デイサービス(通所介護)は、高齢者の自立支援と、介護をするご家族の負担軽減(レスパイト)を同時に叶える、在宅介護において極めて重要なサービスです。
「親が家に閉じこもりがちで心配」「そろそろ介護の手が必要かもしれないが、何から始めればいいかわからない」「費用は年金で賄えるのか」
このような不安を抱えているご家族に向けて、この記事では現役の主任ケアマネジャーである筆者が、デイサービスの仕組みからリアルな費用相場、そして「親に合う施設」を見つけるための具体的な選び方までを徹底的に解説します。
この記事を読むことで、以下の3点が明確になります。
- デイサービスの内容、1日の流れ、かかる費用が丸わかりになる
- よく似た「デイケア」との違いや、失敗しない施設選びの5つの基準がわかる
- 親が「行きたくない」と言った時の、プロ直伝の対処法と心構えが身につく
正しい知識を持つことは、ご本人にとってもご家族にとっても、安心した生活への第一歩です。ぜひ最後までお読みいただき、最適なサービス選びにお役立てください。
デイサービス(通所介護)とは?初めてでもわかる基礎知識
デイサービスとは、正式名称を「通所介護」といい、要介護認定を受けた高齢者が自宅から施設に通い、食事・入浴・排泄などの日常生活上の支援や、機能訓練(リハビリ)、レクリエーションなどを受ける日帰りの介護サービスです。
まずは、このサービスが誰のためにあり、どのような目的で利用されるのか、その全体像を把握しましょう。
Note here|要点まとめ
- 日帰りで食事・入浴・機能訓練・レクリエーションなどを受けるサービス
- 利用者の自立支援だけでなく、家族の休息(レスパイトケア)も重要な目的
- 要介護1〜5の人が対象(要支援の人は「介護予防通所介護」を利用)
デイサービスの定義と2つの大きな目的
デイサービスの目的は、介護保険法において大きく2つの側面に分けられます。一つは「利用者本人の自立支援とQOL(生活の質)の向上」、もう一つは「家族の身体的・精神的負担の軽減」です。
利用者本人にとっては、自宅に閉じこもりがちになることを防ぎ、他者と交流することで社会的孤立感を解消する場となります。また、適度な運動や機能訓練を行うことで、心身機能の維持・向上を図ることができます。「ここに来ると楽しい」「友達に会える」という生きがいづくりも、デイサービスの重要な役割です。
一方、ご家族にとっては、日中介護から解放される時間を持つことで、自身の仕事や家事に専念したり、休息をとったりすることができます。これを「レスパイトケア(休息ケア)」と呼びます。在宅介護は長期戦です。共倒れを防ぐためにも、プロの手を借りて「介護をしない時間」を作ることは、決して手抜きではなく、介護を長く続けるための必須条件と言えます。
利用できる対象者(要介護・要支援)と条件
デイサービスを利用できるのは、原則として介護保険の認定を受けている方です。具体的には以下の2つの区分に分けられます。
- 通所介護(デイサービス):要介護1〜5の認定を受けた方が対象。日常生活の介護や機能訓練が中心となります。
- 地域密着型通所介護:定員18人以下の小規模なデイサービスで、要介護1〜5の方が対象。住み慣れた地域での利用が原則となります。
- 介護予防通所介護(総合事業):要支援1・2の認定を受けた方が対象。状態の悪化を防ぎ、自立した生活を維持することを目的とします。
「要介護認定」をまだ受けていない場合は、まずお住まいの市町村の窓口や地域包括支援センターで申請を行う必要があります。申請から認定までは通常1ヶ月程度かかりますが、緊急性が高い場合は、認定結果が出る前から「暫定」としてサービスを利用開始することも可能です(詳細は後述のセクションで解説します)。
介護保険サービスにおける「通所介護」の位置づけ
介護保険サービスには、訪問介護(ホームヘルパー)やショートステイ(短期入所)など様々な種類がありますが、デイサービスはその中でも「在宅生活を支える中心的なサービス」として位置づけられています。
特に、入浴や食事といった基本的な生活支援を、自宅以外の場所で、かつ専門スタッフの見守りの中で行える点は大きな特徴です。自宅の浴槽では入浴が困難な方でも、デイサービスの特殊浴槽や手厚い介助があれば安全に入浴できます。また、栄養バランスの取れた食事を提供されることで、低栄養の防止にもつながります。
