「退職したら『退職給付金』が貰えると聞いたけれど、自分は対象なのだろうか?」
「会社からは退職金が出ないと言われた。これからの生活費はどうすればいい?」
退職を検討する際、最も不安になるのがお金の問題です。インターネットで検索すると「退職給付金」という言葉が出てきますが、実は日本の法律に「退職給付金」という名称の単一制度は存在しません。
一般的にこの言葉は、以下の2つの全く異なるお金の総称として使われています。
- 会社から貰える「退職金(退職手当)」
- 国から貰える「失業給付(いわゆる失業保険)」
この2つは財源も手続きも受給条件も全くの別物です。ここを混同したまま退職してしまうと、「貰えると思っていたお金が入らず、生活が破綻する」「申請期限を過ぎて数十万円をドブに捨てる」といった取り返しのつかない事態になりかねません。
この記事では、業界歴15年の社会保険労務士である筆者が、あなたが受け取れる可能性のある全てのお金について、その仕組みと金額目安、そして損をしないための手続きを徹底解説します。
この記事でわかること
- あなたが貰える「退職金」と「失業保険」の有無と金額目安
- 「会社都合」と「自己都合」で支給額が数百万円変わるケースと対策
- 社労士が教える、退職前後で損をしないための手続き完全ガイド
退職後の生活を守り、次のステップへ安心して進むために、まずは「貰えるお金の正体」を正しく理解しましょう。
「退職給付金」の正体とは?2つの「貰えるお金」を整理しよう
多くの人が検索する「退職給付金」という言葉。しかし、ハローワークに行っても、会社の総務に聞いても、「退職給付金の申請書をください」と言えば、「え? どの給付金のことですか?」と聞き返されてしまうでしょう。これは、用語の定義が曖昧だからです。
まずは、退職時に受け取れるお金の全体像を整理します。イメージとしては「2階建て」の構造を思い浮かべてください。
| 2階部分 (国からの給付) |
雇用保険給付(いわゆる失業保険) ・基本手当(失業手当) ・再就職手当 ・教育訓練給付金 など ※条件を満たせば原則誰でも受け取れる公的セーフティネット |
| 1階部分 (会社からの給付) |
退職給付制度(いわゆる退職金) ・退職一時金 ・企業年金(確定給付・確定拠出) ※会社の規定による(制度がない会社もある) |
このように、財源が「国(雇用保険料)」なのか「会社(経営資金)」なのかによって、性質が大きく異なります。それぞれの詳細を見ていきましょう。
会社から支払われる「退職給付制度(退職金)」
1階部分にあたるのが、勤務先の会社から支払われる「退職金」です。正式には「退職手当」や「退職慰労金」などと呼ばれます。
最も重要な点は、退職金は法律上の義務ではないということです。労働基準法には「会社は必ず退職金を払わなければならない」という規定はありません。したがって、退職金制度がない会社も適法であり、実際に日本企業の約20%(特に中小企業)には退職金制度がありません。
支給形態には主に2つのパターンがあります。
- 退職一時金制度:退職時にまとめて全額が支払われる形式。
- 退職年金制度(企業年金):退職後、一定期間にわたり年金として支払われる形式(一時金としてまとめて受け取れる場合も多い)。
これらが貰えるかどうかは、全てあなたの会社の「就業規則」や「退職金規程」にかかっています。
国(ハローワーク)から支給される「雇用保険給付(失業保険)」
2階部分にあたるのが、国(政府)が管掌する雇用保険制度に基づく給付です。一般的に「失業保険」と呼ばれますが、正式名称は「雇用保険の基本手当」といいます。
こちらは会社の意思とは関係なく、雇用保険に加入しており、所定の条件を満たしていれば、原則として誰でも受け取る権利があります。
「退職給付金」と検索する方の多くは、「会社を辞めた後の生活費をどうしよう」という不安を抱えています。その意味で、生活の支えとなるのは、この「失業保険」であるケースが圧倒的に多いです。会社に退職金制度がなくても、雇用保険に入っていればこちらは受給可能です。
【注意】企業会計用語の「退職給付引当金」とは別物
インターネットで情報を探していると、「退職給付引当金」や「退職給付会計」といった難しい用語に出会うことがあります。これらは企業の経理担当者が決算書を作る際に使う会計用語であり、あなたが受け取るお金の話とは直接関係ありません。
