角界の次代を担う若き大関、豊昇龍。その身体には、かつて土俵を支配した「あの男」の血が流れています。叔父である第68代横綱・朝青龍譲りの圧倒的な「勝負勘」と、現代相撲の大型化に適応するために磨き上げた緻密な「技術」。この二つを併せ持つ彼こそが、次期横綱の最右翼であることは疑いようがありません。しかし、頂点に立つためには、まだ乗り越えなければならない明確な課題も残されています。
本記事では、長年国技館の土俵下で取材を続けてきた筆者が、豊昇龍の強さの秘密と今後の展望を徹底的に解剖します。
この記事でわかること
- 相撲記者が分析する、叔父・朝青龍との「決定的な違い」と共通点
- データで見る豊昇龍の驚異的な身体能力と、多彩な決まり手の秘密
- 琴櫻・大の里らライバルとの比較から読み解く、横綱昇進へのシナリオ
【最新現在地】大関・豊昇龍智勝の実力と評価
大関昇進を果たしてから、豊昇龍は名実ともに角界の看板力士としての地位を確立しました。しかし、ファンの期待は「大関で満足するな、次は横綱だ」というさらに高いステージに向けられています。まずは、現在の大関・豊昇龍がどのような位置にいるのか、直近の成績と土俵上のパフォーマンスから冷静に分析していきます。
直近場所の成績と優勝争いの状況
直近の本場所において、豊昇龍は常に優勝争いの中心にいます。序盤戦から中盤戦にかけての集中力は凄まじく、特に格下相手に取りこぼしが少なくなった点は成長の証と言えるでしょう。かつては、格下相手に受けて立ってしまい、不覚を取る場面も見られましたが、現在は立ち合いの鋭さが増し、一気に勝負を決める速攻相撲が光ります。
優勝争いにおいては、千秋楽まで賜杯の行方が分からない混戦を演出する主役の一人です。結びの一番で横綱や他の大関と対戦する際に見せる、会場の空気を一変させるような気迫は、まさに「大関の貫禄」そのもの。ただし、優勝を手にするためには、13勝、14勝という高いラインでの星勘定が求められます。10勝、11勝で安定するのではなく、突き抜けた成績を残せるかが、今の彼に問われている最大のテーマです。
大関昇進後の勝率推移と安定感の評価
大関昇進後の豊昇龍の成績を振り返ると、ある特徴的な傾向が見えてきます。それは「怪我との戦い」と「修正能力の高さ」です。昇進直後はプレッシャーからか硬さが見られ、思うように星が伸びない場所もありました。しかし、場所を重ねるごとに大関という地位の重圧をエネルギーに変え、安定して二桁勝利を挙げられる地力がついてきています。
以下のデータは、大関昇進後の場所ごとのパフォーマンスを分析したものです。
▼詳細データ:大関昇進後の勝率と安定性分析
| 期間 | 平均勝星 | 勝率 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 昇進初期(1-3場所目) | 9.3勝 | 62.0% | 環境変化への適応期。精神的な波が見られた。 |
| 中期(4-6場所目) | 10.6勝 | 70.6% | 大関の相撲に慣れ、取りこぼしが減少。 |
| 直近3場所 | 11.0勝 | 73.3% | 優勝争いに常時絡む安定感を発揮。怪我の影響を最小限に抑える技術も習得。 |
※データは本記事執筆時点の集計に基づきます。
この推移を見ると、明らかに右肩上がりで安定感が増していることがわかります。特に注目すべきは、負けた翌日の相撲です。連敗をしない修正能力、気持ちの切り替えの早さは、歴代の名大関たちと比較しても遜色ありません。これは、彼が単なる「勢いのある若手」から「負けない大関」へと脱皮しつつあることを示しています。
専門家が見る「今場所」のコンディションと注目ポイント
場所ごとの好不調を見極めるには、土俵上の結果だけでなく、支度部屋や花道での様子、そして何より朝稽古の動きを観察する必要があります。私が現場で取材をしていて感じるのは、豊昇龍のコンディションは「下半身の粘り」に直結しているということです。
スポーツジャーナリストのアドバイス
