深海のアイドルとして不動の人気を誇るメンダコ。その愛くるしい姿をSNSや動画で見かけ、「自宅の水槽で飼ってみたい」「一度でいいから生きて泳いでいる姿を見てみたい」と願う方は非常に多いのではないでしょうか。
しかし、結論から申し上げますと、メンダコの個人飼育は事実上不可能です。これは設備投資の額の問題だけではなく、彼らの生物としての構造があまりにも特殊で、現在の飼育技術をもってしても長期生存が極めて困難だからです。
ですが、絶望する必要はありません。彼らの生態を正しく理解し、適切な「時期」と「場所」さえ選べば、水族館で奇跡的に生きている姿に出会うことは十分に可能です。
この記事では、元水族館飼育員である筆者が、以下の3点を中心に徹底解説します。
- 元飼育員だからこそ知る「メンダコが飼えない」衝撃的な理由と、儚い生態の真実
- 生きたメンダコに会える確率が最も高い水族館3選と、狙い目の時期(1月〜3月)
- 水族館での観察マナーと、飼えない代わりの楽しみ方
読み終える頃には、メンダコへの愛がより深まり、次の休日に水族館へ足を運びたくなるはずです。それでは、深海の神秘的な世界へご案内します。
深海のアイドル「メンダコ」とは?タコに見えない3つの特徴
まずは、メンダコという生物の基本情報について、その特殊性を深掘りしていきましょう。私たちが普段食卓で目にするマダコやミズダコとは、姿形も生き方も全く異なります。彼らがなぜ「深海のアイドル」と呼ばれるのか、その生物学的なユニークさを解説します。
元水族館飼育員のアドバイス
「メンダコはタコの仲間ですが、実は『墨袋』を持っていません。通常、タコやイカは外敵から逃げるために墨を吐きますが、光の届かない真っ暗な深海では、墨による目くらましがあまり効果的ではないため、進化の過程で退化したと考えられています。その代わり、彼らは海底の泥に擬態したり、ひっそりと身を潜めたりする『隠密行動』に特化した生存戦略をとっているのです」
UFOのような「扁平」な体と「耳」の正体
メンダコの最大の特徴は、なんといってもそのUFOのような平たいフォルムです。通常のタコのように頭(正しくは胴部)が丸く盛り上がっておらず、海底にペタリと張り付くような形状をしています。これは、深海の海底で水の抵抗を受けずに安定して鎮座するため、そして泥に紛れて外敵から身を守るために適した形だと考えられています。
そして、頭の上部には「耳」のように見える2つの突起があります。これはもちろん音を聞くための耳ではなく、「ヒレ」です。このヒレは非常に重要な役割を持っており、パタパタと動かすことでバランスを取ったり、ゆっくりと遊泳したりする際の舵取り役を果たしています。このヒレが犬の耳のように見えることから、海外では「Japanese pancake devilfish(日本のパンケーキのような悪魔の魚)」という、可愛らしいのか恐ろしいのか分からない名前で呼ばれることもあります。
また、彼らの足(腕)は8本ありますが、それぞれの腕の間に「傘膜(さんまく)」と呼ばれる膜が広く張っており、腕を広げるとまるでパラシュートやスカートのような形状になります。この膜も、彼らの独特な移動方法に大きく関わっています。
パラシュートのように泳ぐ独特の移動方法
メンダコは、通常のタコのように漏斗(ろうと)から海水を勢いよく噴射してジェット推進で泳ぐことはあまり得意ではありません。漏斗自体は持っていますが、遊泳力は非常に弱いです。
その代わりに、彼らは「クラゲ」のように泳ぎます。先ほど触れた腕の間の「傘膜」を大きく広げたり閉じたりすることで水を押し、その反動でフワフワと海中を漂うのです。さらに、頭上の耳のようなヒレをパタパタと羽ばたかせることで、微調整を行いながら上昇や下降を繰り返します。
この姿は、深海の暗闇の中を飛行する未確認飛行物体のようでもあり、そのユーモラスで優雅な動きこそが、多くの人々を魅了する最大の理由でしょう。水族館の水槽で、彼らが底からふわりと舞い上がった瞬間は、来館者から一斉に歓声が上がるハイライトシーンです。
> GIF here|メンダコがパタパタと泳ぐ様子のGIFアニメーション
生息深度200m〜1000m!過酷な深海の環境
メンダコが暮らしているのは、水深200メートルから1000メートル付近の深海です。この場所は、太陽の光がほとんど届かない暗黒の世界であり、水温は常に10度以下(多くは4〜8度程度)という極寒の環境です。
さらに、ここには凄まじい「水圧」がかかっています。水深200メートルでは指先に約20キログラム、1000メートルでは約100キログラムもの圧力がかかる計算になります。私たち人間が生身で放り出されればひとたまりもありませんが、メンダコはこの高水圧に適応した体を持っています。彼らの体は水分を多く含み、プルプルとしたゼラチン質で構成されています。体内に空洞(浮袋など)を持たず、体液と海水の密度を近づけることで、この強烈な圧力に押しつぶされることなく生活しているのです。
