ロサンゼルス・ドジャースを率いるデーブ・ロバーツ監督は、単にスター選手を並べるだけの指揮官ではありません。沖縄生まれというルーツ、がん克服の過去、そして批判を恐れず選手を守り抜く「サーバント・リーダーシップ」こそが、大谷翔平らスター軍団を束ねる鍵となっています。
この記事では、現地取材で見えてきたロバーツ監督の真実を以下の3点から深掘りします。
- 沖縄生まれの生い立ちと日本人の母・栄子さんから受け継いだ精神性
- 「名将か愚将か?」現地でのリアルな評価と采配批判の裏側にある真実
- 組織論として学ぶ、個性派集団をまとめ上げるロバーツ流リーダーシップ
日々ビジネスの現場で組織管理に悩む方や、ドジャースの試合をより深く楽しみたい方にとって、彼の生き様は多くの示唆を与えてくれるはずです。
なぜデーブ・ロバーツはドジャースの監督であり続けるのか?
ロサンゼルスの抜けるような青空の下、ドジャースタジアムには常に独特の緊張感と熱狂が渦巻いています。その中心に立つデーブ・ロバーツ監督は、MLBの中でも最も困難な仕事を任されている人物の一人と言えるでしょう。世界中から集まったスーパースターたちを束ね、毎年「世界一」を義務付けられるプレッシャーは想像を絶します。
しかし、彼は2016年の就任以来、長期政権を築き上げています。なぜ彼は、これほどまでに巨大な組織のトップに君臨し続けることができるのでしょうか。その理由は、単なる戦術眼だけではなく、彼の持つ稀有な「人間力」と、現代野球のトレンドに適応する柔軟性にあります。
在米MLBジャーナリストのアドバイス
「現地LAで取材をしていると、ロバーツ監督への視線が『愛憎入り混じる』複雑なものであることを肌で感じます。ファンは彼の笑顔と人柄を愛していますが、同時にポストシーズンでの敗退が続くと容赦ないブーイングを浴びせます。しかし、彼が解任されない決定的な理由は、フロントオフィス(球団経営陣)との強固な信頼関係と、選手からの絶大な支持があるからです。彼は批判の矢面に立ち、組織の防波堤となることで、チームの和を保っているのです」
ドジャースという「常勝を義務付けられた」チームの重圧
ドジャースの監督であるということは、単に試合に勝つこと以上の成果を求められます。豊富な資金力を背景に、毎年のように地区優勝は「当たり前」、ワールドシリーズ制覇こそが「最低ライン」という極めて高いハードルが設定されています。
私が現地で目撃してきた数々の監督たちは、この重圧に押しつぶされ、選手との関係を悪化させたり、メディア対応で失言をして自滅したりしていきました。しかし、ロバーツ監督は違います。彼はどんなに厳しい敗戦の後でも、メディアに対して冷静に対応し、決して選手を公の場で批判しません。この「ぶれない姿勢」こそが、常勝軍団を率いるための必須条件なのです。
大谷翔平・山本由伸の加入で注目される「日本人選手への理解度」
大谷翔平選手と山本由伸投手の加入により、ロバーツ監督の手腕はさらに注目を集めています。特に、二刀流という前例のない調整が必要な大谷選手や、メジャー1年目の山本投手をどう起用するかは、チームの命運を握っています。
ここで活きてくるのが、彼自身のバックグラウンドです。日本人の母を持ち、沖縄で生まれた彼は、日本特有の「察する文化」や「礼節」を肌感覚で理解しています。言葉の壁を超えて、日本人選手が何を感じ、何を求めているかを敏感に察知できる能力は、他の米国人監督にはない大きなアドバンテージです。
歴代でも稀な「長期政権」を維持できる最大の理由
MLBの監督は短命であることが一般的ですが、ロバーツ監督はすでに球団史に残る長期政権を築いています。その最大の理由は、彼が「エゴを持たない調整役」に徹している点にあります。
現代のMLBでは、データ分析部門が作成した極めて詳細なゲームプランに基づいて試合が進められます。ロバーツ監督は、フロントからの指示を現場に落とし込みつつ、選手の感情や体調といったデータに表れない要素を加味して最終判断を下します。この「フロントへの従順さ」と「現場の掌握力」のバランス感覚が絶妙であり、組織として彼を手放せない理由となっているのです。
沖縄生まれの「日系二世」としてのアイデンティティと母の教え
デーブ・ロバーツ監督を語る上で、彼のルーツである「沖縄」と、母・栄子さんの存在を避けて通ることはできません。彼の温厚な人柄や忍耐強さは、幼少期に培われた日本的な価値観に深く根ざしています。