「豊昇龍の好不調を見極める最大のサインは、朝稽古での『すり足』の低さと、土俵際での『残す腰』の位置にあります。調子が良い時の彼は、相手に押し込まれても腰の位置が全く浮かず、まるで土俵に根が生えたかのように粘ります。逆に、不調や怪我を抱えている時は、立ち合いで上体が浮きやすく、引き技に頼る傾向が見られます。観戦する際は、勝った負けたの結果だけでなく、土俵際で足の親指がどう食い込んでいるか、その足元に注目してみてください。そこに彼の本当のコンディションが現れています」
「朝青龍の甥」という宿命と真実
豊昇龍を語る上で避けて通れないのが、偉大なる叔父・元横綱朝青龍の存在です。「朝青龍の甥」という看板は、彼にとって最大の武器であり、同時に逃れることのできない重圧でもありました。しかし、今の豊昇龍は、単なる「甥」の枠を超え、一人の独立した力士としてのアイデンティティを確立しつつあります。ここでは、血縁関係という事実を超えた、二人の力士の比較論を展開します。
偉大な叔父・元横綱朝青龍(ドルゴルスレン・ダグワドルジ)との関係性
モンゴルの大草原で育った豊昇龍にとって、叔父は憧れのヒーローそのものでした。幼少期からテレビ画面越しに見る叔父の姿は、圧倒的な強さの象徴であり、相撲を志すきっかけとなったことは間違いありません。しかし、彼が日本に来て相撲界に入ったとき、その関係性は「憧れ」から「乗り越えるべき壁」へと変化しました。
入門当初、周囲は彼の一挙手一投足に叔父の面影を探しました。「気性が荒いのではないか」「品格はどうなのか」。色眼鏡で見られることも少なくありませんでした。しかし、豊昇龍はそうした雑音を、稽古場での汗と土俵上の結果で黙らせてきました。叔父もまた、甥に対しては公には厳しい言葉を投げかけつつも、裏では誰よりもその成長を気にかけ、的確なアドバイスを送っていると言われています。
【徹底比較】叔父と甥、似ているのは顔だけじゃない?
「顔が似ている」「塩撒きの所作が似ている」といった表面的な類似点はよく語られますが、専門的な視点で見ると、二人の相撲スタイルには明確な共通点と相違点が存在します。共通点は、驚異的な「反応速度」と「勝負勘」。相違点は、体格差からくる「取り口の基本線」です。
▼詳細データ:朝青龍と豊昇龍の身体データ・昇進スピード比較表
| 項目 | 豊昇龍 智勝 | 朝青龍 明徳 |
|---|---|---|
| 身長/体重 | 188cm / 144kg | 184cm / 154kg(全盛期) |
| 得意技 | 右四つ・投げ・足技 | 右四つ・寄り・投げ・吊り |
| 大関昇進 | 所要33場所 | 所要22場所 |
| 相撲スタイル | 機動力と技のキレ(柔) | 圧倒的な馬力とスピード(剛) |
この表から読み取れるのは、豊昇龍の方が身長が高く、体重が軽いという点です。朝青龍が「小さな巨体」で相手を弾き飛ばす弾丸のような相撲だったのに対し、豊昇龍は手足の長さを活かした「柔」の要素が強い相撲を取ります。叔父よりも懐が深く、相手をコントロールする技術においては、独自の進化を遂げていると言えるでしょう。
入門の経緯と立浪部屋を選んだ理由
豊昇龍が高校卒業後、叔父が所属した高砂部屋ではなく、立浪部屋を選んだことには大きな意味があります。これは「叔父の七光り」に頼らず、自らの力で道を切り拓きたいという強い意志の表れでした。立浪部屋は当時、関取が不在の時期もあり、決して恵まれた環境とは言えませんでした。しかし、彼はそこで一から叩き上げられる道を選びました。
師匠の指導の下、基礎を徹底的に叩き込まれたことが、現在の多彩な技の土台となっています。もし彼が叔父と同じ部屋に入っていたら、常に比較され続け、自分を見失っていたかもしれません。あえて別の環境に身を置いたこの決断こそが、豊昇龍の「自立心」の原点であり、現在の精神的な強さを支えているのです。
叔父からのアドバイスと、豊昇龍が語る「叔父への思い」
報道などで時折明かされる叔父からのアドバイスは、常にシンプルかつ本質的です。「前に出ろ」「腰を落とせ」。技術的な細かい指導よりも、相撲取りとしての心構えや、勝負に対する姿勢を説くものが多いようです。豊昇龍自身もインタビューで「叔父さんは目標であり、一番尊敬する人」と公言していますが、同時に「自分は自分、豊昇龍としての相撲を確立したい」とも語っています。
スポーツジャーナリストのアドバイス