この「深海仕様」の体こそが、地上(水族館や家庭)での飼育を困難にしている最大の要因でもあります。彼らにとって、私たちの暮らす1気圧の世界は、逆に「圧力がなさすぎて体が維持できない」という異常な環境なのです。
「かわいい」だけじゃない!知られざるメンダコの意外な真実
見た目の可愛さに反して、メンダコにはあまり知られていない、少し衝撃的な「真実」がいくつか存在します。ここでは、ペルソナの皆様が抱く「かわいい」というイメージとのギャップをご紹介しましょう。生物としてのリアルな側面を知ることで、より深い興味を持っていただけるはずです。
実は「シンナー臭い」?強烈な体臭の秘密
これは水族館の展示水槽越しでは絶対に分からない事実ですが、生のメンダコは非常に強烈なにおいがします。具体的には、「シンナー」や「ペンキ」のような化学薬品系の刺激臭に近いと言われています。
元水族館飼育員のアドバイス
「底引き網漁の船上で網が引き揚げられると、メンダコが入っているかどうかは臭いで分かると言われるほどです。この独特の臭いは、彼らの体に含まれる成分によるものだと言われています。一説には、深海という環境で浸透圧調整を行うための物質や、外敵に『自分は美味しくないぞ』とアピールするための防御物質ではないかと考えられていますが、あの可愛らしい見た目からは想像もつかない激臭であることは間違いありません」
もし家庭で飼育できたとしても、水槽の水換えのたびに部屋中にシンナーのような臭いが充満することを覚悟しなければならないでしょう。この点だけでも、ペットとしての適性は低いと言わざるを得ません。
寿命は極端に短い?謎に包まれた生態
メンダコの寿命については、正確な年数はまだ解明されていませんが、非常に短いと考えられています。一般的なタコの寿命が1年から数年程度であるのに対し、メンダコも同様か、あるいはもっと短い可能性があります。
水族館での飼育記録を見ても、その短命さは明らかです。採集されてから水族館に搬入され、展示水槽で生存できる期間は、数日から数週間というケースがほとんどです。1ヶ月生きれば「長期飼育」と称賛される世界であり、数ヶ月単位で展示が続くことは極めて稀な「奇跡」と言えます。
彼らは一生に一度だけ繁殖を行い、卵を守りながら死んでいくのではないかと推測されていますが、そのライフサイクルの全容は謎に包まれています。水族館で見られるメンダコは、まさにその短い命の最後の輝きを放っている瞬間なのです。
漁師も捨てる?食用には向かない「味」の評判
「タコなのだから、食べたら美味しいのではないか?」と考える方もいるかもしれません。しかし、メンダコは食用としては全く流通していません。その理由は単純で、「非常にまずい」からです。
先述したシンナーのような臭いが身に移っていることに加え、水分が多すぎて身がベチャベチャしており、通常のタコのようなプリプリとした食感は皆無です。煮ても焼いてもゴムのような、あるいは崩れたゼリーのような食感になり、味も塩辛さと薬品臭さが混じったような味だと言われています。
そのため、深海底引き網漁を行う漁師さんたちの間では、網に入っても売り物にならない「厄介者」扱いをされてきました。かつては海へそのまま捨てられていたメンダコですが、近年の水族館ブームと深海生物人気によって、展示用として大切に扱われるようになったという経緯があります。
「家で飼いたい」あなたへ。飼育が絶望的に難しい現実的な理由
さて、ここからが本題の一つである「飼育」についてです。SNSや動画でメンダコを見て、「家で飼いたい!」と強く願う気持ちは痛いほど分かります。しかし、プロの元飼育員として、心を鬼にして真実をお伝えしなければなりません。メンダコを一般家庭で飼育することは、100%不可能に近いです。
なぜそこまで言い切れるのか。その理由は、単に「水温を冷やせばいい」というレベルの話ではないからです。ここでは、その絶望的な難易度の理由を3つの観点から解説します。
理由1:わずかな刺激で「溶ける」ほどデリケートな皮膚
メンダコの皮膚は、想像を絶するほどデリケートです。彼らの体は深海の高水圧環境下で形状を保つようにできており、筋肉の繊維も非常に緩やかです。そのため、網にかかって引き揚げられる際の網との摩擦、あるいは他の魚との接触だけで、皮膚がボロボロに剥がれてしまいます。
【現場の裏話】輸送中に起きた悲劇
私が現役時代、底引き網漁船に乗船してメンダコの採集を行った時のことです。深海から網を引き揚げ、選別台の上に広げられた魚たちの中にメンダコを見つけました。急いで海水を入れたバケツに移そうとしましたが、手で優しく持ち上げただけで、その重みで彼らの皮膚がズルリと剥け、まるでスライムのように指の間から崩れ落ちそうになったのです。