那覇市での誕生と日本で過ごした幼少期の記憶
1972年、沖縄県那覇市。デーブ・ロバーツは、アフリカ系アメリカ人の父・ウェイモンさんと、日本人の母・栄子さんの間に生を受けました。父は海兵隊員として沖縄に駐留しており、二人は基地内のチャペルではなく、日本の伝統的な様式を重んじて結婚しました。
幼少期を日本で過ごしたロバーツにとって、日本の風景や文化は原風景そのものです。彼はインタビューで、当時の記憶として「畳の匂い」や「近所の人々の温かさ」を挙げています。その後、一家はカリフォルニア州サンディエゴに移住しましたが、家の中では常に日本文化が息づいていました。靴を脱いで家に上がること、食事の前の挨拶、そして年長者を敬う姿勢。これらは、現在の彼がクラブハウスで見せる規律正しさの基礎となっています。
母・栄子さんが授けた日本的な価値観と「和」の精神
母・栄子さんは、異国の地で苦労しながらも、息子に日本人としての誇りと道徳を教え込みました。特に彼女が強調したのは「和」の精神、つまり調和と協調性です。「自分だけが良ければいいのではなく、周りの人を大切にしなさい」という教えは、ロバーツ監督のリーダーシップの根幹を成しています。
私が取材した際、ロバーツ監督は母についてこう語りました。「母は私に、決して不平不満を言わないこと、そして常に笑顔でいることの大切さを教えてくれました。どんなに辛い時でも、母の強さが私を支えてくれたのです」。この言葉通り、彼はどんな逆境でも笑顔を絶やさず、周囲をポジティブなエネルギーで包み込みます。それはまさに、母から受け継いだ「大和魂」の現れと言えるでしょう。
人種差別の壁とアイデンティティの葛藤をどう乗り越えたか
しかし、米国での生活は平坦ではありませんでした。アフリカ系とアジア系のミックスルーツである彼は、子供の頃、どちらのコミュニティにも完全には属せない疎外感や、心ない差別に直面したこともあります。
「自分は何者なのか?」というアイデンティティの葛藤の中で、彼を救ったのはやはり母の教えと野球でした。野球というフィールドでは、人種や出自に関係なく、実力とチームワークだけが評価されます。彼は「違い」を「個性」として受け入れ、多様な背景を持つ人々を繋ぐ架け橋となることを選びました。現在、多国籍軍団であるドジャースをまとめ上げることができるのは、彼自身が多様性の中で生き、葛藤を乗り越えてきた経験があるからに他なりません。
詳細を見る:日本文化へのリスペクト
Note here|日本文化へのリスペクト
ロバーツ監督は、日本人メディアとの会見の際、必ずと言っていいほど冒頭に「コンニチハ」と日本語で挨拶し、質問者に対して丁寧に頭を下げます。また、2024年の開幕戦で韓国を訪れた際や、過去に来日した際には、箸の使い方や日本食への造詣の深さを披露し、周囲を驚かせました。彼は単に血筋が日本にあるだけでなく、日本の文化や習慣を心から尊重し、それを自身のアイデンティティの一部として誇りに思っていることが、その所作の端々から感じられます。
「ザ・スティール」:ボストンの英雄となった現役時代の伝説
監督としての実績が注目されがちですが、現役時代のデーブ・ロバーツもまた、MLBの歴史に名を刻む伝説的なプレーヤーでした。彼が成し遂げたある一つのプレーは、今でもボストン・レッドソックスのファンにとって「聖域」のような扱いを受けています。
在米MLBジャーナリストのアドバイス
「ボストンにおいて、デーブ・ロバーツの名前を知らないファンはいません。彼の通算成績は決して殿堂入りクラスではありませんが、あの2004年の盗塁は『MLB史上最も重要な盗塁』として語り継がれています。なぜなら、あの盗塁がなければ、レッドソックスの86年間にわたる『バンビーノの呪い』は解けなかったと誰もが信じているからです。記録よりも記憶、そして歴史を変えたワンプレーとして、永遠に語り継がれるでしょう」
2004年ALCS:レッドソックスの呪いを解いた「一世一代の盗塁」
2004年、アメリカンリーグ・チャンピオンシップシリーズ(ALCS)第4戦。レッドソックスは宿敵ヤンキースに対して3連敗を喫し、9回裏も1点ビハインドという絶体絶命の状況でした。敗退まであとアウト3つ。ここで代走として起用されたのがロバーツでした。
