保育園や幼稚園、小学校で「水疱瘡(水痘)」が流行すると、保護者の方々は不安な日々を過ごすことになります。「子供の体に赤いポツポツが出たけれど、これは水疱瘡なのだろうか?」「もし水疱瘡だとしたら、仕事は何日休まなければならないのか?」――このような疑問は、働く親にとって切実な問題です。
結論から申し上げますと、水疱瘡の登園・登校基準は、法律(学校保健安全法)により「すべての発疹がかさぶた(痂皮)になるまで」と明確に定められています。発症から完治までの期間には個人差がありますが、一般的には約1週間程度が目安となります。また、発疹が出現してから24〜48時間以内の早期に抗ウイルス薬を服用開始することで、症状の軽症化と早期回復が期待できます。
この記事では、日々多くの子供たちの感染症診療にあたっている現役の小児科専門医が、保護者の皆様が今すぐに知りたい情報を網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 【写真解説】水疱瘡の初期症状の特徴と、あせも・虫刺されとの決定的な見分け方
- いつから登園できる?具体的な経過日数と「治癒証明書」をもらうまでの手順
- 兄弟や大人への感染を最小限に抑える方法と、家庭で実践すべき正しいスキンケア・入浴法
正確な知識を持つことは、お子様の苦痛を和らげるだけでなく、家族全体の生活を守ることにも繋がります。ぜひ最後までお読みいただき、適切なケアにお役立てください。
【写真で解説】これって水疱瘡?初期症状の特徴と見分け方
「朝起きたら、子供のお腹に赤い虫刺されのようなものが数個あった」「夕方になって、その数が急に増えてきた気がする」。水疱瘡の始まりは、非常にさりげないものです。しかし、その進行スピードは速く、初期段階での見極めが重症化を防ぐカギとなります。ここでは、迷いやすい初期症状の特徴や、他の皮膚トラブルとの違いについて、視覚的なイメージを交えながら詳しく解説していきます。
Photo here|水疱瘡の経過別 症例写真(初期の紅斑・水疱・痂皮)
※ここでは、初期の小さな赤い発疹(紅斑)、中心が透き通った水ぶくれ(水疱)、そして茶色く乾燥したかさぶた(痂皮)が混在している様子を示す画像を想定しています。
初期症状は「虫刺され」や「あせも」に似ている?
水疱瘡の初期症状は、直径数ミリ程度の小さな赤い発疹(紅斑)から始まります。この段階では、見た目が「虫刺され」や「あせも(汗疹)」と非常によく似ているため、専門医でも一目見ただけでは断定が難しいことがあります。しかし、注意深く観察すると、いくつかの特徴的な違いが見えてきます。
まず、発生する場所です。虫刺されは手足や顔などの「露出部」にできやすいのに対し、水疱瘡は「お腹や背中などの体幹部」から始まり、その後、顔、頭皮、手足へと遠心的に広がっていく傾向があります。特に、髪の毛の中にポツポツとした発疹が見つかった場合は、水疱瘡である可能性が極めて高くなります。
次に、症状の進行速度です。あせもや虫刺されは、数時間で急激に数が増えることは稀ですが、水疱瘡は半日から1日という短いスパンで、発疹の数が劇的に増加します。「朝は2〜3個だったのに、お風呂に入る時には20個以上に増えていた」というエピソードは、水疱瘡の典型的なパターンです。
特徴的な発疹の変化(紅斑→水疱→膿疱→痂皮)
水疱瘡の発疹は、短期間で劇的にその姿を変えていきます。この変化のプロセスを知っておくことが、診断の助けになります。
- 紅斑(こうはん):最初は平らで赤い、虫刺されのような発疹が出現します。痒みを伴うことが多いです。
- 水疱(すいほう):紅斑の中央部分が盛り上がり、数時間のうちに透明な水をたたえた「水ぶくれ」に変化します。この水疱は涙のしずくのように見えることから「露滴(ろてき)状」と表現されることもあります。周囲には赤い縁取り(紅暈)が見られます。
- 膿疱(のうほう):水疱の中身が白く濁り、膿(うみ)を持ったような状態になります。
- 痂皮(かひ):最終的に水疱が破れたり吸収されたりして乾燥し、黒褐色のかさぶたになります。
水疱瘡の最大の特徴は、これらの「紅斑」「水疱」「かさぶた」という異なる段階の発疹が、体のあちこちに混在しているという点です(これを「星空のよう」と表現することもあります)。すべての発疹が同じ段階にある手足口病などとは、この点が大きく異なります。
発熱はある?ない?前駆症状と発疹が出る場所の順序
「熱がないから水疱瘡じゃない」と思い込んでしまう保護者の方もいらっしゃいますが、これは誤解です。実は、子供の場合、発疹が出る前に発熱などの前駆症状がないことも珍しくありません。発疹と同時に発熱する場合もあれば、発疹が出てから1〜2日後に熱が出る場合、あるいは微熱程度で終わる場合など、個人差が大きいのが特徴です。
