メジャーリーガー・大谷翔平選手がMVP受賞時のインタビューで抱いていた愛犬「デコピン」。その愛らしい姿とハイタッチをする賢さは世界中で話題となりましたが、同時に「あの犬種は何?」「私も飼ってみたい」という声が急増しました。
結論から申し上げますと、デコピンの犬種は「コーイケルホンディエ(Kooikerhondje)」というオランダ原産の希少犬種です。
非常に知能が高く、飼い主への忠誠心が強い素晴らしい犬種ですが、プロのドッグトレーナーの視点から申し上げますと、「初心者には飼育難易度がやや高い」という現実的な側面も持ち合わせています。
この記事では、以下の3点を中心に、単なるニュース記事では語られない「プロ視点の深掘り解説」をお届けします。
- コーイケルホンディエの基本データと「デコピン」の名前の由来
- プロのトレーナーが見る「大谷選手とこの犬種の相性が抜群な理由」
- 最新の価格相場と、飼う前に絶対知っておくべき運動量やしつけの現実
「かわいいから」という理由だけで飼い始め、後悔することがないように。そして、もし迎え入れるなら最高のパートナーになれるように。18年のトレーナー経験に基づき、忖度なしの真実をお伝えします。
デコピンの正体「コーイケルホンディエ」とはどんな犬?
まずは、ペルソナであるあなたが最も知りたいであろう「コーイケルホンディエ」という犬種の基本的なスペックについて解説します。日本ではまだ馴染みの薄いこの犬種ですが、その歴史を知ることで、彼らの性格や行動特性がより深く理解できるようになります。
オランダ原産の元カモ猟犬!その歴史とルーツ
コーイケルホンディエは、オランダを原産とする小型のスパニエル系犬種です。その歴史は古く、16世紀頃の絵画にも描かれているほどです。彼らの本来の仕事は、「カモ猟」の助手でした。
「猟犬」といっても、獲物を追いかけ回して捕まえるタイプではありません。ふさふさとした大きな尻尾を巧みに振りながら、カモをおとり捜査のように網(ダック・デコイ)の奥へと誘導するのが彼らの役割でした。この作業には、飼い主の指示を正確に理解する知能と、獲物を驚かせないような慎重さ、そして長時間動き続けるスタミナが求められます。
第二次世界大戦後には絶滅の危機に瀕しましたが、愛好家たちの努力によって復活を遂げました。日本ではまだ登録頭数が少なく、街中で見かけることは稀な存在です。
名前「デコピン」と本来の名前「デコイ」の由来
大谷選手が愛犬に「デコピン」というユニークな名前を付けたことは大きなニュースになりましたが、本来の名前が「デコイ(Decoy)」であったことは、この犬種のルーツと深く関係しています。
前述の通り、コーイケルホンディエはカモ猟の仕掛けである「Decoy(おとり)」を使って猟をしていた犬種です。英語圏ではこの犬種を説明する際に必ず「Decoy dog」という言葉が使われます。元の名前である「デコイ」は、まさにこの犬種のアイデンティティそのものを示していたのです。
大谷選手は、アメリカの人々にとって発音しやすい「デコイ」をそのまま呼び名として残しつつ、日本人にとって親しみやすく、かつユーモアのある「デコピン」という日本名を付けたと言われています。このネーミングセンスにも、犬種へのリスペクトと愛情が感じられます。
日本での登録頭数は?実は超希少なレア犬種
「ペットショップで見たことがない」という方も多いでしょう。それもそのはず、コーイケルホンディエは日本国内において非常に希少な犬種です。
一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)のデータによると、近年の年間登録頭数はわずか100頭〜150頭前後で推移しています。トイ・プードルやチワワが年間数万頭登録されるのと比較すると、その少なさは歴然です。「デコピンフィーバー」によって注目度は爆発的に上がりましたが、繁殖が難しい面もあり、急激に頭数が増えることは考えにくいのが現状です。
以下に、コーイケルホンディエの基本的なデータをまとめました。飼育環境を考える際の参考にしてください。
| 項目 | データ |
|---|---|
| 原産国 | オランダ |
| 英語表記 | Nederlandse Kooikerhondje |
| JKCグループ | 8G(7G以外の鳥猟犬) |
