理由
宛名書きで最もやりがちな失敗の一つが、「株式会社〇〇御中 田中様」や「〇〇部御中 御担当者様」のように、「御中」と「様」を同時に使ってしまうことです。これは「二重敬語」の一種とみなされ、明確なマナー違反となります。
先ほど解説した通り、「御中」は組織の中の人々を指す敬称であり、「様」は特定の個人を指す敬称です。これらを併記することは、宛先が組織全体なのか個人なのかを曖昧にするだけでなく、敬称を過剰に重ねることでかえって不自然で教養がない印象を与えてしまいます。
正しい書き方は、個人名がわかる場合は「組織名+部署名+個人名+様」とし、組織名は単なる所属先として扱います(この場合、組織名に御中はつけません)。個人名がわからない場合のみ「組織名+御中」とします。「丁寧にしなくては」という思いが強すぎて両方つけてしまうケースが多いですが、敬称は最後に一つだけつけると覚えておきましょう。
【一目でわかる】宛名敬称の使い分け早見表
いざペンを持った瞬間に迷わないよう、状況別の使い分けを整理しました。以下の表を参考に、現在の状況に当てはまる敬称を選んでください。
| 宛先の状況 | 正しい敬称 | 使用例 |
|---|---|---|
| 会社・団体全体に送る | 御中 | 株式会社〇〇 御中 |
| 特定の部署に送る | 御中 | 株式会社〇〇 人事部 御中 |
| 特定の係に送る | 御中 | 株式会社〇〇 採用係 御中 |
| 個人名がわかっている | 様 | 人事部 田中 太郎 様 |
| 役職者(氏名あり)に送る | 様 | 代表取締役 山田 花子 様 |
| 複数人に一斉に送る | 各位 | 関係者 各位 |
このように、宛名の最後に来る言葉によって敬称が決まります。個人名で終わるなら「様」、組織名で終わるなら「御中」です。非常にシンプルですが、これさえ守れば大きな間違いは防げます。
企業研修講師のアドバイス
「宛名書きで迷ったときは、『最終的に誰に封を開けてほしいか』を想像してみてください。『担当の田中さんに読んでほしい』なら『様』、『経理部の誰でもいいから処理してほしい』なら『御中』です。このシンプルな思考法を持つだけで、宛名書きの迷いは驚くほどなくなりますよ」
担当者名がわからない時は?よくある迷うケースの正解
基本ルールは理解していても、実務では「担当者の名前がわからない」「部署名までしか記載がない」といったグレーゾーンに遭遇することが多々あります。特に就職活動や新規開拓営業では、相手の顔が見えない状態で書類を送らなければなりません。
ここでは、判断に迷いやすい具体的なシチュエーションごとの「正解」を解説します。これらのケースをマスターすれば、どんな状況でも自信を持って対応できるようになります。
担当者名が不明な場合:「採用ご担当者様」がベスト
求人応募などで最も多いのが、「人事部宛に送りたいが、担当者の個人名がわからない」というケースです。この場合、「人事部 御中」として送ることも間違いではありませんが、より丁寧で、かつ確実に担当者の手元に届くようにするには「採用ご担当者様」とするのがベストです。
「ご担当者様」という表現は、名前は知らないけれど、その業務を担当している特定の人(個人)に対する敬称として機能します。これにより、「組織全体への漠然とした送付」ではなく、「私の書類を審査してくれるあなたへ」というメッセージが伝わります。
書き方としては、部署名の後に改行して書くか、少しスペースを空けて書きます。
例:
株式会社〇〇 人事部
採用ご担当者様
部署名までしかわからない場合:「〇〇部 御中」
請求書や一般的な問い合わせ書類など、特定の個人ではなく「その部署で処理してもらえれば誰でも良い」という場合は、部署名まで書いて「御中」をつけます。
例:
株式会社〇〇 経理部 御中
株式会社〇〇 営業第一部 御中
ここで注意したいのは、会社名だけに「御中」をつけてしまうと、社内のメール便や仕分けの段階でどこに届けるべきか迷わせてしまう可能性がある点です。可能な限り、部署名まで明記することで、スムーズに担当部署へ届くよう配慮しましょう。もし部署名もわからず、会社全体への問い合わせであれば「株式会社〇〇 御中」で問題ありません。
「係」宛ての場合:「〇〇係 御中」または「〇〇係長 殿/様」?
