身近な方に不幸があった際、悲しみの中で仕事の調整や会社への連絡を行うことは、精神的にも非常に大きな負担となります。「忌引き休暇は何日取れるのか」「忙しい時期に休んで大丈夫か」「上司にどう伝えれば失礼がないか」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、忌引き休暇(慶弔休暇)の日数は法律で決まっているわけではなく、会社の「就業規則」によって定められています。しかし、一般的な目安としては、配偶者や父母で5〜7日、祖父母や兄弟姉妹で2〜3日と設定されているケースが大半です。
この記事では、特定社会保険労務士である筆者が、一般的な忌引き日数の早見表から、そのままコピーして使える連絡メールの例文、給与や有給休暇の扱いまで、実務上のポイントを網羅的に解説します。急な事態で動揺されているかと思いますが、まずはこの記事で必要な情報を確認し、落ち着いて手続きを進めていきましょう。
忌引き休暇(慶弔休暇)とは?一般的な日数と範囲の目安
身内に不幸があった際に取得できる「忌引き休暇」。一般的に耳にする言葉ですが、実は法律用語ではありません。まずは、この休暇がどのような性質のものなのか、そして対象となる親族の範囲や日数の目安について、詳細に解説していきます。会社ごとのルールの違いや、例外的なケースについても深く理解することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
【親等別】忌引き休暇の日数目安 早見表
忌引き休暇の日数は、故人との関係性(親等)によって異なります。多くの民間企業では、国家公務員の規定などを参考に就業規則を作成しているため、ある程度の「相場」が存在します。以下に、一般的な日数の目安をまとめました。ご自身の状況と照らし合わせて確認してください。
▼【親等別】忌引き休暇の日数目安 早見表
| 対象者(故人) | 親等 | 一般的な日数目安 | 備考・補足 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | – | 10日間 | 喪主を務めることが多く、手続き等で長期間必要とされるため最長となるのが一般的です。 |
| 父母(養父母含む) | 1親等 | 7日間 | 喪主を務める場合は7日、そうでない場合は5日とする企業もあります。 |
| 子 | 1親等 | 5日間 | 配偶者や父母に次いで日数が多く設定されます。 |
| 祖父母 | 2親等 | 3日間 | 同居・別居の区別なく3日とする企業が多いですが、就業規則によっては「同居のみ」とする場合もあります。 |
| 兄弟姉妹 | 2親等 | 3日間 | 祖父母と同様の扱いが一般的です。 |
| 配偶者の父母(義父母) | 1親等 | 3日間 | 実の父母より短く設定される傾向にあります。喪主を務める等の事情があれば相談可能です。 |
| 配偶者の祖父母 | 2親等 | 1日間 または 対象外 | 規定にない企業も多いため、有給休暇の利用が必要になるケースがあります。 |
| 叔父・叔母 | 3親等 | 1日間 または 対象外 | 一般的には対象外となることが多く、葬儀当日のみ認められるケースもあります。 |
| 孫 | 2親等 | 1日間 | 祖父母や兄弟姉妹に比べると日数は短めです。 |
※上記はあくまで一般的なモデルケースです。正確な日数は必ず勤務先の就業規則を確認してください。
この表を見て、「思ったより短い」「自分の会社はどうだろう」と感じた方もいるかもしれません。特に祖父母や兄弟姉妹の場合、3日間という期間は、遠方での葬儀となると移動だけで終わってしまう可能性もあります。そのため、表の数字はあくまで「最低限確保したいライン」として捉え、実際の手続きでは上司や総務担当者と相談しながら進めることが重要です。
忌引き休暇は法律上の義務ではない?就業規則の確認が必須な理由
非常に重要な前提として、忌引き休暇(慶弔休暇)は、労働基準法などの法律で定められた休暇ではありません。