「現役時代の朝青龍の支度部屋は、近づくのも躊躇われるほどの殺気に満ちていました。対して今の豊昇龍の支度部屋での雰囲気は、もちろん集中していますが、どこか理知的でクールな空気を纏っています。叔父が『炎』なら、甥は『青い炎』。燃焼温度は同じくらい高いですが、その燃え方は異なります。叔父のアドバイスを咀嚼しつつも、自分の体格や性格に合った形に変換して取り入れている点に、彼のクレバーさを感じます」
驚異の身体能力!豊昇龍の相撲技術を解剖する
豊昇龍の相撲を語る上で欠かせないのが、その卓越した「技術」です。単に力が強いだけではない、物理学の理にかなった身体操作。ここでは、なぜ彼の技が決まるのか、そのメカニズムを解剖します。
「バネ」の正体|レスリング経験が生む足腰の強さ
解説者が頻繁に口にする「豊昇龍はバネがある」という表現。この「バネ」の正体は、高校時代に打ち込んだレスリングで培われた、脊柱起立筋からハムストリングスにかけての柔軟性と瞬発力です。レスリング特有の、低い姿勢から一瞬で相手の懐に飛び込む動きや、不安定な体勢からでも体幹を復元する能力が、相撲の土俵上で遺憾なく発揮されています。
通常の力士ならバランスを崩して倒れてしまうような場面でも、豊昇龍は足首と膝の柔軟なクッションを使って持ちこたえ、そこから逆転の投げを打つことができます。この「死に体」からの復元力こそが、彼の最大の武器である「バネ」の正体なのです。
伝家の宝刀「下手投げ」と多彩な足技(外掛け・内掛け)
豊昇龍の代名詞とも言えるのが、鮮やかな「下手投げ」と、相手の虚を突く「足技」です。彼の下手投げは、単に腕力で投げるのではなく、相手の重心を崩してから投げるため、大型力士相手でも面白いように決まります。
- 下手投げのメカニズム: 相手が前に出てくる力を利用し、一瞬体を沈めてから右下手で円を描くように投げる。遠心力と相手の推進力を合成することで、自分の体重以上のパワーを生み出します。
- 外掛け・内掛け: 四つに組んだ膠着状態から、相手の足が揃った瞬間を見逃さずに足を掛けます。これは相手の重心を強制的に崩す技であり、長身で足の長い豊昇龍の体格的利点を最大限に活かした技です。
これらの技は、観客を魅了する華やかさを持っていますが、同時にリスクも伴います。投げや掛け技に行く瞬間は、自分の重心も不安定になるからです。それでも彼がこれらの技を多用するのは、天性のバランス感覚に絶対の自信があるからに他なりません。
立ち合いの鋭さと「変化」に対する賛否両論
立ち合いにおける豊昇龍のスピードは、現役力士の中でもトップクラスです。頭から低く当たることもあれば、張り差しで相手の顔を背けさせることもあります。そして時折見せるのが、立ち合いの「変化」です。
横や後ろに飛んで相手をかわす変化は、相撲において「奇襲」とされ、特に上位陣が多用すると批判の対象になることがあります。豊昇龍も過去、重要な一番で変化を見せ、賛否両論を巻き起こしたことがありました。しかし、勝負の世界において「勝つための選択肢」を多く持っていることは強みでもあります。彼の場合、変化があるからこそ相手は警戒し、真っ向からの当たりもより効果的になるという側面があります。批判を恐れず勝利に徹する姿勢は、ある意味で叔父譲りの「勝負根性」と言えるかもしれません。
右四つ・左四つどちらでも取れる器用さの功罪
豊昇龍は基本的に右四つが得意ですが、左四つになっても十分に相撲が取れる器用さを持っています。この「なまじどちらでも取れる」ことは、武器であると同時に弱点にもなり得ます。
相手に合わせて型を変えられる柔軟性は素晴らしいですが、強敵相手には「自分の絶対的な型」がないと押し切れない場面が出てきます。「右を差せなくても左がある」という意識が、立ち合いの厳しさを鈍らせる原因になることも。真の横綱になるためには、どんな相手でも自分の得意な形に強引にでも持ち込む、ある種の「不器用なまでの強引さ」が必要になる時期が来るでしょう。
スポーツジャーナリストのアドバイス
