「夜はしっかり寝ているはずなのに、昼間に耐えられないほどの眠気が襲ってくる」
「休日に泥のように眠っても、ちっとも疲れが取れた気がしない」
仕事や家事、育児に追われる毎日の中で、このような悩みを抱えている女性は少なくありません。周囲からは「気合が足りない」「怠けている」と誤解されがちですが、実はその眠気、あなたの意思の弱さのせいではない可能性が高いのです。
十分な睡眠時間を確保しても解消されない異常な眠気の背景には、女性特有の繊細なホルモンバランスの乱れや、甲状腺疾患、あるいは専門的な治療が必要な睡眠障害など、身体からの切実なSOSが隠れていることがあります。
この記事では、日々多くの女性患者さんの睡眠トラブルと向き合っている現役医師の視点から、以下の3点を中心に詳しく解説していきます。
- 医師も診断に用いる「異常な眠気」の客観的なセルフチェックリスト
- 30代〜50代の女性に特に多い「眠くなる病気」とホルモンの深い関係
- 内科・婦人科・心療内科など、症状別に迷わず選べる「受診すべき診療科」のガイドライン
読み終える頃には、あなたのその「謎の眠気」の正体がおぼろげながら見え、次に取るべき具体的なアクションが明確になるはずです。一人で自分を責めるのは今日で終わりにしましょう。医学的な視点から、解決への糸口を一緒に紐解いていきます。
「寝ても寝ても眠い」は病気?正常?まずは眠気のレベルをチェック
「私の眠気は病気なのだろうか、それともただの疲れなのだろうか?」
この問いに対する答えを見つけるためには、まず現在の眠気の程度を客観的な指標で評価することが第一歩です。主観的な「眠い」という感覚は個人差が大きいため、医療現場では世界的に標準化されたスクリーニングテストを用います。
睡眠時間は足りているのに眠い…「過眠」の定義とは
医学的に「過眠(かみん)」とは、夜間に十分な睡眠時間(一般的には7時間以上)を確保しているにもかかわらず、日中に強い眠気が出現し、覚醒を維持することが困難な状態を指します。
単なる睡眠不足(睡眠負債)であれば、数日間十分な睡眠をとることで症状は改善します。しかし、どれだけ寝ても眠気が取れない、あるいは日中の重要な場面(会議中や運転中など)で意図せず眠り込んでしまう場合は、病的過眠の疑いがあります。
特に女性の場合、生理周期やライフイベントによる一時的な体調変化と混同されやすく、「いつものことだから」と見過ごされてしまうケースが後を絶ちません。しかし、背景に治療が必要な疾患が潜んでいる場合、放置することで社会生活に深刻な支障をきたすリスクがあります。
【セルフチェック】エップワース眠気尺度(ESS)で重症度を判定
睡眠医療の現場で最も広く使われている問診票の一つに、「エップワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale: ESS)」があります。以下の8つの状況において、どれくらい眠くなるかを0〜3点の4段階で評価し、合計点を出してみてください。
【点数の基準】
0点:決して眠くならない
1点:稀に眠くなる(時々眠気がある)
2点:時々眠くなる(頻繁に眠気がある)
3点:頻繁に眠くなる(大抵眠ってしまう)
| シチュエーション | あなたの点数 (0-3) |
|---|---|
| 1. 座って読書をしているとき | |
| 2. テレビを見ているとき | |
| 3. 公の場所(会議や劇場など)で座って静かにしているとき | |
| 4. 1時間続けて車を他人が運転し、それに乗っているとき | |
| 5. 午後、横になって休息できるとき | |
| 6. 座って人と話をしているとき | |
| 7. 昼食後(お酒なし)、静かに座っているとき | |
| 8. 自分で車を運転中、渋滞で数分止まっているとき |
▼判定結果の見方はこちらをクリック
- 0〜5点:正常範囲
日中の眠気は少なく、問題ないレベルです。 - 6〜10点:軽度の眠気
少しお疲れのようです。睡眠環境の見直しを検討しましょう。 - 11点以上:病的過眠の疑いあり
睡眠時無呼吸症候群や過眠症などの睡眠障害、あるいは何らかの疾患が隠れている可能性が高い状態です。専門医への相談を強く推奨します。
※このチェックシートは診断を確定するものではありませんが、受診の際に医師に見せることで、診断の重要な手がかりとなります。
「ただの疲れ」と「治療が必要な眠気」の見分け方
点数が高くなくても、「ここぞ」という場面で眠気に襲われる場合は注意が必要です。
