英国のアウトドア・ライフスタイルブランド「Barbour(バブアー)」。その武骨ながらも洗練された佇まいは、時代を超えて多くの紳士淑女を魅了し続けています。しかし、いざ購入しようとすると、モデルの多様さ、独特なサイズ表記、そして「オイルドジャケットは手入れが大変そう」「臭いが気になる」といった不安が頭をよぎり、最後の一歩が踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、バブアー選びの正解は、あなたのライフスタイル(通勤手段・着用シーン)と「育てる覚悟」のバランスで決まります。種類やサイズ選びは一見複雑に見えますが、要点さえ押さえれば、間違いなく一生の相棒に出会うことができます。
この記事では、ヴィンテージウェア・バイヤーとして長年バブアーに触れ、累計50着以上を販売・所有してきた私が、以下の3点を中心に徹底解説します。
- 定番モデル(ビデイル・ビューフォート等)の決定的な違いと、あなたに最適な一着の選び方
- 失敗しないサイズ感(SL・クラシック)と、後悔しない素材選び(ワックス・ノンワックス)の正解
- 専門家が実践する「臭わせない・カビさせない」ための具体的なメンテナンス術
カタログスペックだけでは分からない、着用者視点でのリアルな情報をお届けします。ぜひ最後までお読みいただき、あなただけの一着を見つけてください。
バブアー(Barbour)が「一生モノ」として愛される理由と覚悟
なぜ、バブアーはこれほどまでに愛され続けるのでしょうか。それは単なるファッションアイテムの枠を超え、所有者の人生を投影する「道具」としての側面を持っているからです。新品の状態が完成形ではなく、着込むほどに生地が馴染み、シワやアタリが刻まれ、自分だけのヴィンテージへと育っていく。この過程こそがバブアー最大の魅力です。
しかし、その魅力を享受するためには、一般的なアウターとは異なる特性を理解し、受け入れる「覚悟」が必要です。ここでは、購入前に知っておくべきブランドの背景と、オイルドジャケットという特殊な衣服との付き合い方について解説します。
ヴィンテージウェア・バイヤーのアドバイス
「店頭でお客様によくお伝えするのは、『バブアーは新品よりも3年後が一番格好いい』ということです。新品のパリッとした状態も素敵ですが、雨風に打たれ、オイルが抜けかけ、自分の体型に合わせてシワが入った姿こそが、バブアー本来の美しさです。ですから、最初の硬さや重さは、これからの関係性を築くための挨拶のようなものだと思ってください。育てる楽しみを知れば、これほど愛着の湧く服はありません。」
英国王室御用達(ロイヤルワラント)の品質と歴史
バブアーの品質を語る上で欠かせないのが、「ロイヤルワラント(英国王室御用達)」の称号です。1894年、ジョン・バブアーによって港町サウスシールズで創業されたバブアーは、北海の不順な天候の下で働く水夫や漁師のために、油を塗った布(オイルドクロス)製の防水ジャケットを提供したことから始まりました。
その高い耐久性と防水性は、やがて英国のアウトドアマンやカントリージェントルマンに認められ、王室の目にも留まることになります。エリザベス女王、エディンバラ公、チャールズ皇太子(現国王)という3人のロイヤルファミリーからワラントを授与された希少なブランドであり、タグに刻まれた紋章はその証です(※現在はエリザベス女王とエディンバラ公の崩御に伴い、ワラントの表示に変更が生じていく過渡期にあります)。
この称号は、単なる名誉ではありません。定期的に厳しい審査が行われ、品質が基準に満たないと判断されれば取り消される可能性もあるものです。つまり、私たちが手にするバブアーは、英国王室が認める最高水準の品質管理と、100年以上にわたり培われてきたクラフツマンシップの結晶なのです。
「育てるジャケット」オイルドクロスのメリット・デメリット
バブアーの代名詞である「ワックスドコットン(オイルドクロス)」は、最高級のエジプト綿に独自のオイルを染み込ませることで、完全防水に近い機能を持たせた素材です。現代にはゴアテックスをはじめとする高機能な化学繊維が存在しますが、それでもなおワックスドコットンが選ばれるのには理由があります。