| サイズ(体高) | オス:約40cm / メス:約38cm(中型犬に近い小型犬) |
| 体重 | 9kg 〜 11kg程度 |
| 平均寿命 | 12歳 〜 14歳前後 |
| 毛色 | ホワイト&オレンジレッド(明確な斑) |
なぜ大谷選手はこの犬種を選んだのか?プロ独自の相性分析
多くの犬種が存在する中で、なぜ大谷選手はコーイケルホンディエを選んだのでしょうか。単に「珍しいから」という理由だけではないと、私は推測します。プロのドッグトレーナーの視点で分析すると、アスリートである大谷選手とこの犬種の間には、驚くほど高い親和性が見えてきます。
アスリート気質にマッチする高い運動能力と知能
コーイケルホンディエは、見た目の愛らしさとは裏腹に、非常に高い運動能力を持っています。元猟犬としてのスタミナはもちろん、瞬発力やアジリティ(障害物競走)をこなす身体能力は、トップクラスのアスリート犬と言っても過言ではありません。
大谷選手のようなトップアスリートは、日々のトレーニングや体調管理を徹底しています。共に体を動かし、アクティブな時間を共有できるパートナーとして、これほど適した犬種は少ないでしょう。彼らは「ただ散歩する」だけではなく、「目的を持って動く」ことを好みます。ボール遊びやフリスビーなど、飼い主とインタラクティブに遊ぶ時間は、大谷選手にとっても良いリフレッシュになっているはずです。
「静と動」の切り替えが得意なパートナーとしての資質
私が多くのコーイケルホンディエを見てきて感じる最大の魅力は、「オンとオフの切り替え」の上手さです。屋外では活発に走り回りますが、室内に入ると非常に落ち着いて過ごすことができます。
遠征や激しいトレーニングで疲労した大谷選手が自宅でリラックスする際、過度に要求吠えをしたり、騒ぎ立てたりすることなく、静かに寄り添うことができる。この「空気の読める賢さ」こそが、多忙な大谷選手が彼を選んだ決定的な理由の一つではないでしょうか。
▼もっと詳しく:コーイケルホンディエの作業意欲について(クリックで展開)
元々カモ猟の「おとり(デコイ)」として活躍していた彼らは、飼い主のハンドシグナルや微細な指示に従って複雑な動きをすることに、無上の喜びを感じる「作業犬(ワーキングドッグ)」の気質を持っています。
単に愛玩動物として可愛がるだけでなく、「一緒に何かを成し遂げたい」「トレーニングを通じてコミュニケーションを深めたい」と考える大谷選手のストイックな姿勢と、彼らの作業意欲は波長が完全に一致していると考えられます。彼らにとって、トレーニングは「労働」ではなく「最高に楽しい遊び」なのです。
認定ドッグトレーナーのアドバイス
「この犬種は誰にでも愛想を振りまくわけではなく、信頼した『ハンドラー(飼い主)』に対してのみ、深い忠誠心を示します。大谷選手とデコピンがハイタッチをする映像をご覧になった方も多いと思いますが、あのスムーズな連携は、単なるしつけの成果ではなく、お互いを信頼し合っている『バディ(相棒)』としての強い絆の証です。飼い主がリーダーシップを示せば示すほど、彼らは輝きます」
「賢いが繊細」コーイケルホンディエの性格と特徴
ここからは、より具体的にコーイケルホンディエの性格について深掘りしていきます。「賢い」「かわいい」というポジティブな面だけでなく、飼育する上でハードルとなり得る「繊細さ」についても、プロとして包み隠さずお伝えします。
陽気でフレンドリーだが、警戒心も強い「二面性」
コーイケルホンディエの性格を一言で表すなら、「陽気な慎重派」です。家族に対しては非常に明るく、愛情深く接します。常に尻尾を振って喜びを表現する姿は、家庭内のアイドルそのものです。
しかし一方で、元来の猟犬としての本能から、環境の変化や知らない人に対しては強い警戒心を見せることがあります。誰にでも尻尾を振ってついていくゴールデン・レトリバーのような性格とは異なり、初対面の人には距離を置き、観察するような慎重さを持っています。この「二面性」を理解していないと、「思ったより懐かない」「吠えてしまう」という悩みに繋がることがあります。
驚異的な学習能力と、それゆえの「しつけの難しさ」
「賢い犬だから飼いやすい」というのは、実は大きな誤解です。トレーナーの業界では「賢い犬ほど、飼い主の力量が試される」と言われています。