一方で、大人が発症した場合は、発疹が出る1〜2日前に発熱や倦怠感といった全身症状が現れることが多く、重症化しやすい傾向があります。
発疹が出る場所の順序としては、一般的に「体幹(胸・お腹・背中)」→「顔・頭皮」→「四肢(手足)」という流れで広がります。口の中の粘膜や、陰部、まぶたの裏などにもできることがあり、これらは痛みを伴うため、食事や排泄を嫌がる原因となります。
紛らわしい病気との違い(手足口病・とびひ・水いぼ)
子供の皮膚には様々な発疹が現れます。水疱瘡と間違えやすい他の感染症や皮膚疾患との違いを整理しておきましょう。特に夏場に流行する「手足口病」や「とびひ」との鑑別は重要です。
▼疾患別:発疹の特徴比較表(クリックして開く)
| 疾患名 | 発疹の見た目 | 主な発生部位 | 痒み・痛み | その他の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 水疱瘡(水痘) | 赤い点→水ぶくれ→かさぶたへと変化。新旧が混在する。 | 体幹(お腹・背中)から始まり、全身・頭皮へ広がる。 | 強い痒みがある。 | 発熱を伴うことが多い。感染力が非常に強い。 |
| 手足口病 | 米粒大の楕円形の水疱。かさぶたにならずに消える。 | 手のひら、足の裏、口の中、お尻、膝。 | 痒みは少ないが、口の中は痛む。 | 夏に流行。発熱は3割程度。 |
| 伝染性膿痂疹(とびひ) | 水ぶくれが破れてジュクジュクし、厚いかさぶたになる。 | 鼻の周り、口元、手足など掻きやすい場所。 | 痒みがある。 | 細菌感染。発疹が「飛び火」のように広がる。 |
| 水いぼ(伝染性軟属腫) | 肌色〜ピンク色の光沢のある小さなイボ。 | 脇の下、お尻など皮膚が擦れる場所。 | 痒みはないことが多い。 | ウイルス性。数ヶ月〜数年続くことがある。 |
| あせも(汗疹) | 細かく密集した赤いブツブツ、または透明な小水疱。 | 首、脇、背中、肘の内側など汗が溜まる場所。 | チクチクした痒みがある。 | 汗をかいた後に発生。涼しくすると改善する。 |
現役小児科専門医のアドバイス
「『虫刺されかな?』と思っても、半日〜1日で数が増えたり、普段は虫に刺されないような頭皮や髪の生え際にもポツポツが見られたりしたら、水疱瘡の可能性が高いです。水疱瘡の治療薬である抗ウイルス薬は、発疹が出てから48時間以内に飲み始めると効果が高く、症状を軽く抑えられます。迷ったら『様子見』をせずに、早めに受診してください。なお、受診時は他の患者さんへの感染を防ぐため、受付で『発疹がある』と必ず伝え、隔離室などへの案内を待つようにしましょう。」
いつから保育園・学校に行ける?潜伏期間から完治までの経過
働く保護者にとって、子供が水疱瘡にかかった際に最も気になるのが「いつから保育園や学校に行けるのか?」という点でしょう。水疱瘡は感染力が極めて強いため、法律によって厳しい出席停止期間が定められています。ここでは、感染から完治までのタイムラインと、登園再開のための具体的な基準について解説します。
Chart here|感染から完治までのタイムライン図
(感染 → 潜伏期間 約2週間 → 発症・発熱・初期発疹 → 水疱のピーク(2〜3日目) → すべて痂皮化(約1週間後) → 登園OK)
学校保健安全法による「出席停止期間」の基準
水疱瘡(水痘)は、学校保健安全法において「第二種学校感染症」に指定されています。この法律に基づく出席停止期間の基準は以下の通りです。
「すべての発疹が痂皮(かさぶた)化するまで」
これは、単に熱が下がったから、あるいは元気になったからといって登園できるわけではないことを意味します。たとえ本人が元気で走り回っていても、体に一つでも乾燥していない水疱(ジクジクした状態や、水を含んだ状態のもの)が残っていれば、登園・登校は認められません。
「すべてが痂皮(かさぶた)化する」とはどういう状態か
「すべてが痂皮化する」という基準は、保護者の方にとって判断に迷うポイントかもしれません。具体的には、以下の状態を指します。
- 体にあるすべての赤い発疹や水ぶくれが、茶色や黒っぽい硬いかさぶたに変わっていること。
- 新しい水疱が出現していないこと。
- 水疱が破れてジクジクしている箇所が一つもないこと。
かさぶたになれば、そこからウイルスが排泄されることはなく、他人に感染させるリスクはなくなります。逆に言えば、一つでも水疱が残っていれば、そこには大量のウイルスが存在し、接触や空気を通じてクラスメートに感染させてしまう危険性があるのです。
平均的な完治日数は?(1週間で治る?もっとかかる?)
