かつて大相撲の歴史を塗り替える数々の大記録を打ち立てた「平成の大横綱」が、日本相撲協会を去ってから半年以上の月日が流れました。2026年1月現在、元横綱白鵬(元宮城野親方)は、自身が設立した新会社「白鵬ダヤン相撲&スポーツ」の代表として、角界の外側から相撲の普及とビジネス活動に邁進しています。
しかし、その退職劇は決して円満なものではありませんでした。2025年6月の退職に至る背景には、元弟子・北青鵬の暴力問題に端を発する組織との軋轢、そして長年にわたり積み重なった協会執行部との「修復不可能な溝」が存在しました。多くのファンが抱く「なぜ英雄は去らねばならなかったのか?」という疑問に対し、表層的なニュースだけでは見えてこない深層が存在します。
本記事では、角界取材歴25年の筆者が、元横綱白鵬の退職に至る全真相と、気になる「お金」の事情、散り散りになった弟子たちの現在、そして彼が描く「第2の人生」の野望について、徹底的に解説します。
この記事でわかること
- 協会退職に至った「本当の理由」とドロドロの内部事情
- 気になる退職金・功労金の推定額と現在の収入源
- 元弟子たちの移籍後の現状と白鵬の新たな野望
【2026年1月最新】元横綱白鵬は今、何をしているのか?
多くの相撲ファンが最も気にかけているのは、「協会を去った元横綱は、今どこで何をしているのか」という点でしょう。2025年6月の退職から半年が経過した2026年1月現在、彼は「元親方」という肩書きを捨て、一人のビジネスマン、そしてタレントとして、驚くほど精力的な活動を展開しています。かつての重圧から解放されたかのようなその姿を、詳細に追っていきます。
日本相撲協会退職から半年の現在地
2025年6月9日、日本相撲協会に退職届を提出し、受理されたその瞬間から、彼は「一般人」となりました。しかし、その後の動きは迅速でした。退職からわずか1ヶ月後には、自身のマネジメントとスポーツ事業を行う新会社を本格始動させ、公の場に姿を現しました。
現在の彼は、現役時代や親方時代のように国技館に通う日々とは無縁の生活を送っています。拠点は都内のオフィスに移り、スーツ姿で打ち合わせをこなし、海外と日本を行き来する多忙なスケジュールをこなしています。協会在籍時には制限されていたSNSでの発信も解禁され、トレーニング風景やビジネスの様子を積極的に公開。そこには、組織の論理に縛られず、自由に自身の哲学を表現できる喜びが垣間見えます。
特筆すべきは、彼の表情の変化です。親方時代、特に部屋閉鎖処分を受けてからの数ヶ月間、彼の顔には常に苦渋と緊張が張り付いていました。しかし、現在のメディア露出で見せる表情は、現役時代の全盛期を彷彿とさせる自信と、憑き物が落ちたような穏やかさが同居しています。
新会社「白鵬ダヤン相撲&スポーツ」での活動内容
彼が代表を務める新会社「白鵬ダヤン相撲&スポーツ」は、単なるタレント事務所ではありません。「相撲を世界へ」という彼の一貫した夢を実現するための事業体です。社名にある「ダヤン」とは、モンゴル語で「全宇宙」「世界」といった意味を含む言葉であり、彼の壮大なビジョンを象徴しています。
具体的な活動内容は多岐にわたります。
| 活動分野 | 具体的な内容 |
|---|---|
| イベント事業 | 子ども向けの相撲教室「白鵬キッズ・スモウ・キャンプ」の全国展開、および海外での相撲ショーの開催。 |
| 商品開発 | 現役時代の知見を活かした健康食品やサプリメントのプロデュース、オリジナルアパレルブランドの展開。 |
| コンサルティング | モンゴルと日本の企業をつなぐビジネスコーディネート、アスリートのセカンドキャリア支援。 |
特に力を入れているのが、相撲のエンターテインメント化です。協会という枠組みの中では実現できなかった、音楽や光の演出を取り入れた新しい形式の相撲イベントを企画しており、2026年中の開催を目指して準備を進めています。これは、伝統を守る協会とは異なるアプローチで相撲の魅力を広めたいという、彼なりの「相撲への恩返し」の形と言えるでしょう。
メディア露出とタレント活動の状況