個人の退職者が知るべきは「いくら貰えるか」「どう手続きするか」の2点のみです。会計用語の解説ページは読み飛ばしてしまって構いません。
業界歴15年の社会保険労務士のアドバイス
「退職給付金」という言葉を曖昧なままにしておくと、本来貰えるはずの申請を忘れてしまうリスクがあります。過去に私が相談を受けたケースでは、「うちは退職金がない会社だから」とショックを受け、そのままハローワークへの申請まで遅れてしまった方がいました。しかし、会社からの退職金がゼロでも、国からの失業保険で100万円近く受け取れるケースは珍しくありません。まずは「会社」と「国」、2つの財布があることを強く意識してください。それぞれ申請先も期限も異なります。
【会社からの給付】自分の退職金の有無と相場を調べる方法
では、まず1階部分である「会社からの退職金」について深掘りします。これは不確実な要素が多いため、退職を決意する前に必ず確認しておく必要があります。「辞めると言った後に、退職金がないことを知った」という事態は避けなければなりません。
まずは「就業規則」と「賃金規程」を確認しよう
自分の会社に退職金があるかどうかを確かめる最も確実な方法は、会社の「就業規則」または「退職金規程(賃金規程)」を確認することです。これらは従業員がいつでも閲覧できる場所に保管することが法律で義務付けられています(社内イントラネット、総務部のキャビネットなど)。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 適用範囲:正社員のみか、契約社員やパートも対象か。
- 支給要件:「勤続3年以上」などの条件があるか。
- 計算式:「基本給 × 勤続年数 × 給付率」などの計算方法。
- 減額規定:「自己都合退職の場合は会社都合の◯%とする」といった記載があるか。
特に中小企業の場合、社内に規定がなくても「中小企業退職金共済(中退共)」に加入している場合があります。これは会社が外部機関に掛け金を積み立てる制度です。給与明細の控除欄や備考欄に「中退共」等の記載がないか、あるいは入社時に配布された書類一式の中に「退職金共済手帳」がないかを確認してみましょう。
退職金の平均相場はいくら?(勤続年数・学歴別)
「自分の会社の規定は見れないけれど、一般的な相場を知りたい」という方のために、厚生労働省や東京都の調査データを基にしたモデル退職金の目安を紹介します。これらはあくまで平均値であり、企業規模によって大きく異なります。
▼勤続年数・学歴別の退職金相場目安(自己都合退職の場合)
| 勤続年数 | 大卒(総合職) | 高卒(現業職) | 中小企業の目安 |
|---|---|---|---|
| 3年 | 30万 〜 50万円 | 20万 〜 40万円 | 10万 〜 30万円 |
| 5年 | 60万 〜 100万円 | 40万 〜 70万円 | 30万 〜 50万円 |
| 10年 | 150万 〜 250万円 | 100万 〜 180万円 | 80万 〜 150万円 |
| 20年 | 500万 〜 800万円 | 350万 〜 600万円 | 250万 〜 400万円 |
| 定年 | 1,500万 〜 2,000万円 | 1,000万 〜 1,500万円 | 800万 〜 1,100万円 |
例えば、勤続5年で退職する場合、大企業であれば100万円近く貰えることもありますが、中小企業では30〜50万円、あるいは制度なし(0円)というケースも一般的です。「長く勤めたから必ず数百万円貰える」という思い込みは危険です。
退職金にかかる税金と手取り額の計算
退職金は、長年の労働への対価という性質があるため、税金面で非常に優遇されています。これを「退職所得控除」といいます。
退職金にかかる税金は、以下の計算式で算出された「課税退職所得金額」に対して課税されます。
(退職金支給額 − 退職所得控除額) × 1/2 = 課税退職所得金額
▼退職所得控除額の計算
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数 (※80万円未満の場合は80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