年次有給休暇や産前産後休暇、育児休業などは法律で企業に義務付けられていますが、忌引き休暇はあくまで会社が独自に定める「法定外福利厚生」の一つです。つまり、極端な話をすれば、会社が「うちに忌引き休暇という制度はない」と定めていれば、それは違法ではないのです。
しかし、日本の商習慣や企業文化として、従業員の慶弔時に休暇を与えることは一般的であり、9割以上の企業が何らかの慶弔休暇制度を設けています。ここで問題になるのが、「会社によってルールが全く異なる」という点です。
- 対象範囲の違い:A社では祖父母も対象だが、B社では配偶者と一親等(親・子)までしか認められない。
- 日数の違い:同じ「親の死亡」でも、5日の会社もあれば7日の会社もある。
- 条件の違い:「喪主を務める場合」のみ日数が加算される規定がある。
このように、千差万別のルールが存在するため、ネット上の情報を鵜呑みにせず、必ず自社の「就業規則(慶弔休暇規程)」を確認する必要があります。就業規則が手元にない、あるいは確認する余裕がない場合は、総務・人事担当者に直接問い合わせるのが最も確実です。
「土日祝日」は日数に含まれる?公休日と休暇のカウント方法
忌引き休暇の日数を計算する際、多くの人が迷うのが「土日や祝日を挟む場合、それは日数に含まれるのか?」という点です。これには大きく分けて2つの考え方があります。
- 暦日(れきじつ)計算:
カレンダー通りの日数でカウントする方法です。例えば「忌引き3日」で金曜日に休暇がスタートした場合、「金・土・日」で3日間消化したとみなされ、月曜日からは出勤となります。会社側にとっては管理しやすいですが、従業員にとっては休日と重なると損をした気分になる方式です。 - 所定労働日計算:
会社の休日(土日祝など)を除いて、出勤すべき日だけでカウントする方法です。同じく金曜日にスタートした場合、土日はカウントせず、「金・月・火」の3日間が休みとなります。従業員にとっては有利な計算方法です。
どちらの方式を採用しているかも、就業規則に明記されています。一般的には「連続した日数」として暦日計算を採用している企業が多い傾向にありますが、近年ではワークライフバランスの観点から、労働日のみをカウントする企業も増えています。もし規定に「休日を含む」という記載がなければ、労働日ベースで交渉できる余地があるかもしれません。
遠方の葬儀で「移動日(往復所要日数)」は加算されるか
実家が遠方にある場合や、海外で葬儀が行われる場合、移動だけで往復1〜2日を要することがあります。規定の日数だけでは葬儀への参列が物理的に難しいケースです。
昔ながらの企業や、公務員の規定に準じている企業では、「実際に移動に要する日数を別途加算する」というルールを設けている場合があります。これを「往復所要日数」の加算といいます。しかし、新幹線や飛行機の発達により、国内であれば日帰りや翌日戻りが可能になった現代では、この規定を廃止している企業も少なくありません。
もし就業規則に移動日に関する記述がない場合でも、諦めるのは早計です。上司に事情を説明し、有給休暇を組み合わせて連休にするなどの調整をお願いすることは十分に可能です。
特定社会保険労務士のアドバイス
「就業規則に『移動日』の記載がない場合でも、実務上の運用として柔軟に対応してくれる会社は意外と多いものです。私が過去に担当した事例でも、北海道から沖縄への移動が必要だった従業員に対し、規定の3日間に加えて特別に2日間の有給休暇取得を推奨し、実質5連休として処理したケースがありました。大切なのは、『遠方のため移動に時間がかかり、規定の日数では葬儀を滞りなく執り行うことが困難である』という具体的な事情を、正直かつ早めに相談することです。会社側も鬼ではありませんので、合理的な理由があれば配慮してくれるはずです。」
【コピペOK】上司への忌引き連絡方法とメール・電話の例文
身内の不幸を知らされた直後は、誰しも動揺してしまうものです。しかし、社会人として会社への連絡は速やかに行わなければなりません。「いつ連絡すればいいのか」「電話でないと失礼か」「何と言えばいいのか」といった疑問に対し、具体的なマナーと、そのまま使える例文を紹介します。
第一報は電話?メール?連絡手段の選び方とタイミング
