身近な方の訃報は、予期せぬタイミングで突然訪れるものです。深い悲しみの中にありながらも、社会人として会社への連絡や業務の調整を行わなければならない状況は、精神的にも大きな負担となります。「忌引き休暇は何日取れるのが一般的なのか」「深夜だが上司にメールで連絡しても失礼にならないか」「有給休暇との扱いの違いは何か」など、緊急の疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、忌引き休暇の日数は法律で定められているわけではなく、会社の「就業規則」によって決定されます。しかし、多くの企業が準拠している一般的な目安(相場)は存在し、配偶者であれば10日間、父母であれば7日間、祖父母であれば3日間というのが標準的な日数です。
この記事では、現役の社会保険労務士である筆者が、急な不幸に直面したあなたが「今すぐ知りたい情報」と「後で困らないための知識」を網羅的に解説します。会社への連絡から復帰後のマナーまで、この1記事で全ての対応が完結するように構成しています。
この記事でわかること
- 【続柄別】忌引き休暇の一般的な日数早見表(公務員基準・民間相場)
- そのまま送れる!上司への忌引き連絡メール例文(状況別テンプレート)
- 給与の有無や「土日・移動日」のカウント方法など、損しないための注意点
まずは、最も重要な「自分が何日休めるのか」という目安から確認していきましょう。
忌引き休暇の日数は何日?続柄ごとの一般的な目安一覧
忌引き休暇(慶弔休暇)の日数は、労働基準法などの法律で定められた権利ではありません。そのため、正確な日数はご自身の会社の「就業規則(慶弔休暇規定)」を確認する必要があります。しかし、手元に就業規則がない場合や、確認する余裕がない場合のために、世間一般の標準的な日数(相場)を知っておくことは非常に重要です。
多くの民間企業は、国家公務員の規定(人事院規則)をモデルケースとして日数を設定しています。ここでは、その一般的な基準を一覧表にまとめました。まずはこの表で、ご自身の状況に当てはまる日数を確認してください。
| 対象となる続柄 | 一般的な日数(目安) | 国家公務員の例 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 10日間 | 7日間 |
| 父母(養父母) | 7日間 | 7日間 |
| 子(養子) | 5日間 | 5日間 |
| 祖父母 | 3日間 | 3日間 |
| 兄弟姉妹 | 3日間 | 3日間 |
| 義父母(配偶者の父母) | 1〜3日間 | 3日間(生計を一にする場合等は加算あり) |
| 孫 | 1日間 | 1日間 |
| おじ・おば | 1日間(または規定なし) | 1日間 |
| 配偶者の祖父母 | 1日間(または規定なし) | 1日間 |
※上記の日数はあくまで一般的な目安です。企業によっては「喪主を務める場合は加算する」といった特例を設けている場合もあります。
配偶者・父母・子供(1親等・配偶者)の場合
あなたと最も近い関係にある「1親等」および「配偶者」に不幸があった場合、忌引き休暇の日数は最も長く設定される傾向にあります。
配偶者の場合:10日間前後
配偶者が亡くなられた場合、精神的な打撃が極めて大きいことに加え、喪主として葬儀を取り仕切るケースがほとんどであるため、10日間という長期間の休暇が設定されるのが一般的です。これには葬儀の準備、通夜、告別式、初七日法要、そして役所手続きなどの諸対応を行うための期間が含まれています。
父母(実親・養親)の場合:7日間前後
実の親が亡くなられた場合も、喪主を務める可能性が高く、そうでなくとも遺族として中心的な役割を果たす必要があります。そのため、1週間(7日間)程度の休暇が認められることが一般的です。遠方に住んでいる場合は、往復の移動時間を考慮する必要がありますが、多くの企業ではこの7日間の中に移動日を含める運用を行っています。
子供の場合:5日間前後
お子様が亡くなられた場合の悲しみは計り知れません。一般的には5日間程度とされていますが、企業によっては配偶者や父母と同等の日数を付与するなど、手厚い配慮がなされるケースも増えています。心身の回復に時間を要する場合も多いため、忌引き休暇終了後に有給休暇を連続して取得することを推奨する企業もあります。
祖父母・兄弟姉妹(2親等)の場合
次に、2親等にあたる祖父母や兄弟姉妹の場合です。ここからは企業によって規定にばらつきが出始めます。
祖父母の場合:3日間前後