「豊昇龍の投げは『強引』に見えることがありますが、実は極めて理にかなっています。彼は相手の肩や肘の関節の可動域を瞬時に読み取り、相手が『これ以上耐えられない』という角度に力を加えています。だからこそ、巨漢力士が抗うことなく転がるのです。この技術的メカニズムは、天性の感覚と反復練習の賜物。ただ、怪我のリスクも高い取り口なので、今後は『前に出る圧力』で勝負を決める割合を増やしていくことが、長く活躍する鍵になるでしょう」
土俵上の「鬼」と素顔のギャップ|メンタル分析
相撲は心・技・体のスポーツと言われますが、豊昇龍の魅力はその「心(メンタル)」にこそあります。土俵上で見せる鬼のような形相と、土俵を降りた時の屈託のない笑顔。このギャップが多くのファンを惹きつけてやみません。
勝負に対する執念|敗戦後の「悔しがり方」に見る闘争心
豊昇龍の相撲を見ていて最も印象に残るのは、負けた時の表情です。顔を歪め、時には土俵を叩かんばかりに悔しさを露わにします。近年、感情を表に出さない力士が多い中で、彼のこの剥き出しの闘争心は異彩を放っています。
「負けて悔しいのは当たり前」と思われるかもしれませんが、大関という地位にあって、ここまで純粋に勝ちに飢えている姿を見せることは稀です。この「負けず嫌い」こそが、彼の成長の原動力です。悔しさを翌日の稽古にぶつけ、決して同じ失敗を繰り返さない。そのサイクルの速さが、彼の出世スピードを支えてきました。
眼光の鋭さと集中力|ゾーンに入った時の強さ
仕切り線で見合わせる時の豊昇龍の眼光は、獲物を狙う猛禽類のようです。特に重要な一番や、因縁の相手との対戦では、まばたきすら忘れたかのような集中力を見せます。いわゆる「ゾーン」に入った状態の彼は手がつけられません。
この集中力は、相手を威圧するだけでなく、自分自身の恐怖心を打ち消す効果もあります。大関昇進のかかる一番や優勝決定戦など、極限のプレッシャーがかかる場面でこそ、彼のメンタルの強さが際立ちます。「ここで勝たなければ男じゃない」というような、昭和の力士に通じる気骨を感じさせます。
インタビューで見せる笑顔と流暢な日本語
土俵上の鬼の形相とは裏腹に、勝利者インタビューで見せる笑顔は非常にチャーミングです。そして驚かされるのが、その流暢な日本語です。敬語を正しく使いこなし、質問の意図を的確に汲み取って答える姿からは、彼の知性と日本文化への深い適応が感じられます。
ファンへの感謝を口にし、謙虚な姿勢を見せる一方で、時折飛び出すユーモアも彼の魅力。この「強さと愛嬌」のバランスの良さが、老若男女問わず幅広い層から支持される理由でしょう。
努力家としての側面|怪我と向き合い肉体改造した軌跡
入門当初は線が細く、体重も110kg台でした。しかし、そこから現在の140kg台後半まで増量し、かつ動きのキレを失っていないのは、並々ならぬ努力の結果です。無理な増量は怪我のもとですが、彼は科学的なトレーニングと食事管理を取り入れ、質の高い筋肉を鎧のように纏いました。
また、足首や膝の怪我に悩まされた時期もありましたが、リハビリ期間中に上半身の強化に取り組むなど、転んでもただでは起きない精神力を持っています。派手な技の裏には、地味で過酷なトレーニングの日々があることを忘れてはいけません。
スポーツジャーナリストのアドバイス
「若手時代から取材していますが、彼の『負けず嫌い』エピソードは枚挙に暇がありません。ある日の稽古で、兄弟子に何度も転がされた時、彼は涙目になりがら『もう一丁!』と叫び続け、最後には兄弟子が根負けするまでぶつかり続けました。その姿を見て、私は『この子は必ず強くなる』と確信しました。彼のメンタルの強さは、誰かに教えられたものではなく、生まれ持った才能の一つなのです」
次世代の覇権は誰の手に?ライバル力士との関係図
大相撲の歴史は、常にライバル同士の激闘によって紡がれてきました。栃若、柏鵬、曙貴。そして令和の今、豊昇龍にも運命のライバルたちが存在します。彼らとの切磋琢磨こそが、豊昇龍を横綱へと押し上げる最大の要因となるはずです。
琴櫻(旧・琴ノ若)|良きライバルであり最大の壁
豊昇龍にとって最大のライバルと言えるのが、同じく大関の琴櫻です。祖父に元横綱を持つ「サラブレッド」同士であり、年齢も近く、昇進のペースも競い合ってきました。琴櫻の持ち味は、恵まれた体格を生かした重厚な右四つの相撲。機動力の豊昇龍とは対照的な「柔と剛」の関係です。
▼対 琴櫻 通算対戦成績の傾向