退職直後は、スキャンダルの余波もありメディア露出は控えめでしたが、2025年末頃から徐々にテレビ番組やCMへの出演が増加しています。特にバラエティ番組では、現役時代の厳格なイメージとは異なる、ユーモア溢れる語り口が好評を博しています。
また、動画配信サービスでのドキュメンタリー出演や、ビジネス系メディアへの登壇など、活動の幅は「元力士」の枠を超えつつあります。解説者としてのオファーについては、協会との関係性からNHKの大相撲中継に登場することは現状ありませんが、民放のスポーツ番組でコメンテーターとして相撲を語る機会は増えており、その鋭い分析眼は健在です。
角界取材歴25年のジャーナリストのアドバイス
「退職後の彼の表情を見て、多くの関係者が『憑き物が落ちたようだ』と口を揃えます。親方時代、特に晩年は協会執行部との対立や弟子の不祥事対応で、精神的に極限状態にありました。組織人としての適性に悩み、がんじがらめになっていた彼にとって、退職は『敗北』ではなく、皮肉にも『解放』だったのかもしれません。現在の生き生きとした姿は、彼が本来持っていたプロデューサーとしての才能が開花し始めている証拠です。ファンの方々は、土俵上の彼とは違う、ビジネスマンとしての『第2の取組』に注目していただきたいと思います」
なぜ協会を去ることになったのか?騒動の全経緯を時系列で整理
2026年の現在から振り返っても、あの騒動は相撲史に残る激震でした。なぜ、将来の理事長候補とも目された大横綱が、定年を待たずに角界を去ることになったのか。その直接的な引き金となった「北青鵬問題」から、部屋閉鎖、転籍、そして退職に至るまでの複雑な経緯を、時系列に沿って正確に整理します。
【発端】2024年 北青鵬の暴力問題と「師匠としての監督責任」
すべての発端は、2024年初頭に発覚した、当時の宮城野部屋所属力士・北青鵬による弟弟子への暴力行為でした。日常的に行われていた暴力の内容は極めて悪質であり、被害を受けた弟子たちの証言によって事態は明るみに出ました。
ここで問題視されたのは、暴力そのものはもちろんのこと、師匠である宮城野親方(元白鵬)の対応でした。協会コンプライアンス委員会の調査によれば、師匠は暴力の事実を把握し得る立場にありながら、適切な指導や協会への報告を怠ったと認定されました。さらに、調査の過程で師匠としての指導能力やコンプライアンス意識の欠如が厳しく指摘され、これが後の重い処分へと繋がっていきます。
かつて自身も現役時代に数々の物議を醸した元横綱にとって、「師匠としての資質」を問われることは、致命的なアキレス腱となりました。協会側は、この問題を単なる個人の不祥事ではなく、部屋運営の構造的な欠陥として捉えたのです。
【処分】2階級降格と宮城野部屋の当面閉鎖処分
2024年2月、日本相撲協会は臨時理事会を開き、北青鵬に引退勧告、そして師匠である宮城野親方には「2階級降格(委員から年寄へ)」と「報酬減額」という極めて重い懲戒処分を下しました。しかし、衝撃はそれだけではありませんでした。
「師匠としての素養、自覚が大きく欠如している」として、宮城野部屋の「当面の間の閉鎖」が決定されたのです。これは事実上の「部屋取り潰し」に近い措置であり、伝統ある宮城野部屋の看板が一時的にせよ消滅することを意味しました。師匠の資格を剥奪された元横綱は、自身の部屋を持ちながら弟子を指導する権限を失い、一門の総帥である伊勢ヶ濱一門の預かりとなることが決まりました。
この処分は、過去の不祥事と比較しても異例の厳しさでした。そこには、「元横綱白鵬」という巨大な存在に対し、協会が断固たる姿勢でガバナンスを示そうとした意図が透けて見えます。
【転籍】伊勢ヶ濱部屋への合流と「部屋付き親方」としての苦悩
2024年4月、宮城野部屋の力士、行司、呼出ら全員が、同じ一門の伊勢ヶ濱部屋へ転籍しました。元横綱白鵬もまた、部屋持ち親方から一転して「部屋付き親方」となり、伊勢ヶ濱親方(元横綱旭富士)の指導下に入ることになりました。