忌引きの連絡における鉄則は、「可能な限り早く」「直属の上司に」伝えることです。連絡手段の優先順位は以下の通りです。
- 電話(最優先):
緊急性が高く、また休暇の承認を得る必要があるため、基本的には電話で直接話すのがマナーです。特に始業時間直前や勤務時間中の場合は、必ず電話を入れましょう。 - メール・チャットツール(深夜・早朝・不在時):
訃報が深夜や早朝に入った場合、上司のプライベートな時間を配慮して、まずはメールやLINE、Slackなどのチャットツールで第一報を入れます。そして、翌朝の始業時間に合わせて改めて電話をするのがベストです。 - LINE(関係性による):
普段から業務連絡にLINEを使用している職場であれば、LINEでの第一報も許容されます。ただし、スタンプの使用は避け、簡潔な文章で送りましょう。
「電話をするのが辛い」「泣いてしまって話せない」という状況であれば、無理をせずメールで詳細を伝え、「動揺しており電話での会話が難しいため、メールにて失礼いたします」と一言添える配慮があれば、上司も理解してくれるはずです。
伝えるべき必須4項目
連絡の際、上司が業務調整を行うために最低限知りたい情報は以下の4点です。これらが抜けていると、何度もやり取りが発生してしまい、お互いにストレスになります。
- 誰が亡くなったか(続柄):
忌引きの日数を決定するために必須です。「祖母」「実父」など明確に伝えます。 - 通夜・告別式の日程と場所:
会社として弔電や供花、香典の手配をする必要があるためです。未定の場合は「決まり次第連絡します」と伝えます。 - 休暇期間(いつからいつまで):
「〇月〇日から〇月〇日までお休みをいただきます」と宣言します。不明な場合は「まずは〇日まで」と伝えましょう。 - 緊急連絡先:
休暇中に業務上のトラブルが発生した場合に備え、連絡がつく携帯電話番号などを伝えます。
【状況別】上司・同僚に送る連絡メール・LINE例文集
文面を考える余裕がない方のために、状況別のテンプレートを用意しました。コピーして、カッコ内を書き換えるだけでそのまま使用できます。
▼例文1:文面作成の時間がない時の「基本テンプレート」
本文:
お疲れ様です。〇〇(自分の名字)です。
私事で恐縮ですが、昨晩、実の祖母が他界いたしました。
つきましては、葬儀執り行いのため、下記の日程で忌引き休暇をいただきたく存じます。
【休暇期間】
〇月〇日(曜)〜〇月〇日(曜)
※〇月〇日(曜)より出社予定です。
【故人】
祖母(享年〇〇歳)
【葬儀日程】
通夜:〇月〇日(曜) 18:00〜
告別式:〇月〇日(曜) 11:00〜
場所:〇〇斎場(住所:〇〇県〇〇市…)
急なご連絡となり、業務にご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。
緊急の際は、下記携帯電話までご連絡ください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
————————————————–
署名
携帯:090-xxxx-xxxx
————————————————–
▼例文2:業務の引き継ぎが必要な場合の「詳細テンプレート」
本文:
〇〇課長
お疲れ様です。〇〇です。
私事で恐縮ですが、本日未明、実父が急逝いたしました。
つきましては、葬儀および事後手続きのため、明日〇月〇日より〇日間、忌引き休暇をいただきたく存じます。
【期間】
〇月〇日(曜)〜〇月〇日(曜)
【業務の引き継ぎについて】
現在進行中の〇〇案件につきましては、資料を共有フォルダ(パス:〇〇)に保存しております。
先方への連絡は、本日中に私からメールにて済ませる予定ですが、緊急の対応が必要な場合は、同僚の〇〇さんにお願いできないか調整中です。
急な不在となり、多大なるご迷惑をおかけすることを深くお詫び申し上げます。
葬儀の詳細が決まり次第、改めてご報告いたします。
まずは取り急ぎ、メールにてご報告申し上げます。
(以下、署名と緊急連絡先)
▼例文3:深夜・早朝の第一報(LINE・チャットツール用)
〇〇課長
夜分遅くに失礼いたします。〇〇です。
