「最近、周りで感染症の話を聞くけれど、自分には免疫があるのだろうか?」
「過去に熱が出たあの時、実は感染していたのかもしれない」
「これから妊娠を考えているけれど、風疹の抗体検査は受けておくべき?」
あなたは今、このような疑問や不安を抱えていないでしょうか。感染症への対策が日常の一部となった現在、自分自身の体の状態、特に「ウイルスと戦う力(免疫)」が備わっているかを知りたいというニーズが急増しています。
結論から申し上げますと、抗体検査は「過去の感染歴」や「ウイルスに対する免疫(抵抗力)の有無」を調べるための血液検査です。「今、感染しているかどうか」を調べるPCR検査や抗原検査とは、目的も検査方法も明確に異なります。
この記事では、現役の感染症専門医である筆者が、以下の3つのポイントを中心に、抗体検査の全貌を徹底的に解説します。
- PCR検査・抗原検査・抗体検査の決定的な違いと正しい使い分け
- 【目的別】新型コロナ、麻疹・風疹など、あなたが今受けるべき検査の種類
- 検査結果(IgG/IgM)の正しい読み方と、費用相場・保険適用のルール
インターネット上には多くの情報が溢れていますが、中には不正確なものや、単なる検査キットの販売を目的にした偏った情報も少なくありません。本記事では、医学的なエビデンスに基づき、あなたが安心して次の行動を選べるよう、詳細かつ分かりやすく情報を網羅しました。ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の健康管理にお役立てください。
抗体検査とは?PCR・抗原検査との違いを正しく理解する
「熱が出て心配だから、とりあえず抗体検査を受けたい」
私のクリニックの発熱外来には、このような希望を持って来院される患者さんが後を絶ちません。しかし、残念ながら発熱している「今」の状態を診断するために抗体検査を行うことは、医学的にはほとんど意味がありません。
なぜなら、抗体検査は「現在の感染」ではなく、「過去の感染」や「免疫の状態」を見るためのツールだからです。この根本的な違いを理解していないと、せっかく検査を受けても、知りたい答えが得られないばかりか、誤った判断をして感染を広げてしまうリスクさえあります。
まずは、最も混同されやすい「PCR検査」「抗原検査」「抗体検査」の3つの違いを、一覧表で整理しましょう。
| 検査の種類 | PCR検査 | 抗原検査 | 抗体検査 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 現在の感染を診断する (確定診断) |
現在の感染を診断する (スクリーニング) |
過去の感染や 免疫の有無を調べる |
| 調べるもの | ウイルスの遺伝子 | ウイルスのタンパク質 | 血液中の抗体 (IgG / IgMなど) |
| 検体 | 鼻咽頭ぬぐい液 唾液 |
鼻咽頭ぬぐい液 鼻腔ぬぐい液 |
血液 (静脈採血または指先) |
| 結果判明時間 | 数時間〜1日程度 (精度が高い) |
15分〜30分程度 (速いが精度はPCRに劣る) |
簡易キット:15分程度 精密検査:数日〜1週間 |
| 費用目安 (自費の場合) |
10,000円〜20,000円 | 5,000円〜10,000円 | 3,000円〜8,000円 |
抗体検査は「過去の感染」や「免疫の有無」を調べるもの
抗体検査の本質を理解するためには、人間の体がウイルスと戦う仕組みを知る必要があります。私たちの体は、ウイルスや細菌などの異物(抗原)が侵入すると、それに対抗するための武器を作ります。この武器のことを「抗体」と呼びます。
抗体は、ウイルスが体に入ってすぐに作られるわけではありません。感染してから数日から数週間かけて徐々に体内で作られていきます。そして、一度作られた抗体は、ウイルスが体から消え去った後も、一定期間(数ヶ月から数年、場合によっては一生涯)体内に残り続け、再び同じウイルスが侵入してきたときに即座に攻撃できるよう備えます。これが「免疫がついた」状態です。