ここでの生活は、プライドの高い彼にとって屈辱的なものであったと推測されます。自身の弟子たちが、新しい環境や指導方針に戸惑う姿を目の当たりにしながら、師匠として直接守ってやることができない。さらに、伊勢ヶ濱親方からは、指導者としての「再教育」を受ける立場となり、現役時代の実績が通用しない厳しい現実に直面しました。
また、メディアでは伊勢ヶ濱親方との確執説も囁かれましたが、実際には「教育係」としての伊勢ヶ濱親方の厳格さと、独自の相撲観を持つ元白鵬との間で、指導方針を巡る埋めがたいギャップが生じていたようです。この「飼い殺し」とも言える状況が、彼の精神を徐々に追い詰めていきました。
【決断】2025年6月 退職届提出の舞台裏
そして迎えた2025年6月。部屋閉鎖処分から1年以上が経過しても、部屋再興の目処は立っていませんでした。協会側が提示した「部屋再興の条件」は極めてハードルが高く、実質的に彼が再び師匠として独立することは不可能に近い状況となっていたのです。
「このまま協会にいても、自分も弟子も幸せになれない」。そう判断した彼は、ついに退職を決断します。退職届の提出は電撃的でしたが、水面下では数ヶ月前から準備が進められていました。彼は最後の抵抗としてではなく、自らの尊厳と未来を守るための「戦略的撤退」として、協会を去る道を選んだのです。
▼ 騒動の時系列・年表(2024年〜2026年)
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年1月 | 北青鵬の暴力問題が発覚。協会コンプライアンス委員会が調査開始。 |
| 2024年2月 | 理事会にて北青鵬に引退勧告、宮城野親方に2階級降格処分。宮城野部屋の閉鎖が決定。 |
| 2024年4月 | 宮城野部屋の全員が伊勢ヶ濱部屋へ転籍。元白鵬は部屋付き親方として再出発。 |
| 2024年〜2025年春 | 伊勢ヶ濱部屋にて指導にあたるも、部屋再興の条件を巡り協会側と協議難航。 |
| 2025年5月 | 退職の意向を周囲に漏らし始める。水面下で新会社設立の準備。 |
| 2025年6月 | 日本相撲協会に退職届を提出、受理される。 |
| 2025年7月 | 新会社「白鵬ダヤン相撲&スポーツ」設立を発表。 |
| 2026年1月 | 現在に至る。ビジネス、タレント活動を展開中。 |
【深層解説】表向きの理由とは違う「退職の真因」を独自分析
表向きには「一身上の都合」や「北青鵬問題の責任」とされる退職ですが、深層を探ると、そこには単なる不祥事処理では片付けられない、協会組織と元横綱白鵬という個人の間に横たわる構造的な対立が浮かび上がります。なぜ彼は「許されなかった」のか。その真因を独自に分析します。
協会執行部との間に横たわっていた「決定的で修復不可能な溝」
退職の最大の要因は、協会執行部との信頼関係の欠如にありました。現役時代から、カチ上げや張り手などの取り口、土俵上での万歳三唱、審判批判とも取れる言動など、彼の振る舞いは伝統を重んじる協会の意向と度々衝突してきました。
協会側にとって、彼は「相撲を世界に広めた功労者」であると同時に、「伝統や秩序を壊しかねない危険分子」でもありました。この相互不信は、親方になってからも解消されることはなく、むしろ増幅していきました。執行部は彼の影響力が親方として肥大化することを警戒し、彼は協会の保守的な体質に苛立ちを募らせる。この冷え切った関係性が、北青鵬問題を機に一気に表面化したと言えます。
「一代年寄」廃止問題から続いていた冷戦構造
時計の針を少し戻すと、彼が現役引退する際に起きた「一代年寄」を巡る攻防が、この悲劇の遠因となっています。大横綱だけに認められるとされた一代年寄(現役名のまま親方になれる特権)の授与が、有識者会議の提言によって事実上廃止されたことは、彼にとって大きな屈辱でした。
彼は「白鵬」の名で親方になることを切望していましたが、結果として「間垣」さらに「宮城野」という年寄株を取得せざるを得ませんでした。この時、協会側が示した「特別扱いはしない」という明確な意思表示は、彼の中に協会への不信感を植え付ける決定打となりました。退職劇は、この時に始まった「冷戦」の最終的な帰結だったのです。