では、発症から登園できるようになるまで、実際には何日くらいかかるのでしょうか。
一般的に、発疹が現れてからすべての発疹がかさぶたになるまでには、約1週間(7日前後)を要します。
ただし、これはあくまで平均的な目安です。
発症の早期(48時間以内)に抗ウイルス薬を服用できた場合は、水疱の数も少なく、回復も早まる傾向があり、5〜6日で登園可能になることもあります。一方で、治療開始が遅れた場合や、アトピー性皮膚炎などで肌のバリア機能が低下しているお子さんの場合は、治癒までに10日以上かかることもあります。
仕事の調整をする際は、余裕を持って「1週間程度は休む必要がある」と想定しておくのが賢明です。
登園許可証(治癒証明書)は必要?もらう手順と注意点
多くの保育園・幼稚園・学校では、水疱瘡後の登園再開にあたり、医師が記入した「登園許可証(治癒証明書)」や「意見書」の提出を求められます。自治体や施設によって書式が異なるため、以下の手順で確認しましょう。
- 園・学校への確認:発症の連絡をする際に、「登園再開時に必要な書類はあるか」「指定の用紙があるか」を確認します。指定用紙がある場合は、保護者が取りに行くか、ウェブサイトからダウンロードして準備します。
- 再受診のタイミング:自宅で観察し、「すべての発疹がかさぶたになった」と判断できた段階で、再度医療機関を受診します。
- 医師の確認と記入:医師が全身を診察し、感染力がないと判断されれば、書類に証明が記入されます。
現役小児科専門医のアドバイス
「保護者の方から『あと1つだけ水疱が残っていますが、絆創膏を貼れば行けませんか?』と相談されることがありますが、水疱瘡は感染力が麻疹(はしか)に次いで非常に強いため、例外なく『すべて乾くまで』は登園できません。 完全に乾いていない水疱からウイルスが排泄され、空気感染によってクラス内で集団感染(アウトブレイク)を起こすリスクがあるためです。社会全体の感染拡大を防ぐためにも、ここはグッと我慢して、完治を確認してから登園してください。」
水疱瘡の治療法とやってはいけないこと
水疱瘡と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか。昔は「自然に治るのを待つ」こともありましたが、現在は重症化を防ぎ、辛い症状を早く和らげるために、薬による治療が一般的です。また、家庭でのケアにおいて、絶対に使用してはいけない薬(解熱剤)があることも、命に関わる重要な知識として知っておく必要があります。
抗ウイルス薬(アシクロビル・バラシクロビル)の効果と服用期間
水疱瘡の原因である「水痘・帯状疱疹ウイルス」の増殖を抑えるために、抗ウイルス薬が処方されます。代表的な薬には「アシクロビル(ゾビラックス)」や「バラシクロビル(バルトレックス)」があります。
これらの薬は、ウイルスを直接殺すものではなく、ウイルスの増殖を阻害するものです。そのため、ウイルスが爆発的に増える前、つまり発疹が出始めてから48時間以内(できれば24時間以内)に服用を開始することが非常に重要です。早期に服用することで、以下のようなメリットがあります。
- 発疹(水疱)の数が減る。
- 発熱の期間が短くなる。
- すべてがかさぶたになるまでの期間が短縮される。
服用期間は通常5〜7日間です。途中で熱が下がったり、新しい発疹が出なくなったりしても、体内にウイルスが残っている可能性があるため、医師の指示通りに最後まで飲みきることが大切です。
かゆみ止め(抗ヒスタミン薬)と塗り薬(カチリ)の使い方
水疱瘡の最大の敵は「強烈な痒み」です。子供が患部を掻きむしってしまうと、そこから細菌が入って「とびひ」になったり、治った後に痕(あと)が残ったりする原因になります。これを防ぐために、以下の薬が併用されます。
- 抗ヒスタミン薬(飲み薬):体の中から痒みを抑える薬です。少し眠くなる作用があるものもありますが、夜ぐっすり眠れる助けにもなります。
