「排便のたびに血が出る」「肛門に何かが挟まっているような違和感がある」。
こうした症状に気づいていながら、場所が場所だけに「恥ずかしい」「誰にも相談できない」と一人で悩んでいませんか?
結論から申し上げますと、いぼ痔(痔核)は初期段階であれば、市販薬の活用や生活習慣の改善によって、ご自身で症状をコントロールすることが十分に可能です。
しかし、「排便時にいぼが外に出てくる(脱出)」「痛みが激しい」「出血が止まらない」といった症状がある場合は、セルフケアの限界を超えており、専門医による治療が必要なサインです。「恥ずかしいから」と受診をためらっている間に症状が悪化し、本来なら簡単な処置で済んだはずが、手術が必要な状態まで進行してしまうケースは後を絶ちません。
この記事では、長年多くの患者様のお尻の悩みに向き合ってきた肛門科専門医である私が、以下の3点を中心に、あなたが今取るべき行動を明確にします。
- 専門医が教える「内痔核・外痔核」の違いと進行度セルフチェック
- 市販薬で治るラインと、病院へ行くべき危険な症状の見極め方
- 「切らずに治す」最新治療や、恥ずかしくない診察の流れ
正しい知識を持つことは、不安を解消する第一歩です。この記事を読み終える頃には、あなたの現在の症状がどのレベルにあり、明日からどう行動すればよいかが明確になっているはずです。
いぼ痔(痔核)とは?痛みの有無と場所でわかる種類の違い
まず、あなたが今感じている「痛み」や「違和感」の正体を突き止めましょう。一口に「いぼ痔」と言っても、発生する場所によって症状や対処法が全く異なります。
いぼ痔(医学用語では「痔核」と呼びます)は、肛門周辺の血流が悪くなり、血管がいぼ状に腫れあがった状態を指します。多くの患者様が「何か悪いものができたのではないか」と不安になられますが、これは腫瘍(できもの)ではなく、血管のトラブルの一種です。
いぼ痔ができる仕組み:肛門のクッション機能の破綻
私たちの肛門には、便やガスが勝手に漏れ出さないようにするための「クッション」と呼ばれる組織が存在します。このクッションは、細かい血管(静脈叢)や結合組織で構成されており、水道のパッキンのような役割を果たしています。
しかし、便秘で硬い便を無理に出そうといきんだり、トイレに長時間座り続けたりすることで、肛門部に過度な負担がかかります。すると、クッション内の血管がうっ血して膨らみ、それを支えている組織が引き伸ばされて、最終的には肛門の外へと脱出したり、出血したりするようになります。これが「いぼ痔」の正体です。
つまり、いぼ痔は突然発生する病気というよりは、長年の生活習慣による肛門への負担が蓄積した結果、クッション機能が破綻して起こる「生活習慣病」に近い側面を持っています。
【内痔核】の特徴:痛みは少ないが、出血や脱出(脱肛)がある
肛門の少し奥、直腸との境界線にある「歯状線(しじょうせん)」よりも内側にできるいぼ痔を「内痔核(ないじかく)」と呼びます。
この領域には、痛みを感じる知覚神経(痛覚)が通っていません。そのため、初期段階では「痛みがない」のが最大の特徴です。患者様の多くは、排便後のトイレットペーパーに血がついたり、便器が真っ赤になったりして初めて気づきます。
症状が進行すると、排便時にいぼが肛門の外に出てくる「脱出(脱肛)」が起こります。最初は自然に戻りますが、悪化すると指で押し込まないと戻らなくなります。痛みがないからといって放置しがちですが、出血多量による貧血や、脱出した部分が擦れて炎症を起こすことがあるため注意が必要です。
【外痔核】の特徴:肛門の外側にでき、強い痛みや腫れを伴う
一方、歯状線よりも外側、つまり皮膚の部分にできるいぼ痔を「外痔核(がいじかく)」と呼びます。
ここは皮膚と同じように知覚神経が発達しているため、「強い痛み」を伴うのが特徴です。排便時だけでなく、座ったり歩いたりするだけでも痛みを感じることがあります。肛門の出口付近に、小豆大から親指大の「ぷっくりとした腫れ」ができ、指で触れると明らかな異物感と痛みがあります。