最大のメリットは、その「耐久性」と「修復可能性」です。化学繊維の防水透湿素材は、経年劣化により加水分解を起こしたり、コーティングが剥がれたりして寿命を迎えますが、ワックスドコットンは生地が破れない限り、オイルを塗り直す(リプルーフ)ことで何度でも防水機能を復活させることができます。また、棘や摩擦にも強く、ハンティングやフィッシングといった過酷な環境でも破れにくい堅牢さを誇ります。
一方で、デメリットも明確に存在します。まず、オイルが含まれているため、通常のジャケットよりも「重い」です。また、他の衣類や車のシートにオイルが移る可能性があるため、満員電車やクローゼットでの保管には配慮が必要です。さらに、通気性が極端に低いため、蒸れやすく、日本の高温多湿な環境ではカビのリスクも伴います。これらの「不便さ」を理解し、手間をかけることを楽しめるかどうかが、バブアーオーナーになれるかどうかの分かれ道と言えるでしょう。
現代のバブアーは「臭い」のか?オイルの進化について
バブアー購入の最大の障壁となるのが「臭い」の問題です。「バブアーはクレヨンのような独特な臭いがする」「周囲に迷惑をかけるのではないか」という懸念を持つ方は非常に多いです。確かに、かつてのヴィンテージバブアーは、動物性油脂や酸化しやすいオイルを使用していたため、経年変化とともに強烈な酸化臭を放つことがありました。
しかし、ここで強調しておきたいのは、「現行のバブアーはほとんど臭わない」という事実です。2000年代以降、バブアー社はオイルの改良を重ね、現在は植物性由来の成分を含んだ、酸化しにくく無臭に近いオイルを使用しています。鼻を近づければ微かにワックスの香りがする程度で、満員電車で隣の人に不快感を与えるようなレベルではありません。
ただし、古着店で売られている80年代〜90年代のヴィンテージ品を購入する場合は注意が必要です。これらは旧来のオイルが使用されており、特有の強い臭いが残っている場合が多々あります。初心者が最初に購入するのであれば、衛生面や社会的なTPOを考慮しても、現行の新品(または近年製造のユーズド)を強くおすすめします。
Chart here|旧オイルと現行オイルの匂い・ベタつき比較表
| 比較項目 | 旧オイル(〜2000年代初頭) | 現行オイル(現在) |
|---|---|---|
| 匂いの種類 | クレヨン、酸化した油、古本のような独特な臭気 | ほぼ無臭(鼻を近づけると微かに油粘土のような香り) |
| 匂いの強さ | 強(半径1m以内に漂うことも) | 極めて弱(着用者本人が気づく程度) |
| ベタつき | 強(手にネットリと付く感覚) | 中〜弱(しっとりとした質感、サラッとしている) |
| 移染リスク | 高(接触するものに容易に移る) | 低(長時間圧着しなければほぼ移らない) |
| おすすめ層 | ヴィンテージ愛好家、ソロキャンプ等の屋外活動 | 街着、通勤、初心者、電車移動が多い人 |
【目的別】バブアーの主要モデル徹底比較!あなたに合うのはどれ?
バブアーには数多くのモデルが存在しますが、日本国内で主に流通し、人気を博しているのは数種類に絞られます。しかし、それぞれが特定の目的(乗馬、狩猟、釣りなど)のために開発された背景を持つため、ディテールやシルエットが大きく異なります。
「どれを選べばいいか分からない」という悩みに対する答えは、「あなたのライフスタイルと着用シーン」にあります。例えば、自転車通勤をする人と、スーツの上から羽織って営業に出る人とでは、選ぶべきモデルは異なります。ここでは、主要モデルの特徴を深掘りし、それぞれのモデルがどのような人に最適なのかを解説します。
【不動のNo.1】乗馬用「Bedale(ビデイル)」:迷ったらこれを選ぶべき理由
バブアーの中で最も知名度が高く、世界中で愛されているベストセラーモデルが「Bedale(ビデイル)」です。1980年に乗馬用ジャケットとして開発されました。もしあなたが「最初の一着」で迷っているのであれば、このビデイルを選んでおけば間違いありません。
ビデイル最大の特徴は、乗馬時の動きやすさを考慮した「サイドベンツ(スナップボタン付きの裾の切れ込み)」と、手綱を握る際に風の侵入を防ぐための袖口の「リブ」です。着丈はヒップが隠れるか隠れないか程度の絶妙な長さで、ジャケットというよりはブルゾンに近い感覚で着用できます。
このモデルをおすすめするのは、カジュアルな服装をメインとする方や、自転車・バイクでの移動が多い方です。着丈が短いため、座った時に裾が邪魔にならず、アクティブな動きに対応します。また、袖口のリブが風をシャットアウトするため、防寒性も高いのが魅力です。デニムやチノパンとの相性は抜群で、まさに「街着としてのバブアー」の完成形と言えるでしょう。