- カチリ(フェノール亜鉛華リニメント):白くドロっとした塗り薬です。患部を乾燥させ、痒みを和らげる効果があります。一つ一つの水疱に、チョンチョンと置くように塗布します。
- 抗生物質入りの軟膏:もし掻き壊して化膿してしまった場合は、細菌感染を抑えるための軟膏が処方されることもあります。
【重要】解熱剤の使用には注意!アスピリン(アセチルサリチル酸)が危険な理由
水疱瘡で高熱が出た場合、家庭にある解熱剤を使おうと考えるかもしれませんが、ここには大きな落とし穴があります。「アスピリン(アセチルサリチル酸)」が含まれる解熱鎮痛剤は、絶対に使用してはいけません。
水疱瘡にかかっている子供がアスピリンを服用すると、「ライ症候群(Reye症候群)」という非常に重篤な合併症を引き起こすリスクが高まることが知られています。ライ症候群は、急性脳症や肝臓の障害を引き起こし、最悪の場合は命に関わったり、重い後遺症を残したりする怖い病気です。
市販の風邪薬や大人用の鎮痛剤にはアスピリンが含まれていることがあるため、自己判断での使用は避けましょう。熱が高くて辛そうな場合は、必ず医師に相談し、安全な「アセトアミノフェン」などの解熱剤を処方してもらってください。
ワクチン接種済みでも発症する「ブレイクスルー水痘」とは
「予防接種を打っていたのに、水疱瘡にかかってしまった」というケースがあります。これを「ブレイクスルー水痘(軽症水痘)」と呼びます。
ワクチンを1回接種していても、約20%程度の子供は免疫が十分に定着せず、感染してしまうことがあります。しかし、この場合の水疱瘡は、ワクチン未接種の場合に比べて症状が非常に軽く済みます。発疹の数も少なく(数個〜数十個程度)、水疱にならずに赤いポツポツだけで終わることもあり、発熱もほとんど見られません。軽く済むことは良いことですが、診断が難しく、気づかずに登園して感染を広げてしまうリスクもあるため注意が必要です。
現役小児科専門医のアドバイス
「抗ウイルス薬は顆粒状(粉薬)で処方されることが多いですが、少し独特の苦味があったり、1回の量が多かったりして、お子さんが飲むのを嫌がることがあります。しかし、ウイルスの増殖を抑えて重症化を防ぐための要となる薬です。チョコアイスや練乳、味の濃いゼリーなどに混ぜると苦味がマスクされて飲みやすくなります。酸味のあるジュース(オレンジなど)は苦味を強めてしまうことがあるので避けてください。工夫して、指示された期間しっかり飲みきるようにしましょう。」
自宅療養中のホームケア:お風呂・食事・兄弟対策
病院での受診を終えたら、あとは自宅での療養生活が始まります。痒がる子供をどうなだめるか、お風呂はどうすればいいかなど、生活上の悩みは尽きません。ここでは、症状を悪化させず、かつ家族への感染を防ぐための実践的なホームケアについて解説します。
お風呂は入っていい?シャワーのみ?感染を防ぐ入浴ルール
昔は「水疱瘡のときはお風呂に入ってはいけない」と言われることもありましたが、現在は「熱が高くなく、本人が元気であれば入浴して良い」というのが一般的な指導です。汗や汚れを放置すると、皮膚の細菌感染(二次感染)のリスクが高まるため、皮膚を清潔に保つことは重要です。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 一番最後に入る:家族内感染を防ぐため、患児は最後に入浴します。
- 湯船は短めに:長湯をすると体が温まりすぎて痒みが増すことがあります。さっと済ませるか、シャワー浴にするのが無難です。
- こすらない:水疱は非常に破れやすいです。ナイロンタオルなどは使わず、石鹸をよく泡立てて、手で優しく撫でるように洗います。
- タオルの共用禁止:拭くときも「こすらず、押さえるように」水分を拭き取ります。使用したタオルにはウイルスが付着している可能性があるため、他の家族とは絶対に共用せず、すぐに洗濯機へ入れましょう。