誓約書へのサインと「再独立」への道が断たれた絶望感
宮城野部屋閉鎖時、彼は協会に対して「師匠としての再教育を受ける」旨の誓約書にサインさせられたと報じられています。しかし、関係者への取材によれば、この再教育期間が終わる明確な期限は設けられておらず、部屋再興の条件も「伊勢ヶ濱一門の承認」や「執行部の全会一致」など、極めて達成困難なものでした。
つまり、彼は「いつ終わるとも知れない謹慎期間」を過ごし続けることを強いられたのです。努力すれば報われる土俵の世界とは異なり、政治的な力学で未来が閉ざされていると感じた時、彼の中で「協会に残って戦う」というモチベーションが完全に折れたことは想像に難くありません。
組織の論理 vs 英雄の自負:どちらが正しかったのか
この騒動を「どちらが悪かったか」という二元論で語ることは困難です。協会側には、公益財団法人としてコンプライアンスを徹底し、暴力根絶を成し遂げるという正義がありました。一方で、元白鵬には、圧倒的な実績と相撲への情熱をもって、新しい時代の相撲界を築きたいという正義がありました。
しかし、日本の伝統組織である相撲協会において、「組織の論理」は絶対です。個人の突出した力や人気が、組織の規律を上回ることは許されません。元白鵬の「英雄の自負」は、協会の「組織の論理」の前に敗れ去りました。これは、グローバルな価値観を持つ彼と、ドメスティックな伝統を守る協会との、文化的な衝突でもあったのです。
元相撲担当記者のアドバイス
「協会が最も恐れていたのは、白鵬の影響力が制御不能になることでした。もし彼が一大勢力を築き、将来的に理事長選に出馬するようなことがあれば、協会の勢力図は一変します。北青鵬問題は、協会にとって彼の影響力を削ぐための『渡りに船』だった側面も否定できません。一方で、白鵬自身も日本の組織特有の『根回し』や『空気を読む』文化を軽視しすぎました。ガバナンスとカリスマ性の衝突、これが今回の本質です」
気になる「お金」の話:退職金・功労金と現在の年収
英雄といえども、生活にはお金が必要です。特に、相撲協会を退職する際のお金事情は、一般企業とは桁が違う一方で、特殊な規定が存在します。ここでは、多くの人が関心を寄せる「退職金」「功労金」の真実と、実業家となった現在の推定年収について、具体的な数字を交えて検証します。
懲戒処分は退職金にどう響いたのか?(推定支給額の試算)
日本相撲協会の寄附行為(定款に相当)や規定に基づけば、親方の退職金は在職期間や役職に応じて算出されます。元白鵬の場合、現役期間が長く、横綱在位期間も歴代最長であったため、本来であれば相当額の退職金が見込まれました。
しかし、退職時の彼は「委員」から「年寄」への降格処分を受けていた状態でした。退職金規定には、懲戒処分を受けた者に対する減額規定が存在します。通常、自己都合退職であっても数千万円規模になりますが、今回のケースでは、本来の支給額から30%〜50%程度の減額が適用された可能性が高いと推測されます。それでも、勤続年数(力士期間含む)を加味すれば、推定で3,000万円〜5,000万円程度は支給されたと見られます。
通常なら数億円?支払われなかった「功労金」の真実
退職金以上に大きな意味を持つのが「功労金」です。過去の大横綱、例えば北の湖や千代の富士(九重)クラスであれば、引退や退職に際して、協会から億単位の功労金が支払われることが慣例でした。これは明文化された規定というよりは、理事会の決議による「特別ボーナス」の性質を持ちます。
しかし、元白鵬に関しては、この「功労金」はゼロ、もしくは極めて少額であったと見られています。理由は明白で、不祥事による処分中での退職であったためです。協会に多大な迷惑をかけたとして、功労を称える名目が立ちませんでした。もし円満に定年退職していれば、優勝45回の実績からして2億〜3億円の功労金もあり得ただけに、経済的な損失は計り知れません。
現在の収入源は?現役時代や協会時代との比較
では、現在は経済的に困窮しているのでしょうか? 答えは「NO」です。むしろ、協会時代よりも収入の天井は高くなっています。現在の主な収入源は以下の通りです。