祖父母の葬儀に関しては、3日間(通夜、告別式、翌日の片付け程度)が一般的な相場です。ただし、同居していた祖父母なのか、別居していた祖父母なのかによって日数を区別する企業もあります。「同居なら3日、別居なら1日」といった規定も珍しくないため、注意が必要です。また、幼少期から育てられたなど関係性が深い場合でも、規定上は一律で処理されることが多いため、日数が不足する場合は有給休暇の併用を検討しましょう。
兄弟姉妹の場合:3日間前後
兄弟姉妹の場合も祖父母と同様に3日間が目安です。兄弟姉妹が亡くなるケースでは、あなたが喪主を務める可能性や、高齢の両親をサポートする役割を担う可能性もあります。状況に応じて会社に相談し、必要であれば追加の休暇申請(有給休暇など)を行うことが望ましいでしょう。
義父母・義兄弟など(姻族)の場合
配偶者の血縁者である「姻族」の場合、実の親族に比べて日数は短くなる傾向にあります。
義父母(配偶者の父母)の場合:1〜3日間
かつては「嫁の実家」と「夫の実家」で日数を変えるような古い慣習を持つ企業もありましたが、現在は男女雇用機会均等法の精神もあり、夫の親でも妻の親でも同等の日数を付与するのが一般的です。多くの企業では3日間と設定されていますが、1日間(葬儀当日のみ)とする企業も存在します。特に、配偶者が喪主を務める場合はサポートが必要になるため、3日間あると安心ですが、規定を確認することが不可欠です。
義兄弟姉妹(配偶者の兄弟姉妹)の場合:1日間または規定なし
配偶者の兄弟姉妹に関しては、忌引き休暇の対象外としている企業も少なくありません。対象となっている場合でも、告別式に参列するための「1日」のみというケースが大半です。
叔父・叔母・従兄弟など(3親等以降)の扱い
3親等以降の親族(おじ、おば、いとこ、姪、甥など)については、多くの企業で忌引き休暇の対象外となっています。対象となっている場合でも、葬儀当日のみの「1日」が限度です。
親しくしていた叔父や叔母の葬儀に参列したい場合、忌引き休暇の規定がないからといって休めないわけではありません。このような場合は、遠慮なく「有給休暇」を取得して参列しましょう。理由は正直に「親族の葬儀のため」と伝えて問題ありません。慶弔に関する有給申請を拒否することは、会社としても心情的に難しいため、スムーズに承認されることがほとんどです。
パート・アルバイト・派遣社員にも適用されるか?
正社員以外の雇用形態(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員)の方も、忌引き休暇が取得できるかどうかは、それぞれの雇用契約書や就業規則によります。
パート・アルバイトの場合
週の所定労働日数が少ないパートタイマーの場合、忌引き休暇の規定が適用されない(対象外である)ケースが多いのが実情です。しかし、長期間勤務している場合や、社会保険に加入しているようなフルタイムに近いパートの場合は、正社員に準じて付与されることもあります。規定がない場合は、欠勤として処理し、シフトを調整してもらうことになります。
派遣社員の場合
派遣社員の方は、「派遣元(派遣会社)」の就業規則が適用されます。派遣先(実際に働いている職場)のルールではない点に注意してください。大手派遣会社では忌引き休暇制度を設けているところもありますが、無給の休暇である場合が多いです。まずは派遣元の担当営業に連絡を入れましょう。
現役社会保険労務士のアドバイス
「就業規則を確認したら、思ったよりも忌引きの日数が少なかった、あるいは対象外だったという相談をよく受けます。特に中小企業では、創業時の古い規定がそのままになっており、現代の家族構成や事情に合っていないこともあります。もし規定の日数では足りない場合、あるいは規定がない場合でも、諦めずに上司に『有給休暇』の取得を申し出てください。葬儀という特別な事情において、有給取得を拒む会社はまずありません。また、忌引き休暇と有給休暇を連続させて取得することも、法的には何ら問題ありません。大切なのは『隠さずに事情を話し、早めに相談すること』です。会社側も、社員が心置きなくお別れをして、また元気に働いてくれることを望んでいます。」
【コピペOK】会社・上司への忌引き連絡マナーとメール例文
訃報を受けたら、速やかに会社へ連絡を入れる必要があります。しかし、深夜や早朝であったり、混乱していて電話でうまく話せる自信がなかったりすることもあるでしょう。ここでは、社会人として失礼のない連絡マナーと、そのまま使えるメール例文を紹介します。
連絡は「電話」が基本だが「メール・LINE」でも第一報は入れるべき