特に、急激に重いものを持ったり、強くいきんだりした拍子に血栓(血の塊)ができて急に腫れ上がる「血栓性外痔核」は、激痛を伴い、救急で来院される方も少なくありません。
詳細解説:内痔核と外痔核の比較まとめ表
| 種類 | 発生場所 | 痛みの有無 | 主な症状 | 患者様の感覚 |
|---|---|---|---|---|
| 内痔核 | 歯状線より内側 (直腸側) |
ほとんどない (神経がないため) |
出血、脱出(脱肛) | 「排便時に血が出る」「何かが出てくるが痛くはない」 |
| 外痔核 | 歯状線より外側 (肛門皮膚側) |
強い痛みがある | 腫れ、痛み、出血 | 「お尻にパチンコ玉のようなしこりがある」「座ると痛い」 |
似ているようで違う病気(裂肛、痔瘻、直腸脱など)との見分け方
お尻のトラブルはいぼ痔だけではありません。自己判断は危険な場合もあるため、他の代表的な疾患との違いを知っておくことが大切です。
- 裂肛(切れ痔): 硬い便などが通過する際に肛門の皮膚が切れた状態です。「カミソリで切られたような鋭い痛み」が特徴で、出血量は紙につく程度と少なめです。慢性化すると見張りイボという突起物ができ、いぼ痔と間違えやすいです。
- 痔瘻(じろう): 肛門の周りに膿がたまり、管ができて膿が出る病気です。発熱やズキズキとした激しい痛みを伴います。これは市販薬では治らず、手術が必要です。
- 直腸脱: いぼ痔の脱出と似ていますが、直腸の壁そのものが反転して肛門から出てくる病気です。いぼ痔よりも大きく、「こぶし大」の赤い塊が出てくることがあります。高齢者に多く見られます。
日本大腸肛門病学会専門医のアドバイス
「最も恐ろしいのは、出血の原因を『どうせ痔だろう』と決めつけ、大腸がんや直腸がんのサインを見逃してしまうことです。痔の出血だと思っていたら、実はがんだったというケースは残念ながらゼロではありません。特に40歳以上の方で、検診を受けていない方は、一度専門医の診察を受けることを強くお勧めします」
【セルフチェック】あなたのいぼ痔はどの段階?進行度レベル分類
「自分は手術が必要なのか?」「まだ薬で治るのか?」
この疑問に答えるために、世界的に用いられている「Goligher(ゴリガー)分類」という指標をご紹介します。これは内痔核の進行度を4段階に分けたもので、治療方針を決める際の重要な基準となります。
ご自身の症状がどのグレードに当てはまるか、セルフチェックしてみましょう。
グレードⅠ:排便時に血が出るが、いぼは出てこない
【状態】
いぼ(痔核)はまだ肛門の中に留まっています。排便時のいきみで出血することはありますが、いぼ自体が肛門の外に出てくることはありません。
【推奨される対応】
この段階であれば、市販薬と生活習慣の改善(食事・排便習慣の見直し)で十分に改善が見込めます。 病院での治療も、基本的には薬の処方のみとなることがほとんどです。
グレードⅡ:排便時にいぼが出るが、自然に戻る
【状態】
排便時にいきむと、いぼが肛門の外に出てきます(脱出)。しかし、排便が終わって立ち上がったり、少し時間が経ったりすると、自然に肛門の中へ戻っていきます。
【推奨される対応】
まだ薬物療法や生活改善などの「保存療法」が中心となります。ただし、出血の頻度が高い場合や、不快感が強い場合は、注射療法(ALTA療法)などの負担の少ない処置を検討する時期に入りつつあります。
グレードⅢ:排便時にいぼが出て、指で押し込まないと戻らない
【状態】
排便時に出てきたいぼが、自然には戻りません。指で押し込んだり、お風呂で温めたりしてようやく戻る状態です。運動中や咳をした拍子に出てくることもあります。
【推奨される対応】
この段階から、生活に支障が出るため「手術(または注射療法)」が検討されます。 指で押し込む行為自体が肛門への刺激となり、さらに悪化させる悪循環に陥りやすいため、早めに専門医へ相談すべきフェーズです。