つまり、抗体検査で血液の中に抗体があるかどうかを調べるということは、「あなたの体が過去にそのウイルスと戦った経験があるか」、あるいは「ワクチンによって戦う準備ができているか」を確認する作業なのです。
したがって、「今まさに喉が痛い」「昨日から熱がある」といった急性期の症状がある場合に抗体検査を行っても、まだ体内で抗体が作られていないため、結果は「陰性」となってしまいます。これでは、感染していないのか、感染しているけれどまだ抗体ができていないだけなのか、区別がつかないのです。
PCR検査・抗原検査との決定的な違い
3つの検査の違いを、より直感的にイメージしていただくために、私はよく診察室で「泥棒探し」に例えて説明しています。
PCR検査・抗原検査は「犯人(ウイルス)そのものを探す」検査です。
家に今まさに泥棒が侵入しているかどうかを調べるために、家の中を捜索して犯人を見つけるようなものです。PCR検査は遺伝子という極めて微細な証拠まで増幅して探すため、隠れている犯人を見つける能力(感度)が非常に高いのが特徴です。一方、抗原検査は犯人の特徴的な服や持ち物を探すようなもので、手軽で早いですが、犯人が少ないと見逃す可能性があります。
対して、抗体検査は「犯人が暴れた痕跡や、防犯システムが作動したかを探す」検査です。
泥棒がすでに逃げ去った後でも、壊された鍵や、設置された防犯カメラ(抗体)を確認することで、「過去に泥棒が入ったこと」や「今後の防犯対策が万全か」を知ることができます。しかし、泥棒が入った直後(感染直後)には、まだ防犯システムが稼働していないため、痕跡を見つけることができません。
このように、「何を探しているのか」というターゲットが根本的に異なることを理解しておきましょう。
【フローチャート】今、あなたが受けるべき検査はどれ?
では、具体的な状況に合わせて、どの検査を選ぶべきかを見ていきましょう。ご自身の状況を以下のフローに当てはめてみてください。
ケース1:現在、発熱・咳・喉の痛みなどの症状がある
→ 受けるべき検査:PCR検査 または 抗原検査
「今」感染しているかどうかを診断し、治療や隔離が必要かを判断する必要があります。医療機関の発熱外来を受診してください。
ケース2:症状はないが、数週間前に風邪のような症状があり、それがコロナだったか知りたい
→ 受けるべき検査:抗体検査
過去の体調不良の原因を特定したい場合や、知らぬ間に感染していたかを確認したい場合に適しています。
ケース3:ワクチンを接種したが、ちゃんと免疫がついているか心配だ
→ 受けるべき検査:抗体検査(定量検査)
体内の抗体の量(抗体価)を数値で測ることで、免疫の強さを確認できます。
ケース4:妊娠を希望しており、風疹や麻疹の免疫があるか確認したい
→ 受けるべき検査:抗体検査(麻疹・風疹)
妊娠中の感染を防ぐため、事前に免疫の有無を確認することは非常に重要です。
ケース5:濃厚接触者になったかもしれないが、症状はない
→ 受けるべき検査:PCR検査 または 抗原検査
無症状でも感染している可能性があるため、ウイルスそのものを検出する検査が必要です。ただし、接触直後すぎるとウイルス量が少なく検出できないこともあるため、接触から数日置いてからの検査が推奨される場合があります。
現役内科医のアドバイス:発熱時の検査選びについて
「『熱があるから抗体検査をしてほしい』と来院される患者様には、必ず『今のお体の状態を正しく知るには、PCRか抗原検査が必要です』とご説明しています。抗体検査は、感染してから早くて1週間、通常は2〜3週間経たないと陽性になりません。つまり、発熱の真っ最中に抗体検査を受けて『陰性』と出ても、それは『感染していない』証明にはならないのです。偽の安心感を持ってしまい、その結果として周囲に感染を広げてしまうことが最も怖いリスクです。ご自身の体調と目的に合わせて、正しい検査を選んでください。」
アルファベットで混乱しない!抗体検査の結果(IgM / IgG)の読み方
抗体検査を受けると、検査結果の報告書に「IgM」「IgG」といったアルファベットや、「(+)」「(-)」といった記号が並んでいて、どう解釈すればよいか戸惑うことがあるかもしれません。