忌引きの連絡は、業務の引き継ぎや緊急性を伴うため、原則として「直属の上司への電話」が基本です。口頭で直接伝えることで、状況の深刻さが伝わりやすく、細かいニュアンスや当面の予定を相談しやすいからです。
しかし、訃報が深夜や早朝に入った場合、上司に電話をするのはためらわれます。そのような場合は、まずメールやLINE(社内で公式に使われている場合)で「第一報」を入れ、翌朝の始業時間に合わせて電話をするのがベストな対応です。無断で休むことだけは絶対に避けなければなりません。
伝えるべき必須4項目(誰が亡くなったか、通夜・告別式の日程、休む期間、緊急連絡先)
電話でもメールでも、会社側が業務調整を行うために知っておくべき情報は以下の4点です。これらを漏れなく伝えるようにしましょう。
- 誰が亡くなったか(続柄):忌引き日数の算定や、会社として弔電・香典を出す判断に必要です。
- 通夜・告別式の日程:会社関係者が参列する場合や、弔電を送るために必要です。未定の場合は「決まり次第連絡します」と伝えます。
- 休暇を取得する期間:いつからいつまで休むのかを明確にします。
- 緊急連絡先:休暇中に業務上のトラブルがあった場合や、会社からの連絡を受け取るための携帯電話番号などを伝えます。
【状況別】上司に送る忌引き連絡メール例文
ここでは、状況に応じたメールのテンプレートを用意しました。コピー&ペーストして、ご自身の状況に合わせて()内を書き換えて使用してください。
▼例文①:葬儀日程が確定している場合(クリックで展開)
件名:【忌引届】祖母死去に伴う休暇のご相談(氏名)
〇〇課長
お疲れ様です。〇〇(自分の氏名)です。
私事で恐縮ですが、昨夜、実家の祖母が他界いたしました。
つきましては、葬儀参列および手続きのため、以下の日程で忌引き休暇をいただきたくご連絡いたしました。
【休暇希望期間】
〇月〇日(月)~〇月〇日(水)の3日間
※〇月〇日(木)より出社予定です。
【葬儀日程】
通夜:〇月〇日(月) 18:00~
告別式:〇月〇日(火) 11:00~
場所:〇〇斎場(住所:〇〇県〇〇市…)
喪主:〇〇 〇〇(父)
【業務について】
急な不在となり申し訳ございません。
私の担当案件につきましては、〇〇さんに状況を共有しております。
緊急の際は、以下の携帯電話までご連絡いただけますと幸いです。
【緊急連絡先】
090-xxxx-xxxx(個人の携帯)
ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
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署名
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▼例文②:深夜で取り急ぎ第一報を入れる場合(クリックで展開)
件名:【至急】身内の不幸に関するご連絡(氏名)
〇〇課長
夜分遅くに失礼いたします。〇〇(自分の氏名)です。
急なご連絡となり恐縮ですが、先ほど実家の祖母が亡くなったとの連絡が入りました。
そのため、明日は朝一番で実家へ向かいたく、お休みをいただきたく存じます。
葬儀の日程や休暇の期間などの詳細につきましては、明日の朝、改めてお電話にてご報告・ご相談させていただきます。
急なことでご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、ご了承のほどよろしくお願いいたします。
————————————————–
署名
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取引先・顧客への連絡とアポイント調整メール例文
もし、休暇中にアポイントや会議の予定が入っている場合は、取引先への連絡も忘れてはいけません。基本的には上司や同僚に代行してもらうのが理想ですが、自分で連絡できる状況であれば、直接メールを入れておく方が誠実です。
▼例文③:取引先にアポイントの延期をお願いする場合(クリックで展開)
件名:【お詫び】〇月〇日のお打ち合わせにつきまして(株式会社〇〇 氏名)
株式会社〇〇
〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇です。
私事で大変恐縮ながら、身内の不幸があり、急遽数日間休暇をいただくことになりました。
つきましては、〇月〇日(火)14時に予定しておりましたお打ち合わせの日程を、来週以降に変更させていただきたくご連絡いたしました。