例えば、勤続10年の場合、退職所得控除額は「40万円 × 10年 = 400万円」となります。つまり、退職金が400万円以下であれば、税金は一切かからず、全額が手取りとなります。
多くの若手・中堅社員の退職において、退職金がこの控除額を超えることは稀ですので、「退職金はほぼ非課税で受け取れる」と考えて差し支えないでしょう。ただし、退職時に会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、一律20.42%の所得税が源泉徴収されてしまうため、必ず提出してください。
▼[現役労務コンサルタントのアドバイス:隠れ退職金を見逃さないために]
「うちは中小企業だから退職金なんてない」と思い込んでいる方が非常に多いですが、実は会社が従業員のために「中退共」や「iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)」などで積み立てを行っているケースがあります。
これらは従業員本人が意識していなくても、会社が福利厚生として加入していることがあるのです。これらは就業規則を確認するか、総務担当者に直接聞かないと分からないこともあります。辞めると言い出す前に、さりげなく「福利厚生の資料を見たい」などと言って規定を確認しましょう。これが数十万、数百万円の差になることもあります。
【国からの給付】失業保険(基本手当)の受給条件と金額
次に、2階部分である「国からの給付(失業保険)」について解説します。多くの退職者にとって、当面の生活費を支えるメインの収入源となるのはこちらです。制度が複雑なため、正しく理解していないと受給額が減ったり、支給が遅れたりします。
受給要件:雇用保険の加入期間をチェック
失業保険を受け取るための大前提は、「ハローワークで求職の申し込みを行い、いつでも就職できる能力と意思があるにもかかわらず失業状態にあること」です。その上で、以下の加入期間(被保険者期間)の要件を満たす必要があります。
- 原則(自己都合退職など):
離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること。 - 特例(会社都合退職・特定理由離職者):
離職の日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること。
ここでの「1ヶ月」とは、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を指します。また、前職を辞めてから期間が空かずに再就職している場合、前々職の期間も通算できる場合があります。転職を繰り返している方は、過去の期間も合算できるかハローワークで確認しましょう。
いくら貰える?「基本手当日額」の計算方法
1日あたりに貰える金額(基本手当日額)は、退職前6ヶ月間の給与総額(ボーナスを除く、残業代や通勤手当を含む税引前総額)を180で割った金額の、およそ50%〜80%です。
給与が低い人ほど給付率(%)が高く、給与が高い人ほど給付率は低くなります。また、年齢区分ごとに上限額が設定されています。
▼給与月額別・失業保険の受給額目安(30歳未満の場合)
| 退職前の月給(総額) | 基本手当日額(目安) | 月額換算(30日分) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約 5,300円 | 約 15.9万円 |
| 25万円 | 約 5,800円 | 約 17.4万円 |
| 30万円 | 約 6,200円 | 約 18.6万円 |
| 35万円 | 約 6,600円 | 約 19.8万円 |
※実際の金額は離職時の年齢や毎年の法改正により変動します。
おおよそ、「在職中の手取り給与の7〜8割程度」が支給されるイメージを持つと良いでしょう。ただし、ここから国民健康保険料や国民年金保険料を自分で支払う必要があるため、生活費は在職中よりも確実にタイトになります。
いつから、いつまで貰える?「給付日数」と「待機期間」
失業保険で最も重要なのが、「いつから貰えるか(待機期間・給付制限)」と「何日間貰えるか(所定給付日数)」です。これは、退職理由が「自己都合」か「会社都合」かによって天と地ほどの差が出ます。
1. いつから貰えるか