医師はこれらの数値を組み合わせて総合的に判断しますが、基本的な読み方を知っておくことで、ご自身の体の状態をより深く理解することができます。ここでは、主な指標であるIgM抗体とIgG抗体の意味について、専門用語をできるだけ噛み砕いて解説します。
「IgM抗体」は感染の初期段階を示すサイン
IgM(アイ・ジー・エム)抗体は、ウイルスに感染した後、最初に作られる抗体です。いわば「緊急出動部隊」のような存在です。
感染してから数日から1週間程度で血中に出現し始めます。その後、数週間でピークを迎え、比較的短期間(数ヶ月程度)で消失していくのが一般的なパターンです。
したがって、検査で「IgMが陽性(+)」と出た場合は、「最近(数週間〜数ヶ月以内に)感染した可能性が高い」あるいは「現在、感染の回復期にある」ことを示唆しています。ただし、IgMは他のウイルスや体調の影響を受けて、感染していないのに陽性と出てしまう「偽陽性」が比較的起こりやすいという特徴もあるため、解釈には注意が必要です。
「IgG抗体」は過去の感染と長期的な免疫を示すサイン
IgG(アイ・ジー・ジー)抗体は、IgMに遅れて作られる抗体で、「長期防衛部隊」の役割を果たします。
感染後2〜3週間頃から上昇し始め、IgMが消えた後も長期間(数年〜数十年、場合によっては一生)体内に残り続けます。また、同じウイルスが再び侵入してきたときに、素早く大量に作られて体を守る主力部隊となります。
検査で「IgGが陽性(+)」と出た場合は、「過去に感染したことがある」または「ワクチン接種などにより免疫を獲得している」ことを示します。一般的に「抗体検査で陽性だった」と言う場合、このIgG抗体を持っていることを指すケースが多いです。
検査結果パターン別の解釈(陽性・陰性の組み合わせ)
実際の検査では、IgMとIgGの両方を調べることで、感染の時期(ステージ)を推測します。以下の4つのパターンが代表的な解釈です。
| パターン | IgM | IgG | 解釈の目安 |
|---|---|---|---|
| 1. 感染初期の疑い | 陽性 (+) | 陰性 (-) | 感染してからまだ日が浅い(数日〜2週間程度)可能性があります。ウイルスが体内にいる可能性があるため、PCR検査での確認が必要な場合があります。 |
| 2. 感染中期〜後期の疑い | 陽性 (+) | 陽性 (+) | 感染してから数週間が経過し、免疫ができ始めている状態です。回復に向かっている時期と考えられます。 |
| 3. 過去の感染 / 免疫あり | 陰性 (-) | 陽性 (+) | かなり前に感染したか、ワクチン接種済みで、免疫(抗体)を持っています。現在ウイルスを排出している可能性は低いです。 |
| 4. 感染歴なし / 免疫なし | 陰性 (-) | 陰性 (-) | 過去に感染したことがなく、免疫も持っていません。今後感染するリスクがある状態です。 |
※上記は一般的なウイルスの抗体反応のパターンであり、新型コロナウイルスなど特定の感染症では、IgMとIgGがほぼ同時に出現するなど、異なる挙動を示すこともあります。
現役感染症専門医のアドバイス:結果解釈の落とし穴
「抗体検査の結果を見る際に最も注意していただきたいのは、『交差反応』や『偽陽性』の存在です。例えば、普通の風邪コロナウイルスに反応して、新型コロナの抗体検査がうっかり陽性になってしまうことや、リウマチ因子などの影響でIgMが陽性になることがあります。検査キットの性能によっても結果は左右されます。ですので、ご自身で『陽性だから安心』『陰性だからダメだ』と即断せず、必ず医師の診察を受け、臨床症状やワクチン接種歴と照らし合わせた総合的な判断を仰いでください。」
【目的別】主な抗体検査の種類と活用シーン
一口に「抗体検査」と言っても、対象となる病気によって検査の種類や目的は様々です。ここでは、特にニーズの高い「新型コロナウイルス」「麻疹・風疹」「その他の感染症」に分けて、それぞれの活用シーンを解説します。
新型コロナウイルス抗体検査(N抗体とS抗体の違い)