グレードⅣ:いぼが出たまま戻らない(カントン痔核の危険性)
【状態】
指で押し込んでも戻らない、あるいは押し込んでもすぐにまた出てきてしまう状態です。常に肛門の外にいぼがあるため、下着が汚れたり、擦れて痛みや出血を伴ったりします。
【推奨される対応】
原則として手術が必要です。 特に、脱出した内痔核が肛門括約筋に締め付けられてうっ血し、激しく腫れ上がって戻らなくなった状態を「嵌頓(カントン)痔核」と呼びます。これは激痛を伴い、組織が壊死する危険性もあるため、緊急の処置が必要です。
【図解】進行度別・推奨対応マトリクス
| 進行度 | いぼの状態(脱出) | 推奨される対応 | 緊急度 |
|---|---|---|---|
| グレードⅠ | 脱出しない | 市販薬・生活改善 | 低 |
| グレードⅡ | 脱出するが、自然に戻る | 市販薬・生活改善 (改善なければ受診) |
中 |
| グレードⅢ | 脱出するが、指で戻せる | 専門医を受診 (注射・手術検討) |
高 |
| グレードⅣ | 戻らない | 専門医を受診 (手術適応) |
非常に高い |
日本大腸肛門病学会専門医のアドバイス
「グレードⅢ、つまり『指で戻さないといけない状態』が、手術を検討するかどうかの大きな分かれ道です。この段階で受診されれば、切らずに注射だけで治せる可能性も高いです。逆に、グレードⅣまで我慢してしまうと、どうしても切除手術が必要になるケースが増えます。『指で戻すようになったら病院へ』。これを一つの目安にしてください」
いぼ痔になる原因と悪化させるNG行動
なぜ、あなたはいぼ痔になってしまったのでしょうか?
「遺伝だから」と諦めている方もいますが、実はいぼ痔の原因のほとんどは、日々の生活習慣の中に潜んでいます。原因を取り除かなければ、どんなに良い薬を使っても、あるいは手術をしたとしても、いずれ再発してしまいます。
特にデスクワーク中心の生活を送る40代以降の方は、知らず知らずのうちに「お尻にいじめ」をしている可能性が高いです。
2大原因は「便秘・下痢」と「排便時のいきみ」
いぼ痔の最大の敵は、便通異常です。
便秘になると、硬い便を出すために強くいきむ必要があります。トイレで顔を真っ赤にしてきばる時、肛門にかかる圧力は相当なものです。この圧力が肛門のクッション(静脈叢)をうっ血させ、いぼを形成させます。
また、意外かもしれませんが下痢も肛門には大きな負担です。激しい水流の勢いが肛門壁を傷つけるほか、頻繁にトイレに行くことで肛門を開く回数が増え、うっ血を招きます。「便秘ではないから大丈夫」とは限らないのです。
デスクワーク・長時間の運転がお尻に与える負担
座っている姿勢は、立っている時よりも肛門周辺の血流が悪くなりやすい状態です。特に、長時間同じ姿勢で座り続けるデスクワークや長距離運転は、お尻全体が圧迫され続け、肛門の血管がうっ血します。
重力の影響で血液が肛門付近に溜まりやすくなるため、1時間に1回は立ち上がって歩いたり、お尻に力を入れて締めたり緩めたりする運動を取り入れることが重要です。
トイレにスマホを持ち込むのはNG?排便時間の目安
あなたはトイレにスマホを持ち込んでいませんか?
動画を見たり、ニュースをチェックしたりして、気づけば10分、20分と便座に座り続けている……。これは「いぼ痔製造行動」と言っても過言ではありません。
洋式トイレの便座に座っている状態は、肛門が常に低い位置にあり、うっ血しやすい体勢です。排便がないのに座り続けているだけでも、肛門には負担がかかっています。
排便時間は「3分以内」が理想です。 出ないなら一度トイレから出る。この潔さが、お尻を守ります。
アルコールや香辛料は本当に悪影響があるのか
「お酒を飲んだ翌日にお尻が腫れた」「激辛カレーを食べたらお尻が痛くなった」という経験はありませんか?