- 会社都合退職:
7日間の待機期間満了後、約1ヶ月後から支給開始。 - 自己都合退職:
7日間の待機期間 + 2ヶ月〜3ヶ月の給付制限期間を経て支給開始。
※実際の手取りは退職から約3〜4ヶ月後になるため、その間の生活費(貯蓄)が必須です。
2. 何日間貰えるか(所定給付日数)
自己都合退職の場合、勤続年数に関わらず多くの人が90日〜150日です。一方、会社都合退職の場合は、年齢と勤続年数に応じて90日〜330日と手厚くなります。
【重要】「会社都合」か「自己都合」かで総額が激変する
上記のように、会社都合退職は「すぐに貰える」「長く貰える」という圧倒的なメリットがあります。総額で数十万円〜百万円以上の差がつくこともあります。
一般的に「自分から辞表を出したら自己都合」と思われがちですが、実は以下のようなケースでは、ハローワークの判断により「特定受給資格者(会社都合)」や「特定理由離職者」として認定される可能性があります。
- 残業時間過多:退職直前の3ヶ月連続で月45時間超、または1ヶ月で100時間超の時間外労働があった場合。
- 賃金未払い:給与の未払いや遅配が続いた場合。
- 労働条件の相違:入社時に提示された条件と実際の労働条件が著しく異なっていた場合。
- ハラスメント:上司や同僚からのパワハラ、セクハラにより退職を余儀なくされた場合。
- 事業所の移転:通勤が困難(往復4時間以上など)になった場合。
これらを証明できれば、たとえ退職届を書いてしまっていても、ハローワークでの手続き時に異議を申し立てることで、会社都合扱いに変更できる可能性があります。
業界歴15年の社会保険労務士のアドバイス
「自分から辞表を出したから自己都合だ」と諦めるのはまだ早いです。私が過去に担当した案件でも、タイムカードのコピーや給与明細、ハラスメントを記録した日記などをハローワークに提出し、「会社都合」として認められ、給付制限なしで受給できた事例が多数あります。特に「残業時間」は客観的な証拠として強力です。もし長時間労働が原因で辞めるのであれば、退職前に必ずタイムカードや勤怠記録のコピー、あるいはパソコンのログイン履歴などを確保しておいてください。それがあなたの生活を守る武器になります。
失業保険だけじゃない!退職時に貰えるその他の給付金
退職給付金=失業保険と考えがちですが、状況によっては他にも活用できる制度があります。これらを知っているだけで、選択肢が大きく広がります。
早期再就職で貰える「再就職手当」
「失業保険を貰い切ってから就職しないと損だ」と考える人がいますが、それは誤解です。失業保険の支給日数を一定以上残して早期に再就職した場合、「再就職手当」という祝い金のような一時金が貰えます。
- 支給残日数が3分の2以上:残日数の支給総額の70%を一括支給
- 支給残日数が3分の1以上:残日数の支給総額の60%を一括支給
例えば、日額5,000円の人が90日分を残して就職した場合、「5,000円 × 90日 × 70% = 31万5,000円」が就職した翌月以降に振り込まれます。さらに就職先で給料も入るため、ダラダラと失業保険を貰い続けるよりも、早く就職した方が経済的メリットが大きいケースが多いのです。
スキルアップを支援する「教育訓練給付金」
退職後、すぐに就職せずに資格取得やスキルアップを目指す場合、「教育訓練給付金」が使えます。厚生労働大臣が指定する講座(プログラミング、簿記、英語、社労士講座など)を受講し修了した場合、受講費用の20%〜最大70%が国から補助されます。
退職後1年以内に受講開始する必要がありますが、ハローワークでの手続きが必要です。失業保険を受給しながら通学することも可能です(ただし、昼間の学校に通う場合は「失業状態」とみなされない場合があるため、夜間や通信講座、または「公共職業訓練」の活用を検討してください)。
病気や怪我で働けない場合の「傷病手当金」
もし退職の理由が「うつ病」「病気」「怪我」などで、退職後すぐに働ける状態ではない場合、失業保険は受け取れません(失業保険は「働ける状態の人」が対象だからです)。
その代わり、在職中から健康保険の「傷病手当金」を受給している、あるいは受給要件を満たして退職した場合、退職後も継続して傷病手当金を受け取ることができます。金額は給与の約3分の2で、最長1年6ヶ月受給可能です。