先ほど、実家より祖父が亡くなったとの連絡が入りました。
急で申し訳ございませんが、明日は朝一番で実家へ向かうため、お休みをいただきたく存じます。
詳しい状況や休暇の日数については、明日の朝、改めてお電話にてご相談させてください。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
特定社会保険労務士のアドバイス
「口頭での連絡だけで済ませず、必ずメールやチャット等の『記録』を残すことを強く推奨します。過去に、電話で『しばらく休みます』とだけ伝えて出社しなかった従業員が、上司の勘違いにより『無断欠勤』扱いされ、賞与の査定に響いたというトラブルがありました。悲しみの中で大変かと思いますが、後々の自分の身を守るためにも、休暇の期間と理由を明記したメールを一本送っておくことが、社会人としてのリスク管理になります。」
忌引き中の給与と有給休暇の扱い
忌引き休暇を取得する際、やはり気になるのが「お金」の話です。「休んだ分の給料は引かれるのか?」「有給休暇として処理されるのか?」という疑問は、生活に関わる重要な問題です。ここでは、給与計算の仕組みと有給休暇との関係について解説します。
「有給」か「無給」かは会社次第!給与計算の仕組み
多くの人が誤解していますが、「忌引き休暇=有給(給料が出る)」とは限りません。
労働基準法には「ノーワーク・ノーペイ(働かざる者食うべからず)」という原則があります。会社は、労働していない時間に対して賃金を支払う義務はありません。ただし、福利厚生の一環として、会社が独自に「忌引き休暇中は給与を支給する」と定めている場合に限り、有給扱いとなります。
- 月給制の正社員の場合:
多くの企業では、忌引き休暇を有給扱いとしています。つまり、休んでも給料は減額されません。しかし、一部の企業では「欠勤」と同じ扱いとなり、日割りで給与が控除される場合もあります。 - 日給月給制や時給制の場合:
働いた日数や時間に応じて給与が決まる契約の場合、忌引き休暇は「休みは認めるが給料は出ない(無給)」となるケースが一般的です。
ご自身の会社がどちらのパターンかは、就業規則の「賃金規程」または「慶弔休暇規程」に記載されています。「有給とする」と書かれていれば安心ですが、「無給とする」あるいは記載がない場合は、給与が減る可能性があることを覚悟しなければなりません。
忌引き日数が足りない場合は「年次有給休暇」を組み合わせて使えるか
会社の規定日数が少なかったり、忌引き休暇が無給であったりする場合、自分の持っている「年次有給休暇(有休)」を使いたいと考えるのは自然なことです。
結論として、忌引き休暇と有給休暇を組み合わせて使うことは可能ですし、会社側がこれを拒否する正当な理由はほとんどありません。
- ケース1:忌引き日数が足りない
規定では3日だが、どうしても5日休みたい場合 → 「忌引き3日 + 有給2日」で申請。 - ケース2:忌引き休暇が無給である
給料を減らしたくない場合 → 忌引き休暇制度を使わずに、全日程を「有給休暇」として申請することも可能です。
ただし、有給休暇は原則として「事前申請」が必要です。事後の申請を認めるかどうかは会社の裁量によりますが、慶弔ごとのようなやむを得ない事情であれば、事後振替を認めてくれる企業がほとんどです。
ボーナス(賞与)の査定に「欠勤扱い」として響く可能性はあるか
忌引き休暇を取得したことによって、ボーナスの査定期間における「出勤率」が下がり、支給額が減るのではないかと心配される方もいます。
一般的に、就業規則で定められた正規の忌引き休暇であれば、出勤したものとみなして取り扱うという規定が置かれていることが多く、査定に響くことはありません。しかし、規定の日数を超えて休んだ分(欠勤扱いとなった分)については、出勤率の計算においてマイナス評価となる可能性があります。
長期の休みが必要な場合は、単なる欠勤にするのではなく、やはり有給休暇を充てることで、出勤率への影響を防ぐのが賢明です。
特定社会保険労務士のアドバイス
