甘く優雅な香りで私たちを魅了するジャスミン。「香りの王様」とも称されるその芳香は、日々の疲れを癒やし、自宅を極上のリラックス空間へと変えてくれます。しかし、ホームセンターで花のついた鉢植えを衝動買いしたものの、「つるが伸びすぎてどうにもならなくなった」「翌年花が咲かなかった」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、ジャスミン栽培の成功のカギは、最初の「品種選び」にあります。実は「ジャスミン」という名前で流通している植物には、耐寒性が強く庭植えできるものから、寒さに弱く室内管理が必須なものまで、性質が全く異なる品種が混在しているのです。ご自身の住環境に合わない品種を選んでしまうと、どれだけ丁寧にお世話をしても、冬越しに失敗したり、花が咲かなかったりという残念な結果になりかねません。
この記事では、園芸歴20年以上の経験を持つグリーンコーディネーターである私が、初心者がまず知っておくべきジャスミンの種類の違いと、香りを最大限に楽しむための育て方を徹底解説します。特に、多くの方が悩まれる「暴れるつるの剪定・誘引テクニック」や、絶対に間違えてはいけない「毒性のある偽ジャスミン」との見分け方についても、プロの視点で詳しくお伝えします。
ぜひこの記事を参考に、あなたのライフスタイルにぴったりのジャスミンを見つけ、香り豊かなボタニカルライフをスタートさせてください。
ジャスミンの種類と選び方:まずは「育てたい品種」を知ろう
ジャスミンを育てるにあたり、最も重要なステップが「品種を知ること」です。園芸店やネットショップでは、単に「ジャスミン」とだけ表記されて販売されていることもありますが、その正体を見極めないと、後々の管理で大きな苦労をすることになります。まずは、日本国内で主に入手可能な3つの代表的な品種と、絶対に知っておくべき有毒種との違いを理解しましょう。
園芸歴20年のグリーンコーディネーターのアドバイス
「『香りが良いから』という理由だけで選ぶのは少し危険です。例えば、北海道や東北地方にお住まいの方が、寒さに弱いマツリカ(アラビアンジャスミン)を地植えにするのは不可能です。また、忙しくて毎日の水やりが難しい方が、乾燥に弱い品種を選ぶのもおすすめできません。ご自身の『お住まいの地域の気候』と『かけられる手間』、そして『香りの好み』の3点を軸に選ぶことが、長く楽しむための秘訣ですよ。」
日本で流通する主な3大ジャスミン(ハゴロモ・マツリカ・ホワイト)
日本で一般的に「ジャスミン」として流通しているのは、主に以下の3種類です。これらは全てモクセイ科ソケイ属(Jasminum)に属する「本物のジャスミン」ですが、開花時期や耐寒性に大きな違いがあります。
▼補足:モクセイ科ソケイ属(Jasminum)とは(クリックして展開)
本来、植物学的に「ジャスミン」と呼べるのは、モクセイ科ソケイ属(Jasminum)に分類される植物の総称です。世界中の熱帯から亜熱帯地域にかけて約300種以上が分布しています。香料の原料となるものが多いですが、中には香りのない品種や、黄色い花を咲かせる品種(キソケイなど)も存在します。日本で園芸用として親しまれているのは、その中のごく一部の香りの良い品種たちです。
それぞれの特徴を比較表にまとめました。ご自身の環境と照らし合わせてみてください。
| 品種名 | ハゴロモジャスミン (Jasminum polyanthum) |
マツリカ (Jasminum sambac) |
ホワイトジャスミン (Jasminum officinale) |
|---|---|---|---|
| 花の特徴 | 蕾はピンク、花は白。 小輪で株全体を覆うように咲く。 |
純白の花。八重咲きと一重咲きがある。 花弁が肉厚。 |
白〜薄ピンクの大輪。 花弁が細長く優雅な形。 |
| 開花期 | 春(3月〜5月) 一季咲きだが花数は圧倒的。 |
夏〜秋(7月〜10月) 気温があれば繰り返し咲く。 |
初夏〜秋(6月〜10月) 長期間楽しめる。 |
| 香りの特徴 | 甘く濃厚でパウダリーな香り。 香りの強さは最強クラス。 |
爽やかでフルーティーな甘さ。 ジャスミン茶の香りそのもの。 |