直前のご連絡となり、多大なるご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。
復帰次第、改めて日程調整のご連絡をさせていただきます。
(または「不在の間、弊社の〇〇(同僚)が代わりに対応させていただきます」)
勝手なお願いで誠に恐縮ですが、何卒ご容赦いただけますようお願い申し上げます。
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署名
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現役社会保険労務士のアドバイス
「最近、若手社員の方を中心に、忌引きの連絡をLINEのメッセージひとつで済ませてしまい、上司から『常識がない』と叱責されるトラブルが増えています。LINEは便利なツールですが、あくまで『第一報』の手段と捉えてください。特に、業務の引き継ぎが必要な場合や、長期間休むことになる場合は、必ず一度は電話で直接話すことが重要です。声のトーンで状況を伝えることで、上司も『大変な状況なんだな、仕事のことは気にせず休んでくれ』と配慮しやすくなります。信頼関係を損なわないためにも、ツールと肉声の使い分けを意識しましょう。」
そもそも「忌引き」とは?給料や有給との違いを解説
「忌引き休暇を取ると、その分の給料は引かれてしまうのか?」「有給休暇として処理されるのか?」といったお金に関する疑問は、なかなか人には聞きにくいものです。ここでは、忌引き休暇の制度的な位置づけと、給与の扱いについて解説します。
忌引き(慶弔休暇)は法律上の義務ではない
意外に思われるかもしれませんが、「忌引き休暇」や「慶弔休暇」を設けなければならないという法律はありません。労働基準法には、年次有給休暇や産前産後休暇のような定めはありますが、慶弔に関する休暇は完全に企業の裁量(福利厚生)に任されています。
したがって、会社によっては「忌引き休暇制度そのものがない」というケースも存在します。その場合は、自身の「有給休暇」を使って休むか、有給がない場合は「欠勤」として休むことになります。
「有給扱い」か「無給」かは会社の規定次第
忌引き休暇制度がある会社でも、その期間中の給与が出るかどうか(有給か無給か)は会社によって異なります。
- 有給扱い(給料が出る): 多くの正社員向け制度では、忌引き期間中も通常通り出勤したものとして給与が支払われます。
- 無給扱い(給料が出ない): 「休みは認めるが、給料は支払わない(ノーワーク・ノーペイ)」という規定の会社も少なくありません。この場合、欠勤控除として給与から差し引かれることになります。
もし会社の規定が「無給」である場合、経済的な損失を避けるために、あえて忌引き休暇を使わず、ご自身の「年次有給休暇」を申請して休むという選択肢もあります。どちらが得か、就業規則や給与規定を確認してみましょう。
忌引き休暇を使うとボーナス査定や皆勤手当に影響する?
忌引き休暇を取得したことが、人事評価やボーナス査定、皆勤手当にマイナスの影響を与えることはあるのでしょうか。
一般的に、就業規則で定められた忌引き休暇を取得した場合、それを理由に不利益な取り扱いをすることは不適切とされています。多くの企業では、出勤率の算定において「出勤したものとみなす」という取り扱いをします。しかし、皆勤手当に関しては「実際に稼働した日」を基準とする場合もあり、規定によっては支給対象外となる可能性もゼロではありません。
試用期間中や入社直後でも取得できるか
入社して間もない時期や、試用期間中に不幸があった場合でも、忌引き休暇は取得できるのでしょうか。
多くの企業では、入社直後であっても慶弔休暇の取得を認めています。しかし、一部の企業では「入社後3ヶ月経過した社員に限る」といった制限を設けている場合もあります。もし規定により忌引き休暇が使えない場合で、まだ有給休暇も付与されていない(一般的に入社半年後付与)ときは、「欠勤」として休むことを相談しましょう。事情が事情だけに、会社側も柔軟に対応してくれるはずです。
▼【比較表】忌引き・有給・欠勤の違いまとめ(クリックで展開)
| 項目 | 忌引き休暇(慶弔休暇) | 年次有給休暇 | 欠勤 |
|---|---|---|---|
| 給与の有無 | 会社規定による (有給の場合が多いが無給もあり) |
あり(100%支給) | なし(給与から控除) |
| 申請の理由 | 慶弔事実に限る (証明書が必要な場合あり) |
原則不要 (私用でOK) |
やむを得ない事由 |