「『ノーワーク・ノーペイ』の原則は、労働法の基礎知識として知っておくべき重要なポイントです。もし会社が忌引きを無給としている場合、感情的にならずに『では、有給休暇を使わせてください』と申し出ましょう。会社としても、従業員が権利として持っている有給休暇の取得を拒むことは、法的に非常にリスクが高いため、スムーズに認められるはずです。給与明細を見てから『引かれている!』と驚かないよう、事前の確認をおすすめします。」
申請に必要な証明書類と提出フロー
忌引き休暇を正当に取得するためには、会社に対して「事実の証明」を行う必要があります。これは、架空の葬儀をでっち上げて休暇を不正取得するトラブルを防ぐためです。葬儀が終わって一息ついた後に慌てないよう、必要な書類と提出の流れを押さえておきましょう。
会社から求められる主な証明書類
会社によって求められる書類は異なりますが、一般的には以下のいずれか1点の提出を求められます。
- 会葬礼状(かいそうれいじょう):
葬儀の参列者に返礼品と共に渡されるお礼状です。故人の氏名、喪主の氏名、葬儀の日付が記載されており、最も一般的な証明書です。 - 葬儀の施行証明書:
葬儀社が発行してくれる証明書です。 - 死亡診断書のコピー:
医師が発行する公的な書類です。役所に提出する前にコピーをとっておく必要があります。 - 火葬許可証のコピー:
火葬を行う際に必要な公的書類です。
最近では、新聞のお悔やみ欄の切り抜きや、葬儀の日時・場所が記載された画像データ(訃報の案内)でも可とする企業も増えています。
家族葬や直葬で「会葬礼状」がない場合の対処法
近年増えている「家族葬」や、儀式を行わない「直葬(火葬のみ)」の場合、会葬礼状を作成しないことがあります。この場合、会社に提出する書類がなく困ってしまうケースが見受けられます。
そのような時は、葬儀社に「葬儀を施行した証明書を出してほしい」と依頼してください。多くの葬儀社は、会社提出用の証明書発行に慣れていますので、快く対応してくれます。また、葬儀費用の領収書のコピー(宛名が本人または喪主であるもの)でも、葬儀を行った事実の証明として認められる場合があります。
提出のタイミングは「事後」で大丈夫?一般的な申請フロー
証明書類の提出や、正式な「忌引届(慶弔休暇申請書)」の記入は、休暇明けの出社後に行うのが一般的です。
- 発生時:電話やメールで速やかに連絡(口頭申請)。
- 休暇中:会葬礼状などを確保しておく。
- 出社日:社定の申請書に記入し、証明書類を添付して提出。
会社によっては、勤怠管理システム上でWeb申請を行う場合もあります。いずれにせよ、葬儀の最中に書類を作成する必要はありませんので、まずは故人とのお別れに専念してください。
特定社会保険労務士のアドバイス
「証明書類を紛失してしまったり、どうしても用意できない特殊な事情がある場合は、正直に会社へ相談しましょう。その際、葬儀の日時や場所がわかるパンフレットや、当日の写真などが補助的な資料として役立つこともあります。一番良くないのは『書類がないから』といって提出を先延ばしにし、うやむやにしてしまうことです。これは会社の信用を損なう行為ですので、必ず何らかの形で説明責任を果たすようにしてください。」
こんな時どうする?雇用形態や対象外ケースの対応
正社員以外の方や、入社して間もない方、あるいはペットの死など、典型的なケースに当てはまらない場合の対応について解説します。ここでも「就業規則」が判断の基準となりますが、一般的な傾向を知っておくことで交渉の余地が生まれます。
パート・アルバイト・派遣社員に忌引きはあるか
パートタイムやアルバイトの方の場合、就業規則で「慶弔休暇は正社員にのみ適用する」とされていることが少なくありません。この場合、残念ながら忌引き休暇制度は利用できず、欠勤扱い(シフトに入らない)となります。
ただし、パートタイマーであっても、週の所定労働日数や勤続年数に応じて「年次有給休暇」が付与されているはずです。忌引き制度が使えなくても、有給休暇を使って休むことは権利として認められていますので、確認してみましょう。
派遣社員の方は、派遣先(実際に働いている会社)ではなく、派遣元(登録している派遣会社)の就業規則が適用されます。派遣会社によっては慶弔休暇制度を設けているところもありますので、派遣会社の担当営業に連絡して確認してください。