上品で深みのある甘さ。 香水原料として最高品質。 |
| 耐寒性 | 強い(0℃程度まで) 関東以西の平地なら地植えで越冬可。 |
弱い(10℃以上推奨) 冬は必ず室内へ取り込む必要あり。 |
やや弱い(5℃程度まで) 霜に当てなければ暖地で越冬可。 |
| 用途・楽しみ方 | フェンスやアーチへの誘引。 春の庭の主役に。 |
ジャスミン茶(食用可)。 鉢植えで室内鑑賞。 |
アロマテラピー、香水原料。 切り花。 |
1. ハゴロモジャスミン(羽衣ジャスミン)
日本で最もポピュラーな品種です。春になると園芸店の店頭をピンク色の蕾と白い花で埋め尽くします。最大の特徴はその圧倒的な花数と強烈な香りです。つるの伸びが非常に早く、旺盛に成長するため、フェンスやアーチに絡ませて「香りの壁」を作るのに適しています。耐寒性が比較的高く、関東以西の暖かい地域であれば、庭に地植えしたままでも冬を越せることが多いのが初心者には嬉しいポイントです。
2. マツリカ(アラビアンジャスミン)
「ジャスミン茶」に使われるのは、このマツリカの花だけです。他のジャスミンは食用には適さないため、お茶や料理に使いたい場合は必ずこの品種を選んでください。花は夏に咲き、夕方から夜にかけて香りが強まります。ハゴロモジャスミンに比べるとつるの伸びは穏やかで、半つる性(低木状)に育つため、マンションのベランダなど限られたスペースでの鉢植え栽培に最適です。ただし、寒さにはめっぽう弱いため、冬は暖かい室内で管理する必要があります。
3. ホワイトジャスミン(オオバナソケイ / ロイヤルジャスミン)
「香水の王様」と呼ばれるほど、質の高い香料が採れる品種です。アロマテラピーの精油(エッセンシャルオイル)の原料となるのがこれです。花が一回り大きく、エレガントな咲き姿が魅力です。ハゴロモジャスミンほどの耐寒性はありませんが、マツリカよりは寒さに強いため、関東以南の暖地であれば、軒下などで冬越し可能です。本格的な香りを追求したい方におすすめです。
【要注意】毒性を持つ「カロライナジャスミン」との違い
ジャスミン選びで最も注意しなければならないのが、「カロライナジャスミン」の存在です。名前に「ジャスミン」とついており、甘い香りもしますが、植物学的には全く別の「マチン科ゲルセミウム属」の植物です。
この植物は、全草(花、葉、根、茎すべて)に強い毒性(ゲルセミミンなど)を持っています。
- 見分け方:カロライナジャスミンは「黄色い花」を咲かせます(本物のジャスミンにもキソケイなど黄色い種はありますが、園芸店でよく見る黄色いジャスミンは大抵カロライナです)。
- 危険性:誤ってジャスミン茶として花や葉を煎じて飲むと、めまい、脈拍の異常、呼吸麻痺などの中毒症状を引き起こし、最悪の場合は死に至るケースも報告されています。
- 管理の注意:観賞用として育てる分には問題ありませんが、剪定した枝を口にくわえたり、樹液に触れた手で目をこすったりしないよう十分な注意が必要です。特にお子様やペットがいるご家庭では、誤食のないよう管理場所を厳選してください。
※詳細な毒性情報については、厚生労働省が公表している「自然毒のリスクプロファイル」などの公的情報を必ず参照し、正しい知識を持って接してください。
あなたにおすすめの品種はこれ!選び方チャート
どの品種にするか迷っている方のために、簡単な選び方チャートを作成しました。
-
「とにかく手軽に、たくさんの花と香りを楽しみたい!」
→ ハゴロモジャスミン がおすすめ。
寒さに強く、成長も早いため、初心者でも育てがいがあります。春の満開時の感動はひとしおです。 -
「自家製のジャスミン茶を作ってみたい!」「ベランダでコンパクトに育てたい」
→ マツリカ(アラビアンジャスミン)がおすすめ。
唯一口にできるジャスミンです。四季咲き性が強く、温度さえあれば何度も花を楽しめます。 -
「本格的な香水のような、深みのある香りを楽しみたい」
→ ホワイトジャスミン がおすすめ。
アロマ好きの方や、ワンランク上の香りを求める方に。花の形も美しく、切り花としても優秀です。
【実践編】ジャスミンの基本的な育て方と管理カレンダー