- 会社役員報酬: 自身の会社の代表としての報酬。
- スポンサー契約: 協会を離れたことで、個人的なスポンサー契約が可能に。
- 出演料・講演料: テレビ、イベント、講演会(1本100万円〜とも言われる)のギャランティ。
- 資産運用: 現役時代に築いた莫大な資産の運用益。
▼ 白鵬の推定収入推移(現役・親方時代・現在)
| 時期 | 推定年収 | 主な収入源 |
|---|---|---|
| 現役時代(全盛期) | 2億〜3億円 | 給与、懸賞金、優勝賞金、CM出演料など |
| 親方時代(宮城野) | 2,000万〜3,000万円 | 協会からの給与、部屋維持費等の余剰分(※処分後は減額) |
| 現在(2026年) | 5,000万〜1億円超 | 役員報酬、講演料、広告収入、イベント収益 |
※数値は取材に基づく推定であり、実際の金額を保証するものではありません。
親方時代の年収は、安定はしているものの、現役時代に比べれば大幅に下がっていました。退職により、その「枠」が外れた今、ビジネスの手腕次第では現役時代に迫る、あるいはそれ以上の富を築く可能性を秘めています。
スポーツ紙デスクのアドバイス
「相撲界の退職金規定は複雑ですが、最も大きいのは『功労金』が出るかどうかです。貴乃花親方の退職時も話題になりましたが、協会と対立して辞める場合、この功労金はまず期待できません。白鵬にとって数億円の損失は痛いでしょうが、彼は現役時代から『お金は後からついてくる』と語っていました。今のビジネス展開を見る限り、その損失を埋めるだけの勝算を持って動いているはずです」
残された弟子たちは今:伊勢ヶ濱部屋での奮闘と改名
元横綱の退職によって最も影響を受けたのは、彼を慕って入門した弟子たちです。師匠を失い、部屋を失い、環境が激変した彼らは今、どうしているのでしょうか。ファンの間でも心配の声が絶えない「元宮城野部屋力士」たちの現状を追います。
旧宮城野部屋力士たちの移籍後の番付推移
伊勢ヶ濱部屋に移籍した力士たちは、当初こそ環境の変化に戸惑い、成績を落とす者もいました。稽古の内容や生活リズム、食事の味付けに至るまで、部屋が違えば文化も異なります。特に、伊勢ヶ濱部屋の稽古は角界一とも言われる厳しさで知られており、その順応には時間を要しました。
しかし、移籍から1年以上が経過した2026年1月現在、多くの力士が本来の力を発揮し始めています。質の高い稽古相手に恵まれたことで、地力が向上し、幕下や三段目で番付を上げる力士が増えてきました。彼らは「元横綱の弟子」というプライドを胸に、新しい環境で生き残る道を必死に模索しています。
「伯桜鵬」ほか有望力士たちの怪我と復帰状況
中でも注目を集めるのが、かつて「令和の怪物」と呼ばれ、白鵬の最高傑作と目された伯桜鵬です。彼は肩の怪我により長期休場を余儀なくされ、一時は番付を大きく下げました。部屋の騒動と怪我のリハビリという二重の苦難に直面しましたが、現在は幕内復帰を目指して土俵に戻ってきています。
彼の復帰戦での相撲は、以前のような強引さが影を潜め、より慎重で技術的な相撲へと進化していました。師匠がいなくなった今、彼は自らの力で這い上がる覚悟を決めたようです。ファンの声援も、彼に対しては一際大きく、その復活は旧宮城野部屋の希望の光となっています。
突然の改名ラッシュ:その背景にある「一門の掟」と「師匠の親心」
移籍後、旧宮城野部屋の力士たちの多くが四股名を改名しました。これには二つの理由があります。一つは「心機一転」という本人の意思。もう一つは、伊勢ヶ濱部屋(および伊勢ヶ濱一門)の命名規則や伝統に合わせるという側面です。
一部のファンからは「白鵬の痕跡を消そうとしているのではないか」という懸念の声も上がりましたが、実際には、新しい師匠である伊勢ヶ濱親方が、彼らを「外様」としてではなく「自分の弟子」として受け入れるための親心でもあります。新しい四股名は、彼らが伊勢ヶ濱部屋の一員として生きていくための新しいIDカードなのです。
白鵬と元弟子たちは今でも連絡を取り合っているのか?