このように、デイサービスは単なる「預かり所」ではなく、在宅での生活を継続するための「生活機能維持装置」としての役割を果たしているのです。
現役主任ケアマネジャーのアドバイス
「デイサービスを利用する『本当のメリット』についてお話しします。多くのご家族は『お風呂に入れてほしい』『ご飯を食べさせてほしい』という物理的なケアを求められます。もちろんそれも重要ですが、私たち専門家が最も重視するのは『社会参加』です。
高齢になると、役割を失い、人との会話が減り、急速に認知機能や意欲が低下することがあります。デイサービスで『他人に見られる』意識を持ち、服を着替え、外に出る。そしてスタッフや他の利用者と笑い合う。この刺激こそが、脳への最高のリハビリになります。また、家族以外の人(第三者)が定期的に関わることで、体調の小さな変化や虐待の予兆などに早期に気づけるというリスク管理の側面も非常に大きいのです。」
具体的に何をする?サービス内容と1日のタイムスケジュール
「デイサービスに行くと、具体的にどんなことをして過ごすの?」という疑問は、利用者ご本人にとってもご家族にとっても最大の関心事でしょう。ここでは、一般的なデイサービスのサービス内容と、標準的な1日の流れを詳しく解説します。
施設によって特色は異なりますが、基本的な骨組みは共通しています。具体的なイメージを持つことで、利用への不安を解消しましょう。
自宅までの「送迎」:車椅子の対応や家族の付き添いについて
デイサービスの朝は、自宅までの「送迎」から始まります。専用の送迎車が玄関先まで迎えに来てくれるため、ご家族が施設まで送り届ける必要はありません(ご家族による送迎も可能ですが、基本はサービスに含まれます)。
車椅子を利用している方の場合、リフト付きの車両(リフト車)で車椅子のまま乗車できる対応を行っている施設がほとんどです。送迎時には、ドライバーや介護スタッフが玄関から車までの移動を介助します。マンションの2階以上でエレベーターがない場合などは、階段昇降の介助が必要になるため、事前の確認と相談が必須です。
また、送迎時のスタッフとのやり取りは、ご家族にとって重要な情報交換の場でもあります。「昨夜はよく眠れていました」「朝食は少し残しました」といった申し送りを行うことで、その日のケアに反映されます。
健康チェックと入浴サービス:個浴と機械浴の違い
施設に到着すると、まずは看護職員による「健康チェック(バイタルチェック)」が行われます。体温、血圧、脈拍を測定し、顔色や様子を観察して、その日の入浴や運動が可能かどうかを判断します。体調が優れない場合は、入浴を中止したり、静養室で休んだりと柔軟に対応します。
続いて、多くの利用者が楽しみにしている「入浴」です。デイサービスの入浴設備は大きく分けて以下の種類があります。
- 一般浴(個浴):家庭の浴槽に近い形ですが、手すりやスロープが設置されており、またぐ動作が不安な方でも入りやすくなっています。スタッフの見守りや一部介助の中で入浴します。
- 機械浴(特殊浴槽):寝たきりの方や、座った姿勢を保つのが難しい方でも、専用のストレッチャーや椅子に座ったまま入浴できる設備です。重度の要介護者でも安全に入浴できます。
プライバシーへの配慮も進んでおり、大勢で入る大浴場タイプだけでなく、一人ずつ入れる個室浴槽を備えた施設も増えています。清潔保持はもちろん、血行促進やリラックス効果も期待できます。
栄養バランスの取れた「食事」と口腔ケア
昼食は、管理栄養士が作成した献立に基づき、栄養バランスやカロリーが計算された食事が提供されます。季節の食材を使ったメニューや、行事食(お正月、ひな祭りなど)が提供されることもあり、食事を楽しみに通う方も少なくありません。
重要なのは、利用者の「噛む力(咀嚼力)」や「飲み込む力(嚥下力)」に合わせた形態で提供される点です。
- 常食:一般的な食事形態。
- 一口大・刻み食:食べやすい大きさにカットしたもの。
- ソフト食・ミキサー食・ムース食:ペースト状やゼリー状にし、噛まなくても飲み込めるようにしたもの。
また、塩分制限や糖尿病食などの療養食に対応している施設もあります。食後は、誤嚥性肺炎を予防するための「口腔ケア(歯磨きやうがい)」もスタッフの支援のもと行われます。