かゆがって掻きむしる時の対策(爪切り・手袋・冷やす)
痒みは子供にとって大きなストレスです。掻きむしって水疱を潰してしまうと、跡が残る原因になります。物理的な対策を徹底しましょう。
- 爪を短く切る:これが最も重要です。爪の角を丸くやすりで整えておくと、無意識に掻いてしまっても傷ができにくくなります。
- 手を清潔に:爪の間には細菌がいます。頻繁に手を洗いましょう。
- 冷やす:痒みが強い場所は、保冷剤をタオルで巻いて冷やすと、感覚が麻痺して痒みが和らぎます。
- 手袋や靴下を活用:寝ている間に掻いてしまうのを防ぐため、就寝時は綿の手袋や長めの靴下を手に被せるのも有効な手段です。
口の中に水疱ができた時の食事メニュー(おすすめ・NGなもの)
水疱瘡の発疹は口の中(頬の内側や舌、喉)にもできることがあります。これが潰れると口内炎のようになり、痛くて食事がとれなくなることがあります。
おすすめの食事:
喉越しが良く、あまり噛まなくて済むものが適しています。
冷ましたお粥、うどん、冷製スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、アイスクリーム、豆腐など。
避けるべき食事(NG):
刺激の強いものは痛みを増強させます。
熱いもの、酸味の強いもの(柑橘系フルーツ、トマト、オレンジジュース)、塩辛いもの、固くて尖ったもの(スナック菓子、揚げ物)。
痕(あと)を残さないために親ができるケア
「顔に跡が残ったらどうしよう」と心配される保護者の方は多いです。水疱瘡の跡(瘢痕)は、水疱が化膿して皮膚の深い部分(真皮)まで傷ついた場合に残りやすくなります。
跡を残さないための最大のポイントは、「絶対に掻き壊させないこと」と「かさぶたを無理に剥がさないこと」です。かさぶたは皮膚が修復されるまでの天然の絆創膏です。無理に剥がすと、修復が不完全なまま皮膚が露出し、凹凸のある跡になってしまいます。自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。また、紫外線は色素沈着の原因になるため、治った直後の皮膚は直射日光を避けるようにしてください。
現役小児科専門医のアドバイス
「お風呂については、湯船のお湯そのものを介してうつることは稀ですが、脱衣所での接触や足拭きマット、タオルの共有が大きなリスクになります。体を洗う際は、水疱を破らないように石鹸の泡で優しく手洗いし、タオルで拭くときも『ゴシゴシ』ではなく『ポンポン』と押さえるように水分を吸わせてください。お風呂上がりはすぐに保湿剤や処方されたカチリを塗り、新しい肌着を着せてあげましょう。」
家族への感染リスク:兄弟・妊婦・大人の水疱瘡
水疱瘡の感染力は非常に強力です。家庭内にまだ水疱瘡にかかったことのない(ワクチンも打っていない)人がいる場合、高い確率で感染します。ここでは、家族への感染リスクと、緊急時の予防策について解説します。
感染力は最強クラス!「空気感染」を防ぐことはできるか
水疱瘡ウイルスは、インフルエンザのような「飛沫感染」や「接触感染」だけでなく、「空気感染」によっても広がります。空気感染とは、ウイルスが微粒子となって空気中を漂い、それを吸い込むことで感染する経路です。
これはつまり、「同じ部屋にいるだけ」「すれ違っただけ」でも感染する可能性があるということです。家庭内で完全な隔離を行うことは非常に難しく、手洗いやマスクだけでは防ぎきれないのが現実です。別の部屋で寝かせていても、空調を通じてウイルスが移動することもあります。
兄弟への感染確率は90%?発症を予防・軽減する「緊急ワクチン接種」
家庭内に感染者がいる場合、免疫のない兄弟姉妹が感染する確率は90%以上と言われています。しかし、諦めるのはまだ早いです。感染が発覚した後でも、打てる手があります。