例えば、友人と楽しく会話をしている最中や、重要な商談中など、通常であれば緊張感や興奮で交感神経が優位になり、目が覚めているはずの状況で眠くなるのは、脳の覚醒維持機能に何らかの障害が起きているサインかもしれません。
また、「週末に12時間以上寝てしまう」という行動も、単なる寝溜めではなく、平日の睡眠の質が極端に悪いことの裏返しかもしれません。これを「回復睡眠」と呼びますが、質の悪い睡眠を量でカバーしようとする身体の防衛反応である可能性があります。
睡眠専門医のアドバイス
「受診を検討すべき『日常生活への支障』のラインについてよく質問を受けます。私はいつも『自分の意志で眠気をコントロールできないと感じたら』とお答えしています。例えば、映画館で暗くなると眠くなる程度ならよくありますが、上司との面談中や、信号待ちのわずかな時間に意識が飛ぶようなら、それは意志の力でどうにかできる問題ではありません。ご自身を責める前に、医学的なアプローチが必要な状態だと認識してください」
女性特有の生理的要因:ホルモンバランスとライフステージの影響
女性の身体は、一生を通じて、そして1ヶ月の周期の中でも、劇的なホルモン変動の波にさらされています。男性と比較して女性に「眠気」の訴えが多い背景には、このホルモンバランスの影響が色濃く反映されています。
生理周期と眠気:プロゲステロン(黄体ホルモン)の分解作用
排卵後から生理が始まるまでの「黄体期」には、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが多く分泌されます。このプロゲステロンには、基礎体温を上げる作用とともに、分解される過程で「アロプレグナノロン」という物質に変化し、これが脳内のGABA受容体に作用して強い催眠効果をもたらすことが分かっています。
つまり、生理前に眠くなるのは、身体が休息を求めているというよりも、ホルモン物質による「天然の睡眠薬」のような作用が働いているためなのです。これは月経前症候群(PMS)の代表的な症状の一つであり、生理が始まるとプロゲステロンの分泌が急激に低下するため、嘘のように眠気が晴れるのが特徴です。
妊娠中・産後のホルモン変化と睡眠の質
妊娠初期(〜15週頃)は、妊娠を維持するためにプロゲステロンが大量に分泌され続けます。これにより、日中も強い眠気に襲われる「眠りつわり」と呼ばれる状態になることがあります。これは母体を安静にさせ、胎児を守ろうとする生物学的な防衛反応とも言えます。
一方、産後はホルモンバランスが急激に変化するうえ、授乳による頻繁な中途覚醒が加わります。細切れ睡眠が続くことで、深い睡眠(ノンレム睡眠)が十分に取れず、慢性的な睡眠不足状態に陥ります。産後の眠気は「マミーブレイン」と呼ばれる集中力低下の一因ともなり、育児中の事故を防ぐためにも、周囲のサポートを得て少しでも睡眠を確保することが重要です。
30代後半〜40代・50代の「プレ更年期・更年期」と自律神経の乱れ
30代後半から40代にかけての「プレ更年期」、そして閉経を挟む前後5年間の「更年期」には、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌がゆらぎながら低下していきます。
エストロゲンには脳の機能を整える働きもあるため、この減少に伴い自律神経のバランスが崩れやすくなります。夜間にホットフラッシュ(ほてり・発汗)が起きて目が覚めてしまったり、不安感で寝付けなくなったりすることで睡眠の質が低下し、その反動として日中に強い眠気が出現します。
▼年代別:女性ホルモンの変動と眠気リスク
| ライフステージ | ホルモンの状態 | 眠気の特徴 |
|---|---|---|
| 20代〜30代 (性成熟期) |
周期的な変動が活発 | 生理前(黄体期)に集中して強い眠気が出やすい。PMSの一環。 |
| 妊娠・産後 | プロゲステロン高値 →急激な低下 |
妊娠初期の強烈な眠気。 産後は細切れ睡眠による慢性的な睡眠負債。 |
| 40代〜50代 (更年期移行期) |
エストロゲン急減 自律神経の乱れ |
夜間の中途覚醒が増え、日中の倦怠感を伴う眠気が増加。うつ症状との鑑別も必要。 |
女性ヘルスケア医のアドバイス
「更年期の入り口、いわゆるプレ更年期の世代の方で『最近急に眠くなった』と来院される方は非常に多いです。夜は寝ているつもりでも、ホルモンの乱れにより『微小覚醒(脳だけが何度も起きている状態)』が起きていることがあります。婦人科でホルモン補充療法(HRT)や漢方薬の処方を受けることで、睡眠の質が劇的に改善し、日中の霧が晴れたようになるケースも珍しくありません」