公式には、退職した元親方が現役力士と頻繁に接触することは、協会の規定や慣例上、好ましくないとされています。特に、引き抜きや裏での指導を疑われるような行為は厳禁です。
しかし、個人的な絆までが断ち切られたわけではありません。関係者によれば、節目節目で元弟子たちから元横綱へ報告が入ることはあるようです。また、元横綱もメディアを通して弟子たちの活躍を見守っており、インタビューなどで彼らへのエールを送ることもあります。直接的な指導はできなくとも、師弟の精神的な繋がりは、今も形を変えて続いています。
相撲ライターのアドバイス
「移籍した力士たちが直面したメンタル面の負担は計り知れません。突然『明日からこの部屋の子になりなさい』と言われるのは、会社がいきなり合併して上司も社風も変わるようなものです。それでも彼らが辞めずに相撲を続けているのは、相撲が好きだという気持ちと、いつか元師匠に恩返しをしたいという思いがあるからでしょう。改名は寂しいですが、彼らが新しい環境で生き抜くための『鎧』を着替えたと捉えて、応援してあげてください」
白鵬が目指す「第2の人生」と相撲界への新たな関わり方
協会を退職したことで、白鵬と相撲との関係は終わったのでしょうか? いえ、むしろ「世界」というより広い土俵での挑戦が始まりました。彼が目指す第2の人生のビジョンと、将来的な相撲界への復帰の可能性について探ります。
「白鵬杯」の継続と世界規模でのアマチュア相撲普及
彼が最も情熱を注いでいるのが、自身が主催する少年相撲大会「白鵬杯」です。退職後もこの大会は継続されており、むしろ規模は拡大しています。協会主催ではない独自の大会として、世界各国から少年力士を招待し、国際交流の場として定着しています。
彼は常々、「相撲をオリンピック種目にしたい」と語っていました。協会内では夢物語とされたこの目標も、フリーの立場となった今なら、国際的なロビー活動やプロモーションを通じて、より具体的に動くことができます。彼は「普及」という側面から、相撲界に貢献し続けようとしています。
ビジネスマンとしての白鵬:モンゴルとの架け橋
ビジネスマンとしての顔も重要です。母国モンゴルでは国民的英雄であり、日本との経済・文化交流のキーマンとしての役割が期待されています。新会社では、モンゴルの資源や特産品を日本に紹介する事業や、逆に日本の技術をモンゴルに輸出するサポートなどを行っています。
かつて横綱として日蒙の架け橋となった彼は、今度はビジネススーツを着て、両国の発展に寄与しようとしています。この成功は、引退した力士のセカンドキャリアの新しいモデルケースになる可能性を秘めています。
将来的な相撲協会復帰の可能性は0%か?