機能訓練(リハビリ)とレクリエーションの種類
午後の時間は、主に機能訓練やレクリエーションに充てられます。
「機能訓練」は、日常生活に必要な動作(歩行、立ち上がり、着替えなど)を維持・改善するための訓練です。機能訓練指導員(理学療法士、作業療法士、看護師など)が配置されている施設では、個別の計画に基づいた訓練が行われます。マシントレーニングを行う施設もあれば、生活動作の中での訓練(洗濯物を畳む、配膳するなど)を重視する施設もあります。
「レクリエーション」は、手先を使う創作活動(折り紙、手芸)、脳トレ(クイズ、計算)、体を動かすゲーム(風船バレー、体操)、カラオケ、音楽療法など多岐にわたります。これらは単なる「お遊び」ではなく、楽しみながら指先や脳、身体を動かすことで、認知機能の低下予防や身体機能の維持を図る重要なプログラムです。
【図解】一般的なデイサービスの1日の流れ
ここでは、標準的なデイサービス(7時間〜9時間未満利用)のタイムスケジュールをご紹介します。
Chart here|1日のタイムスケジュール例(9:00〜16:30)
時間 内容 8:30〜9:30 送迎・到着
ご自宅へお迎え。到着後、お茶を飲みながら一息つきます。9:30〜10:30 健康チェック・入浴
バイタル測定。順次、入浴や個別活動を行います。10:30〜12:00 個別機能訓練・朝の活動
体操や脳トレ、趣味活動などを行います。12:00〜13:00 昼食・口腔ケア
栄養バランスの良い食事。食後は歯磨きをします。13:00〜14:00 静養・休憩
お昼寝や、利用者同士の談笑タイム。14:00〜15:00 集団レクリエーション
ゲーム、体操、創作活動など皆で楽しみます。15:00〜15:30 おやつ・水分補給
お茶とお菓子でリラックス。会話も弾みます。15:30〜16:30 帰宅準備・送迎
忘れ物がないか確認し、ご自宅までお送りします。
現役主任ケアマネジャーのアドバイス
「現場で利用者の様子を見ていると、最初は緊張して固い表情の方でも、馴染みのスタッフや『お茶飲み友達』ができると劇的に表情が変わるのを何度も目にしています。『またあの人と将棋を指したい』『来週は習字の日だから行かなくちゃ』といった小さな目的が、生活にハリを生むのです。
また、デイサービスでは『連絡帳』というツールを使います。その日の食事量、排泄状況、活動の様子などが細かく記載されており、ご家族にとっても安心材料になります。ぜひ、ご家族からも『家での様子』を書き込んでください。この交換日記のような連携が、より良いケアにつながります。」
費用は月々いくらかかる?料金相場と自己負担の仕組み
デイサービスの利用を検討する際、最も気になるのが「費用」ではないでしょうか。介護保険が適用されるとはいえ、毎月の出費となると家計への影響は無視できません。
ここでは、複雑な計算式ではなく、パッと見てわかる「目安」を中心に、料金の仕組みを解説します。なお、費用は地域(地域区分)や施設の規模、人員配置によって多少変動するため、あくまで一般的な目安として捉えてください。
介護度別・利用時間別の基本料金目安表
デイサービスの基本料金は、「要介護度」と「利用時間」によって決まります。原則として費用の1割(所得により2割または3割)が利用者負担となります。
以下は、通常規模のデイサービスを7時間以上8時間未満(標準的な1日利用)で利用した場合の、1割負担の目安です。
Table here|要介護度別・自己負担額(1割)の目安一覧
要介護度 1回あたりの目安 週1回(月4回)利用 週2回(月8回)利用 要介護1 約660円 約2,640円 約5,280円 要介護2 約780円 約3,120円 約6,240円 要介護3 約900円 約3,600円 約7,200円 要介護4 約1,020円 約4,080円 約8,160円 要介護5 約1,140円 約4,560円 約9,120円 ※地域区分単価や処遇改善加算などは含んでいない概算です。実際の請求額はこれに各種加算が追加されます。
介護保険外の実費費用(食費・おやつ代・オムツ代など)
上記の基本料金に加え、介護保険が適用されない「実費」がかかります。これらは全額自己負担となります。