【スーツに最適】狩猟用「Beaufort(ビューフォート)」:ジャケットの裾が出ない安心感
ビデイルと双璧をなす人気モデルが「Beaufort(ビューフォート)」です。1983年にハンティング(狩猟)用ジャケットとして誕生しました。ビデイルとの最大の違いは、「着丈の長さ」と「背面のゲームポケット」です。
ビューフォートの着丈はビデイルよりも約3〜5cmほど長く設定されており、ヒップをしっかりと覆います。この数センチの差が決定的に重要なのは、「スーツのジャケットの裾が出るか出ないか」という問題においてです。ビデイルの場合、サイズ選びによってはスーツの裾が下からはみ出してしまうことがありますが、ビューフォートならその心配がありません。
また、背中には捕らえた獲物を入れるための大きな「ゲームポケット」が装備されており、現代では手袋やマフラー、新聞などを放り込める大容量収納として活躍します。袖口はリブではなく、シャツの袖をまくりやすい「ベルクロ(マジックテープ)」仕様の二重袖になっており、スーツの袖口と干渉しにくいのもポイントです。ビジネス通勤での使用をメインに考えるなら、迷わずビューフォートを選ぶべきです。
ヴィンテージウェア・バイヤーのアドバイス
「ビデイルとビューフォート、どちらにするか悩むお客様には、必ず『普段、ジャケット(テーラード)を着ますか?』と尋ねます。着丈の数センチは、見た目の印象を劇的に変えます。ビデイルは軽快でスポーティ、ビューフォートは重厚でクラシックな印象を与えます。もし仕事でスーツを着る機会が多いなら、ジャケットの裾が隠れるビューフォートの方が、後ろ姿が美しく、大人の余裕を感じさせますよ。」
【トレンド】短丈「Transport(トランスポート)」&「Spey(スペイ)」
近年、若年層やファッション感度の高い層を中心に爆発的な人気を誇っているのが、ショート丈モデルの「Transport(トランスポート)」と「Spey(スペイ)」です。
「Transport(トランスポート)」は、元々輸送業務に従事する人向けに作られたと言われるモデルで、コーチジャケットのようなシンプルなデザインが特徴です。ビデイルよりも着丈が短く、身幅が広めに取られているため、今のトレンドであるオーバーサイズシルエットの服とも相性が良く、レイヤードスタイルを楽しみやすいのが魅力です。
「Spey(スペイ)」は、フライフィッシング用に開発されたモデルで、川に入った際に水に浸からないよう極端に短い着丈が特徴です。Dカンなどの金具ディテールが多く、デザイン性が非常に高いため、着るだけで玄人感が出ます。これらのモデルは、伝統的なバブアーの泥臭さよりも、ファッションとしての面白さを追求したい方、女性の方にも大変おすすめです。
【玄人好み】ロング丈「Border(ボーダー)」&「Gamefair(ゲームフェア)」
よりクラシックで、コートのように羽織りたい方に人気なのがロング丈モデルです。「Border(ボーダー)」は、スコットランドとイングランドの国境付近(ボーダーズ)に住む人々のために作られた野外散策用ジャケットです。ビューフォートよりもさらに着丈が長く、膝上までカバーするため、防寒性と防雨性に優れています。セットインスリーブ(一般的なジャケットの袖付け)を採用しており、肩のラインがしっかり出るため、よりフォーマルで構築的な印象を与えます。
一方、「Gamefair(ゲームフェア)」は競馬観戦用などに作られたモデルで、ラグランスリーブ(襟ぐりから袖下にかけて斜めに切り替えが入った袖)を採用しており、肩周りが動かしやすく、リラックスした雰囲気があります。これらのロング丈モデルは、ヴィンテージ市場でも人気が高く、古着好きや、周りと被りたくない玄人好みの選択肢と言えます。
Chart here|主要5モデル(Bedale/Beaufort/Transport/Spey/Border)スペック・用途比較一覧
| モデル名 | 元々の用途 | 着丈 | 袖の仕様 | おすすめシーン |
|---|---|---|---|---|
| Bedale (ビデイル) | 乗馬 | ミドル(短め) | ラグラン / リブ | カジュアル、自転車、バイク、街着全般 |