眠気の裏に潜む「身体の病気」:女性に多い疾患を解説
ホルモンバランス以外にも、女性に多く見られる内科的な疾患が、頑固な眠気の原因となっていることがあります。「怠け」ではなく、治療が必要な「身体の病気」である可能性を疑ってみましょう。
【甲状腺機能低下症(橋本病)】だるさとむくみを伴う眠気
甲状腺ホルモンは、身体の新陳代謝を活発にするアクセルのような役割を果たしています。このホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症(橋本病など)」は、圧倒的に女性に多い疾患です(男女比は1:10とも言われます)。
アクセルが効かなくなるため、身体中の機能がスローダウンし、常にエネルギー不足の状態になります。その結果、どれだけ寝ても取れない強い眠気、全身の倦怠感、寒がりになるといった症状が現れます。更年期障害やうつ病と症状が似ているため、誤診されやすいのも特徴です。
▼甲状腺機能低下症の主な症状チェックリスト
以下の症状に3つ以上当てはまる場合は、内科での血液検査をおすすめします。
- 常に眠く、やる気が出ない
- 以前より寒がりになった(夏でも冷える)
- 皮膚が乾燥してカサカサする
- 食事量は増えていないのに体重が増える
- 顔や手足がむくみやすい(特に朝)
- 声が低くなった(嗄声)
- 便秘がちになった
- 髪の毛が抜けやすい
【鉄欠乏性貧血】脳の酸欠が引き起こす倦怠感と眠気
月経のある女性の多くが、潜在的な鉄分不足の状態にあります。鉄分は、血液中のヘモグロビンを作り、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
鉄分が不足すると、脳に十分な酸素が行き渡らず、酸欠状態になります。脳は酸素消費量を減らして守ろうとするため、活動レベルを下げ、結果として眠気やあくび、集中力の低下を引き起こします。健康診断の「ヘモグロビン値」が正常範囲内でも、貯蔵鉄である「フェリチン」が不足している『隠れ貧血』の場合、同様の症状が出ることがあります。
【低血圧・起立性調節障害】朝起きられない、午前中の強い眠気
一般的に低血圧自体は病気ではありませんが、血圧が低すぎると脳への血流が不十分になり、午前中を中心に強い眠気や立ちくらみを感じることがあります。
また、自律神経の調節がうまくいかず、立ち上がった時に血圧が維持できない「起立性調節障害」も、思春期から若年成人の女性に見られます。朝起き上がることが極端に困難で、午前中は頭が働かず眠気が強い一方で、午後から夜にかけて元気になるのが典型的なパターンです。
認定内科医のアドバイス
「一般的な健康診断では、ヘモグロビンの値しか測定しないことが多く、貯蔵鉄である『フェリチン』の不足が見逃されがちです。フェリチン値が50ng/ml以下だと、だるさや眠気、メンタルの不調が出やすくなります。もし健診結果が『A判定』でも不調が続くなら、内科で『フェリチンも測ってください』と相談してみることを強くお勧めします」
専門治療が必要な「睡眠障害」:いびきや発作的な眠気
ここまでは内科的な疾患を見てきましたが、睡眠そのもののメカニズムに異常が生じる「睡眠障害」も、眠気の大きな原因です。専門的な検査と治療が必要な分野です。
【睡眠時無呼吸症候群(SAS)】「女性はいびきをかかない」は誤解
睡眠中に気道が塞がり、呼吸が何度も止まってしまう病気です。大きないびきとともに呼吸停止を繰り返すため、脳が酸欠状態になり、深い睡眠が得られません。その結果、日中に強烈な眠気に襲われます。
「太った男性の病気」というイメージが強いですが、実は女性にも少なくありません。特に閉経後は、気道の筋肉の緊張を保つ女性ホルモンの減少により、発症率が急上昇します。また、女性は男性に比べて「顎が小さい(小顔)」人が多く、肥満でなくても舌が落ち込んで気道を塞ぎやすい傾向があります。
- 女性のSASの特徴: いびきは男性ほど大きくないことがある、頭痛や肩こり、夜間頻尿といった症状が前面に出やすい。
【ナルコレプシー・特発性過眠症】会話中や食事中に落ちる眠気
脳の覚醒を維持する神経オレキシンの機能不全などが原因で起こる中枢性の過眠症です。
- ナルコレプシー: 日中に耐え難い眠気発作が起き、会話中や食事中など通常あり得ない状況で眠り込んでしまいます。笑ったり驚いたりした時に力が抜ける「情動脱力発作」を伴うことがあります。