最後に、誰もが気になる「協会復帰」の可能性についてです。現状では、その可能性は限りなくゼロに近いと言わざるを得ません。退職の経緯や執行部との確執を考えれば、数年以内に彼が親方として戻ることは非現実的です。
しかし、相撲界の歴史を見れば、一度去った人間が時を経て戻るケースや、外部から改革のために招かれるケースも皆無ではありません。もし彼が外部で圧倒的な実績を作り、相撲界にとって「無視できない存在」になった時、あるいは協会の体制が大きく変わった時、未来は変わるかもしれません。彼自身も「相撲への愛」は失っておらず、いつか何らかの形で恩返しをしたいという思いは持ち続けているでしょう。
スポーツビジネスコンサルタントのアドバイス
「元アスリートのセカンドキャリアにおいて、白鵬さんのような『独立起業型』はリスクも高いですが、成功すればリターンも大きいです。重要なのは、現役時代の名声に頼るだけでなく、実業家としての実力を示すこと。彼が世界で相撲ビジネスを成功させれば、相撲協会側も彼をパートナーとして認めざるを得なくなる日が来るかもしれません。外から相撲界を変える、それが彼の新しい戦い方なのです」
白鵬退職に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、元横綱白鵬の退職にまつわる疑問について、2026年1月時点の情報を基にQ&A形式で簡潔に回答します。
Q. 結局、白鵬は相撲協会を「クビ」になったのですか?
A. 形式上は「クビ(解雇)」ではなく、本人からの申し出による「依願退職」です。ただし、部屋閉鎖や降格処分などにより、実質的に協会内に居場所を失った末の退職であり、事実上の「追放」に近い形と見る向きも多いのが実情です。
Q. 宮城野部屋が復活する可能性はありますか?
A. 元白鵬が師匠として復活させる可能性は極めて低いです。宮城野の年寄株は現在協会預かり、あるいは一門内で管理されている状態と考えられます。将来的には別の親方が「宮城野」を襲名して部屋を興す可能性はありますが、それはかつての「白鵬の宮城野部屋」とは別物になります。
Q. 伊勢ヶ濱親方との仲が悪かったというのは本当ですか?
A. 不仲というよりは、「指導方針の決定的な違い」がありました。伝統と規律を重んじる伊勢ヶ濱親方と、合理的で新しい手法を好む元白鵬の間には、埋めがたい溝があったと言われています。転籍後は、上司と部下という関係性の中で、元白鵬側がかなり窮屈な思いをしていたことは確かです。
ベテラン相撲記者のアドバイス
「部屋転籍時の人間関係は非常にデリケートです。特に元横綱同士の場合、プライドもぶつかり合います。伊勢ヶ濱親方としても、不祥事を起こした部屋を引き受けるのはリスクを伴う決断でした。外野が思うほど単純な『仲の良し悪し』ではなく、一門を守るための政治的な判断と、現場での軋轢が複雑に絡み合っていたのです」
Q. 今後、解説者としてテレビに出ることはありますか?
A. NHKの大相撲中継への出演は、協会との関係上、当面は難しいでしょう。しかし、民放のバラエティ番組やスポーツニュースでのゲスト解説としては既に出演しています。協会の管轄外であれば、彼の解説を聞くチャンスは今後増えていくはずです。
まとめ:稀代の横綱・白鵬の功罪を超えて
元横綱白鵬の退職騒動は、相撲界が抱える「伝統と革新」「組織と個人」という永遠の課題を浮き彫りにしました。2026年の今、彼は協会という枠を飛び出し、荒野で新しい道を切り拓いています。
彼の現役時代の振る舞いや、弟子への指導責任については、厳しい評価が下されて然るべきです。しかし同時に、彼が残した前人未踏の記録や、相撲を世界に広めようとする情熱までが否定されるべきではありません。私たちは、一人の人間が挫折を経て、どのように立ち上がり、新しい人生を歩んでいくのか、そのドキュメントを目撃しているのです。
白鵬退職騒動の要点チェックリスト
- 2025年6月に協会を退職し、現在は新会社社長として活動中。
- 退職の直接原因は北青鵬問題だが、根底には協会との深い溝があった。
- 退職金は減額支給されたと見られ、功労金はほぼゼロの可能性が高い。
- 弟子たちは伊勢ヶ濱部屋に移籍し、改名を経て奮闘している。
- 現在は「白鵬杯」やビジネスを通じて、外側から相撲界を支えている。
相撲ファンとして、彼の選んだ道をどう評価するかは人それぞれです。しかし、土俵を降りてもなお、彼が私たちに話題と興奮を提供し続ける「規格外」の存在であることだけは間違いありません。これからの彼の活動にも、ぜひ注目してみてください。
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