入社直後(試用期間中)でも忌引きは取得できるか
入社してまだ数ヶ月の「試用期間中」に不幸があった場合、休暇が取れるか不安になるかと思います。多くの企業では、試用期間中であっても正社員と同様に忌引き休暇の取得を認めています。
しかし、一部の企業では「入社後6ヶ月を経過した社員に限る」といった制限を設けている場合もあります。この場合、有給休暇もまだ付与されていない時期(入社6ヶ月未満)であることが多いため、欠勤として処理せざるを得ないことになります。とはいえ、身内の不幸という事情ですので、上司に相談すれば欠勤控除はされるものの、休み自体は認めてもらえることがほとんどです。
義理の父母・祖父母やペットの忌引きはどう扱われるか
- 義理の父母(配偶者の親):
多くの企業で忌引きの対象となりますが、実の親より日数が短い(1〜3日程度)傾向があります。 - 義理の祖父母(配偶者の祖父母):
対象外とする企業が多いです。休む場合は有給休暇を使うのが一般的です。 - ペット(愛犬・愛猫など):
近年、「ペットロス休暇」を導入する先進的な企業も出てきましたが、一般的な日本企業では忌引きの対象外です。ペットの葬儀で休む場合は、有給休暇を利用しましょう。理由は「私用」で構いませんが、理解のある職場であれば正直に伝えても良いでしょう。
会社に忌引き制度自体がない場合の休み方(欠勤・有給の相談)
小規模な個人商店やスタートアップ企業などで、そもそも就業規則や慶弔休暇制度が存在しない場合もあります。制度がないからといって休めないわけではありません。
この場合は、労働者の権利である「有給休暇」を申請するか、有給がない場合は「欠勤」として休みをもらうことになります。制度がない会社では、経営者や上司との信頼関係がすべてです。「制度がないので休みません」と無理をするのではなく、事情を話して休みの許可をもらいましょう。
休暇明けの出社マナーと香典返しの要否
無事に葬儀を終え、職場に復帰する際のマナーも大切です。不在中にフォローしてくれた同僚への感謝を示すことで、その後の業務もスムーズに進みます。
出社初日の朝礼や上司への挨拶例文
出社したら、まずは直属の上司の元へ行き、挨拶をします。その後、朝礼などの場で全体に向けた挨拶を行うのが一般的です。
【上司への挨拶例】
「おはようございます。この度は急なお休みをいただき、ありがとうございました。おかげさまで無事に葬儀を済ませることができました。本日より業務に復帰いたしますので、よろしくお願いいたします。」
【朝礼での挨拶例】
「おはようございます。〇〇です。先日は忌引き休暇をいただき、ご迷惑をおかけしました。不在中、業務をフォローしていただき大変感謝しております。本日からまた頑張りますので、よろしくお願いいたします。」
長々と葬儀の話をする必要はありません。「休ませてもらった感謝」と「業務への復帰の意欲」を簡潔に伝えるのがポイントです。
会社から香典や供花をもらった場合のお返し(香典返し)マナー
会社名義(「株式会社〇〇 代表取締役」など)で香典や供花をいただいた場合、それは会社の経費(福利厚生費)から出ていることが一般的です。この場合、基本的にはお返し(香典返し)は不要です。お返しをすると、かえって経理処理の手間をかけさせてしまうこともあります。
ただし、上司や同僚から「有志一同」として個人的に香典をいただいた場合は、通常の香典返しと同様に、いただいた額の半額〜3分の1程度の品物(お茶や海苔、タオルなどの消え物)をお返しするのがマナーです。
菓子折りは必要?職場への配慮のポイント
「香典返しは不要」という場合でも、長期間休んで迷惑をかけたことへのお詫びと感謝の気持ちとして、個包装のお菓子などを持参するのは良い習慣です。これを「忌明けの菓子折り」などと呼びますが、必須ではありません。
「皆様で召し上がってください」と給湯室や共有スペースに置いておくだけでも、感謝の気持ちは伝わります。職場の慣習によりますので、過去に忌引きを取った先輩がどうしていたかを参考にすると良いでしょう。
忌引き休暇に関するよくある質問(FAQ)