「係」という単位は組織の一部ですので、基本的には「御中」を使います。「採用係 御中」「庶務係 御中」といった形です。
しかし、もし「係長」という役職宛に送りたい場合は注意が必要です。「係長」は役職名であり、特定の個人を指すポストです。氏名がわかる場合は「〇〇係長 〇〇様」、氏名が不明で役職宛にする場合は「〇〇係長 殿」や「〇〇係長様」とするケースも見られますが、ビジネス文書では「〇〇係長」と役職で止めるか(役職自体に敬意が含まれるため)、「〇〇係長様」とするのが無難です。
ただし、一般的に求人応募などで「係」と指定されている場合は、組織としての係を指していることがほとんどですので、「係 御中」とするのが正解です。
役職名(社長・部長)宛ての場合の正しい順序
社長や部長など、役職者宛に送る場合の書き順には厳密なルールがあります。間違いやすいのは「社長様」「部長様」と書いてしまうことですが、役職名自体が敬称の役割を果たすため、これに「様」をつけるのは二重敬語に近い違和感があります(話し言葉では使われますが、宛名書きでは避けます)。
正しい書き方は以下の2パターンです。
- 役職名 + 氏名 + 様(最も一般的・推奨)
例:代表取締役社長 山田 太郎 様
例:人事部長 佐藤 花子 様 - 氏名 + 役職名 + 殿/様(やや古風、または内部文書的)
例:山田 太郎 社長
外部への宛名書きとしては、1の「役職名を氏名の前に置く」形が最も美しく、敬意が伝わります。役職名が長い場合(例:代表取締役兼最高経営責任者など)は、役職名を氏名の上に小さめの文字で配置し、バランスを整えると良いでしょう。
キャリアアドバイザーのアドバイス
「採用担当をしていた頃、宛名が『人事部御中』で届く応募書類と、『人事部 採用ご担当者様』で届く書類では、後者の方が『私個人に向けて送ってくれた』という意識が働き、開封時の期待値がわずかに上がった経験があります。相手の顔が見えない時こそ、想像力を働かせて『人』に宛てる意識を持つことが、好印象への第一歩です」
【実践編】失敗しない「封筒」への宛名の書き方(縦書き・横書き)
宛名の敬称が決まったら、次はいよいよ実際の封筒への記入です。ここでは、文字の配置バランスや大きさなど、視覚的な美しさにこだわった書き方を解説します。スマホの画面を見ながら、実際にペンを走らせてみてください。
縦書き封筒(和封筒)のバランスと配置|住所・社名・宛名
日本国内のビジネスシーン、特に履歴書の送付やお礼状など、改まった場面では「縦書き」の和封筒(長形3号など)が好まれます。縦書きは文字の中心線を揃えるのが難しいため、以下のポイントを意識してください。
- 住所:封筒の右端から1〜1.5cmほど空けて書き始めます。都道府県から省略せずに書き、数字は漢数字(一、二、三)を使用します。ビル名や階数も略さずに書きますが、長くなる場合は改行して、2行目の行頭を一文字分下げると見やすくなります。
- 会社名:住所の行から少し左にずらし、かつ住所よりも少し高い位置から書き始めます。「株式会社」などは略さず正式名称で書きます。
- 宛名(氏名・部署名):封筒の中央に、最も大きな文字で堂々と書きます。これがこの封筒の「主役」です。
- 部署名をつける場合:会社名の左側、または会社名の下にやや小さめに書きます。
- 敬称(様・御中):宛名の下に、宛名と同じかやや大きめのサイズで書きます。
【配置のイメージ】
(右側)住所:東京都千代田区…
(中間)社名:株式会社〇〇商事
(中央)部署・氏名:人事部 山田 太郎 様
ポイントは、住所や社名はやや詰め気味に書いても、中央の宛名だけは文字間隔をゆったりと取り、上下に余白を持たせることです。
横書き封筒(洋封筒)のバランスと配置|数字の書き方に注意
招待状や、外資系企業への送付、あるいはカジュアルなビジネス文書では横書きの洋封筒が使われます。横書きの場合、数字は算用数字(1、2、3)を使うのがルールです。