相手投手は球界を代表する守護神、マリアノ・リベラ。誰もが盗塁は不可能だと思う中、ロバーツは初球から走り、間一髪でセーフをもぎ取りました。この「ザ・スティール(The Steal)」が流れを一変させ、同点打、そして延長サヨナラ勝ちへと繋がりました。勢いに乗ったレッドソックスは、史上初の3連敗からの4連勝でリーグ優勝を果たし、そのままワールドシリーズも制覇。86年ぶりの世界一という悲願を達成したのです。
決してエリートではなかった選手時代が培った「脇役の美学」
ロバーツの現役生活は、決して華やかなものではありませんでした。ドラフト28巡目という下位指名でプロ入りし、体格にも恵まれていなかった彼は、生き残るために「自分の役割」を徹底的に追求しました。
それは、守備固めや代走、バントといった地味な仕事です。しかし、彼は腐ることなく、ベンチで常に試合展開を読み、出番が来た瞬間に100%の力を発揮する準備を怠りませんでした。この「脇役の美学」こそが、現在の監督業において、控え選手の気持ちを理解し、彼らのモチベーションを維持するマネジメント能力に直結しています。
選手としての日米野球観の違いへの適応
現役時代、彼はパワー偏重のメジャーリーグにおいて、スピードと小技、そして頭脳で勝負する「日本的」とも言えるプレースタイルを貫きました。同時に、米国の合理的なトレーニング理論も積極的に取り入れ、日米の野球観を融合させた独自のスタイルを確立しました。
この経験は、大谷翔平選手や山本由伸投手がメジャーに適応しようとする際、具体的なアドバイスを送る上で大きな財産となっています。「メジャーの流儀」を押し付けるのではなく、彼らの持つ「日本の良さ」をどう活かすかという視点は、ロバーツ自身の選手経験から来ているのです。
詳細を見る:MLB通算成績と主要タイトル(現役時代)
| 項目 | 成績・詳細 |
|---|---|
| 実働年数 | 10年 (1999-2008) |
| 所属球団 | インディアンス、ドジャース、レッドソックス、パドレス、ジャイアンツ |
| 通算打率 | .266 |
| 通算盗塁 | 243個 |
| ハイライト | 2004年ワールドシリーズ優勝メンバー(レッドソックス) |
ドジャース指揮官としての「光と影」:名将かそれとも批判の的か?
デーブ・ロバーツ監督の評価は、常に二分されます。圧倒的な勝率を誇る「名将」という声と、短期決戦で勝てない「愚将」という批判。この極端な評価の背景には、現代MLB特有の事情と、彼自身の潔すぎるスタンスがあります。
驚異的な勝率と地区優勝回数:数字が証明する実績
まず、客観的なデータを見てみましょう。ロバーツ監督のレギュラーシーズンにおける勝率は、歴代のMLB監督の中でもトップクラスです。就任以来、ほぼ毎年のように地区優勝を果たし、チームを常にプレーオフへと導いています。
年間162試合という長丁場において、故障者が続出しても戦力をやりくりし、安定して勝ち続ける手腕は並大抵のものではありません。特に、若手選手の抜擢とベテランの休養を巧みに組み合わせる「ターンオーバー制」の運用においては、球界随一の能力を持っています。
なぜ「継投ミス」で批判されるのか?現代MLBの「フロント主導」の真実
一方で、ポストシーズンになると「なぜそこで投手を代えるのか?」という批判が噴出します。特に好投している先発投手を早い回で降板させ、リリーフが打たれて逆転されるパターンは、ファンの怒りを買います。
しかし、これには裏事情があります。現代のドジャースは、フロントオフィスが膨大なデータを分析し、「打順が3巡目に入ると打たれる確率が上がる」といった統計に基づいて、試合前から継投プランを厳格に決めているケースが多いのです。ロバーツ監督は、そのプランを実行する「現場責任者」としての役割を果たしているに過ぎない場合も多々あります。つまり、彼はフロントの戦略ミスも含めて、全ての批判を一身に浴びているのです。
ワールドシリーズ制覇(2020年)の喜びと、短期決戦での脆さの分析
2020年、コロナ禍での短縮シーズンとはいえ、ロバーツ監督はついにドジャースを32年ぶりのワールドシリーズ制覇に導きました。あの時の涙と笑顔は、彼にかかっていた重圧の凄まじさを物語っていました。