育てたい品種が決まったら、次は具体的な栽培方法を見ていきましょう。ジャスミンは基本的にお日様が大好きで丈夫な植物ですが、美しい花を咲かせるためには、「日光」と「水やりのメリハリ」が欠かせません。ここでは、日本の気候に合わせた管理のコツを解説します。
園芸歴20年のグリーンコーディネーターのアドバイス
「日本の住宅事情、特に都市部で育てるなら、私は断然『鉢植え』をおすすめします。ジャスミン、特にハゴロモジャスミンは地植えにすると驚くほど根を張り、つるが屋根まで届くほど巨大化することがあります。鉢植えなら根の広がりを制限できるため、つるの暴走をある程度コントロールでき、冬場の移動も楽ですよ。」
栽培環境:日当たりと置き場所(夏と冬の移動)
ジャスミンは「陽樹」とも言えるほど、日光を好む植物です。日照不足は「花が咲かない」最大の原因となります。
- 春〜秋(成長期):
戸外の日当たりと風通しの良い場所に置きます。半日陰でも育ちますが、花数は明らかに減り、つるばかりがひょろひょろと伸びる「徒長(とちょう)」の原因になります。可能な限り、半日以上は直射日光が当たる場所を選んでください。
ただし、真夏のコンクリートの照り返しは強烈すぎて「葉焼け」や「根の高温障害」を起こすことがあります。真夏のみ、鉢を棚の上に置いて地面から離すか、明るい半日陰(午前中だけ日が当たる場所など)に移動させると安心です。 - 冬(休眠期):
ハゴロモジャスミンは、関東以西の平地なら戸外で越冬可能です。寒風や霜が直接当たらない軒下がベストです。実は、ハゴロモジャスミンは冬の寒さ(5℃〜10℃程度の低温)に一定期間当たることで花芽が形成される性質があります。ずっと暖かい室内に置いていると、春になっても花が咲かないことがあるので注意が必要です。
マツリカは寒さに弱いため、最低気温が15℃を下回り始めたら室内の日当たりの良い窓辺に取り込みます。夜間の窓際は冷え込むので、厚手のカーテンの内側に置くか、部屋の中央寄りに移動させましょう。
水やりと肥料:開花期と休眠期のメリハリ
水やりは「土の表面が乾いたらたっぷりと」が基本ですが、季節によってその頻度を調節する「メリハリ」が重要です。
- 春〜秋(成長・開花期):
土の表面が白っぽく乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えます。特につるが伸びている時期や開花中は水をよく吸います。水切れを起こすと、蕾が黄色くなってポロポロと落ちてしまうので注意してください。夏場は朝と夕方の2回水やりが必要になることもあります。 - 冬(休眠期):
成長が緩やかになるため、吸水量は減ります。土の表面が乾いてから2〜3日待ってから水を与える「乾かし気味」の管理に切り替えます。冬に水を与えすぎると、土の中が常に湿った状態になり、根が呼吸できずに腐ってしまう「根腐れ」の原因になります。 - 肥料について:
春(3月〜5月)と秋(9月〜10月)に肥料を与えます。真夏と真冬は根が疲れているか休眠しているため、肥料は与えません。
肥料の種類は、葉や茎を育てる「窒素」よりも、花付きを良くする「リン酸」が多く含まれているものがおすすめです。固形の緩効性肥料を規定量置き肥するか、10日に1回程度、液体肥料を与えましょう。
用土と植え替え:根詰まりを防ぐタイミング
ジャスミンは根の生育が早いため、鉢植えの場合は1〜2年に1回の植え替えが必要です。「水をあげてもすぐに土が乾く」「鉢底から根が飛び出している」「下葉が黄色くなって落ちる」といったサインが出たら、根詰まりを起こしている可能性が高いです。
- 最適な時期:花が終わった直後(ハゴロモなら5月〜6月、マツリカなら真夏を除く成長期)が適期です。
- 用土:市販の「草花用培養土」で十分に育ちます。ご自身でブレンドする場合は、赤玉土(小粒)6:腐葉土4の割合などが水はけと保水性のバランスが良くおすすめです。
- 手順:一回り大きな鉢(直径が3cm〜6cm程度大きいもの)用意します。古い土を1/3程度軽く落とし、新しい土を使って植え付けます。植え替え直後は根がダメージを受けているので、直射日光を避け、1週間ほどは明るい日陰で養生させてください。
ジャスミン栽培最大のコツ!「剪定」と「誘引」で美しく仕立てる