| 評価への影響 | 原則なし | 法的に禁止(なし) | 査定に響く可能性あり |
| 日数の上限 | 続柄ごとに規定された日数 | 保有残日数の範囲内 | なし(会社の承認が必要) |
トラブル多発!日数の数え方と期間計算の注意点
忌引き休暇で最もトラブルになりやすいのが、「日数の数え方」です。「3日休めると思っていたら、土日を含んで3日と言われた」「移動日は別だと思っていたら違った」といった認識のズレが、後々「無断欠勤」扱いなどの問題に発展することがあります。ここでは、間違いやすい計算のポイントを解説します。
「土日・祝日」は日数に含まれるか?(暦日と所定労働日の違い)
忌引きの日数をカウントする際、間に挟まる土日祝日(会社の公休日)を含めるかどうかは、会社の規定によって大きく異なります。
- 暦日(れきじつ)計算: カレンダー通りの日数で数えます。土日祝日も「1日」としてカウントされます。
- 例:「3日間」の忌引きで金曜から休む場合 → 金・土・日で終了。月曜は出勤。
- 所定労働日計算: 会社の営業日(働く義務のある日)だけで数えます。土日祝日はカウントしません。
- 例:「3日間」の忌引きで金曜から休む場合 → 金・(土・日休み)・月・火で終了。水曜から出勤。
多くの企業(特に慶弔休暇を福利厚生と捉える企業)では、社員に有利な「所定労働日計算」を採用している傾向にありますが、「連続した日数とする(暦日計算)」としている企業も多いため、必ず確認が必要です。
「移動日」は考慮されるか?遠方の場合の特例
実家が遠方(海外や飛行機を使う距離など)の場合、往復の移動だけで1日〜2日を要することがあります。この移動時間を忌引き日数に加算してくれるかどうかについても、規定によります。
一部の企業では「往復の移動に要する日数を加算できる」と明記されていますが、多くの場合は「規定の日数内に移動も含める」とされています。移動により葬儀への参列時間が確保できない場合は、有給休暇を組み合わせて対応するのが一般的です。
休暇の開始日はいつから?(死亡日?通夜?翌日?)
「いつからカウントをスタートするか(起算日)」も重要なポイントです。一般的には以下のいずれかが採用されます。
- 死亡した日から
- 死亡した日の翌日から
- 通夜または葬儀の日から
- 本人が申し出た日から(申請ベース)
例えば、深夜に亡くなった場合、「死亡日」を1日目とすると、実質的な休暇が短くなってしまいます。最近では、社員が柔軟に休みを取れるよう、「葬儀の日を含む連続した期間」や「申請日を初日とする」など、選択の幅を持たせている企業も増えています。
喪主を務める場合の日数加算はあるか
あなたが喪主を務める場合、葬儀の手配や事後処理など、負担は通常の参列者とは比較になりません。そのため、規定の日数に「プラス1日〜2日」を加算する制度を設けている企業もあります。自分が喪主であることを上司に伝える際は、この加算措置があるかどうかも併せて確認しておくと良いでしょう。
現役社会保険労務士のアドバイス
「インターネット上の情報を鵜呑みにして失敗した事例をご紹介します。ある社員の方が『祖母の忌引きは3日』というネット情報を信じ、金・土・日・月と休みました(土日休みの会社)。本人は『金・月・火』の3営業日休めるつもりでしたが、会社の規定は『暦日計算(土日含む)』かつ『祖母は2日』でした。結果として、月曜と火曜が無断欠勤扱いになりかけ、始末書の提出を求められる事態になりました。このような悲しいトラブルを防ぐためにも、自己判断せず、必ず総務や人事担当者、あるいは上司に『私の場合はいつからいつまで休みになりますか?』と具体的に確認を取ることを強くお勧めします。」
休暇明けの提出書類と事後手続き
無事に葬儀を終え、職場に復帰した後には、事務的な手続きが待っています。忌引き休暇を正式に認めてもらうためには、事実を証明する書類の提出を求められることが一般的です。
多くの会社で求められる「証明書」とは
会社が忌引き休暇を承認するために提出を求める代表的な書類は以下の通りです。
- 会葬礼状(かいそうれいじょう): 葬儀の参列者に渡されるお礼状。故人の氏名、喪主、日付などが記載されており、最も一般的な証明書です。
- 死亡診断書のコピー: 医師が発行する書類。公的な証明力が高いですが、取得に費用がかかる場合があります。
- 葬儀の施行証明書: 葬儀社が発行する、葬儀を行ったことを証明する書類。
多くの会社では「会葬礼状」の提出で足ります。葬儀の際は、自分用(会社提出用)に1部確保しておくのを忘れないようにしましょう。
家族葬で会葬礼状がない場合の対応