新型コロナウイルスの抗体検査には、大きく分けて2つの種類があります。これを知らずに検査を受けると、「ワクチンを打ったのに陰性だった!」と無用な混乱を招くことがあります。
- N抗体(ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体)
ウイルスそのものに感染した場合にのみ陽性になります。現在の日本の主なワクチンはSタンパク質を作るものなので、ワクチン接種だけではN抗体は陽性になりません。
活用シーン:「過去に自然感染したことがあるか知りたい」場合。 - S抗体(スパイクタンパク質に対する抗体)
ウイルスへの感染、またはワクチン接種のどちらでも陽性になります。ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ「中和抗体」と相関すると言われています。
活用シーン:「ワクチンの効果で免疫がついているか知りたい」「現在の総合的な免疫レベルを知りたい」場合。
ご自身が「過去の感染歴」を知りたいのか、「現在の防御力」を知りたいのかによって、検査項目(N抗体かS抗体か)を選ぶ必要があります。多くのクリニックではこれらを選択、あるいはセットで検査可能です。
麻疹(はしか)・風疹の抗体検査【妊娠希望・ブライダルチェック】
現在、抗体検査のニーズとして非常に重要度が高いのが、麻疹(はしか)と風疹です。特に風疹は、妊娠初期の女性がかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患などの障害が出る「先天性風疹症候群」を引き起こすリスクがあります。
活用シーン:
- 妊娠を希望する女性(およびそのパートナー):
妊娠中は風疹のワクチンを接種することができません。そのため、妊娠前に必ず抗体検査を受け、抗体価が低い場合はワクチン接種を済ませておく必要があります。また、夫(パートナー)が家庭にウイルスを持ち込まないよう、カップルで受ける「ブライダルチェック」としての受診も強く推奨されます。 - 就職・実習前の学生:
医療系や教育系の職種に就く際、麻疹・風疹・水痘・ムンプス(おたふく風邪)の抗体証明書の提出を求められることが一般的です。 - 昭和37年度〜昭和53年度生まれの男性:
この世代の男性は、公的な風疹ワクチン接種の機会がなかったため、抗体保有率が低いことが知られています。自治体から無料のクーポン券が届いている場合があるので確認しましょう。
B型肝炎・C型肝炎などの感染症検査
血液や体液を介して感染するウイルス性肝炎の抗体検査も、健康管理において重要です。
- HBs抗体(B型肝炎):
B型肝炎ウイルスに対する免疫があるか、あるいは過去に感染して治癒したかを示します。医療従事者など血液に触れる機会のある職業では必須の検査です。 - HCV抗体(C型肝炎):
C型肝炎ウイルスに感染している可能性を調べます。陽性の場合は、現在ウイルスが体内にいるかを確認するための精密検査へと進みます。
その他、おたふく風邪(ムンプス)や水ぼうそう(水痘)の抗体検査も、大人がかかると重症化しやすいため、記憶が曖昧な場合は確認しておくと安心です。
現役内科医のアドバイス:大人のワクチン接種と抗体確認
「『子供の頃にワクチンを打ったから大丈夫』と思っている方が多いのですが、ワクチンの効果は10年、20年と経つにつれて徐々に低下することがあります。実際に検査をしてみると、予防に十分なレベルの抗体を持っていない大人の方は珍しくありません。特にこれから妊娠を考える方にとって、風疹の抗体確認は赤ちゃんの一生を守るための『最初のプレゼント』とも言えます。母子手帳が見当たらない方や記憶が曖昧な方は、迷わず抗体検査を受けていただくことをお勧めします。」
気になる費用相場と保険適用のルール
検査を受けようと思ったときに、最も気になるのが費用のことでしょう。「保険は効くの?」「いくら用意すればいいの?」という疑問に対し、明確な基準をお伝えします。
抗体検査は基本的に「自費診療(全額自己負担)」