- 食費・おやつ代:1回あたり600円〜800円程度が相場です。施設によってこだわりがあり、金額にも幅があります。
- オムツ・リハビリパンツ代:施設で交換した分は実費請求される場合と、持参すれば無料の場合があります。
- 教養娯楽費:レクリエーションで使う材料費(習字の半紙、手芸材料など)として、1回100円〜数百円程度かかることがあります。
例えば、要介護2の方が週2回利用する場合、基本料金(約6,240円)+食費(700円×8回=5,600円)で、月額合計は約12,000円程度が目安となります。
知っておきたい主な「加算」(入浴介助加算・個別機能訓練加算など)
基本料金に上乗せされる「加算」という仕組みがあります。これは、手厚いサービスや専門的な対応を行った場合に発生する費用です。
- 入浴介助加算:入浴サービスを利用した場合にかかります(1回40円〜60円程度)。
- 個別機能訓練加算:専門職による個別のリハビリ計画に基づいた訓練を受けた場合にかかります(1回50円〜80円程度)。
- サービス提供体制強化加算:介護福祉士の割合が高いなど、質の高いスタッフ体制を整えている施設にかかります(1回6円〜22円程度)。
これらの加算は、ケアプラン作成時にケアマネジャーから説明がありますが、「なぜ料金が増えているのか」を知っておくと安心です。
負担を抑える「高額介護サービス費」制度とは
介護費用が高額になり、家計を圧迫しないためのセーフティネットとして「高額介護サービス費」という制度があります。
▼詳細:区分支給限度基準額を超えた場合はどうなる?
1. 区分支給限度基準額について
介護保険では、要介護度ごとに1ヶ月に利用できるサービスの量(単位数)の上限が決まっています。この上限内であれば1割〜3割負担で利用できますが、上限を超えた分については全額自己負担(10割負担)となります。ケアマネジャーは通常、この限度額内に収まるようにプランを作成しますが、多くのサービスを併用する場合は注意が必要です。
2. 高額介護サービス費について
世帯の所得に応じて、1ヶ月の介護サービス利用者負担額(1割〜3割部分)の上限が設定されています。例えば、一般的な所得世帯(年収約370万円未満)の場合、上限額は月額44,400円です。これを超えて支払った分は、申請により後から払い戻されます。食費や居住費などの実費は対象外ですのでご注意ください。
現役主任ケアマネジャーのアドバイス
「費用対効果を高めるケアプランの組み方は、私たちケアマネジャーの腕の見せ所です。例えば、自宅のお風呂はガス代や水道代がかかる上、掃除や介助の手間も大変です。そこで『入浴は週3回のデイサービスで済ませる』と決めれば、自宅の光熱費を浮かせつつ、家族の負担も減らせます。
また、食費が安い施設を選ぶ、加算の少ない施設を選ぶといった調整も可能です。『月々〇〇円以内に収めたい』という予算を、遠慮なく担当のケアマネジャーに伝えてください。生活を守りながら介護を続けるための最適なプランを提案します。」
「デイケア(通所リハビリ)」との違いは?目的別の使い分け
デイサービスを探していると、必ずと言っていいほど目にするのが「デイケア(通所リハビリテーション)」という言葉です。名前も内容も似ているため混同されがちですが、この2つには明確な違いがあります。
どちらを選ぶべきか迷っている方のために、決定的な違いと選び方の基準を解説します。
最大の違いは「医師の配置」と「リハビリの強度」
最も大きな違いは、「医師の配置義務」があるかどうかです。
- デイサービス(通所介護):医師の配置義務はありません。生活支援や社会的交流、一般的な機能訓練がメインです。運営主体は社会福祉法人や民間企業が多いです。
- デイケア(通所リハビリ):医師が常勤しており、医学的な管理下で「リハビリテーション」を行うことが目的です。病院や老人保健施設(老健)に併設されていることがほとんどです。
つまり、デイサービスは「生活の場・交流の場」、デイケアは「医療・リハビリの場」という色が濃いと言えます。
サービス内容・費用・対象者の比較一覧
それぞれの特徴を表にまとめました。ご自身の親御さんがどちらに近いか、確認してみてください。
Table here|デイサービス vs デイケア 徹底比較表