最近増えている「家族葬」や「直葬」では、会葬礼状を作成しないケースもあります。その場合、会社への証明はどうすればよいでしょうか。
会葬礼状がない場合は、葬儀社に相談して「施行証明書」や「葬儀証明書」を発行してもらうことができます。また、それも難しい場合は、死亡診断書のコピーや、火葬許可証のコピーなどで代用できるか、会社の人事担当者に相談してください。証明書類が一切ない場合でも、事情を説明すれば柔軟に対応してくれる会社がほとんどですが、何もなしで済ませるのではなく、相談のプロセスを踏むことが信頼維持につながります。
忌引届(慶弔休暇申請書)の書き方と提出タイミング
多くの企業では、勤怠管理のために「忌引届(慶弔休暇申請書)」の提出が必要です。提出のタイミングは、復帰後の初日が一般的です。
記載する主な内容:
- 申請者氏名・所属
- 故人の氏名・続柄
- 死亡日時
- 休暇取得期間
- 事由(葬儀参列のため、喪主のため等)
- 添付書類(会葬礼状など)
最近ではWeb上の勤怠システムで申請する企業も増えています。操作方法がわからない場合は、出社後すぐに確認しましょう。
現役社会保険労務士のアドバイス
「葬儀のバタバタで、つい会葬礼状をもらい忘れてしまったり、紛失してしまったりすることはよくあります。そんな時の裏技的な対処法ですが、もし新聞のお悔やみ欄に掲載されている場合は、その切り抜きが証明として認められることがあります。また、最近ではスマホで撮影した葬儀の看板(故人の名前が入ったもの)の写真でもOKとする柔軟な企業も増えています。証明書がないからといって忌引きを取り消されることは稀ですが、『証明しようとする誠意』を見せることが、社会人としての信頼を守ります。」
職場復帰後のマナーと挨拶
忌引き休暇は権利(または福利厚生)とはいえ、不在中に業務をカバーしてくれた上司や同僚への感謝を示すことは、円滑な人間関係を維持するために不可欠です。「常識がある人」と思われるための復帰後のマナーを紹介します。
出社初日の朝一番にすべきこと
出社したら、まずは直属の上司のもとへ行き、無事に葬儀を終えた報告と、不在中の謝罪・感謝を伝えます。
挨拶の例:
「おはようございます。この度は急なお休みをいただき、ありがとうございました。おかげさまで無事に葬儀を執り行うことができました。不在中はご迷惑をおかけしました。本日からまたよろしくお願いいたします。」
その後、同じ部署の同僚や、業務を引き継いでくれた方々にも個別に挨拶をして回りましょう。
菓子折り(お供えのお返し)は必要か?
「忌引き明けに菓子折りを持っていくべきか」は悩むところですが、基本的には不要です。忌引きは慶事(お祝い)や旅行(お土産)とは異なるため、お菓子を配る習慣がない職場も多いです。
ただし、長期間休んで多大な迷惑をかけた場合や、職場の慣習として「休み明けにはお菓子を持ってくる」という暗黙のルールがある場合は、個包装の日持ちするお菓子(「志」や「感謝」などののし紙は不要、あるいは控えめなもの)を持参すると角が立ちません。「心ばかりですが、皆さんで召し上がってください」と給湯室などに置く程度で十分です。
不在中にフォローしてくれた人へのお礼メール例文
直接挨拶できない相手や、他部署で業務をフォローしてくれた方には、メールでお礼を伝えます。
件名:【復帰のご挨拶】忌引き休暇御礼(氏名)
〇〇さん
お疲れ様です。〇〇です。
この度は、急な忌引き休暇に際し、業務のフォローをしていただき誠にありがとうございました。
おかげさまで、滞りなく葬儀を済ませることができました。
〇〇さんにお願いしていた件につきまして、先ほど確認いたしました。
お忙しい中、迅速にご対応いただき大変助かりました。
本日から復帰しておりますので、また何かありましたらお声がけください。
改めて、ありがとうございました。
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香典をいただいた場合のお返し(香典返し)の社内ルール
会社名義(「株式会社〇〇 代表取締役」など)の香典については、福利厚生費から出ているため、一般的にお返し(香典返し)は不要です。
一方、上司や同僚から「個人名」で香典をいただいた場合や、部署一同としていただいた場合は、忌明け(四十九日後)に「半返し(頂いた額の半額〜3分の1程度)」の品物を渡すのがマナーです。ただし、職場によっては「お互い様なのでお返しはなし」というルールを決めている場合もあるため、古株の社員や総務担当者に確認してみると安心です。
よくある質問(FAQ)