コーイケルホンディエは学習能力が極めて高く、良いことも悪いことも瞬時に覚えます。例えば、一度「吠えればおやつが貰える」と学習してしまうと、その修正には多大な労力を要します。また、飼い主の態度が一貫していないと、「この人の言うことは聞かなくていい」と見透かされてしまうこともあります。
彼らの知能の高さは、適切なトレーニングを行えば最高のパートナーになりますが、放置すれば「知恵の回るいたずらっ子」になってしまうリスクと隣り合わせなのです。
チャームポイントの「イヤリング(飾り毛)」と外見的特徴
性格だけでなく、その美しい外見も大きな魅力です。最大の特徴は、垂れた耳の先端にある黒い飾り毛です。これは愛好家の間で「イヤリング」と呼ばれ、コーイケルホンディエの美しさの象徴とされています。
被毛はシルクのように滑らかで、白地に鮮やかなオレンジレッドの斑が入ります。尻尾は豊かな飾り毛で覆われており、感情に合わせて優雅に揺れます。サイズは柴犬より少し小さい程度ですが、手足が長くスラっとした体型のため、非常にエレガントな印象を与えます。
【飼育検討者へ】プロが伝える「飼うための覚悟」と注意点
さて、ここからが本記事の核心部分です。「デコピンを見て飼いたくなった」という佐藤様のような方に、私が最もお伝えしたい「飼育の現実」についてお話しします。コーイケルホンディエは素晴らしい犬種ですが、決して「誰にでも飼える犬」ではありません。
運動量は「小型犬並み」ではない!必要な散歩と遊びの時間
「中型犬に近い小型犬だから、散歩は30分くらいでいいだろう」と考えているなら、飼育は諦めた方が賢明です。
彼らの運動欲求は、ボーダー・コリーやジャック・ラッセル・テリアに近いものがあります。毎日の散歩は最低でも1日2回、合計1時間以上は必須です。しかも、ただ歩くだけでは不十分です。匂いを嗅がせたり、途中でコマンドを出して走らせたりと、脳を使わせるような質の高い運動が求められます。
雨の日でも、体調が悪い日でも、彼らの「動きたい欲求」は止まりません。共働きで忙しい中でも、毎朝毎晩、彼らのために時間を確保する覚悟が必要です。
共働き家庭での留守番は可能?分離不安のリスク管理
コーイケルホンディエは飼い主への依存度が高いため、長時間の留守番が苦手な傾向にあります。これを専門用語で「分離不安」と呼びますが、独りぼっちにされるストレスから、自分の手足を噛んだり、ずっと吠え続けたりする問題行動が出やすい犬種です。
共働き家庭で飼うことが不可能ではありませんが、子犬の頃からクレートトレーニング(ハウスで落ち着く練習)を徹底し、徐々に留守番に慣れさせる「独り立ちの練習」が不可欠です。ペットカメラを設置したり、知育玩具を活用したりする工夫も必要になるでしょう。
認定ドッグトレーナーのアドバイス
「私が過去に相談を受けた事例では、『可愛いから』と運動を疎かにし、休日にしか遊んであげなかった結果、ストレスが爆発して家具を破壊したり、来客に噛み付こうとしたりするケースがありました。彼らは『疲れるまで遊ばせてくれる飼い主』を求めています。週末にはドッグランやアジリティ競技に参加して発散させるなど、ライフスタイルを『犬中心』に変える覚悟が必要です」
お手入れは大変?ダブルコートの抜け毛事情
美しい被毛を維持するためには、日々のブラッシングが欠かせません。彼らの被毛は「ダブルコート」と呼ばれる二重構造になっており、特に春と秋の換毛期には、驚くほどの量の毛が抜けます。
部屋の隅に毛玉が転がるのは日常茶飯事です。「犬の毛が洋服につくのが嫌」「部屋は常にピカピカにしておきたい」という方には、正直おすすめできません。この抜け毛さえも愛せるかどうかが、飼い主としての資質の一つと言えるでしょう。
かかりやすい病気と遺伝性疾患(フォン・ウィルブランド病など)
純血種である以上、遺伝的な疾患のリスクも理解しておく必要があります。コーイケルホンディエで特に注意が必要なのが「フォン・ウィルブランド病(VWD)」という血液の病気です。これは血が止まりにくくなる遺伝性疾患で、避妊・去勢手術の際に発覚することもあります。
また、膝蓋骨脱臼(パテラ)や眼の疾患も見られます。お迎えする際は、親犬の遺伝子検査の結果をしっかりと開示してくれる、信頼できるブリーダーを選ぶことが何より重要です。
価格相場と入手難易度|デコピンフィーバーの影響は?