項目 デイサービス(通所介護) デイケア(通所リハビリ) 主な目的 社会的孤立感の解消、家族のレスパイト、生活機能の維持 心身機能の回復、日常生活動作の回復(退院直後など) 医師の配置 なし(看護職員は配置) あり(常勤) リハビリ内容 生活リハビリ、レクリエーション要素が強い 理学療法士等による専門的な医療リハビリ 費用感 比較的安い デイサービスよりやや高い 向いている人 ・友達を作りたい、楽しく過ごしたい
・食事や入浴の世話をしてほしい
・認知症のケアをしてほしい・退院後で集中的にリハビリしたい
・医療的な管理が必要
・リハビリだけして短時間で帰りたい
あなたの親はどっち?選び方のフローチャート
どちらを選ぶべきか判断するための簡易的な基準です。
- 退院直後で、医師からリハビリの指示が出ているか?
- YES → デイケアがおすすめ
- NO → 次へ
- 専門的なマシンや療法士による1対1の訓練を強く希望するか?
- YES → デイケア(または機能訓練特化型デイサービス)
- NO → 次へ
- 入浴や食事をゆっくり楽しみ、他の利用者と交流したいか?
- YES → デイサービスがおすすめ
- NO → 短時間型のデイサービスまたはデイケア
併用はできる?ケアプラン上のルール解説
「リハビリもしたいけど、お風呂やレクも楽しみたい」という場合、デイサービスとデイケアを併用することは可能なのでしょうか。
結論から言うと、併用は可能です。例えば「週1回はデイケアでしっかりリハビリ、週2回はデイサービスで入浴とレクリエーション」といったプランを組むことができます。ただし、同じ日に両方を利用することは原則できません。
また、介護保険の支給限度額内に収める必要があるため、併用することで利用回数が制限される場合もあります。ケアマネジャーと相談しながら、目的に合わせたバランスの良い組み合わせを考えることが大切です。
現役主任ケアマネジャーのアドバイス
「迷った時の判断基準として、私は『期間』の視点をお伝えしています。デイケアは本来、機能回復を目指す場所なので、目標を達成したら卒業(デイサービスへ移行)することが前提の制度設計になっています。
一方、デイサービスは長く通い続け、生活の一部として定着させる場所です。『まずは3ヶ月、デイケアで足腰を鍛え直してから、楽しいデイサービスに移りましょう』といった提案もよく行います。今の状態だけでなく、半年後どうなっていたいかをイメージして選ぶのがポイントです。」
後悔しない!デイサービスの選び方5つのポイント
デイサービスはコンビニエンスストアの数よりも多いと言われており、その中から「親にぴったりの一箇所」を選ぶのは至難の業です。「どこも同じだろう」と適当に選んでしまうと、「雰囲気が合わない」「食事がおいしくない」といった理由で通わなくなってしまうケースも少なくありません。
ここでは、プロの視点から「絶対に外さない選び方のポイント」を5つ紹介します。
施設の種類を知る(通常規模型・地域密着型・認知症対応型など)
まず、施設のタイプを理解しましょう。大きく分けて以下の3つがあります。
- 通常規模型(一般型):定員19名以上の施設。設備が充実しており、利用者も多いため活気があります。多くの人と交流したい人向けです。
- 地域密着型(小規模):定員18名以下の施設。アットホームな雰囲気で、スタッフの目が届きやすいのが特徴。大人数が苦手な人や、きめ細かなケアが必要な人向けです。
- 認知症対応型:認知症の方専門のデイサービス。スタッフも認知症ケアの専門知識を持っており、不穏な行動や徘徊などにも柔軟に対応してくれます。
見学時にチェックすべき「スタッフの表情」と「利用者の雰囲気」
パンフレットやホームページだけではわからないのが「現場の空気」です。必ず見学に行きましょう。その際、建物が新しいかどうかよりも、以下の点に注目してください。
- スタッフの挨拶と表情:忙しそうにしていても、笑顔で挨拶してくれるか。利用者に対して「〇〇さん」と敬称をつけて呼んでいるか(「おじいちゃん」「おばあちゃん」呼びはNG)。
- 利用者の表情:利用者が退屈そうに寝てばかりいないか。スタッフと利用者の間に会話があるか。
食事の美味しさと形態対応(刻み食・ミキサー食)