- 住所:封筒の上部、左端から2文字分ほど空けて書き始めます。郵便番号枠がない場合は、左上に郵便番号を書きます。
- 宛名:封筒の中央、やや右寄りに配置されるよう調整するとバランスが良くなります。住所よりも一段下げて書き始め、文字サイズを大きくします。
横書きの場合、行間が詰まりすぎると読みにくくなるため、住所と宛名の間は十分なスペース(1行分以上)を空けるのがコツです。
「御中」を書く位置と文字サイズの黄金比
「御中」や「様」といった敬称は、宛名の最後に添えるものですが、その位置とサイズで印象がガラリと変わります。
- 位置:宛名(組織名や氏名)の末尾から、一文字分ほどのスペースを空けて書きます。詰めすぎると窮屈に見え、離しすぎると間延びします。縦書きの場合は下揃えにする必要はありませんが、あまり下に行き過ぎないよう注意します。
- サイズ:宛名本体よりも「わずかに大きく」書くか、「同じ大きさ」で書くのが黄金比です。敬称を小さく書いてしまうと、相手への敬意が縮こまっているような印象を与えます。特に「様」の最後のはらいや、「御」の部首などはのびのびと書きましょう。
裏面(差出人)の書き方も忘れずに
表面が完璧でも、裏面の差出人欄が雑だと台無しです。差出人情報は、万が一郵便物が届かなかった場合に返送してもらうための重要な情報です。
- 縦書きの場合:封筒の継ぎ目(センターライン)の右側に住所、左側に氏名を書くのが正式ですが、最近は左側に寄せて住所と氏名を並べて書くスタイルも一般的です。左寄せの方が視認性が高く、実務的です。
- 日付:左上のあたりに、投函日(例:令和〇年〇月〇日)を小さく入れておくと、いつ発送した書類かが明確になり、ビジネス上のトラブル防止になります。
- 封字:フラップ(蓋)を糊付けした後、その境目に「〆」や「封」という字を書きます。これは「未開封であること」の証明です。×印を書くのは失礼にあたるので注意してください。
企業研修講師のアドバイス
「美しい宛名書きのために最も重要な準備は、実は『ペンの選定』です。細すぎるボールペン(0.5mm以下)は貧相に見えがちです。宛名書きには、1.0mm以上の太めの油性ボールペンか、サインペン(水性顔料インクのもの)をおすすめします。インクが濃く、太い文字で書かれた宛名は、それだけで自信と誠実さを相手に伝えてくれます」
【実践編】「返信ハガキ」の「行・宛」の消し方と書き換えマナー
結婚式の招待状や、就職活動での会社説明会の出欠確認など、返信ハガキ(または返信用封筒)を扱う機会も意外と多いものです。ここでは、あらかじめ印刷されている「行」や「宛」を、正しい敬称に書き換えるマナーを解説します。
自分宛の「行」「宛」を「御中」または「様」に書き換える手順
返信ハガキの宛名面には、先方の住所と氏名(または部署名)に加え、敬称の代わりに「行」や「宛」が印刷されています。これをそのまま送り返すのは、「自分を敬ってください」と言っていることになり大変失礼です。必ず以下の手順で修正します。
- 「行」または「宛」を二重線で消す
印刷されている「行」「宛」の文字の上に、二重線を引いて消します。 - 適切な敬称を書き添える
消した文字の横(縦書きなら下か左、横書きなら右)に、正しい敬称を書きます。- 宛先が個人名の場合:「様」
- 宛先が部署・会社の場合:「御中」
二重線は定規を使うべき?斜線と直線の使い分け
「行」を消す際の二重線ですが、縦書きの場合は「縦線(||)」または「斜線(//)」、横書きの場合は「横線(=)」または「斜線(//)」を用います。
- 定規は必要?:必須ではありませんが、定規を使って直線を引いたほうが丁寧で几帳面な印象を与えます。フリーハンドでも構いませんが、線が曲がったり波打ったりしないよう、慎重に引いてください。
- 斜線の向き:斜線を使う場合は、右上から左下に向かって引くのが一般的です。文字を一文字ずつ消すイメージです。
修正液や修正テープは使ってもいい?