大原則として、抗体検査は健康保険が適用されない「自費診療(自由診療)」となるケースがほとんどです。
日本の健康保険制度は、「病気の治療」や「診断確定」のために必要な検査をカバーするものです。「過去にかかったか知りたい」「安心のために調べたい」「就職のために証明書が必要」といった目的は、治療に直接結びつかないため、保険の対象外となります。
検査種類別の費用相場一覧
医療機関によって料金設定は異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。これに加えて、初診料や証明書発行料が別途かかる場合があります。
- 新型コロナウイルス抗体検査
- 定性検査(陽性か陰性かのみ):3,000円〜5,000円
- 定量検査(抗体の量を数値化):5,000円〜8,000円
- 麻疹・風疹抗体検査
- 単独検査:各3,000円〜6,000円
- 麻疹・風疹混合セット:5,000円〜8,000円
- その他の抗体検査(水痘・ムンプス等)
- 各3,000円〜6,000円
※価格はすべて税込の目安です。正確な料金は受診予定の医療機関のホームページ等で必ずご確認ください。
自治体の助成金制度を活用しよう(風疹・麻疹)
「全額自費は高い」と感じる方に朗報です。特に風疹の抗体検査については、多くの自治体が費用の全額または一部を助成しています。
対象となるのは主に以下の方々です。
1. 妊娠を希望する女性
2. 妊娠を希望する女性の配偶者(パートナー)
3. 風疹の抗体価が低い妊婦の配偶者
お住まいの地域の制度を利用すれば、無料で検査を受けられるケースも多々あります。「〇〇市 風疹抗体検査 助成」などのキーワードで検索するか、保健所に問い合わせてみましょう。また、昭和37年〜53年度生まれの男性に配布されているクーポン券を利用すれば、全国の指定医療機関で無料で検査が可能です。
補足:保険適用になるケースとは?
例外的に、医師が「診断のために必要不可欠」と判断した場合には、保険適用となることがあります。例えば、原因不明の発熱や発疹があり、現在の症状が麻疹や風疹によるものかを確定診断する場合や、手術前のスクリーニング検査として行われる場合などです。ただし、これはあくまで「疑わしい症状がある場合」に限られ、患者さん自身の希望で行う検査はやはり自費となります。
検査の流れと受診時の注意点
いざ抗体検査を受けると決めたら、どのような手順で進むのでしょうか。スムーズに検査を終えるための流れと、注意点をご説明します。
予約から検査実施までのステップ
一般的なクリニックでの流れは以下の通りです。所要時間は受付から会計まで含めて30分〜1時間程度が目安です。
- 医療機関を探す
内科、小児科、婦人科、トラベルクリニックなどで実施しています。ホームページで「抗体検査実施」の記載があるか確認しましょう。 - 予約を入れる
電話やWEB予約システムを利用します。「風疹の抗体検査を希望」「コロナのS抗体を測りたい」など、希望する検査内容を具体的に伝えるとスムーズです。助成金を利用する場合は、その旨も伝えましょう。 - 来院・問診
現在の体調や、過去のワクチン接種歴、感染歴などを問診票に記入します。発熱がある場合は、事前に電話で相談するか、発熱外来の動線に従ってください。 - 採血
腕の静脈から少量の血液を採取します。検査項目が複数あっても、通常は1回の採血で済みます。 - 会計
自費診療の場合は、その場で全額を支払います。
検査結果が出るまでの期間(即日〜数日)
検査方法によって、結果が出るまでのスピードが異なります。
- 簡易キット(イムノクロマト法など):
その場で15分〜30分程度で結果がわかります。ただし、精度はやや劣る場合があり、結果は「陽性/陰性」の判定のみで、詳しい数値(抗体価)は出ないことが一般的です。 - 検査センターへの委託検査(EIA法、CLIA法など):
採血した血液を専門の検査機関に送ります。結果判明までに2日〜1週間程度かかります。精度が高く、抗体の量を数値で詳しく知ることができます。公的な証明書や、医学的な判断が必要な場合は、こちらが推奨されます。