- アルコール: 血管を拡張させる作用があります。飲みすぎると肛門の血管も拡張してうっ血がひどくなり、出血や腫れを悪化させます。
- 香辛料(唐辛子など): トウガラシに含まれるカプサイシンは体内で消化吸収されにくく、便として排出される際にも肛門の粘膜を刺激します。これが炎症を引き起こし、痛みや腫れの原因となります。
症状がある時は、これらの摂取を控えるのが賢明です。
日本大腸肛門病学会専門医のアドバイス
「手術をしてきれいに治しても、生活習慣が変わらなければ、数年後にまた別の場所にいぼ痔ができることがあります。これを『再発』と呼ぶ方もいますが、厳密には『新たな痔の発生』です。お尻を大切にする生活習慣こそが、最強の予防薬なのです」
自分で治したい!市販薬の選び方とセルフケアの限界
「忙しくて病院に行けない」「まずは自分でなんとかしたい」。
その気持ち、よく分かります。軽度のいぼ痔(グレードⅠ〜Ⅱ、軽度の外痔核)であれば、市販薬を正しく使うことで症状を鎮めることは可能です。ここでは、ドラッグストアで迷わないための選び方と、正しいセルフケア方法を解説します。
市販薬(座薬・軟膏・注入軟膏・内服薬)の効果的な使い分け
市販の痔疾用薬にはいくつかのタイプがあり、症状や場所によって使い分ける必要があります。
【一覧表】症状・目的別おすすめ市販薬の選び方
| タイプ | 適している症状・場所 | 特徴・メリット |
|---|---|---|
| 注入軟膏 | 内痔核・外痔核の両方 (迷ったらコレ) |
ノズルを挿入して注入すれば内部に、塗れば外部に使える万能型。衛生的で使いやすい。 |
| 座薬(坐剤) | 内痔核 (内部の痛み・出血) |
肛門の奥で溶けて成分が直接作用する。内側の症状に効果的。 |
| 軟膏・クリーム | 外痔核・切れ痔 (外側の痛み・かゆみ) |
指で直接患部に塗る。外側の腫れや痛みに即効性がある。 |
| 内服薬(飲み薬) | 慢性的なうっ血・腫れ | 血液循環を改善し、体の内側から腫れを引かせる。外用薬との併用も有効。 |
成分としては、炎症を抑える「ステロイド成分」、痛みを感じにくくする「局所麻酔成分」、傷の治りを助ける「組織修復成分」などが配合されています。出血が気になる場合は止血成分が入っているもの、痛みが強い場合は麻酔成分入りのものを選ぶと良いでしょう。
いぼ痔を「指で押し込む」際の正しい方法と注意点
脱出してしまったいぼ痔(グレードⅡ〜Ⅲ)を戻す際、無理やり押し込むのは危険です。粘膜を傷つけたり、余計に腫れさせたりする可能性があります。
【正しい戻し方】
- お風呂に入っている時など、体が温まって肛門の筋肉が緩んでいるタイミングが最適です。
- 指にオリーブオイルやワセリン、または痔の軟膏をたっぷり塗り、滑りを良くします。
- いきむのではなく、口から息を吐いてリラックスした状態で、ゆっくりと指の腹を使って肛門内へ押し込みます。
- 戻った後は、すぐに立ち上がらず、数分間横になったり安静にしたりして、再び出てくるのを防ぎます。
※注意: 激痛がある場合や、硬くなってどうしても戻らない場合は、無理に押し込まずに直ちに受診してください。無理をすると嵌頓(カントン)のリスクがあります。
お風呂で温めるべき?冷やすべき?症状別の対処法
基本的には、「いぼ痔は温める」のが正解です。温めることで血行が良くなり、うっ血が改善され、痛みが和らぎます。入浴はシャワーだけで済ませず、湯船に浸かってお尻を温めるのが効果的です。
ただし、例外があります。急激に腫れ上がって激痛がある場合(血栓性外痔核や嵌頓痔核の急性期)は、温めると炎症が悪化して痛みが強くなることがあります。ズキズキと脈打つような激しい痛みがある時は、温めすぎず、冷たいタオルなどで軽く冷やす方が楽になる場合もあります。
市販薬を使っても治らない場合の見切りをつける期間(2週間ルール)
市販薬はあくまで対症療法であり、根本的にいぼを消滅させるものではありません。しかし、炎症が治まれば症状は消えます。
一つの目安として、「市販薬を10日〜2週間使用しても症状が改善しない場合」は、使用を中止して受診してください。漫然と使い続けると、皮膚がかぶれたり、実は別の病気(直腸がんや炎症性腸疾患など)である可能性を見逃したりするリスクがあります。
日本大腸肛門病学会専門医のアドバイス
「『市販薬で治った』と思っても、それは一時的に症状が隠れただけで、いぼ自体は残っていることが多いです。調子が良い時こそ、生活習慣を見直して再発を防ぐことが大切です。また、ステロイド含有の薬を長期間(1ヶ月以上)使い続けるのは副作用のリスクがあるため避けましょう」