結論から言うと、返信ハガキの宛名修正に修正液や修正テープを使うのはNGです。
ビジネスマナーにおいて、修正液等は「書き損じ(ミス)」を隠すための道具と認識されています。今回のケースはミスではなく、「謙譲語(行)から尊敬語(様・御中)への訂正」という儀礼的なプロセスですので、あえて元の文字が見えるように二重線で消すのが正しい作法です。「元の文字(行)をあえて残しつつ、訂正しましたよ」と見せることがマナーなのです。
「御芳名」の「御御」などの消し忘れに注意
宛名面だけでなく、裏面(通信面)の記入欄にも注意が必要です。自分の名前を書く欄が「御芳名」、住所欄が「御住所」となっている場合、「御」や「御芳」は相手が自分に対してつけてくれた敬語ですので、自分で自分の名前に敬語を使わないよう削除します。
- 「御住所」→「御」を二重線で消す
- 「御芳名」→「御芳」を二重線で消す
一文字の場合は斜線または縦線で消し、二文字以上の場合は縦線ですっきりと消すと綺麗に見えます。
企業研修講師のアドバイス
「返信ハガキの余白に『この度はご案内いただきありがとうございます』や『当日を楽しみにしております』といった一筆を添えられる人は、ビジネスでも非常に高い評価を得られます。単なる事務処理で終わらせず、コミュニケーションの機会として活用する姿勢が、あなたの人間性を伝えます」
【実践編】ビジネスメールにおける「御中」の使い方
現代のビジネスシーンでは、封筒よりもメールでのやり取りが圧倒的に頻度が高いでしょう。メールにおいても「御中」と「様」の使い分けルールは基本的には同じですが、メール特有の作法も存在します。
メール本文の宛名でも「御中」と「様」のルールは同じ
メール本文の冒頭に書く宛名も、封筒と同様に「組織なら御中、個人なら様」です。
- 〇〇株式会社 御中
(問い合わせ窓口など、誰が読むかわからない場合) - 〇〇株式会社 営業部 田中 様
(担当者がわかっている場合)
メールの場合、宛名を省略していきなり「お世話になっております」と書き始めるのは失礼にあたります。必ず冒頭に宛名を記載しましょう。
件名に宛名を入れる場合の書き方
メールの件名に相手の名前を入れることは必須ではありませんが、初めての連絡や重要な依頼の場合、件名に宛名を入れることで開封率を高める効果があります。
例:【新規お見積りのご依頼】株式会社〇〇 田中様
例:【採用選考のご応募】〇〇株式会社 人事部 御中
このように件名に宛名を入れる場合も、敬称の使い分けルールは厳守してください。
CCで複数人に送る場合の宛名はどうする?