水疱瘡の患者(発端者)と接触してから72時間以内(約3日以内)に、水痘ワクチンを緊急接種することで、発症を阻止したり、発症しても症状を軽く済ませたりできる可能性が高くなります。これを「接触後ワクチン接種」と呼びます。
もし下のお子さんがまだワクチンを打っていない、あるいは1回しか打っていない場合は、上のお子さんの発疹に気づいたらすぐに、かかりつけ医に相談してください。
大人がかかると重症化しやすい?肺炎・脳炎のリスク
子供の頃に水疱瘡にかからず、ワクチンも打っていない大人が感染すると、子供よりも重症化するリスクが格段に高くなります。発疹の数が多くなるだけでなく、高熱が続き、全身の倦怠感が激しくなります。
さらに怖いのが合併症です。「水痘肺炎」を起こして呼吸困難になったり、「脳炎」を起こしたりして、入院治療が必要になるケースも少なくありません。パパやママが未罹患の場合は、子供の看病をする際にN95マスク(高性能マスク)を着用するなど最大限の注意が必要ですが、現実的には感染を防ぐのは困難なため、自身の体調変化にも敏感になっておく必要があります。
妊婦さんが近くにいる場合の注意点(胎児への影響)
最も注意が必要なのが、妊婦さんへの感染です。妊娠中に水疱瘡に初感染すると、重症化しやすいだけでなく、胎児にも深刻な影響が出る可能性があります。
- 妊娠初期〜中期(20週頃まで):「先天性水痘症候群」といって、赤ちゃんに皮膚の傷跡、低体重、手足の形成異常、目の障害などが生じるリスクがあります(確率は1〜2%程度)。
- 分娩直前(出産5日前〜出産後2日):この時期に母親が発症すると、赤ちゃんに母親からの免疫が移行していない状態でウイルスにさらされるため、重篤な「新生児水痘」を発症し、命に関わることがあります。
妊婦さんが家族にいる場合、あるいは実家に帰省しようとしている場合は、直ちに産婦人科医に相談し、指示を仰いでください。
現役感染症指導医のアドバイス
「兄弟がまだ水疱瘡にかかっておらず、ワクチンも打っていない場合、最初の患者(発端者)の発疹を見つけてから、いかに早くアクションを起こすかが勝負です。接触してから72時間以内にワクチンを接種すれば、7〜8割の確率で発症を防げると言われています。もし発症してしまっても、重症化を食い止めることができます。『うつってしまったかも』と待つのではなく、すぐに下のお子さんのかかりつけ医にも相談してください。これが兄弟を守る最善策です。」
水痘ワクチンの基礎知識と定期接種スケジュール
水疱瘡は、かつては「誰もがかかる通過儀礼」と思われていましたが、現在はワクチンで予防できる病気です。2014年から定期接種(無料)となり、流行の規模は劇的に縮小しています。ここでは、ワクチンの効果と正しい接種スケジュールについて確認します。
定期接種のスケジュール(1歳・MRワクチンとの同時接種)
現在、水痘ワクチンは生後12ヶ月(1歳)から36ヶ月(3歳)未満の間に、合計2回接種することが推奨されています。
- 1回目:生後12ヶ月〜15ヶ月(1歳になったらすぐに)
- 2回目:1回目の接種から3ヶ月以上あけて(標準的には6ヶ月〜12ヶ月後)
1歳の誕生日は、MR(麻疹風疹)ワクチン、おたふくかぜワクチン(任意)、ヒブ・肺炎球菌の追加接種など、打つべきワクチンがたくさんあります。水痘ワクチンはこれらと同時接種が可能です。打ち忘れを防ぐためにも、医師と相談してスケジュールを組みましょう。
1回接種と2回接種の違い・効果の持続期間
なぜ2回打つ必要があるのでしょうか。
1回の接種でも重症化を防ぐ効果は十分にありますが、感染そのものを防ぐ効果(発症予防効果)は80〜85%程度と言われており、時間が経つと免疫が落ちてくることがあります(二次性ワクチン不全)。
2回接種を行うことで、ブースター効果により免疫が強力に誘導され、発症予防効果はほぼ100%近くまで高まります。これにより、ブレイクスルー水痘のリスクも大幅に減らすことができます。
水疱瘡にかかった後のワクチン接種はどうなる?