「恥ずかしい・怖い」を解消!肛門科受診のリアルと診察の流れ
「お尻を見せるなんて、死ぬほど恥ずかしい」。
その気持ちこそが、受診を妨げる最大の壁でしょう。しかし、私たち肛門科医にとって、お尻を診ることは、内科医が喉を見るのと何ら変わりない日常の風景です。ここでは、実際の診察室で何が行われるのかを具体的に解説し、あなたの不安を少しでも和らげたいと思います。
診察室での体勢は?「お尻を突き出す」わけではない
多くの患者様が「四つん這いになってお尻を突き出す」ような恥ずかしいポーズを想像されますが、実際は違います。ほとんどのクリニックでは「シムス位」という体勢で診察を行います。
【シムス位とは】
診察台の上で左側を下にして横向きに寝て、両膝を軽く抱え込むように曲げる姿勢です。背中を丸めるような体勢になります。お尻全体を露出するわけではなく、バスタオルなどをかけて、診察に必要な部分だけを少しめくって診察します。
顔は壁側やカーテン側を向いているため、医師や看護師と目が合うこともありません。
診察時間はわずか数分。医師は毎日何人も診ているので何も思わない
実際の診察(お尻を診る時間)は、ほんの1〜2分程度で終わります。
視診(目で見る)、指診(指で触れる)、そして必要に応じて肛門鏡(小さなカメラのような器具)で内部を確認します。痛み止めゼリーを使用するため、痛みはほとんどありません。
私たち専門医は、1日に何十人、年間で何千人ものお尻を診察しています。正直に申し上げますと、そこにあるのは「治療すべき患部」だけであり、恥ずかしいという感情が入る余地はありません。美容院で髪を見せるのと同じ感覚で来ていただければと思います。
問診で聞かれることリスト(出血の頻度、脱出の有無など)
診察をスムーズに進めるために、問診票や事前の聞き取りで以下のことを確認します。あらかじめメモしておくと安心です。
- 主な症状: 出血、痛み、脱出、かゆみなど。
- いつから: 数日前から急に痛いのか、数年前から続いているのか。
- 出血の様子: 紙につく程度か、ポタポタ垂れるか、便器が赤くなるほどか。
- 脱出の有無: 排便時に出るか、指で戻るか、戻らないか。
- 排便習慣: 便秘がちか、下痢がちか、トイレにかかる時間。
- 既往歴: 過去にお尻の手術をしたことがあるか、妊娠・出産の経験(女性の場合)。
女性患者への配慮があるクリニックの特徴
最近では、女性の患者様が受診しやすい環境を整えているクリニックが増えています。
- 待合室の工夫: 男女別の待合室や、番号呼び出しによるプライバシー保護。
- 女性医師の在籍: 「どうしても男性医師は抵抗がある」という方のために、女性医師が担当する曜日を設けているところもあります。
- スタッフの配慮: 診察中は女性看護師が必ず付き添い、タオルのかけ方など細心の注意を払ってくれます。
日本大腸肛門病学会専門医のアドバイス
「受診を迷われている方へ。恥ずかしさは診察室に入ってからの『一瞬』だけですが、悩みが解決した後の安心感は『一生』続きます。実際に受診された方のほとんどが『こんなにあっけなく終わるなら、もっと早く来ればよかった』と笑顔で帰られます。どうか、その一歩を踏み出してください」
切らずに治せる?いぼ痔の最新治療法と手術の要否
「病院に行ったら、すぐに『手術しましょう』と言われるのではないか」。
そんな恐怖心をお持ちの方も多いでしょう。しかし、医療技術の進歩により、現在はいぼ痔の治療選択肢が大幅に増えています。手術はあくまで最終手段であり、多くの場合は切らずに治すことが可能です。
薬で治す「保存療法」が治療の基本
病院に行ったからといって、いきなり手術になることは稀です。グレードⅠ〜Ⅱの軽度な内痔核や、急性の外痔核の多くは、まずは「保存療法」が選択されます。
これは、処方薬(強力な座薬や軟膏、内服薬)を使用しながら、排便コントロールや生活指導を行う治療法です。市販薬よりも効果の高い医療用医薬品を使用することで、腫れや出血を速やかに抑えることができます。多くの患者様は、この保存療法だけで症状が落ち着き、日常生活に戻られています。
切らずに注射で固める「ALTA療法(ジオン注)」とは
「脱出するから薬では治らない。でも手術は怖い」。そんなグレードⅡ〜Ⅲの内痔核に対して画期的な効果を上げているのが、「ALTA療法(ジオン注)」という注射療法です。
【特徴】
いぼ痔に直接、硬化剤(ジオン注)を注射して、血流を遮断し、いぼを硬く小さくして粘膜に癒着・固定させる治療法です。