- 特発性過眠症: ナルコレプシーと似ていますが、情動脱力発作はなく、一度眠ると長時間起きられず、目覚めた後も「寝ぼけ状態(睡眠酩酊)」が長く続くのが特徴です。
【むずむず脚症候群(周期性四肢運動障害)】睡眠の質を下げる足の違和感
夕方から夜にかけて、脚の内部に「虫が這うような」「炭酸が通るような」不快な感覚が現れ、脚を動かさずにはいられなくなる病気です。この不快感で寝付きが悪くなるほか、睡眠中も無意識に脚がピクピクと動く(周期性四肢運動)ことで脳が覚醒し、熟睡感が損なわれます。鉄分不足が関与していることが多く、女性に多い疾患の一つです。
▼ナルコレプシーと特発性過眠症の症状比較表
| 特徴 | ナルコレプシー | 特発性過眠症 |
|---|---|---|
| 眠気の強さ | 強烈で抗えない発作的眠気 | 持続的でしつこい眠気 |
| 居眠りの長さ | 10〜20分と短く、起きるとスッキリする | 1時間以上と長く、起きてもスッキリしない |
| 情動脱力発作 | あり(笑うと膝がカクンとなる等) | なし |
| 夜間の睡眠 | 分断されやすく、熟睡できない | 長時間ぐっすり眠る(10時間以上など) |
睡眠専門医のアドバイス
「女性の睡眠時無呼吸症候群は、いびき音よりも『朝起きた時の頭痛』や『夜中にトイレに起きる』といった症状で受診され、検査で発覚するケースが多いです。『夫にいびきを指摘されたことがないから大丈夫』と思い込まず、日中の眠気と疲労感が続く場合は、睡眠外来での簡易検査(自宅でできます)を検討してみてください」
「心の疲れ」が原因の場合:ストレスとメンタルヘルス
睡眠とメンタルヘルスは表裏一体の関係にあります。心の不調が最初に「睡眠の異常」として現れることは非常に一般的です。
うつ病・適応障害の初期症状としての「過眠」
うつ病というと「不眠」のイメージが強いですが、実は「過眠」も重要なサインです。特に若年層や女性では、現実逃避的な側面も含め、過眠症状を呈することが少なくありません。ストレスフルな環境(職場や家庭)から離れるために、脳が強制的にシャットダウンしようとしている状態とも捉えられます。
「非定型うつ病」の特徴:楽しい時は元気だが、過食・過眠が出る
20代〜30代の女性に増えているのが「非定型うつ病」です。従来のうつ病(定型うつ病)が「何をしても楽しくない、不眠、食欲不振」となるのに対し、非定型うつ病は以下のような特徴があります。
- 気分の反応性: 好きなことや楽しいイベントがある時は気分が明るくなる。
- 過眠: 1日10時間以上寝てしまう。
- 過食: 特に甘いものを欲しがり、体重が増加する。
- 鉛様麻痺: 手足が鉛のように重く感じる。
「わがまま」「気分屋」と誤解されやすく、本人も苦しむことが多い病態です。
自律神経失調症と睡眠リズムの乱れ
ストレスや過労により交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなると、夜になっても身体がリラックスできず(交感神経優位)、逆に日中に副交感神経が優位になって眠くなるといった、リズムの逆転現象が起こります。めまい、動悸、頭痛などを伴う場合、自律神経のバランス調整が必要です。
心療内科医のアドバイス
「ストレス性の眠気、いわゆる『仮面うつ』の可能性も考慮してください。本人は『心は元気だ』と思っていても、身体だけが正直に反応して『もう無理だ、休ませてくれ』と眠気を起こしていることがあります。特に、休日に泥のように眠って平日なんとか動いている状態は、心のエネルギーが枯渇する寸前のサインかもしれません」
【保存版】何科に行くべき?症状別・受診ガイド
ここまで様々な原因を見てきましたが、読者の皆様が一番悩むのは「結局、私は何科に行けばいいの?」という点ではないでしょうか。適切な診療科を選ぶことは、早期解決への近道です。
迷ったらまずはここ!症状別フローチャート
ご自身の症状に最も当てはまる項目を選び、受診先の目安にしてください。
| 主な症状・特徴 | おすすめの診療科 |
|---|---|
| いびきがある / 呼吸が止まると言われる / 肥満傾向 | 睡眠外来 / 呼吸器内科 |
| 生理周期で眠気が変動 / 生理不順 / ほてり・発汗 | 婦人科 / 女性外来 |
| 寒がり / むくみ / 立ちくらみ / 氷をガリガリ食べたい | 一般内科 / 甲状腺科 |