医療機関での検査 vs 市販の検査キット
最近では、インターネット通販やドラッグストアで、自分で指先の血を採って調べる「研究用抗体検査キット」が販売されています。
手軽で安価なのがメリットですが、これらの多くは「研究用」と記載されており、国が承認した体外診断用医薬品ではありません。精度のバラつきが大きく、偽陽性や偽陰性が出るリスクも医療機関の検査に比べて高い傾向にあります。
また、市販キットの結果は公的な証明(就職時や渡航時の証明書)としては認められないことがほとんどです。確実な結果が必要な場合は、必ず医療機関を受診してください。
現役クリニック院長のアドバイス:市販キット利用時の注意
「市販の『研究用』キットで陽性が出たからといって、無条件に安心するのは危険です。逆に陰性だからといって感染していないとも言い切れません。実際に、市販キットの結果を持って来院された患者様を再検査すると、全く逆の結果が出たという事例も経験しています。あくまで『目安』として利用し、重要な判断(妊活や高齢者への接触など)をする前には、医療機関での精密な検査を受けていただきたいと考えます。」
「抗体がある=絶対安心」ではない?正しいリスク管理
「抗体検査で陽性だった!これで二度とかからないからマスクも外して大丈夫!」
もしそう思われたとしたら、少し立ち止まってください。抗体検査の結果は、あくまで「現時点での状態」を示すものであり、「将来の絶対的な安全」を保証する手形ではありません。
抗体価の低下とブレイクスルー感染
先ほども触れましたが、抗体は時間とともに減っていく(抗体価が低下する)ことがあります。また、ウイルスは常に変異を繰り返しています。
例えば、新型コロナウイルスの場合、初期の株に対して作られた抗体が、変異した新しい株(オミクロン株など)に対しては効きにくくなることが分かっています。これを「免疫逃避」と呼びます。
十分に高い抗体価を持っていても、大量のウイルスに曝露したり、体調が悪かったりすれば、再び感染(再感染・ブレイクスルー感染)する可能性はゼロではありません。麻疹や風疹のように一度かかれば終生免疫が得られると言われる病気でも、稀に抗体が低下して再感染するケースは報告されています。
「抗体がある」とわかった後の行動指針
抗体検査で陽性(十分な抗体がある)と分かった場合でも、基本的な感染対策をおろそかにしてはいけません。
- 手洗い・うがいの継続: あらゆる感染症予防の基本です。
- 状況に応じたマスク着用: 混雑した場所や医療機関など、リスクの高い場所では着用を推奨します。
- 体調管理: 免疫力を維持するために、睡眠や栄養をしっかり摂ることが大切です。
抗体があることのメリットは、「感染しにくくなる」ことと、「万が一感染しても重症化しにくくなる」ことです。この「重症化予防効果」こそが、抗体(免疫)の最大の恩恵です。
抗体がなかった(陰性だった)場合の対応
もし検査の結果、抗体が「陰性」または「基準値以下」だった場合は、どうすればよいでしょうか。
- ワクチン接種を検討する:
麻疹、風疹、B型肝炎、水痘、ムンプスなどは、ワクチン接種によって効果的に抗体をつけることができます。医師と相談し、接種スケジュールを立てましょう。新型コロナについても、追加接種の検討材料となります。 - 感染対策を強化する:
自分は「無防備な状態」であると認識し、流行期には人混みを避けるなど、より慎重な行動を心がけてください。
現役内科医のアドバイス:抗体検査の結果を生活にどう活かすか
「抗体検査の結果は、ゴールではなくスタートです。『自分には免疫がある』と分かれば、過度な不安から解放され、前向きに社会活動に参加できるでしょう。『免疫がない』と分かれば、ワクチンという有効な手段で自分を守ることができます。検査結果を、ご自身の今後の生活や行動を選択するための賢い『判断材料』として活用してください。」
よくある質問(FAQ)
最後に、診療現場で患者様からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 健康診断や人間ドックのオプションでつけるべきですか?