しかし、その後のポストシーズンでは、短期決戦特有の「流れ」を掴みきれず、早期敗退を繰り返すこともありました。データ重視の采配は、長期戦では平均的に勝つために有効ですが、一発勝負の短期決戦では、データを超えた「直感」や「勢い」が求められる場面があります。この「データと直感の狭間」での葛藤こそが、ロバーツ監督が抱える最大の課題であり、今後の成長ポイントとも言えるでしょう。
批判に対するロバーツ監督のスタンスと「責任を背負う覚悟」
私が最も感銘を受けるのは、批判に対する彼の態度です。彼は記者会見で「采配ミス」を指摘された際、決して「データ班の指示だった」とは言いません。「私の判断ミスだ」「私が責任を負う」と言い切ります。
これは、組織内部の亀裂を防ぐための高度な政治的判断であり、同時にリーダーとしての矜持でもあります。部下(選手やスタッフ)の失敗を自分の責任として引き受ける姿勢があるからこそ、選手たちは安心してプレーに専念できるのです。
在米MLBジャーナリストのアドバイス
「ブーイングの中でも彼が解任されない最大の理由は、その『組織内政治力』と『信頼関係』にあります。オーナーや編成本部長は、ロバーツが自分たちの盾になってくれていることを理解しています。また、選手たちも『監督が守ってくれている』と感じています。外部からの批判が強まれば強まるほど、内部の結束はむしろ固まっているのです」
【管理職必見】個性派スター軍団を束ねる「サーバント・リーダーシップ」
ロバーツ監督のマネジメント手法は、ビジネスの世界、特に個性的な部下を持つ中間管理職にとって最高の教科書となります。彼は「俺についてこい」という独裁型ではなく、部下に奉仕し、彼らの能力を最大限に引き出す「サーバント・リーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)」を実践しています。
「選手ファースト」を徹底する対話重視のマネジメント術
ロバーツ監督の執務室のドアは、常に開かれています。選手はいつでも監督室に入り、野球の話だけでなく、プライベートな悩みも相談できます。彼は選手の話を徹底的に「聴く」ことに時間を割きます。
ある若手選手がスランプに陥った際、ロバーツ監督は技術的な指導をする前に、まず食事に誘い、リラックスした雰囲気で自信を取り戻させたと聞きます。対話を通じて信頼関係(ラポール)を築くことが、すべての指導の土台となっているのです。
スター選手(ベッツ、フリーマン、大谷)のエゴを衝突させない調整力
ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、そして大谷翔平。これだけのMVP級選手が揃えば、通常は「誰が主役か」というエゴの衝突が起きます。しかし、ドジャースではそれが起きません。
ロバーツ監督は、各選手のプライドを尊重しつつ、「チームの勝利のために何が必要か」という共通の目的を常に提示し続けています。スター選手であっても特別扱いはせず、しかし最大限のリスペクトを持って接する。この公平性が、スター軍団を「一つのチーム」として機能させているのです。
失敗した選手をメディアの前で決して責めない「盾となる」姿勢
前述の通り、ロバーツ監督は公の場で選手を批判しません。エラーをした選手がいれば、「彼のアグレッシブなプレーの結果だ」と擁護し、打たれた投手がいても「調子は悪くなかった。相手が上回っただけだ」とかばいます。
これにより、選手は「失敗しても監督は見捨てない」という心理的安全性(Psychological Safety)を感じることができます。リスクを恐れずに挑戦できる環境を作ることこそが、リーダーの最も重要な仕事であることを、彼は行動で示しています。
常にポジティブな空気を作る「笑顔」とコミュニケーションの極意
ロバーツ監督のトレードマークである「笑顔」。これは単なる愛想ではありません。チームの雰囲気が悪くなりそうな時、指揮官が暗い顔をしていては、不安が伝染してしまいます。
彼は意識的に口角を上げ、ポジティブな言葉を選んで発信しています。「素晴らしい日だ」「君ならできる」。こうした単純ですが力強いメッセージの積み重ねが、長いシーズンを戦い抜くチームのメンタルを支えているのです。
詳細を見る:ロバーツ流・信頼されるリーダーの5つの行動指針
- 傾聴:指示する前に、まず部下の言葉に耳を傾ける。
- 擁護:外部の批判から部下を守り、責任をトップが取る。
- 公平:実績に関わらず、全員に対してリスペクトを持つ。