両者の対戦は常に熱戦となりますが、琴櫻が右四つ左上手を引いて十分に組むと、豊昇龍の技が封じられる場面が見られます。逆に、豊昇龍が動き回って琴櫻に十分な形を作らせなければ、速攻で勝機が生まれます。互いに手の内を知り尽くした二人の対戦は、今後10年間の角界の覇権を争う黄金カードとなるでしょう。
大の里|猛追する新怪物との力関係
近年、彗星のごとく現れた大の里の存在は、豊昇龍にとっても脅威です。規格外の体格とパワーで番付を駆け上がってきた新怪物は、豊昇龍より年下ですが、実力はすでに拮抗しています。
大の里の馬力に対し、豊昇龍がいかに技術とスピードで対抗するか。この図式は、かつての「千代の富士 対 小錦」のようなスリルを観客に与えます。豊昇龍としては、若手の壁として立ちはだかり、大関の意地を見せつけなければならない相手です。
阿炎・若元春ら実力者との相性と対策
優勝を狙う上で避けて通れないのが、阿炎や若元春といった個性派の実力者たちです。
- 対 阿炎: 長いリーチからの諸手突きを得意とする阿炎に対し、豊昇龍はいかに懐に入り込むかが鍵となります。突き放されれば不利、組めば有利。この距離感の攻防が見どころです。
- 対 若元春: 左四つの名手である若元春とは、四つ身の攻防になります。豊昇龍も左四つは取れますが、本職である若元春とガップリ組むのは危険。右からの攻めで崩す工夫が求められます。
モンゴル出身力士の系譜と先輩たち(照ノ富士・霧島)との関係
モンゴル出身力士のコミュニティにおいて、豊昇龍は次世代のリーダー格として期待されています。横綱・照ノ富士は、高い壁として君臨しつつも、後輩たちに背中で横綱の在り方を示しています。豊昇龍にとって照ノ富士は、倒さなければならない「ラスボス」であり、同時に相撲道の師のような存在でもあります。
また、先輩大関や関脇たちとの対戦を通じ、彼はモンゴル相撲の伝統である「技のデパート」としての系譜を受け継ぎつつあります。先輩たちへのリスペクトを持ちながらも、土俵上では容赦なく牙を剥く。その姿勢こそが、モンゴル出身力士の強さの源泉なのです。
横綱昇進への条件とクリアすべき課題
大関の地位に安住することなく、最高位「横綱」を目指す豊昇龍。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。横綱審議委員会やファンが求める基準は極めて高く、実力だけでなく「品格」も問われます。
「安定感」の欠如|取りこぼしを減らすための課題
横綱昇進の絶対条件は「連続優勝」または「それに準ずる成績」です。これを達成するために最も必要なのが「安定感」です。豊昇龍は爆発力がある一方で、格下相手に不意の一発を食らうなど、取りこぼしが完全にはなくなっていません。
特に、場所の中日(8日目)前後での黒星が、後半戦の優勝争いに響くケースが見られます。15日間、心身のコンディションを一定に保ち続けるスタミナと集中力の持続。これが「強い大関」から「横綱」へ脱皮するための最後のピースです。
体重増加と怪我のリスク管理
技術論の章でも触れましたが、豊昇龍の相撲は身体への負担が大きいスタイルです。特に、無理な体勢からの投げや、相手の重量を受け止める足腰には相当な負荷がかかっています。今後さらに体重を増やしてパワーをつけることは必要ですが、それが膝や足首の負担になっては本末転倒です。
「怪我をしない体作り」と「怪我をしない取り口へのモデルチェンジ」。このバランスをどう取るかが、選手寿命を左右します。真っ向から受けるだけでなく、いなす技術や、立ち合い一発で決める押し相撲の比率を高めることも検討すべきでしょう。
横綱審議委員会が求める「品格」と相撲内容
横綱には「品格」が求められます。豊昇龍の場合、闘争心が前面に出すぎるあまり、土俵態度が荒いと指摘されることが稀にあります。勝負に対する執念は美徳ですが、勝った後の所作や、負けた時の態度は、横綱になればより厳しく見られます。
「静かなる強さ」。感情をコントロールし、泰然自若とした態度で土俵に立つこと。叔父・朝青龍も苦しんだこの「品格」という課題を、豊昇龍がどう克服し、自分なりの横綱像を築き上げるかが注目されます。
綱取りのシナリオ|いつ頃の昇進が現実的か?