実際に飼育を検討する場合、避けて通れないのが「入手方法」と「価格」の問題です。現在、この犬種を取り巻く環境は、デコピンの話題性によって大きく変化しています。
高騰する価格相場と現在の予約状況
数年前まで、コーイケルホンディエの価格相場は30万円〜40万円程度でした。しかし、大谷選手の報道以降、問い合わせが殺到し、価格は急騰しています。
現在の相場は50万円〜80万円、血統が良い場合や美しい模様の個体では100万円を超えるケースも珍しくありません。それでも「欲しい」という人が後を絶たず、多くの優良ブリーダーの元では「1年以上待ち」という予約状況が続いています。
ペットショップにはいない?優良ブリーダーの探し方
基本的に、コーイケルホンディエが街のペットショップのショーケースに並ぶことはまずありません。繁殖が難しく、頭数が少ないため、ブリーダーからの直接譲渡が一般的です。
インターネットで「コーイケルホンディエ ブリーダー」と検索し、犬舎の見学を申し込むのが第一歩です。しかし、すぐに見学できるとは限りません。まずはメールで熱意を伝え、出産情報を待つという粘り強さが必要です。
「パピーミル(悪質繁殖業者)」に注意すべき理由
ここで最も注意していただきたいのが、流行に便乗した「パピーミル(子犬工場)」の存在です。無理な繁殖を繰り返す悪質な業者は、遺伝病の検査を怠ったり、劣悪な環境で飼育したりしている場合があります。
「すぐに買えます」「格安です」といった言葉には裏があると思ってください。健康で精神的に安定した子犬を迎えるためには、親犬を見せてくれるか、飼育環境が清潔か、そしてブリーダー自身が犬種に深い愛情と知識を持っているかを、ご自身の目で厳しくチェックする必要があります。
▼入手までの基本的なフローチャート(クリックで展開)
- 情報収集:専門のブリーダーサイトや犬種クラブの情報をチェックする。
- 問い合わせ:ブリーダーに飼育環境や家族構成を伝え、譲渡可能か相談する。
- 見学・面談:実際に犬舎を訪れ、親犬やブリーダーの人柄を確認する。
- 予約:信頼できると判断したら予約金を支払い、出産を待つ(数ヶ月〜1年以上)。
- 誕生・成約:子犬が生まれたら正式に契約を結ぶ。
- お迎え:生後60日以降、社会化の基礎が終わった頃に迎え入れる。
コーイケルホンディエに関するよくある質問 (FAQ)
最後に、私がトレーナーとしてよく受ける質問にお答えします。佐藤様が抱えているかもしれない「共働き」「マンション」といった懸念点についても触れておきましょう。
Q. マンションでも飼えますか?
認定ドッグトレーナーのアドバイス
「規約で『中型犬可』となっていれば物理的には可能ですが、注意が必要です。コーイケルホンディエは警戒心から『番犬』のように吠えることがあります。特に廊下を歩く人の足音などに反応しやすいため、低層階やエレベーター前の部屋では遮音対策が必須です。また、運動不足は無駄吠えの最大の原因になりますので、庭がない分、散歩の質を高める努力が求められます」
Q. 子供がいる家庭でも大丈夫?
基本的には子供とも仲良くできますが、「子供のおもちゃ」にされることは好みません。犬が静かに寝ているときは邪魔をしない、尻尾を引っ張らないなど、お子様にも「犬との接し方」を教えることができる年齢であれば問題ありません。大騒ぎする環境よりも、ある程度落ち着いた家庭環境を好む傾向があります。
Q. 初心者でも飼いやすい犬種ですか?
認定ドッグトレーナーのアドバイス
「正直に申し上げると、初心者向けとは言い難いです。賢いがゆえに、飼い主のちょっとした甘やかしや迷いを見抜き、主導権を握ろうとします。初めて犬を飼う方がコーイケルホンディエを迎える場合は、自己流でしつけようとせず、パピー教室に通ったり、プロのトレーナーのサポートを受けたりすることを強く推奨します。『飼い主も一緒に学ぶ』姿勢があれば、最高のパートナーになれますよ」
まとめ:デコピンと同じ犬種を飼うなら「一生のパートナー」になる覚悟を
大谷翔平選手の愛犬「デコピン」ことコーイケルホンディエについて、その魅力と飼育の現実を解説してきました。
彼らは単に「かわいいペット」ではなく、高い知能と運動能力、そして繊細な心を持った「誇り高きパートナー」です。大谷選手のように、彼らを尊重し、共に時間を過ごすことを喜びと感じられる人にとっては、これ以上ない素晴らしい存在になるでしょう。
もし、あなたが本気でコーイケルホンディエのお迎えを検討しているなら、以下のチェックリストで自問自答してみてください。
【コーイケルホンディエ飼育適性チェックリスト】
- 毎日合計1時間以上の散歩・運動時間を、雨の日も風の日も確保できる
- 犬の知的好奇心を満たすためのトレーニングや遊びを、自分自身も楽しめる
- 換毛期の大量の抜け毛を許容し、こまめな掃除ができる
- 10年〜15年の寿命を全うするまで、病気や介護の医療費を含め責任を持てる
- 信頼できるブリーダーが見つかるまで、半年以上待てる忍耐力がある
認定ドッグトレーナーからのメッセージ
「コーイケルホンディエは素晴らしい犬種ですが、流行りで飼うにはハードルが高い犬でもあります。しかし、そのハードルを越えて信頼関係を築けた時、彼らはあなただけに特別な表情を見せてくれるようになります。大谷選手のように深い愛情と時間を注げるか、今一度ご家族でじっくり話し合ってみてください。その慎重な検討こそが、未来の愛犬への最初の愛情表現なのです」
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