高齢者にとって、食事は最大の楽しみの一つです。見学時に試食ができる施設もありますので、ぜひ確認してみましょう。
- 温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供されているか。
- 刻み食やミキサー食など、嚥下状態に合わせた対応がスムーズか。
- 好き嫌いやアレルギーへの配慮があるか。
入浴設備の清潔さとプライバシー配慮
入浴設備は、清潔さはもちろんですが、「羞恥心への配慮」が重要です。
- 脱衣所や浴室が外から見えないようになっているか。
- 個浴の場合、一人ずつお湯を張り替えているか。
- 大浴場の場合、裸で歩き回るような動線になっていないか。
レクリエーションの内容は本人に合っているか
ここが最も好みが分かれるポイントです。
- エンタメ重視:カラオケやダンス、季節のイベントが盛りだくさん。賑やかなのが好きな人向け。
- 趣味活動重視:陶芸、囲碁・将棋、料理教室など、カルチャースクールのような雰囲気。自分の時間を大切にしたい人向け。
- 運動特化型:カジノ風の施設でリハビリをすると通貨が稼げるなど、ゲーム性を取り入れた施設も増えています。
現役主任ケアマネジャーのアドバイス
「見学に行ったら、必ずスタッフに聞いてほしい質問が3つあります。
1つ目は『緊急時の対応はどうなっていますか?』(提携病院との連携など)。
2つ目は『スタッフの入れ替わりは激しいですか?』(離職率が高い施設はケアの質が安定しません)。
そして3つ目は『帰りたいと騒いだり、落ち着かなくなった時はどう対応していますか?』です。この質問に対し、『静養室で休んでいただきます』『スタッフが寄り添って話を聞きます』と具体的に答えられる施設は信頼できます。逆に『うちはそういう方はちょっと…』と濁す施設は避けたほうが無難です。」
親が「行きたくない」と言ったら?家族の悩みとプロの対処法
「デイサービスなんて行きたくない!」「あんな年寄りばかりの場所、俺には関係ない」。
いざ利用を提案しても、親御さんから強い拒絶にあうことは非常によくあるケースです。ご家族としては「あなたのために言っているのに」とイライラしたり、悲しくなったりするでしょう。
しかし、この拒否には高齢者特有の心理が隠れています。無理強いせず、心を解きほぐすアプローチが必要です。
高齢者がデイサービスを拒否する主な心理的理由
なぜ拒否するのか、その理由は主に3つあります。
- プライドの壁:「自分はまだ元気だ」「世話にならなくても生きていける」という自尊心が邪魔をします。他の利用者が重度の要介護者に見え、「自分はあそこまで落ちぶれていない」と感じてしまうのです。
- 環境変化への不安:知らない場所に行き、知らない人たちと過ごすことへのストレスは、若者が思う以上に高齢者には大きな負担です。
- 「捨てられる」という誤解:家族に厄介払いされた、姥捨山に連れて行かれる、という被害妄想的な寂しさを抱くことがあります。
無理強いは逆効果!効果的な「誘い文句」とアプローチ
真正面から「介護が必要だから行って」と説得するのは逆効果です。本人のプライドを傷つけず、役割やメリットを感じさせる「言い換え」が有効です。
- ×「お世話してもらいに行こう」 → 〇「リハビリをして、今の元気を維持しに行こう」
「介護」ではなく「トレーニング」「健康教室」というニュアンスで伝えます。 - ×「私が大変だから行って」 → 〇「お風呂が広くて気持ちいいらしいから、温泉気分で行ってみない?」
楽しみ(入浴や食事)を強調します。 - ×「みんな行ってるよ」 → 〇「スタッフさんが、〇〇さんのようなしっかりした人に話し相手になってほしいと言っていたよ」
「客」としてではなく「頼りにされている」という役割を与えます。
「体験利用」を活用してハードルを下げる方法
いきなり契約するのではなく、多くの施設で実施している「無料体験(または昼食代のみ)」を活用しましょう。「一度だけ見に行くだけ」「合わなかったら断ればいい」と逃げ道を作ってあげることで、ハードルが下がります。
体験利用の際は、ご家族も同行し、本人が楽しめているか、スタッフがどう関わっているかを観察してください。短時間(昼食まで)の体験から始めるのも一つの手です。