- 陽気:リーダー自らがポジティブな雰囲気を作り出す。
- 忍耐:結果がすぐに出なくても、部下を信じて待ち続ける。
困難を乗り越える人間力:がん克服と家族への愛
ロバーツ監督の言葉に重みがあるのは、彼自身が生死の境をさまよう大病を乗り越えてきた経験があるからです。彼の人生観を変えた闘病生活は、野球への向き合い方にも大きな影響を与えています。
在米MLBジャーナリストのアドバイス
「闘病中のロバーツを支えたのは、家族の献身的な愛と、再びユニフォームを着たいという執念でした。復帰後の彼は、『今日という一日は当たり前ではない』という感謝の念を常に持っています。だからこそ、彼の采配や選手への接し方には、勝敗を超えた人間的な温かみが宿っているのです」
2010年に発覚したホジキンリンパ腫との壮絶な闘い
パドレスのコーチを務めていた2010年、ロバーツは健康診断で異常が見つかり、「ホジキンリンパ腫」という血液のがんと診断されました。当時まだ30代後半。働き盛りでの宣告は、彼にとって青天の霹靂でした。
抗がん剤治療は過酷を極めました。髪は抜け落ち、体力は奪われ、一時は歩くことさえ困難になりました。しかし、彼は決して弱音を吐きませんでした。「これは人生における一つの試合だ。必ず勝ってみせる」と自らを鼓舞し、病魔と闘い続けました。
家族の支えと「野球ができる喜び」の再確認
この苦しい時期を支えたのが、妻のトリシアさんと二人の子供たちでした。家族は交代で彼の看病をし、常に前向きな言葉をかけ続けました。ロバーツは後に、「家族がいなければ、私は心が折れていたかもしれない」と語っています。
治療の末、がんは寛解。グラウンドに戻った時、彼は芝生の匂い、ボールの音、ファンの歓声、そのすべてに涙が出るほどの感動を覚えたといいます。「野球ができること、生きていること自体が奇跡だ」。この原体験が、どんなに厳しい試合状況でも冷静さと感謝を忘れない、現在の彼のスタンスを形成しました。
ワイン造りとチャリティ活動に見るフィールド外の素顔
フィールドを離れたロバーツ監督は、自身のワインブランド「Red Stitch」を持つほどのワイン愛好家でもあります。元チームメイトと共に立ち上げたこのワイナリーは、彼にとってリラックスできる大切な場所です。
また、がんサバイバーとして、同様の病気と闘う人々への支援活動にも熱心に取り組んでいます。チャリティイベントを主催し、寄付を行うだけでなく、病院を訪問して患者を励ますこともあります。野球人としてだけでなく、一人の人間として社会に貢献しようとする姿勢は、多くの人々から尊敬を集めています。
大谷翔平・山本由伸との「化学反応」と今後の展望
そして今、ロバーツ監督は新たな挑戦の時を迎えています。大谷翔平、山本由伸という日本の至宝を預かり、ドジャースを「黄金時代」へと導くミッションです。
大谷翔平獲得時の熱意と「ポルシェ」のジョークに隠された配慮
大谷選手のFA交渉時、ロバーツ監督は球団の方針を破って「彼と会った」とメディアに明かし、波紋を呼びました。しかし、これは「隠し事はしない」という彼なりの誠実さの表れであり、結果的に大谷選手の信頼を勝ち取る一因となりました。
また、大谷選手が背番号17を譲ってくれたジョー・ケリーの妻にポルシェを贈った際、ロバーツ監督は「私の車はどうなった?」と冗談を飛ばして笑いを取りました。一見ただのジョークですが、これは大谷選手の「気前の良さ」をさらに際立たせ、チーム内に和やかな空気を作るための高度な配慮でした。スター選手を特別扱いしすぎず、ユーモアで包み込む手腕は見事です。
二刀流・大谷のリハビリと起用プランに対する監督の哲学
大谷選手の手術後のリハビリ過程において、ロバーツ監督は医療チームと密に連携し、慎重かつ大胆な起用プランを練っています。「翔平の才能を最大限に活かすことは、球界全体の財産を守ることだ」という哲学の下、無理はさせないが、制限もしすぎないという絶妙なバランスを保っています。
打者専念のシーズンにおいても、彼の打撃の状態を細かくチェックし、休養が必要なタイミングを見極める眼力は、長期的な視点を持っている彼ならではです。
山本由伸のメジャー適応を支える「忍耐」と「信頼」
メジャー1年目の山本由伸投手に対しても、ロバーツ監督は「忍耐」を持って接しています。環境の変化やボールの違いに戸惑うことがあっても、決して焦らせず、適応するまでの時間を与えています。