注意点:失業保険と傷病手当金は同時には貰えません。病気で働けない間は傷病手当金を受給し、その間、失業保険の受給期間を延長する手続き(受給期間延長申請)をハローワークで行い、病気が治ってから失業保険を受け取るという「リレー受給」が最も賢い方法です。
家賃補助が出る「住居確保給付金」
貯蓄が底をつきそうで家賃が払えないという緊急事態には、自治体が実施する「住居確保給付金」という制度があります。これは離職により住居を失うおそれがある人に対して、原則3ヶ月間(延長あり)、家賃相当額を自治体が大家さんに直接支払う制度です。
ハローワークではなく、各自治体の「自立相談支援機関」が窓口となります。万が一のセーフティネットとして覚えておいてください。
プロが教える!損をしない退職・受給手続きの完全スケジュール
どんなに良い制度があっても、手続きの順番を間違えたり期限を過ぎたりすると、1円も貰えません。ここでは、退職前から受給終了までの理想的なスケジュールを時系列で解説します。
【退職前】証拠保全と就業規則の確認
タイミング:退職の1ヶ月前〜直前
在職中にしかできないことが最も重要です。
- 就業規則・退職金規程のコピー:退職金の有無と計算式を確認。
- 証拠集め:残業代未払いやパワハラがある場合は、メール、LINE、録音、業務日報のコピーなどを外部(自宅PCやクラウド)に保存します。これらは後で「会社都合」を主張する際の切り札になります。
- 有給休暇の確認:残日数を把握し、消化計画を立てます。
【退職直後】離職票の受け取りと確認
タイミング:退職日の翌日〜10日以内
会社を辞めると、通常10日〜2週間ほどで会社から以下の書類が郵送されてきます。
- 離職票-1、離職票-2(失業保険の手続きに必須)
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
ここで必ず確認すべきは「離職票-2」の「離職理由」欄です。会社側が勝手に「自己都合」にチェックを入れていないか確認してください。もし事実(解雇や契約期間満了、パワハラ等)と異なる場合は、その欄の下にある「離職者本人の判断」欄の「異議あり」に〇をつけて署名し、ハローワークで証拠を添えて申し立てを行ってください。
【ハローワーク】求職の申し込みと受給資格決定
タイミング:離職票が届き次第すぐ
管轄のハローワークに行き、求職の申し込みを行います。
持ち物:
- 離職票-1、離職票-2
- マイナンバー確認書類(マイナンバーカード等)
- 身元確認書類(運転免許証等)
- 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
- 印鑑
手続きが終わると「受給資格者のしおり」が渡され、最初の「雇用保険説明会」の日時が指定されます。また、手続き日から7日間は「待機期間」となり、この間はアルバイト等は一切禁止です。
【受給中】失業認定と求職活動の実績作り
タイミング:4週間に1度
失業保険を受け取るには、4週間に1度の「認定日」にハローワークへ行き、「失業状態であること」と「求職活動を行っていること」の認定を受ける必要があります。
原則として、前回の認定日から今回の認定日までに2回以上の求職活動実績が必要です。
- 認められる活動:ハローワークでの職業相談、求人への応募、セミナー参加、許可・届出のある民間職業紹介機関での相談など。
- 認められない活動:単なる求人検索、知人への紹介依頼、ハローワークへの登録のみ。
認定日にハローワークに行かないと、その4週間分の給付は消滅します(病気などやむを得ない事情がある場合は事前の連絡と証明書が必要)。必ずスケジュールを空けておきましょう。
現役労務コンサルタントのアドバイス
「退職後、会社から離職票がなかなか届かず、ハローワークに行けない」という相談が後を絶ちません。会社には退職後10日以内にハローワークへ手続きをする義務があります。もし退職から2週間を過ぎても届かない場合は、まず会社に催促をしてください。それでも送ってこない、あるいは連絡が取れない場合は、ハローワークの窓口で「会社が離職票を出してくれない」と相談してください。ハローワークから会社に対して、離職票を交付するよう督促(指導)してもらうことが可能です。生活がかかっているのですから、遠慮せずに動いてください。