それでも嫌がる場合の選択肢(訪問介護への切り替えなど)
どうしてもデイサービスが合わない方もいらっしゃいます。その場合は無理をさせず、選択肢を変えましょう。
- 訪問介護(ヘルパー):自宅に来てもらい、入浴や掃除を手伝ってもらう。
- 訪問リハビリ:理学療法士に自宅に来てもらい、リハビリを行う。
- 小規模多機能型居宅介護:「通い」「泊まり」「訪問」を同じ事業所で柔軟に組み合わせられるサービス。顔なじみのスタッフが対応するため、安心感が強いです。
体験談:お風呂嫌いの父が「温泉気分」で通えるようになった事例
「私が担当した80代の男性Aさんは、頑固一徹でお風呂嫌い。『デイサービスなんて女子供の行くところだ』と門前払いでした。しかし、自宅での入浴は転倒リスクが高く、ご家族は限界でした。
そこで私は、近隣にある『ヒノキ風呂と日本庭園が自慢』のデイサービスを探し出しました。Aさんに『介護施設に行きましょう』とは言わず、『最近できた、いいお風呂屋さん(実はデイサービス)の見学に行きませんか? 料理も料亭みたいなんですよ』と誘いました。
実際に足を運ぶと、立派なヒノキ風呂に感動。さらに、そこで出会った同年代の男性と意気投合し、『風呂上がりの囲碁』が日課になりました。今では『火曜と金曜は風呂の日だ』と、自ら進んで準備をされています。入り口(きっかけ)の演出次第で、意識はガラリと変わるのです。」
現役主任ケアマネジャーのアドバイス
「親の拒否に直面した時、家族だけで抱え込まないでください。家族が言うと角が立つことでも、私たちケアマネジャーのような『第三者の専門家』が言うと、すんなり受け入れてくれることが多々あります。
『ケアマネジャーさんが、今のうちに足腰を鍛えないと寝たきりになると言っていたよ』と、私を悪役にしても構いません。プロをうまく利用して、家族関係を守りながら導入を進めましょう。」
利用開始までの具体的な流れ(申請から契約まで)
デイサービスを利用するためには、いくつかの手続きが必要です。ここでは、全くの未経験の方でも迷わないよう、申請から利用開始までのステップを順を追って解説します。
ステップ1:要介護認定の申請(市町村窓口・地域包括支援センター)
まずはお住まいの市区町村の介護保険窓口、または地域包括支援センターに行き、「要介護認定」の申請を行います。申請には「介護保険被保険者証」が必要です(40歳〜64歳の方は医療保険証)。
申請後、認定調査員による訪問調査と、主治医による意見書をもとに審査が行われ、約1ヶ月後に「要支援1・2」または「要介護1〜5」の認定結果が郵送されます。
ステップ2:ケアマネジャーの選定とケアプラン作成
要介護1以上の方は、居宅介護支援事業所を選び、ケアマネジャー(介護支援専門員)を決めます(要支援の方は地域包括支援センターが担当します)。
担当ケアマネジャーが自宅を訪問し、本人や家族の希望を聞き取りながら、どのようなサービスをどのくらいの頻度で利用するかを定めた「ケアプラン(居宅サービス計画書)」を作成します。ここで「デイサービスを利用したい」という意向を明確に伝えましょう。
ステップ3:施設見学と体験利用
ケアプランの方針が決まったら、ケアマネジャーが条件に合うデイサービスをいくつかピックアップしてくれます。前述の「選び方のポイント」を参考に、実際に見学や体験利用を行い、本人の相性や施設の雰囲気を確認します。
ステップ4:重要事項説明書の確認と契約締結
利用する施設が決まったら、その施設と直接契約を結びます。契約の際には「重要事項説明書」の説明があります。キャンセル料の規定、緊急時の対応、個人情報の取り扱いなど、重要な内容が含まれていますので、不明点は必ず確認してください。
契約が完了すれば、いよいよ利用開始です。
Chart here|利用開始までのフロー図
相談・申請
市町村窓口へ↓(約1週間〜) 認定調査・主治医意見書
訪問調査が行われます↓(約1ヶ月) 認定結果通知・ケアマネ決定
要介護度が決定↓ ケアプラン作成・施設見学
事業所を選定↓ 契約・利用開始
デイサービスに関するよくある質問(FAQ)
最後に、デイサービスの利用に関して、ご家族からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 土日や祝日も利用できますか?