ジャスミンを育てる上で、多くの方が最も頭を悩ませるのが「つるの管理」です。放っておくと、つるは四方八方に伸び放題になり、見た目が悪くなるだけでなく、株の内側の日当たりや風通しが悪くなって病害虫の原因にもなります。ここでは、プロも実践する剪定と誘引のテクニックを解説します。
ここだけの話ですが、実は私も初心者の頃、大きな失敗をしたことがあります。
筆者の失敗談
「まだ園芸を始めたばかりの頃、地植えにしたハゴロモジャスミンの成長速度を見くびっていました。『自然な感じがいい』と剪定をサボっていたところ、つるがあっという間に隣家のフェンスを乗り越え、さらには雨樋にまで巻き付いてしまったのです。お隣さんから『すごいことになってるよ』と声をかけられ、慌てて脚立を使って撤去作業をする羽目に…。あの時の冷や汗と筋肉痛は今でも忘れられません。それ以来、ジャスミンは『鬼の剪定』が愛情だと心得ています。」
なぜ剪定が必要?放置すると起こる「つるボケ」とトラブル
剪定には、単に形を整えるだけでなく、翌年の花を咲かせるための重要な役割があります。
- 花芽をつけるため:古い枝を更新し、新しい元気な枝を出させることで、花付きが良くなります。
- つるボケ防止:肥料過多や剪定不足で、葉やつるばかりが茂って花が咲かない状態を「つるボケ」と呼びます。適度な剪定で株に刺激を与え、生殖成長(花を咲かせること)へスイッチを切り替えさせます。
- 病害虫予防:混み合った枝を透かすことで、風通しを良くし、アブラムシやハダニの発生を抑えます。
品種別・剪定のベストタイミング(花後が基本!)
ジャスミンの剪定で最も大切なのは「タイミング」です。これを間違えると、翌年の花芽まで切り落としてしまうことになります。
ハゴロモジャスミンの場合:花が終わったらすぐ!
ハゴロモジャスミンは、花が咲き終わった直後(5月下旬〜6月上旬)が剪定のベストタイミングです。夏から秋にかけて伸びた新しいつるに、翌年の春の花芽が形成されるからです。秋以降にバッサリ切ってしまうと、せっかくできた花芽を全て捨ててしまうことになるので、秋以降の剪定は「伸びすぎた邪魔なつるを整える程度」に留めましょう。
マツリカの場合:成長期ならいつでもOK
マツリカは新しく伸びた枝の先端に花をつける性質(新枝咲き)があるため、春から秋の成長期であれば、いつ剪定しても比較的すぐに次の花芽がつきます。花が終わった枝を軽く切り戻すと、脇芽が出て次の花が咲きやすくなります。
▼図解イメージ:剪定する位置のポイント(クリックして展開)
剪定バサミを入れる位置は、「葉が出ている節(ふし)の5mm〜1cmほど上」が基本です。節のところには新しい芽の元(成長点)があります。節と節の中間で切ってしまうと、残った茎が枯れ込んで見栄えが悪くなったり、病気の入り口になったりします。
思い切って株全体の半分〜3分の1程度まで切り戻しても、ジャスミンは萌芽力が強いのですぐに再生します。怖がらずにカットしましょう。
支柱やトレリスを使った「誘引(ゆういん)」のテクニック
伸びたつるを支柱やフェンスに結びつけて、好みの形に仕立てる作業を「誘引」と言います。ジャスミンのつるは自力で巻き付いていきますが、放任すると絡まり合って団子状態になるため、人の手で誘導してあげることが美しく咲かせるコツです。
- あんどん仕立て(鉢植え向け):
朝顔の栽培などで使われる、リング支柱を使います。つるを支柱に対して「らせん状」または「S字状」に巻き付けていきます。ポイントは、つるをなるべく水平方向に誘引することです。植物には「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があり、上へ上へと伸びる先端の芽に栄養が集中します。つるを横に寝かせることで、頂芽優勢を崩し、途中の節から脇芽を出させて花数を増やすことができます。 - フェンス仕立て(庭植え向け):
フェンスやトレリスに扇状に広げるように誘引します。枝同士が重ならないように配置すると、全体に日が当たり、満開時に一面の花の壁が出来上がります。
▼プロの裏技:つるが絡まってほどけない時の対処法(クリックして展開)
購入したばかりの鉢植えや、しばらく放置した株で、つるが知恵の輪のように複雑に絡まってしまうことがあります。