最後に、忌引き休暇に関してよくある疑問や、例外的なケースについての質問にお答えします。
Q. 家族葬なので香典や供花を辞退したい場合の伝え方は?
A. 最初の連絡(電話やメール)の時点で、明確に「辞退する」旨を伝えましょう。
「なお、故人の遺志により家族葬にて執り行いますため、ご香典、ご供花、ご弔電の儀は固くご辞退申し上げます」と一文添えれば、相手も迷わずに済みます。曖昧にすると、会社側も準備すべきか迷ってしまいます。
Q. ペットが亡くなった場合も忌引きは取れる?
A. 一般的な企業の規定では、ペットは忌引きの対象外です。
しかし、近年ではペットを家族同然と考える風潮から、「ペット忌引き」を導入するユニークな企業も登場しています。規定になくても、精神的なショックが大きい場合は、正直に理由を話して有給休暇を取得することを推奨します。
Q. 忌引き休暇を分割して取得することは可能?
A. 原則として「連続した日数」での取得が基本ですが、企業によっては分割を認めている場合もあります。
例えば、「葬儀で2日休み、後日の法要で残り1日を使う」といったケースです。これは会社の運用ルール次第ですので、担当部署への確認が必要です。
Q. 忌引き中にどうしても出社しなければならない場合は?
A. 忌引き休暇中であっても、緊急対応などで出社することは法的に禁止されていません。
出社した場合は、その日は「出勤」扱いとなり、残りの忌引き日数を後ろにずらすなどの調整が行われるのが一般的です。上司と相談して勤怠処理を決めてください。
Q. 嘘の忌引き申請はバレる?(証明書の偽造リスクなど)
A. バレる可能性は高く、発覚した際のリスクは甚大です。
証明書の提出を求められた際に辻褄が合わなくなったり、後日同僚との会話でボロが出たりすることがあります。虚偽の申請で休暇(特に有給の休暇)を取得することは、就業規則違反だけでなく、詐欺罪に問われる可能性もある重大な非行です。
現役社会保険労務士のアドバイス
「『ズル休み』のために忌引きを悪用するケースは稀にありますが、これは懲戒処分の対象となる非常に重い行為です。過去には、架空の祖母の葬儀をでっち上げて休暇と弔慰金を不正に受給し、懲戒解雇になった事例もあります。会社は社員を信頼して慶弔休暇を運用しています。その信頼を裏切る行為は、あなたのキャリアを台無しにしかねません。本当に休みたい理由があるなら、正直に有給休暇を申請する方が、よほど健全で安全です。」
まとめ:忌引き日数は会社によって違う!まずは就業規則の確認を
忌引き休暇は、大切な方とのお別れのために会社が用意してくれている配慮ある制度です。しかし、その日数やルールは法律ではなく、あくまで「あなたの会社の就業規則」によって決まります。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 一般的な日数の目安: 配偶者10日、父母7日、祖父母3日ですが、必ず自社の規定を確認してください。
- 連絡方法: 電話が基本ですが、深夜・早朝はまず「メール・LINE」で第一報を入れ、無断欠勤を防ぎましょう。
- 確認すべき条件: 「土日祝日を含むか」「有給か無給か」「証明書は何が必要か」の3点はトラブル防止の鍵です。
もし手元に就業規則がなく、確認する手段もない場合は、自己判断で休む日数を決めず、上司に「一般的な相場は〇日と聞きましたが、当社の規定ではどうなりますでしょうか?」と相談という形で連絡を入れるのが最も安全な策です。
突然の不幸で心身ともにお辛い状況かと思いますが、最低限の手続きを済ませることで、仕事の心配をせずに故人との最期の時間を大切に過ごすことができます。まずはテンプレートを使って、会社への第一報を入れるところから始めてみてください。
忌引き連絡・手続き 最終チェックリスト
- 亡くなった方の続柄と、会社の規定日数(就業規則)を照らし合わせたか
- 直属の上司へ第一報(電話またはメール)を入れたか
- 通夜・告別式の日程と、休む期間(開始日と終了日)を明確に伝えたか
- 業務の引き継ぎ事項や、緊急時の連絡先を伝えたか
- (後日)会葬礼状などの証明書類を保管・取得したか
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