| Beaufort (ビューフォート) | 狩猟 | ミドル(長め) | ラグラン / ベルクロ | ビジネス(スーツ)、旅行、収納力重視 |
| Transport (トランスポート) | 輸送業務 | ショート | ラグラン / 簡易 | トレンド重視、ワイドパンツとの合わせ |
| Spey (スペイ) | 釣り | ベリーショート | ラグラン / 簡易 | レイヤード、女性、個性派ファッション |
| Border (ボーダー) | 野外散策 | ロング | セットイン / ベルクロ | オーバーコート、防寒重視、長身の方 |
失敗しないサイズ選びとシルエット(SL vs Classic)
モデルが決まったら、次に立ちはだかるのが「サイズ選び」の壁です。バブアーには同じモデルでもシルエットの異なるラインが存在し、さらに数値表記(36, 38, 40…)という英国式のサイズ展開があるため、ここで躓く方が非常に多いです。サイズ選びを間違えると、「思ったより野暮ったい」「中に着込めない」といった後悔に直結します。
ここでは、現代のバブアー選びにおいて避けて通れない「SL(スリムライン)」と「Classic(クラシック)」の違い、そして具体的な数値サイズの選び方について、フィッティングのプロの視点から解説します。
現代的な細身「SL(スリムライン)」の特徴と注意点
2011年頃に日本市場向けに開発されたのが「SL(Slim Line)」シリーズです。これは、バブアー本来の武骨でゆったりとしたシルエットを、現代的なファッションに合わせて細身にリサイズしたものです。
SLの特徴は、身幅やアームホールがタイトに絞られており、着た時にスタイリッシュに見える点です。シャツや薄手のニットの上からジャストサイズで着用すると、非常に美しいシルエットを描きます。特に、細身の体型の方や、バブアー特有の「おじさん臭さ(野暮ったさ)」を敬遠したい方には最適な選択肢でした。
しかし、近年のファッショントレンドがオーバーサイズへと移行する中で、SLのタイトさが「窮屈」と感じられるケースも増えています。また、アームホールが細いため、厚手のシェットランドセーターやインナーダウンを着込むと脇が詰まって動きにくくなるという注意点もあります。SLを選ぶ際は、真冬にどれくらい着込むかを慎重にシミュレーションする必要があります。
本来の武骨さ「Classic(クラシック)」と「White Label(オーバーサイズ)」
現在、主流に戻りつつあるのが「Classic(クラシック)」や「Original(オリジナル)」と呼ばれる、本国仕様のゆったりとしたシルエットです。身幅や腕回りに余裕があり、バブアー本来の機能美である「動きやすさ」と「重ね着のしやすさ」を体感できます。
クラシックフィットの魅力は、厚手のニットやフリース、あるいはスーツの上からでもストレスなく羽織れる点です。また、生地が余ることで生まれるドレープ(シワ)感が美しく、エイジングの風合いもより出やすい傾向にあります。「一生モノとして長く着たい」「体型が変わっても着続けたい」と考えるなら、流行に左右されないクラシックフィットをおすすめします。
さらに近年では、「White Label(ホワイトレーベル)」などから「オーバーサイズモデル」も展開されています。これはクラシックよりもさらに身幅をたっぷりと取り、着丈も調整した現代的なリラックスシルエットです。古着のようなルーズな雰囲気を新品で楽しみたい方に適しています。
身長・体重別サイズ選びの目安(36・38・40・42)
バブアーのサイズ表記は、胸囲をインチで表した数値が基本となっています。一般的な日本サイズ(S/M/L)との対応関係を把握しておくと選びやすくなります。以下は、標準的な体型の方を想定した「Classic Bedale」におけるサイズ目安です。
- サイズ 34 (XS相当): 〜165cm / 〜55kg(小柄な男性や女性向け)
- サイズ 36 (S相当): 165cm〜170cm / 55kg〜60kg
- サイズ 38 (M相当): 170cm〜175cm / 60kg〜70kg(最も需要の多いゴールデンサイズ)
- サイズ 40 (L相当): 175cm〜180cm / 70kg〜80kg
- サイズ 42 (XL相当): 180cm〜 / 80kg〜