「由伸は特別な才能を持っている。彼が本来の力を発揮できるよう、我々が環境を整えるだけだ」。この言葉には、選手への全幅の信頼が込められています。山本投手が苦しい時こそ、ロバーツ監督の「待つ力」が支えとなるでしょう。
ロバーツ監督が描く「ドジャース黄金時代」の完成形
ロバーツ監督が目指すのは、単発の優勝ではなく、10年続く「黄金時代」の構築です。ベテランの経験と若手の勢い、そして大谷・山本という圧倒的な個性を融合させ、誰もが憧れる最強のチームを作ること。
その中心には、常に「人間力」溢れる指揮官、デーブ・ロバーツがいます。彼の笑顔の下にある強い意志と深い愛情が続く限り、ドジャースの未来は明るいと言えるでしょう。
在米MLBジャーナリストのアドバイス
「大谷選手がロバーツ監督に抱いている信頼感の正体は、『この人は自分を商品としてではなく、一人の人間として見てくれている』という安心感です。ビジネスライクなMLBにおいて、ロバーツのようなウェットな人間関係を築ける監督は貴重です。二人の化学反応が、ドジャースに新たな伝説をもたらすことは間違いありません」
デーブ・ロバーツ監督に関するよくある質問 (FAQ)
最後に、検索などでよく寄せられるロバーツ監督への素朴な疑問にお答えします。
Q. ロバーツ監督は日本語を話せますか?
流暢に会話することはできませんが、挨拶や簡単な単語は理解しています。母・栄子さんとは英語で会話して育ちましたが、日本文化への理解は深く、日本人選手やメディアに対しては積極的に日本語の挨拶(「オハヨウ」「アリガトウ」など)を使います。
Q. ロバーツ監督の年俸や契約期間は?
MLB監督の年俸は非公開の場合が多いですが、推定で年俸300万〜400万ドル(約4.5億〜6億円)程度と言われています。契約は数年ごとに延長されており、球団からの信頼の厚さが伺えます。長期政権を維持しているため、監督としてはトップクラスの待遇です。
Q. 監督として退場回数が多いと聞きますが本当ですか?
はい、比較的多い部類に入ります。しかし、これは感情的になって暴れているわけではなく、審判の判定から選手を守るために、あえて抗議して退場になるケースがほとんどです。「自分が退場になることで、選手を試合に残す」という、彼なりのリーダーシップの表れです。
Q. 息子のコール・ロバーツも野球選手ですか?
はい、息子のコール・ロバーツ(Cole Roberts)も野球選手です。大学野球でプレーした後、MLBドラフト指名を目指して活動しています。父と同じく俊足巧打の選手として知られています。
まとめ:デーブ・ロバーツは「日本人の心」を持った世界最高峰のモチベーター
デーブ・ロバーツ監督は、データ重視の現代MLBにおいて、「人間力」というアナログな価値の重要性を証明し続けている稀有な存在です。沖縄のルーツ、母から受け継いだ和の精神、そしてがん克服で得た感謝の心。これらすべてが、彼を「選手のために戦うリーダー」にしています。
大谷翔平選手や山本由伸投手がドジャースで躍動する姿を見る時、ベンチで腕を組み、温かい眼差しを送るロバーツ監督にもぜひ注目してみてください。彼の采配の意図や、選手への細やかな配慮に気づくことで、野球観戦の深みは間違いなく増すはずです。
在米MLBジャーナリストのアドバイス
「これからのドジャース戦を楽しむための視点として、試合後のロバーツ監督の会見に注目してみてください。勝っても負けても、彼がどのように選手を称え、あるいは守ろうとしているか。その言葉の一つひとつに、組織を束ねるリーダーとしてのヒントが詰まっています。ぜひ今日から、彼の『言葉』にも耳を傾けてみてください」
ロバーツ監督の采配・人柄チェックリスト
- ピンチの場面:マウンドへ行く際、投手の目を見て安心させているか?
- 判定への抗議:選手が不服そうな時、すぐにベンチを飛び出して審判に向かっていくか?
- 大谷選手との絡み:ホームランの後、ハイタッチやハグで喜びを分かち合っているか?
- 試合後の会見:敗戦時、決して選手のせいにせず「私」を主語にして話しているか?
- 笑顔:厳しい状況でも、ベンチの空気を明るくするために笑顔を見せているか?
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