A. 施設によって異なりますが、多くの施設が対応しています。
以前は日曜休みが一般的でしたが、現在は家族の就労状況に合わせて、土日・祝日も営業している施設が増えています。中には365日年中無休の施設もあります。ただし、年末年始(12/30〜1/3)はお休みのところが多いので、事前の確認が必要です。
Q. 認知症が進行しても通い続けられますか?
A. 基本的には可能ですが、専門施設への変更が必要な場合もあります。
軽度の認知症であれば、通常のデイサービスで問題なく過ごせます。しかし、徘徊がひどくなったり、他の利用者とのトラブルが増えたりした場合は、「認知症対応型通所介護」への切り替えをケアマネジャーから提案されることがあります。これは「通えなくなる」のではなく、「より専門的なケアを受けるためのステップ」と捉えてください。
Q. 利用中に体調が悪くなったらどうなりますか?
A. 看護職員が対応し、必要に応じて家族や主治医に連絡します。
デイサービスには看護職員の配置義務(小規模などを除く)があるため、初期対応は行われます。体調不良時は静養室で休んでいただき、緊急性が高い場合は救急搬送を行います。契約時に「緊急連絡先」を複数登録しておくと安心です。
Q. 家族が送迎することは可能ですか?
A. 可能です。その場合、料金が安くなることがあります。
「仕事の帰りに迎えに行きたい」「朝は家族が送りたい」といった希望には対応可能です。家族が送迎を行う場合、「送迎減算(片道47単位程度)」が適用され、利用料金が少し安くなる仕組みがあります。
まとめ:デイサービスは「家族の笑顔」を守る場所でもある
デイサービスについて、基本的な仕組みから費用、選び方、そして親御さんが拒否した時の対応まで解説してきました。
デイサービスは、単に高齢者をお世話するだけの場所ではありません。ご本人が社会とのつながりを持ち続け、住み慣れた自宅で最期まで暮らすための「活力の源」です。そして何より、介護をするご家族が、自分の人生を大切にし、笑顔で親御さんと向き合うための「休息の砦」でもあります。
現役主任ケアマネジャーのアドバイス
「『親を施設に預けるなんて、冷たい家族だと思われるんじゃないか』。そんな罪悪感を持つ必要は全くありません。24時間365日、家族だけで介護を完璧にこなすことは不可能ですし、無理をすれば必ずどこかで破綻します。
適度な距離感を持つことは、介護を長く、穏やかに続けるための秘訣です。デイサービスを利用して生まれた時間で、ぜひご自身の好きなことをしてください。あなたが笑顔でいることが、結果として親御さんの安心につながるのです。」
最後に、良いデイサービスを見極めるためのチェックリストを再掲します。見学や体験利用の際に、ぜひ活用してください。
Checklist here|良いデイサービスを見極める最終チェックリスト
- スタッフの挨拶が明るく丁寧か(目を見て挨拶しているか)
- 施設内のニオイ(排泄臭など)が気にならないか
- 利用者同士の会話があり、表情が明るいか
- 契約書やキャンセル料、緊急時の説明が明確か
- 本人が体験利用後に「また行ってもいい」「ご飯は美味しかった」など肯定的な言葉を言っているか
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