この場合、無理に引っ張ってほどこうとすると、つるが折れたり葉が落ちたりして株を傷めます。
プロのアドバイスとしては、「諦めて一度短く剪定してリセットする」のが正解です。株元から15cm〜20cmほど残してバッサリ切ってしまっても、春〜夏の成長期なら数週間で新しい綺麗なつるが伸びてきます。絡まったまま育てるよりも、リセットした方が結果的に美しい樹形を作れます。
花が咲かない・葉が黄色い…よくあるトラブルと対処法
順調に育っていたはずなのに、急に元気がなくなったり、花が咲かなかったりすると不安になりますよね。植物が出すSOSサインを早期に発見し、適切に対処することで回復させることができます。
園芸歴20年のグリーンコーディネーターのアドバイス
「植物を枯らしてしまう原因の多くは『観察不足』です。毎日じっくり見る必要はありませんが、水やりのついでに『葉の色は悪くないか』『葉の裏に虫はいないか』をチラッと見る習慣をつけるだけで、トラブルの大半は未然に防げますよ。」
花が咲かない主な原因は「剪定時期」と「日照不足」
「葉は元気なのに花が咲かない」という悩みは非常に多いです。主な原因は以下の3つです。
- 剪定時期の間違い:前述の通り、秋〜冬に深く剪定して花芽を切ってしまったケースです。ハゴロモジャスミンは夏以降、切らないようにしましょう。
- 日照不足:日光が足りないと、植物は生きるために葉を茂らせることを優先し、エネルギーを使う開花を後回しにします。より明るい場所へ移動させてください。
- 肥料のバランス:窒素過多(油かすなどのやりすぎ)になっている可能性があります。花用肥料(リン酸多め)に切り替えてみましょう。
葉が黄色くなったり落ちたりする場合(寒さ・根腐れ)
葉の黄変は、生理現象(古い葉が落ちる)の場合と、トラブルの場合があります。
- 寒さ:マツリカなどは寒さに当たると葉が黄色くなり、落葉します。これは寒さに対する防衛反応です。すぐに暖かい室内へ取り込んでください。
- 根腐れ:水のやりすぎで根が腐ると、水を吸い上げられなくなり、葉が黄色くなって垂れ下がります。土が湿っているのに葉が萎れている場合は根腐れの可能性大です。水やりをストップし、土を乾かしてください。重症の場合は、鉢から抜いて腐った黒い根を切り取り、新しい土で植え替えます。
- 根詰まり:鉢の中で根がパンパンになると、下葉から黄色くなって落ちていきます。鉢底を確認し、根が出ていれば植え替えのサインです。
注意すべき病害虫(アブラムシ・ハダニ)と対策
ジャスミンは比較的病害虫に強いですが、新芽や乾燥した環境では虫がつくことがあります。
- アブラムシ:春先、新芽や蕾に群生して汁を吸います。見つけ次第、粘着テープでペタペタと取るか、勢いよく水をかけて洗い流します。大量発生した場合は、園芸用の殺虫剤を使用します。
- ハダニ:高温乾燥期に葉の裏に発生する、ごく小さな赤い虫です。葉の色がカスリ状に白っぽく抜けたらハダニを疑いましょう。ハダニは水に弱いため、水やりの際に「葉水(はみず)」として、葉の裏側にも水をかけることで予防・退治ができます。
育てるだけじゃない!ジャスミンの香りを生活に取り入れる方法
美しく花を咲かせたら、その香りを生活の中で存分に楽しみましょう。ただし、ここでも品種による「毒性」の違いを忘れてはいけません。
【マツリカ限定】自家製ジャスミン茶の作り方
ご自宅で育てたマツリカ(アラビアンジャスミン)の花を使えば、市販品とは比べ物にならないほど香り高い、フレッシュなジャスミン茶を楽しむことができます。
※重要:ハゴロモジャスミンやカロライナジャスミンなど、マツリカ以外の品種は絶対に口にしないでください。また、お茶にする場合は、農薬を使わずに育てた花を使用してください。
- 収穫:ジャスミンの花は夕方から夜にかけて開花し、香りが最強になります。開きかけた白い蕾を夕方に摘み取ります。
- 香り付け:市販の緑茶や烏龍茶の茶葉を用意します。茶葉と摘み取ったジャスミンの花を交互に瓶などに重ね入れ、蓋をして一晩置きます。花から茶葉へ香りを移すのです。
- 仕上げ:翌朝、花を取り除きます(入れたままでも綺麗ですが、苦味が出ることがあります)。これにお湯を注げば、部屋中に香りが広がる自家製ジャスミンティーの完成です。