もし、ワクチンを打つ前に(あるいは1回接種後に)自然に水疱瘡にかかってしまった場合、その後のワクチン接種はどうなるのでしょうか。
水疱瘡に自然感染し、治癒した場合は、体の中に強力な免疫(終生免疫)が作られるため、その後の水痘ワクチン接種は不要になります。ただし、「水疱瘡だと思っていたけれど、実は手足口病だった」というような誤診の可能性もゼロではありません。確実な診断がついていない場合や不安な場合は、ワクチンを接種しても医学的な問題はありません(過剰摂取による害はありません)。
水疱瘡に関するよくある質問(FAQ)
最後に、診療の現場で保護者の方から頻繁に寄せられる質問にお答えします。細かな疑問を解消して、安心して看病にあたってください。
Q. 一度かかれば二度とかからない?(再感染の可能性)
A. 基本的にはかかりません(終生免疫)。
一度かかると強い免疫ができるため、二度とかかることはまずありません。ただし、免疫不全のある方や、最初にかかった時の症状が極めて軽かった場合(特に生後半年以内の移行免疫がある時期にかかった場合など)は、稀に再感染することがあります。しかし、その場合も症状は軽く済みます。
Q. 帯状疱疹と水疱瘡の関係は?親の帯状疱疹はうつる?
A. 同じウイルスですが、病気の出方が違います。親の帯状疱疹から子供に水疱瘡としてうつることはあります。
水疱瘡が治った後も、ウイルスは死滅せずに神経の奥(神経節)に潜伏し続けます。そして数十年後、加齢や疲労で免疫力が落ちた時に、再び暴れ出して発症するのが「帯状疱疹」です。
帯状疱疹の水疱の中にもウイルスがいるため、水疱瘡にかかったことのない子供が、帯状疱疹の患部に触れると、「水疱瘡」として発症します(帯状疱疹としてうつるわけではありません)。親御さんが帯状疱疹になった場合は、患部をガーゼで覆い、子供が触れないように注意し、タオルや入浴の共有も避けましょう。
Q. 休日や夜間に発疹に気づいたら救急に行くべき?
A. 基本的には翌日の受診で大丈夫です。
水疱瘡だけであれば、緊急性はそこまで高くありません。夜間救急は重症患者のためのものですし、待合室で他の重篤な患者さんに感染させてしまうリスクもあります。熱が高くても水分がとれていて眠れるようなら、翌朝一番にかかりつけ医を受診してください。
ただし、「ぐったりして意識がはっきりしない」「呼吸が苦しそう」「水分が全く取れない」といった症状がある場合は、迷わず救急相談や受診を検討してください。
Q. 登園許可証の発行に料金はかかる?
A. 自治体や医療機関によって異なります。
公立の学校や園の場合、医師会との取り決めで無料の「意見書」扱いになることが多いですが、私立園や一部の自治体では有料(文書料が発生)となる場合があります。また、園指定の用紙ではなく、病院所定の診断書を求めると有料になることが一般的です。事前に園と病院の受付で確認することをお勧めします。
まとめ:正しいケアで早期回復を目指しましょう
水疱瘡は、見た目のインパクトや感染力の強さから、親御さんを不安にさせる病気です。しかし、適切な時期に治療を開始し、家庭でのケアを丁寧に行えば、痕も残らずきれいに治る病気でもあります。
最後に、今回の記事の重要ポイントをチェックリストにまとめました。看病の際の指針としてご活用ください。
水疱瘡ケアと登園再開までのチェックリスト
- 発疹を見つけたら、迷わず48時間以内に受診する
- 処方された抗ウイルス薬は、症状が良くなっても最後まで飲みきる
- 発熱時に市販の解熱剤を使わない(アスピリンは絶対禁止)
- 子供の爪を短く切り、痒くても掻きむしらせない対策をする
- お風呂は家族の最後に入り、タオルは共有せずに毎回洗濯する
- すべての発疹が茶色く硬いかさぶたになるまで登園させない
- 登園再開前に再受診し、医師の許可(治癒証明書)をもらう
現役小児科専門医からのメッセージ
「水疱瘡は痒みが強く、夜も眠れずにお子さんが不機嫌になりがちです。看病する保護者の方も、睡眠不足や仕事の調整で大変な思いをされるかと思います。しかし、登園停止期間は長く感じられるかもしれませんが、感染拡大を防ぐための大切な期間であり、お子さんの体を休めるための充電期間でもあります。焦らず、家庭でゆっくり静養させてあげてください。何か不安なことがあれば、遠慮なくかかりつけ医に相談してくださいね。」
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