ただし、これはあくまで目安です。「中に何を着るか」で適正サイズは1サイズ変わります。例えば、172cm/65kgの方が、Tシャツの上に着るなら「36」でジャストですが、スーツや厚手のニットの上に着るなら「38」の方が快適です。SLモデルの場合は、上記よりも全体的にタイトになるため、1サイズ上げることを検討する方も多いです。
「裄丈(ゆきたけ)」が重要!試着時に確認すべき3つのポイント
バブアーの多くはラグランスリーブを採用しているため、「肩幅」という概念がありません。その代わりに重要になるのが、首の付け根から袖先までの長さを測る「裄丈(ゆきたけ)」です。
試着時には、以下の3点を必ずチェックしてください。
- 袖の長さ: 手を下ろした状態で、親指の付け根にかかるくらいが理想です。腕を前に出した時に手首が丸出しにならないか確認しましょう。
- 身幅のゆとり: 前のジッパーを閉めた状態で、胸元に拳一つ分の余裕があるか。ここがパツパツだと防寒性が落ち、見た目も窮屈になります。
- アームホール: 腕を上げたり回したりして、脇の下が突っ張らないか。特にSLモデルではここが盲点になりがちです。
ヴィンテージウェア・バイヤーのアドバイス
「サイズ選びで迷ったら、必ず『真冬に中に着る一番厚手の服』を持って試着に行ってください。お店で薄手のシャツ一枚で試着して『ジャストだ!』と思って買うと、冬場にセーターを着た瞬間にパツパツで着られなくなる、という失敗は本当によくあります。バブアーはアウターです。少しゆとりがあるくらいが、空気の層を含んで暖かく、見た目もエレガントですよ。」
「ワックス」か「ノンワックス」か?ライフスタイル別の最適解
モデル、サイズの次に決断を迫られるのが、「素材」の選択です。伝統的な「ワックスドコットン」にするか、手入れが楽な「ノンワックス」にするか。これは、あなたがバブアーに何を求めるかという価値観の選択でもあります。
近年、バブアー社はノンワックスライン(2レイヤー、ピーチスキンなど)を充実させており、見た目はバブアーそのものですが、機能性は現代のアウターというモデルが増えています。それぞれのメリット・デメリットを比較し、あなたのライフスタイルに最適な方を選びましょう。
王道の「ワックスドコットン」を選ぶべき人
やはりバブアーと言えばワックスドコットンです。この素材を選ぶべき人は、「経年変化(エイジング)を楽しみたい人」です。着用を重ねるごとにワックスが抜け、生地に濃淡が生まれ、擦れる部分は光沢を帯びてくる。この「自分だけの服に育っていく過程」に価値を感じるなら、迷わずワックスモデルを選ぶべきです。
また、機能面でも、ワックスドコットンは高い防風性と防水性を持っています。傘をささずに雨の中を歩く英国スタイルを実践したい方や、キャンプや焚き火などのアウトドアシーンでガシガシ使いたい方にも適しています。手入れの手間さえも「愛着」と感じられるロマン派の方には、ワックス以外の選択肢はありません。
実用性の「ノンワックス(2レイヤーなど)」を選ぶべき人
一方で、ノンワックスモデル(ポリエステルやナイロン混紡の2レイヤー素材など)を選ぶべき人は、「実用性と清潔感を重視する人」です。特に、満員電車での通勤が必須の方や、車移動が多くシートへの付着が心配な方には、ノンワックスが救世主となります。
ノンワックスのメリットは、軽量で、ベタつかず、臭いも全くないことです。撥水機能を持たせた素材も多く、雨の日でも問題なく使えます。また、クリーニング店でのドライクリーニングが可能なモデルも多く、衛生的に保ちやすいのも大きな利点です。「バブアーのデザインは好きだが、オイルの面倒臭さは嫌だ」という合理的な考えをお持ちの方にとって、これほど賢い選択はありません。
ヴィンテージウェア・バイヤーのアドバイス
「昔からのファンの中には『ノンワックスなんてバブアーじゃない』と言う人もいますが、私はそうは思いません。現代の都市生活において、ノンワックスモデルは非常に合理的で優秀です。ただ、一つだけお伝えしたいのは、ノンワックスは『エイジング』しません。10年着ても、古びていくだけで、ワックスドコットンのような味わい深い表情にはなりません。その点だけ納得できれば、ノンワックスは最高の街着になります。」
Chart here|ワックスあり・なしのメリット・デメリット対比表
| 項目 | ワックスドコットン (Wax) | ノンワックス (Non-Wax) |
|---|---|---|