CC(カーボンコピー)に複数の関係者が入っている場合、本文の宛名はどうすべきでしょうか。基本的には、TO(宛先)の人に対してのみ宛名を書けばOKです。CCの人はあくまで「共有」の対象だからです。
ただし、全員に対して等しく呼びかけたい場合や、CCの人にも強く意識してほしい場合は、「関係者各位」や、連名で記載することもあります。
例:
株式会社〇〇
営業部 田中 様
開発部 鈴木 様
メールならではの省略マナーと許容範囲
チャットツールや、一日に何度も往復するメールの場合、毎回「〇〇株式会社 〇〇部 〇〇課 田中様」とフルネームで書くのは冗長に感じられることがあります。関係性が構築できている場合、2通目以降は以下のように省略することが許容されています。
- 「田中様」のみ(社名・部署名を省略)
- 「〇〇様」(名字のみ)
ただし、最初の1通目や、期間が空いてからの連絡、改まった内容のメールでは、基本に立ち返って正式な宛名を書くのが無難です。省略する場合でも「様」や「御中」を省くことは絶対にやめましょう(「田中さん」などは社内メールのみに留めます)。
キャリアアドバイザーのアドバイス
「メールの宛名はコピペで済ませる人が多いですが、前のメールの『様』が抜けていたり、名前の漢字が間違っていたりするミスが頻発しています。特に旧字体(齋藤、髙橋など)のミスは、相手によっては『私のことを大切に思っていない』と受け取られかねません。送信ボタンを押す前に、宛名の漢字と敬称だけは指差し確認する癖をつけましょう」
「各位」「気付」とは?御中以外の敬称との使い分け
「御中」「様」以外にも、ビジネスシーンで目にする敬称があります。これらを正しく理解しておくことで、より高度な使い分けが可能になります。
「各位」は「皆様」の意味。「各位 御中」は二重敬語
「各位(かくい)」は、「皆様」「おのおのがた」という意味で、複数の相手に対して敬意を表す言葉です。「関係者各位」「株主各位」「保護者各位」のように使います。
ここで絶対にしてはいけない間違いが、「各位 御中」や「各位 様」という表現です。「各位」という言葉自体に「様」の意味が含まれているため、これらにさらに敬称をつけると二重敬語になります。「各位」だけで敬称として完結していると覚えてください。
「お客様各位」は正しい?間違い?
厳密な文法ルールで言えば、「各位」=「皆様」なので、「お客様各位」は「お客様皆様」となり、重複表現(二重敬語の一種)であるという指摘があります。文法的に正しくは「お客各位」となります。
しかし、現代のビジネス慣習においては、「お客様各位」という表現は非常に広く定着しており、違和感を持つ人は少なくなっています。むしろ「お客各位」と書くと素っ気ない印象を与えることもあるため、接客業や一般顧客向けの案内では「お客様各位」を使用してもマナー違反とはみなされないのが現状です。
「気付(きづけ)」を使うシチュエーションとは
「気付」は、相手がその場所に所属していないが、一時的にそこに滞在している場合などに使います。例えば、出張先のホテルに荷物を送る場合や、入院先の病院にお見舞いを送る場合などです。
例:
〇〇ホテル フロント気付
山田 太郎 様
これは「フロントの方、山田様に取り次いでください(気づいてください)」という意味合いがあります。ビジネスでは、取引先の会社を間借りして作業しているパートナー社員に送る場合などに使われます。
「殿」は目下への敬称?社外の人に使ってはいけない理由
「殿(どの)」は、かつては公用文などで広く使われていましたが、現代のビジネスマナーでは「目上から目下に対して使う敬称」というニュアンスが強くなっています。
したがって、社外の人やお客様、上司に対して「殿」を使うのは失礼にあたります。賞状や辞令など特定の形式的な文書を除き、普段の宛名書きでは「様」を使うのが絶対の正解です。「殿」は使わない、と決めてしまっても良いでしょう。
▼(参考)エアメール(海外郵便)での宛名の書き方
英語圏への郵便(エアメール)では、「御中」に相当する表現として以下のようなものが使われますが、日本ほど厳密ではありません。
- Attention: Mr. Tanaka(田中様宛て)
会社住所の下に「Attention:」または「Attn:」と書き、個人名を記します。これが最も一般的です。 - To Whom It May Concern(ご担当者様、関係者各位)
担当者名が全くわからない場合に使われますが、やや形式ばった表現です。 - Messrs.(〜御中、〜各位)
会社名(特にパートナーシップ企業など)の前につける敬称ですが、現代ではあまり使われません。
基本的には、会社名だけを書けば届きますし、特定の個人に届けたい場合は「Attn:」を使うのがスマートです。
よくある間違いとトラブルシューティング (FAQ)