切り花やポプリとして香りを楽しむ
ハゴロモジャスミンやホワイトジャスミンは、食用にはできませんが、切り花として楽しむのに最適です。
- 一輪挿し:つるを適度な長さに切り、小さな花瓶や空き瓶に挿して洗面所やトイレに置くだけで、天然の芳香剤になります。
- ジャスミンウォーター(芳香用):ボウルに水を張り、摘んだ花を浮かべます(フローティングフラワー)。見た目も涼やかで、リビングのテーブルセンターにぴったりです。
夜に香る?ジャスミンの香りの不思議とリラックス効果
「夜の女王」とも呼ばれるジャスミン。多くの品種は、受粉を助けてくれる夜行性の蛾などを呼び寄せるために、夕方から夜にかけて香りを強く発散させる性質を持っています。
ジャスミンの香り成分「ベンデルアセテート」などは、副交感神経を優位にし、不安を和らげて深いリラックス状態へ導く効果があると言われています。寝室の窓辺に鉢を置いたり、就寝前に花の香りを嗅いだりすることで、安眠効果も期待できるかもしれません。
ジャスミン栽培のよくある質問(FAQ)
最後に、私が園芸教室などで生徒さんからよく受ける質問にお答えします。
Q. 室内でも育てられますか?
A. 可能ですが、コツがいります。
ジャスミンは日光を好むため、室内でも一年中育てられないことはありませんが、日照不足で花が咲かなくなるリスクが高いです。室内で育てる場合は、南向きの窓辺など、直射日光が数時間は当たる場所を確保してください。
園芸歴20年のグリーンコーディネーターのアドバイス
「室内管理で一番の敵は『エアコンの風』です。エアコンの温風や冷風が直接当たる場所に置くと、極度の乾燥で葉がパリパリになり、蕾が落ちてしまいます。サーキュレーターの風なら問題ありませんが、空調の風が直接当たらない場所を選んであげてくださいね。」
Q. 挿し木で増やすことはできますか?
A. はい、比較的簡単に増やせます。
適期は5月〜6月、または9月頃です。元気なつるを2〜3節(10cm程度)切り取り、下の節の葉を取り除きます。水揚げを1時間ほどした後、湿らせた赤玉土や挿し木用の土に挿します。直射日光の当たらない明るい日陰で、土を乾かさないように管理すれば、1ヶ月ほどで発根します。剪定した枝を捨てずに活用してみてください。
Q. 冬越しで枯らさないためのポイントは?
A. 「水やりのしすぎ」に注意することです。
冬に枯れる原因のNo.1は寒さそのものよりも、寒さで弱っているところに水をやりすぎて根腐れさせてしまうことです。「土が乾いてから数日待って水やり」という乾かし気味の管理を徹底しましょう。また、寒冷地でハゴロモジャスミンを地植えにしている場合は、株元に腐葉土や藁を敷いて(マルチング)、根が凍るのを防ぐのも有効です。
まとめ:自分に合ったジャスミンを選んで、香り豊かな毎日を
ジャスミンの育て方について、種類選びから剪定のコツまで解説してきました。ジャスミンは、一度環境に馴染めば驚くほど丈夫で、毎年春や夏が来るのを待ち遠しくさせてくれる素晴らしい植物です。
園芸歴20年のグリーンコーディネーターのアドバイス
「つる植物であるジャスミンは、育てる人の手によって形を変える『自由さ』が魅力です。最初は暴れるつるに戸惑うかもしれませんが、何度か剪定を繰り返すうちに、植物との呼吸が合ってくる感覚がつかめるはずです。失敗を恐れず、ハサミを入れて、あなただけの美しいジャスミンを仕立ててください。満開の朝、窓を開けた瞬間に飛び込んでくる甘い香りは、何にも代えがたいご褒美になりますよ。」
最後に、栽培をスタートする前のチェックリストを確認して、準備を整えましょう。
- 品種の確認:自分の住む地域の冬の寒さに耐えられる品種ですか?(寒冷地なら鉢植えで室内へ)
- 目的の確認:お茶にして飲みたいですか?(飲むなら必ず「マツリカ」を選ぶ)
- 場所の確保:半日以上日が当たる場所はありますか?
- 心の準備:花後の剪定をサボらず行う決意はできましたか?
ぜひ今日から、香りのある暮らしへの第一歩を踏み出してみてください。
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