| 質感・雰囲気 | 重厚感あり、しっとりした質感、経年変化する | 軽快、マットまたは微光沢、クリーンな印象 |
| 手入れ | リプルーフが必要、洗濯不可、ブラシ掛け必須 | クリーニング可(モデルによる)、手入れ簡単 |
| 防水・撥水性 | 完全防水に近い(メンテ次第) | 撥水程度(経年で低下する) |
| 周囲への配慮 | 接触時の移染に注意が必要 | 気にする必要なし |
| 寿命 | 手入れすれば数十年(一生モノ) | 生地の劣化や加水分解により寿命あり |
買って後悔しないために!専門家が教えるメンテナンスと保管の鉄則
念願のバブアーを手に入れた後、最も重要なのがメンテナンスです。「カビさせてダメにしてしまった」というのは、バブアー初心者が犯しがちな最大の失敗です。日本の気候は英国と異なり高温多湿であるため、日本独自の管理方法が必要になります。
ここでは、カビや劣化を防ぎ、末長く愛用するためのメンテナンスの鉄則を伝授します。これさえ守れば、恐れることはありません。
【日常ケア】着用後のブラッシングと保管場所の注意点
日々のケアで最も大切なのは「ブラッシング」です。着用後は、馬毛などの柔らかいブラシで表面の埃や汚れを払い落としてください。埃はカビの栄養源になるだけでなく、オイルを含んだ生地に付着すると湿気を吸い寄せます。
そして、保管場所には細心の注意を払ってください。絶対にやってはいけないのが、「クローゼットへの押し込み」と「ビニールカバーをかけたままの保管」です。これらは通気性を遮断し、カビの温床を作っているようなものです。バブアーは、風通しの良い日陰に吊るすのが基本です。シーズンオフでも、クローゼットに入れっぱなしにせず、月に一度は外に出して風を当ててあげましょう。
【カビ対策】日本の湿気からバブアーを守る方法
日本でバブアーを維持する最大の敵は「カビ」です。特に梅雨から夏にかけての時期が危険です。もし白い粉のようなものが表面に見えたら、それはカビの初期段階か、あるいはワックス成分の凝固(ブルーム)の可能性があります。ドライヤーの温風を当てて消えればワックスですが、消えなければカビです。
カビを防ぐためには、とにかく「湿気を溜めない」こと。クローゼットには除湿剤を置き、ジャケット同士の間隔を空けて吊るしてください。もしカビが生えてしまった場合は、固く絞った濡れタオルで拭き取り、無水エタノールで消毒する方法がありますが、根が深い場合は専門業者に相談することをおすすめします。
ヴィンテージウェア・バイヤーのアドバイス
「お恥ずかしい話ですが、私も初心者の頃、シーズン終わりにクリーニングカバーをかけたままクローゼットの奥にしまい込み、翌年の秋に出したら全体が白カビだらけ…という悲惨な経験をしました。あの時のショックは忘れられません。それ以来、バブアーだけは部屋の見える場所、空気が動く場所に吊るしています。『バブアーは生き物』だと思って、呼吸させてあげることが一番のメンテナンスです。」
【リプルーフ】オイルを入れる頻度と専門業者への依頼について
オイルドジャケットの醍醐味である「リプルーフ(オイルの再注入)」ですが、頻度はどれくらいが適切でしょうか?一般的には「2〜3年に1回」、あるいは「防水性が落ちてきたと感じたら」で十分です。毎年やる必要はありません。むしろ、オイルを入れすぎるとベタつきの原因になります。
リプルーフは自分で行うことも可能ですが(専用のワックス缶を湯煎し、スポンジで塗り込む作業)、ムラなく塗るのは意外と難しいものです。また、作業スペースの確保や後片付けも大変です。自信がない方や、美しく仕上げたい方は、バブアー専門店やラヴァレックスなどの公認クリーニング業者に依頼するのが賢明です。プロの技で、新品同様の輝きと防水性が蘇ります。
洗濯はNG?汚れた時の対処法とクリーニング事情
ワックスドジャケットは、基本的にお湯や洗剤を使った「洗濯機での丸洗い」は厳禁です。洗剤を使うとオイルが完全に抜け落ち、生地の風合いが損なわれるだけでなく、防水機能も失われます。また、洗濯槽がオイルまみれになり、故障の原因にもなります。
泥はねなどの汚れが付いた場合は、冷たい水を含ませたスポンジで優しく拭き取るのが正解です。どうしても全体の汚れや臭いが気になる場合は、前述の専門業者による「水洗い&リプルーフ」のコースを利用してください。決して自己判断でコインランドリーに入れないようにしましょう。
バブアーに関するよくある質問(FAQ)