【メリット】
- 切らない: メスを使わないため、出血や痛みが極めて少ないです。
- 日帰り可能: 処置自体は15〜30分程度で終わり、日帰りまたは1泊程度の短期入院で済みます。
- 早期復帰: 翌日からデスクワーク程度の仕事なら復帰可能です。
ただし、外痔核には使えない、再発率が切除手術よりやや高い、といったデメリットもあります。
根治を目指す「結紮切除術」が必要なケース
いぼが非常に大きい場合(グレードⅣ)や、外痔核と内痔核が混ざっている場合などは、昔ながらの「結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)」が最も確実な治療法となります。
これは、いぼ痔を根元から切り取り、血管を縛って処理する方法です。根治性が高く、再発率は最も低いです。以前は「術後が激痛」と言われていましたが、現在は鎮痛剤の進歩や手術手技の向上により、痛みはかなりコントロールできるようになっています。
日帰り手術は可能?痛みや術後の生活について
最近は、ALTA療法はもちろん、結紮切除術であっても日帰り手術を行うクリニックが増えています。お仕事が忙しく、長期の休みが取れない方には大きなメリットです。
【比較表】治療法別のメリット・デメリット・入院期間
| 治療法 | 対象 | 痛みレベル | 入院期間 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|---|
| 保存療法 | 軽度 | なし | 通院のみ | 体への負担がない | 進行したいぼは治せない |
| ALTA療法 (注射) |
内痔核 (脱出あり) |
小 | 日帰り〜1泊 | 切らない、痛みが少ない、社会復帰が早い | 外痔核には無効、数年後の再発リスク |
| 結紮切除術 (手術) |
重度 内外痔核 |
中〜大 (個人差あり) |
日帰り〜1週間 | 根治性が高い、どんな痔核にも対応可能 | 術後の痛み、排便時の痛み、入院が必要な場合も |
日本大腸肛門病学会専門医のアドバイス
「『痛くない治療』が今の主流です。昔のように『痔の手術で2週間入院』というのは、かなり重症なケースに限られます。ALTA療法が登場してからは、ランチタイムに手術を受けて、翌日から出勤されるようなビジネスマンの方も増えています。ライフスタイルに合わせた治療法を医師と相談して決めましょう」
いぼ痔治療にかかる費用相場と期間の目安
治療に踏み切る上で、現実的な問題として気になるのが「費用」です。いぼ痔の治療は、美容外科などとは異なり、基本的に健康保険が適用されます(3割負担の場合)。
初診・検査にかかる費用の目安(保険適用)
初めてクリニックを受診する場合、初診料、検査料(肛門鏡検査など)、処方箋料などがかかります。
- 初診時の窓口負担: およそ 2,000円〜4,000円 程度
- (薬代は別途薬局で 1,000円〜2,000円 程度)
大腸内視鏡検査など、より詳しい検査を行う場合は別途費用がかかります。
薬物療法(通院)を続けた場合の費用感
保存療法で通院する場合、再診料と薬代がかかります。
- 1回の通院・薬代: およそ 1,000円〜2,000円 程度
これを2週間〜1ヶ月に1回程度、症状が落ち着くまで続けます。
日帰り手術・入院手術の費用相場(3割負担の場合)
手術費用は、術式や入院の有無によって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。
- ALTA療法(日帰り): 15,000円〜25,000円 程度
- 結紮切除術(日帰り): 20,000円〜30,000円 程度
- 入院手術(1週間程度): 80,000円〜120,000円 程度(食事代・ベッド代含む)
※上記は3割負担の概算です。病院の設備や個室利用の有無によって変動します。
民間の医療保険は使える?手術給付金の対象について
ご自身で加入されている民間の医療保険(生命保険の医療特約など)について、「手術給付金」の対象になるケースが多いです。
特に正式な手術(Kコードという手術コードがつくもの)であれば、日帰り手術であっても、5万円、10万円といった給付金が受け取れる場合があります。ALTA療法も手術扱いとなることが一般的です。実質的な自己負担がゼロになる、あるいはプラスになることもありますので、加入している保険会社に「痔の手術(痔核手術)は給付対象か」を必ず確認してみてください。
専門医が回答!いぼ痔に関するよくある質問 (FAQ)