退職給付金(退職金・失業保険)に関するよくある質問
最後に、退職給付金に関して筆者がよく受ける質問をQ&A形式でまとめました。
Q. アルバイトやパートでも退職給付金は貰えますか?
A. 条件を満たせば「失業保険」は貰えます。「退職金」は会社次第です。
会社の退職金は、就業規則で「正社員のみ」とされていることが多く、パート・アルバイトには支給されないケースが一般的です。
一方、失業保険(雇用保険)は、以下の条件を満たしていればパートやアルバイトでも受給可能です。
1. 31日以上の雇用見込みがあったこと
2. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
この条件で雇用保険に加入しており、かつ離職前2年間に12ヶ月以上(または1年間に6ヶ月以上)の加入期間があれば、正社員同様に受給できます。
Q. 退職金が出ない会社は違法ですか?
A. 違法ではありません。
前述の通り、退職金制度を設けるかどうかは会社の自由です。就業規則に「退職金は支給しない」と書かれている、あるいは退職金に関する規定自体がない場合は、支払われなくても違法ではありません。
ただし、就業規則に「退職金を支給する」と明記されているにもかかわらず、経営難などを理由に支払わない場合は「賃金不払い」となり、労働基準法違反となります。この場合は労働基準監督署や弁護士への相談が必要です。
Q. すぐに再就職が決まっている場合、何か申請できますか?
A. 失業保険は貰えませんが、「再就職手当」等の対象になる可能性があります。
退職日の翌日に次の会社へ入社するなど、失業期間がない場合は失業保険は受け取れません。しかし、ハローワークの紹介等で就職した場合や、一定の条件を満たせば「就業促進定着手当」などが受け取れるケースもあります。また、退職金(会社からの給付)は、再就職の有無に関わらず、規定があれば受け取れます。
Q. 退職給付金を受け取ると扶養から外れますか?
A. 失業保険の金額によっては外れる必要があります。
会社からの退職金(一時金)は、税制上・社会保険上の扶養判定において収入とみなされない場合が多いですが、健康保険組合によって規定が異なるため確認が必要です。
一方、失業保険(基本手当)は「収入」とみなされます。基本手当日額が3,612円(60歳以上または障害者の場合は5,000円)以上の場合、受給期間中は年収130万円未満であっても「向こう1年間の収入見込みが130万円を超える」と判定され、扶養から外れる手続き(国民健康保険・国民年金への切り替え)が必要になります。受給終了後に再度、扶養に入る手続きを行います。
まとめ:退職給付金の仕組みを正しく理解し、手取りを最大化しよう
「退職給付金」という一つの制度はありませんが、「会社からの退職金」と「国からの失業保険」を正しく理解し、漏れなく申請することで、退職後の生活不安を大きく減らすことができます。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 用語の整理:「退職給付金」は「会社の退職金」と「国の失業保険」の2つに分けて考える。
- 会社の退職金:就業規則を確認し、中退共などの隠れ退職金がないかもチェックする。
- 国の失業保険:退職理由(会社都合か自己都合か)が金額と支給時期を大きく左右する。証拠保全が重要。
- 手続き:離職票の離職理由を必ず確認し、ハローワークへは速やかに行く。
退職は人生の大きな転機です。お金の心配を最小限にし、次のキャリアへ前向きに進むために、ぜひ今日から準備を始めてみてください。まずはご自身の会社の就業規則を確認するところからスタートしましょう。
【退職時のお金・手続き最終チェックリスト】
- [ ] 就業規則(賃金規程・退職金規程)を確認したか?
- [ ] 給与明細を見て「中退共」などの記載がないか確認したか?
- [ ] 退職前に残業代未払いやハラスメントの証拠を保全したか?
- [ ] 離職票が届いたら、「離職理由」が事実と合っているか確認したか?
- [ ] 雇用保険被保険者証を受け取ったか?
- [ ] 源泉徴収票を受け取ったか?
- [ ] ハローワークへの初回訪問日を決めたか?
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