ご自身の母子手帳が手元になく、過去のワクチン接種歴や感染歴が不明な場合は、一度受けてみることをお勧めします。特に、30代〜50代の男性(風疹の公的接種対象外世代)や、将来妊娠を考えている女性は、人間ドックの機会に麻疹・風疹の抗体検査を追加しておくと効率的です。また、B型・C型肝炎検査は、一生に一度は受けておくべき検査とされています。
Q. ワクチン接種後、どれくらいで抗体ができますか?
個人差はありますが、一般的にワクチン接種後、十分な量の抗体ができるまでには2週間〜1ヶ月程度かかると言われています。そのため、接種翌日に検査をしても抗体はまだ上がっていません。抗体がついたかを確認したい場合は、接種から1ヶ月以上空けてから検査を受けるのが適切です。
Q. 過去にかかったか知りたいだけなら、どの検査がいいですか?
「過去の感染歴」を知りたい場合は、IgG抗体検査を選んでください。新型コロナウイルスの場合は、ワクチン接種の影響を受けない「N抗体(ヌクレオカプシド抗体)」の検査を指定すると、自然感染による抗体だけを検出することができます。
まとめ:目的に合った抗体検査を選び、安心できる未来へ
ここまで、抗体検査の種類やPCRとの違い、結果の読み方について解説してきました。記事の要点を振り返りましょう。
- 抗体検査は「過去の感染」や「免疫」を知るための検査。現在の感染診断にはPCRや抗原検査が適している。
- 検査結果(IgG/IgM)の意味を正しく理解し、自己判断せず医師の総合的な判断を仰ぐことが大切。
- 妊娠希望者などは、自治体の助成制度を賢く利用し、必要なワクチン接種に繋げることが重要。
- 「抗体がある=絶対安全」ではない。基本的な感染対策は継続しよう。
自分の体の状態を知ることは、自分自身だけでなく、大切な家族やパートナーを守ることにも繋がります。不安なまま過ごすのではなく、まずは医療機関に相談し、適切な検査を受けてみてはいかがでしょうか。
抗体検査を受ける前の最終チェックリスト
受診する前に、以下の項目をチェックしてみてください。
- [ ] 検査を受ける目的は明確か?
(「今の熱の原因」を知りたいならPCR検査へ、「免疫の有無」なら抗体検査へ) - [ ] 検査結果を何に使いたいか?
(自分自身の確認用か、会社や学校への提出用証明書が必要か) - [ ] 費用相場と助成金の有無を確認したか?
(お住まいの自治体HPで「風疹抗体検査 助成」などを検索) - [ ] 信頼できる医療機関を選んだか?
(「抗体検査」を実施しているか、事前にHPや電話で確認)
あなたに合ったクリニックを探すには
お近くの内科、婦人科、トラベルクリニックなどで抗体検査は実施されています。「お住まいの地域名 + 抗体検査」や「地域名 + 風疹抗体検査」などで検索し、検査項目や費用を比較して予約することをお勧めします。また、風疹の助成金対象医療機関は、厚生労働省や各自治体のホームページで一覧を確認できます。
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