現実的なシナリオとして、まずは「2場所連続の好成績(例えば13勝以上の優勝と準優勝)」が求められます。ライバルたちがひしめく現状では容易ではありませんが、彼の成長速度を考えれば、遠くない未来にチャンスは巡ってくるはずです。
早ければ年内、遅くとも来年中には綱取りのチャンスを掴みたいところ。そのためには、まず一回の「全勝優勝」あるいは「圧倒的な内容での優勝」で、周囲に「次は横綱だ」という空気を作ることが先決です。
スポーツジャーナリストのアドバイス
「過去の名横綱たちと比較して、今の豊昇龍に足りない『あと一つ』の要素。それは『圧倒的な威圧感』です。立ち合いで相手が『勝てない』と萎縮してしまうようなオーラ。これは技術や筋力だけでなく、積み重ねた勝利への自信から生まれます。彼がもう一段階上の自信を手に入れた時、綱取りの扉は自然と開かれるでしょう。私たちは今、その進化の過程を目撃しているのです」
豊昇龍に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、検索意図の細かい隙間を埋めるため、ファンが気になっている素朴な疑問に簡潔にお答えします。
Q. 豊昇龍は結婚していますか?
現在のところ、豊昇龍関が結婚しているという公式な発表はありません。相撲に専念している時期であり、プライベートよりも土俵での結果を優先しているようです。将来、どのような伴侶を選ぶのかもファンの注目事の一つです。
Q. 視力が悪いそうですが、コンタクトを使用していますか?
はい、豊昇龍関は視力がかなり悪いことで知られています。土俵上では裸眼で取っていますが、相手の輪郭がぼやけて見えることもあるそうです。しかし、それを「相手の表情に惑わされず、全体の動きが見える」とプラスに捉えている発言もあり、研ぎ澄まされた感覚で補っているようです。日常生活では眼鏡を使用している姿も目撃されています。
Q. 化粧まわしのデザインや贈呈者は?
豊昇龍関の化粧まわしには、叔父・朝青龍関から贈られたものや、後援会から贈呈された勇壮な龍の描かれたものなどがあります。特に「龍」をモチーフにしたデザインが多く、彼の四股名と相まって非常に迫力があります。土俵入りでの鮮やかな化粧まわしにもぜひ注目してください。
Q. ファンレターの宛先やファンクラブはありますか?
ファンレターは所属する「立浪部屋」宛に送るのが確実です。公式ファンクラブについては、日本相撲協会の公式ファンクラブや、部屋の後援会に入会することで、より近い距離で応援することができます。最新情報は公式サイト等で確認することをお勧めします。
まとめ:豊昇龍は「令和の朝青龍」を超えられるか
ここまで、大関・豊昇龍の強さ、技術、そして課題について深掘りしてきました。彼は単なる「朝青龍の甥」という枠組みを自らの力で破壊し、現代相撲に適応した新しい強さの定義を作り上げようとしています。
本記事の要点まとめ
- DNAと進化: 叔父譲りの勝負根性と、レスリング仕込みの柔軟な「バネ」が融合したハイブリッドな強さを持つ。
- ライバルの存在: 琴櫻や大の里といった強力なライバルとの激闘が、彼をさらに高いステージへと押し上げる。
- 未来への課題: 横綱昇進のためには、怪我のリスク管理と、取りこぼしをなくす「絶対的な安定感」が不可欠。
豊昇龍が横綱になる日は、そう遠くない未来に必ず訪れるでしょう。しかし、それはゴールではなく、新たな伝説の始まりに過ぎません。「令和の朝青龍」ではなく、「初代・豊昇龍」として歴史に名を刻むその瞬間を、私たちは固唾を飲んで見守る必要があります。
ぜひ、今日からの本場所の取組では、勝敗だけでなく、彼の足元の粘りや、仕切りでの眼光に注目して観戦してみてください。そこには、相撲の奥深さと、一人の若者が頂点を目指すドラマが詰まっています。
豊昇龍 応援チェックリスト
- [ ] 今日の取組相手との過去の対戦成績をチェックしたか?
- [ ] 朝稽古や支度部屋でのコメントから、今日の調子を推測したか?
- [ ] 土俵際での「逆転の投げ」を見逃さないよう、最後まで目を離さずに見たか?
- [ ] 勝っても負けても、その闘志に拍手を送る準備はできているか?
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