最後に、宛名書きの現場でよく起こるトラブルや疑問について、一問一答形式で解決します。
Q. 宛名を書き間違えてしまった!修正テープで直していい?
A. 絶対にNGです。新しい封筒に書き直してください。
宛名書きにおける修正テープや修正液の使用は、最大のタブーです。「あなたの名前を間違えましたが、面倒なので修正テープで済ませました」というメッセージになり、大変失礼です。どんなに小さなミスでも、必ず新しい封筒を用意して書き直しましょう。予備の封筒は常に多めに用意しておくのが鉄則です。
Q. (株)と略して書いてもいい?
A. 宛名書きでは略さず「株式会社」と書きましょう。
「(株)」「(有)」などの略称は、社内メモや帳簿などで使うものです。封筒や正式なメールの宛名では、必ず「株式会社」「有限会社」と正式名称で書きます。また、前株(株式会社〇〇)か後株(〇〇株式会社)かも間違えないよう、Webサイトや名刺で必ず確認してください。
Q. 会社名が長すぎて1行に入りきらない場合は?
A. キリの良いところで改行してもOKです。
無理に1行に収めようとして文字が極端に細長くなったり、小さくなったりするよりは、改行してバランス良く書く方が好印象です。改行する場合は、2行目の頭を1行目より少し下げると(インデントすると)、会社名が続いていることがわかりやすくなります。
Q. 往復ハガキの返信面にも「御中」は必要?
A. はい、必要です。
往復ハガキを出す際、相手が返信してくる面(返信宛名面)には、自分の住所と氏名を書きますが、この時は自分の名前に「様」や「御中」はつけず、「行」または「宛」と書いておくのがマナーです。相手がそれを消して「様」や「御中」に書き換えて返信してくれるのを待つ、という謙虚な姿勢を示します。
企業研修講師のアドバイス
「私自身、新入社員の頃に書き損じの封筒を『もったいないから』と修正液で直して送ろうとし、先輩に厳しく叱られた経験があります。その時は理不尽に感じましたが、今ならわかります。封筒一枚のコストよりも、会社の信用というコストの方が遥かに重いのです。ミスをしたら潔く書き直す。この誠実さが信頼を築きます」
まとめ:正しい宛名は信頼の第一歩!自信を持って送ろう
「御中」と「様」の使い分けは、ビジネスマナーの基本中の基本ですが、それゆえに間違えると目立ってしまうポイントでもあります。しかし、今回解説した「組織なら御中、個人なら様」というシンプルな原則さえ押さえておけば、恐れることは何もありません。
宛名書きは、単なる事務作業ではなく、相手への「敬意」を形にする大切なプレゼンテーションです。丁寧に書かれた宛名は、開封する前の段階であなたの誠実さを相手に伝え、その後のビジネスや選考を有利に進めるための強力な武器となります。
最後に、投函・送信前の最終チェックリストを確認して、自信を持って書類を送り出しましょう。
【送付前・送信前の最終チェックリスト】
- 宛先が組織(部署・係)だけなら「御中」、個人名があるなら「様」になっていますか?
- 「御中」と「様」を両方書いていませんか?(「〇〇部御中 〇〇様」はNG)
- 会社名は略さずに「株式会社」と書いていますか?
- (封筒の場合)住所や宛名のバランスは整っていますか?
- (封筒の場合)書き損じを修正テープで直していませんか?
- (メールの場合)本文の冒頭にも宛名を入れていますか?
- (返信ハガキの場合)自分宛の「行」を二重線で消して書き換えていますか?
このチェックリストをクリアしていれば完璧です。ぜひ今日から、迷いのない美しい宛名書きを実践してみてください。
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