| 気分が落ち込む / ストレスが強い / 楽しい時は元気 | 心療内科 / 精神科 |
| 会話中に落ちる / 脚がむずむずする / 金縛りが多い | 睡眠外来 / 精神科 |
婦人科で相談すべきケース(PMS、更年期症状が強い場合)
眠気だけでなく、生理痛、月経前のイライラ、ホットフラッシュなどの婦人科系症状が強く出ている場合は、迷わず婦人科へ行きましょう。低用量ピルや漢方薬、ホルモン補充療法によってホルモンバランスを整えることで、嘘のように眠気が改善することがあります。
一般内科・甲状腺科で相談すべきケース(むくみ、冷え、貧血症状)
「だるい」「寒い」「むくむ」といった全身症状がある場合は、まずは内科で血液検査を受けましょう。甲状腺ホルモン値(TSH, FT3, FT4)や、貧血の指標(Hb, フェリチン)を確認することで、隠れた疾患をスクリーニングできます。
睡眠外来・心療内科で相談すべきケース(いびき、生活に支障が出るレベル)
いびきや無呼吸の指摘がある場合、あるいは「とにかく眠くて仕事にならない」という場合は、睡眠専門外来(スリープクリニック)がベストです。一泊入院して脳波や呼吸状態を詳しく調べる「終夜睡眠ポリグラフィ検査(PSG)」などを行い、正確な診断を下すことができます。
受診時に医師に伝えるべき5つのポイントメモ
限られた診察時間で正確な診断を引き出すために、以下の情報をメモして持参することをお勧めします。
- どんな時に眠くなるか(例:食後、会議中、運転中、常に)
- 睡眠の状況(就寝・起床時刻、中途覚醒の有無、いびきの有無)
- 眠気以外の身体症状(だるさ、むくみ、頭痛、生理不順など)
- 生活環境の変化やストレス(仕事の変更、家庭の悩みなど)
- 現在服用している薬やサプリメント
現役医師のアドバイス
「『いつから眠いのか』『どの程度眠いのか』を客観的に伝えるために、受診前の1〜2週間程度、簡単な『睡眠日誌』をつけてきていただけると非常に助かります。寝た時間、起きた時間、日中の眠気の強さを記録したメモがあるだけで、診断の精度が格段に上がります」
今日からできる!眠気を解消・軽減するためのセルフケア
受診の予約を待つ間や、病気ではないけれど眠気が気になる場合に、日常生活で実践できる対策をご紹介します。基本は「夜の質を上げ、昼の覚醒を促す」ことです。
睡眠の「質」を高める夜の習慣(入浴、スマホ断ち、光環境)
- 深部体温のコントロール: 寝る90分前に入浴(40度程度のぬるま湯)し、一時的に体温を上げます。その後、体温が下がっていくタイミングで自然な眠気が訪れます。
- デジタルデトックス: スマホやPCのブルーライトは、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑制してしまいます。就寝1時間前は画面を見ない習慣をつけましょう。
- 朝の光を浴びる: 起床直後にカーテンを開けて太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされ、約15〜16時間後に再び眠気が来るようにセットされます。
日中の眠気を飛ばす「パワーナップ(積極的仮眠)」の正しいやり方
日中の眠気に抗うのが辛い時は、戦略的な仮眠「パワーナップ」が有効です。
- タイミング: 午後12時〜15時の間。
- 時間: 15分〜20分以内(30分以上寝ると深い睡眠に入り、起きた後にダルくなるため)。
- コツ: 仮眠直前にカフェイン(コーヒーや緑茶)を摂取しておくと、起きる頃(約20分後)に覚醒効果が現れ、スッキリと目覚められます。
食事と栄養:血糖値スパイクを防ぐ食べ方と鉄分補給
ランチ後に強烈な眠気が来る場合、「血糖値スパイク」が疑われます。糖質(炭水化物)を一気に摂ると血糖値が急上昇し、その反動で急降下する際に低血糖状態のような眠気が生じます。
「野菜→タンパク質→炭水化物」の順で食べるベジファーストを心がけ、よく噛んで食べましょう。
また、鉄分不足解消のために、赤身の肉、魚、小松菜、納豆などを積極的に摂りましょう。ビタミンCと一緒に摂ると吸収率がアップします。
眠気覚ましのツボとストレッチ
デスクワーク中に眠くなった時は、以下のツボ押しが効果的です。
- 合谷(ごうこく): 親指と人差し指の骨が交わる部分のくぼみ。
- 風池(ふうち): 首の後ろ、髪の生え際のくぼみ。
また、椅子に座ったまま背伸びをしたり、肩甲骨を寄せるストレッチを行うことで、脳への血流を促し覚醒レベルを上げることができます。
よくある質問(FAQ)