最後に、忌引き休暇に関してよく検索される疑問点について、Q&A形式で回答します。
Q. 忌引き休暇の日数を分割して取得することはできますか?
A. 基本的には「連続取得」が原則ですが、会社によっては分割を認める場合もあります。
多くの就業規則では、「死亡した日から〇日以内」や「葬儀の日を含む連続した〇日間」と定められています。しかし、最近では「通夜・告別式で2日休み、後日の法要で残り1日を使う」といった分割取得を認める柔軟な企業も増えています。まずは上司に相談してみてください。
Q. 葬儀の日程が決まっていない場合、見込みで連絡してもいいですか?
A. はい、第一報は見込みで構いません。
火葬場の空き状況などで葬儀日程がすぐに決まらないことはよくあります。「まずは明日から3日間休みをいただき、日程が確定次第、正式な期間をご連絡します」と伝えれば問題ありません。重要なのは「休む」という意思表示を早くすることです。
Q. 忌引き休暇を拒否された場合、法的に対抗できますか?
A. 就業規則に規定があるのに拒否された場合は、契約違反となります。
就業規則は会社と従業員の契約そのものです。規定に「忌引き休暇を与える」とあるのに上司が個人的な判断で拒否することはできません。しかし、そもそも規定がない場合は、法的に休暇を強制することは難しくなります。その場合は有給休暇の取得を主張しましょう。
特定社会保険労務士のアドバイス
「もし忌引き休暇の取得を巡って会社と揉めてしまいそうな時は、一人で抱え込まず、社内のコンプライアンス窓口や、労働基準監督署の総合労働相談コーナーなどに相談することをお勧めします。ただし、最も効果的なのは『就業規則を見せてください』と冷静に伝え、ルールを確認することです。感情的にならず、ルールに基づいた対話を心がけることが、トラブル解決への近道です。」
まとめ:まずは落ち着いて上司へ連絡を。規定確認はその後でもOK
身近な方の訃報は、いつ訪れるか予測できないものです。悲しみの中で仕事の手配をするのは大変な心労かと思いますが、まずは「会社への連絡」さえ済ませてしまえば、あとは周囲がサポートしてくれます。
本記事の要点を整理したTODOリストを活用し、一つずつタスクを消化していってください。
- 直属の上司へ電話・メールで第一報を入れる(最優先)
- 葬儀日程が決まり次第、正式な休暇期間を連絡する
- 業務の引き継ぎ事項を同僚に共有する(メール等でOK)
- 就業規則で「日数」と「有給/無給」を確認する(後日でも可)
- 会葬礼状などの証明書類を保管しておく
特定社会保険労務士のアドバイス
「急な不幸で動揺しているあなたへ。仕事のことが気になるのは責任感が強い証拠ですが、今は何よりも、故人とのお別れの時間を大切にしてください。会社組織は、誰か一人が数日抜けても回るようにできています。同僚や上司を信頼して任せ、今はご自身の心と体を休めることを優先してください。手続きのことは、落ち着いてからで十分間に合います。」
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