最後に、診察室で患者様から頻繁にいただく質問にお答えします。ネット上の噂に惑わされず、正しい知識を持ちましょう。
Q. いぼ痔は自然治癒しますか?
A. 完全に「消えてなくなる」という意味での自然治癒は、残念ながら難しいです。一度伸びてしまった皮膚や血管は元には戻りません。ただし、グレードⅠ程度の軽度なものであれば、生活習慣の改善で腫れが引き、「症状がない状態(寛解)」を維持することは可能です。「治った」と感じても、無理をすればまた腫れてくる可能性があることを覚えておいてください。
Q. いぼ痔を放置するとがんになりますか?
A. いいえ、いぼ痔(痔核)が癌化して大腸がんや肛門がんになることはありません。痔は血管の良性疾患であり、がんは悪性腫瘍ですので、全く別の病気です。
しかし、最も危険なのは「痔からの出血だと思い込んでいたら、実は直腸がんからの出血だった」というケースです。自己判断で放置せず、出血がある場合は必ず一度は大腸検査を受けることを強く推奨します。
Q. 妊娠中・授乳中でも使える薬はありますか?
A. はい、あります。妊娠中は子宮が血管を圧迫し、便秘にもなりやすいため、痔が悪化しやすい時期です。妊娠中や授乳中でも赤ちゃんに影響の少ない座薬や軟膏、便を柔らかくする薬などが処方可能です。我慢せず、産婦人科の先生や肛門科医に相談してください。
Q. ウォシュレットは使っても大丈夫ですか?
A. 使用しても構いませんが、使い方に注意が必要です。強い水流で肛門を刺激すると、かえってうっ血を悪化させたり、皮膚のバリア機能を壊して痒みの原因になったりします。
日本大腸肛門病学会専門医のアドバイス
「お尻への水流刺激は『最弱』設定が基本です。時間は『5秒〜10秒』程度で十分。目的は汚れを落とすことであり、お尻をマッサージすることではありません。洗いすぎは逆効果ですので注意しましょう」
まとめ:我慢せずに早期対処を。まずは生活改善と専門医への相談から
いぼ痔は、日本人の3人に1人が悩んでいると言われるほど身近な病気です。「恥ずかしい」と感じるのはあなただけではありません。しかし、その恥ずかしさを乗り越えて正しいケアを行えば、痛みや出血の不安から解放され、快適な日常を取り戻すことができます。
最後に、この記事の要点をチェックリストにまとめました。今日からの行動指針としてお役立てください。
いぼ痔悪化防止・受診判断チェックリスト
- トイレは3分以内: スマホを持ち込まず、出なければ潔く出る。
- お尻を温める: 毎日湯船に浸かり、血行を良くする。
- 便通を整える: 食物繊維と水分を摂り、便秘も下痢も防ぐ。
- 座りっぱなし回避: デスクワーク中も1時間に1回は立ち上がる。
- 2週間ルール: 市販薬を2週間使っても症状が改善しなければ受診する。
- 戻らなければ即受診: 指で戻さないといけない状態(グレードⅢ)になったら、手術の要否を含めて専門医に相談する。
あなたの「お尻の悩み」が一日も早く解決し、不安のない毎日が送れることを心より願っています。まずは今日から、できる範囲の生活改善から始めてみてください。
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