最後に、診察室で患者さんからよく受ける質問にお答えします。
Q. 眠気がひどい時、市販の眠気覚ましドリンクを飲み続けても平気?
一時的な対策としては有効ですが、常用は避けてください。多くのドリンクには大量のカフェインが含まれており、飲み続けると耐性がついて効かなくなるだけでなく、カフェイン依存や、夜間の睡眠の質を低下させる原因になります。あくまで「どうしても」という時の緊急手段と考えてください。
Q. 休日にお昼まで寝てしまう「寝だめ」は効果がある?
残念ながら、「寝だめ」で睡眠を貯金することはできません。休日に昼まで寝てしまうと、体内時計が後ろにずれ込み、日曜の夜に眠れなくなり、月曜の朝が辛くなる「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」を引き起こします。
休日の起床時間は、平日の起床時間+2時間以内(平日7時起きなら9時まで)に留めるのが、翌週のパフォーマンスを維持するコツです。
Q. 夫や職場に「怠けている」と誤解されないための伝え方は?
「眠い」という主観的な言葉だけでなく、客観的な事実や専門家の言葉を借りて伝えると理解が得られやすいです。例えば、「最近、睡眠時間は取れているのに会議中に意識が飛ぶことがあり、医師に相談したらホルモンバランス(または睡眠障害)の影響かもしれないと言われた」と具体的に説明しましょう。
産業医のアドバイス
「職場での居眠りは評価に関わるデリケートな問題です。もし病気が疑われる場合は、診断書をもらい、上司や人事担当者に相談することをお勧めします。診断書があれば、それは『怠慢』ではなく『健康管理上の配慮が必要な状態』として扱われ、通院時間の確保や業務量の調整などの配慮を受けられる可能性があります。一人で抱え込まず、まずは産業医や保健師に相談するのも良い方法です」
まとめ:眠気は身体からの重要なサイン。一人で抱え込まず専門家に相談を
「寝ても寝ても眠い」という症状は、決してあなたの「気合」の問題ではありません。
ここまで解説してきたように、そこには女性特有のホルモンの変化や、甲状腺の病気、睡眠障害、そして心の疲れなど、医学的に説明できる原因が潜んでいる可能性が高いのです。
【記事の要点まとめ】
- まずは「エップワース眠気尺度」などの客観的指標で自分の状態を知る。
- 生理前や更年期など、女性ホルモンの変動時期は眠気が強くなりやすい。
- 甲状腺機能低下症や鉄欠乏性貧血など、女性に多い「隠れ疾患」を疑う。
- いびきや発作的な眠気がある場合は、睡眠専門外来の受診を検討する。
- 生活習慣を整えても改善しない場合は、迷わず医療機関へ。
もし、この記事を読んで「自分のことかもしれない」と思い当たる節があれば、ぜひ一歩踏み出して、専門家に相談してみてください。かかりつけの内科でも、婦人科でも構いません。「眠いだけで病院なんて…」と遠慮する必要は全くありません。
原因がわかれば、必ず対処法があります。あなたが本来の元気を取り戻し、スッキリとした頭で毎日を過ごせるようになることを、心から願っています。
今日から始めるアクション
まずは今夜、以下の3つを意識してみてください。
- 寝る1時間前にスマホを手放す
- 明日の朝、カーテンを開けて太陽の光を浴びる
- 受診が必要か迷ったら、このページのフローチャートを見直す
小さな変化が、やがて大きな「目覚め」につながります。
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