最後に、購入を検討しているお客様から頻繁に寄せられる質問にお答えします。細かな疑問を解消して、安心して購入へ進んでください。
Q. 真冬でも暖かいですか?ライナーは必要?
A. 正直に申し上げますと、バブアー単体の防寒性はそれほど高くありません。オイルドクロスは風を防ぎますが、保温材が入っていないため、真冬の外気は冷たく伝わります。ですので、真冬に着るなら別売りの「ファーライナー」や「キルティングライナー」を装着するか、インナーに厚手のニットやインナーダウンを着込むことが必須です。これらを組み合わせれば、日本の冬でも十分に乗り切れます。
Q. 電車や車に乗るとき、座席にオイルは付きませんか?
A. 現行のオイルは移染しにくくなっていますが、長時間体重をかけて圧迫すると、オイルが滲み出る可能性はゼロではありません。特に車のレザーシートや、満員電車で隣の人の淡色のコートと密着する状況は避けるべきです。
ヴィンテージウェア・バイヤーのアドバイス
「電車に乗る時や車を運転する時は、ジャケットを脱いで『裏返しに畳む』のがマナーであり、テクニックです。裏地(チェック柄の部分)を表にして畳めば、周囲にオイルが付く心配はありませんし、自分の服も守れます。この所作をスマートに行えるのが、真のバブアー使いと言えるでしょう。」
Q. ユニクロなどの服と合わせても浮きませんか?
A. 全く問題ありません。むしろ、バブアーの武骨さは、シンプルなファストファッションと非常に相性が良いです。ユニクロの無地のニットやデニム、チノパンにバブアーを羽織るだけで、全体のコーディネートが格上げされ、高級感が出ます。バブアーは「主役」になれるアウターなので、他はシンプルにまとめるのがお洒落に見せるコツです。
Q. 古着(ヴィンテージ)と現行品、初心者はどちらが良い?
A. 初めての一着なら、間違いなく「現行品(新品)」をおすすめします。ヴィンテージはサイズ感が個体によってバラバラで、オイルの臭いや劣化状態を見極めるのが難しく、メンテナンスのハードルが高いからです。まずは現行品でバブアーの扱いに慣れ、その魅力を十分に理解してから、2着目以降でヴィンテージに挑戦するのが失敗しないルートです。
まとめ:あなただけの一着を育てて、人生の相棒にしよう
ここまで、バブアーの選び方からメンテナンスまでを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。バブアーは確かに「手のかかる服」かもしれません。しかし、その手間こそが愛着を育み、使い捨てのファストファッションでは決して得られない満足感をもたらしてくれます。
雨の日も風の日も、あなたの人生に寄り添い、時間を共有するごとに魅力を増していく。そんな「一生の相棒」と呼べる服は、そう多くはありません。ぜひ、あなたにぴったりのモデルとサイズを見つけ、今日から自分だけのバブアーを育て始めてください。
ヴィンテージウェア・バイヤーのアドバイス
「最初の一着を手に入れた日の高揚感、そして初めて袖を通した時の少し硬い感触を、ぜひ覚えておいてください。5年後、10年後にそのジャケットを見た時、その変化に驚き、共に過ごした時間を愛おしく思うはずです。バブアーは、あなたの人生を記録するアルバムのようなものです。素晴らしいバブアーライフが始まることを願っています。」
バブアー購入前 最終チェックリスト
- [ ] 用途の確認: 通勤(スーツ)ならビューフォート、カジュアルならビデイル、トレンドならトランスポートか?
- [ ] サイズの確認: 中に厚手ニットを着た状態で、前のジッパーが閉まるか?袖丈は適切か?
- [ ] 素材の決断: 経年変化を楽しむ「ワックス」か、実用性重視の「ノンワックス」か?
- [ ] 覚悟の確認: 定期的なブラッシングと、通気性の良い保管場所を確保できるか?
公式情報および信頼できる取扱店について
真正品の購入や正確なスペック確認、リプルーフサービスの利用については、Barbourの公式オンラインストアや、全国の百貨店・セレクトショップに入っている正規取扱店をご利用ください。専門知識を持ったスタッフに相談しながら試着することで、より納得のいく一着に出会えるはずです。
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