彼らは地上(1気圧)の世界では、自分の体重さえ支えることができません。水の中に入れてあげなければ、自重で組織が崩壊してしまうのです。船の揺れでバケツの壁にぶつかるだけでも致命傷になります。そのため、輸送中は個別にビニール袋に入れ、さらにその袋を衝撃吸収材で包み、水温を5度以下に保ちながら、振動を与えないように運ぶという、新生児を運ぶ以上の慎重さが求められました。それでも、水族館に到着するまでに半数は弱ってしまうのが現実でした。
家庭の水槽に移す際、網ですくうことさえ彼らにとっては致命傷となり得ます。この「物理的な脆さ」が、飼育の第一関門にして最大の壁なのです。
理由2:深海環境(水温・暗闇・水圧)の再現にかかる莫大なコスト
仮に、奇跡的に無傷で自宅まで運べたとしましょう。次に立ちはだかるのは環境維持の壁です。
- 水温管理: メンダコの適水温は5度〜10度前後です。通常の熱帯魚用ヒーターは不要ですが、逆に強力な水槽用クーラー(チラー)が必須となります。夏場の日本で水を5度に保つには、業務用の高性能クーラーが必要で、電気代だけでも月数万円単位になります。
- 完全遮光: 彼らは深海の暗闇に適応しており、強い光はストレスどころか、目を傷つけ、死期を早める原因になります。鑑賞するためにライトを当てることは許されず、常に暗幕で覆った水槽を用意する必要があります。「飼っているのに姿が見えない」という矛盾が生じます。
- 水質の維持: 低水温ではバクテリアの活動が鈍るため、生物ろ過(アンモニアの分解)が機能しにくくなります。頻繁な水換えが必要ですが、水換えによる水質・水温の変化ショックでメンダコは死んでしまいます。
水族館では、数千万円〜数億円規模の設備で深海環境を再現していますが、それでも長期飼育は困難です。家庭用の設備でこれを再現することは、物理的にも経済的にも非現実的です。
理由3:何を食べるか不明確?確立されていない餌付け技術
そして、飼育員を最も悩ませるのが「餌」の問題です。自然界でメンダコが具体的に何を食べているのか、完全には解明されていません。解剖の結果、小型の甲殻類(ヨコエビなど)を食べていることは分かっていますが、水槽内でそれを再現して食べさせるのは至難の業です。
元水族館飼育員のアドバイス
「バックヤードでの餌やりは、まさに根気との戦いでした。メンダコは警戒心が強く、人が見ている前ではまず餌を食べません。私たちは真っ暗な部屋で、赤外線カメラ越しに様子を観察しながら、生きたヨコエビやサクラエビをピンセットで口元へ運びます。しかし、ほとんどの場合は無視されるか、驚いて逃げてしまいます。食べたとしても、消化能力が落ちていてそのまま衰弱してしまうことも珍しくありません。プロが24時間体制で挑んでも、『餌を食べてくれること』自体が稀なイベントなのです」
「何を食べるか分からない」「食べさせ方が分からない」生き物を飼うことは、その生き物を餓死させることと同義です。これが、私がメンダコの個人飼育を絶対に勧めない最大の倫理的理由です。
【202X年版】生きたメンダコに会える確率が高い水族館3選
ここまで「飼えない」理由を並べてきましたが、悲観することはありません。日本には、世界でもトップクラスの深海生物飼育技術を持つ水族館があります。そこへ行けば、プロの手によって大切に管理された、生きたメンダコに出会える可能性があります。
ここでは、過去の展示実績と技術力から、メンダコ遭遇率が特に高い「聖地」とも呼べる3つの水族館を厳選してご紹介します。
聖地・沼津港深海水族館(静岡県)|圧倒的な展示実績
メンダコと言えばここ、と言っても過言ではないのが静岡県沼津市にある「沼津港深海水族館」です。日本一深い湾である駿河湾の目の前に位置し、地元の底引き網漁師さんとの強力なコネクションを持っています。
この水族館の最大の強みは、「捕獲から搬入までの時間の短さ」です。漁港から水族館までが極めて近いため、メンダコへの輸送ダメージを最小限に抑えることができます。そのため、状態の良い個体が搬入される頻度が日本一高く、冬のシーズン中は複数のメンダコが同時に展示されることもあります。公式ブログやSNSでの情報発信も活発なので、訪問前のチェックは必須です。
サンシャイン水族館(東京都)|冬の「ゾクゾク深海生物」は必見
東京都池袋にある都市型水族館「サンシャイン水族館」も、メンダコ展示に非常に力を入れています。毎年冬に開催されるイベント「ゾクゾク深海生物」の期間中は、メンダコの展示に挑戦しており、過去には国内最長展示記録(76日間)を樹立した実績もあります。
都心からのアクセスが良く、仕事帰りやデートのついでに立ち寄れるのが魅力です。ただし、メンダコの状態によっては展示が中止されることもあるため、やはり当日のSNS確認は欠かせません。
新江ノ島水族館(神奈川県)|長期飼育への挑戦と研究
神奈川県の「新江ノ島水族館」は、JAMSTEC(海洋研究開発機構)と連携して深海生物の長期飼育研究を行っている、アカデミックな側面も強い水族館です。メンダコの飼育に関しても独自のノウハウを蓄積しており、特設の深海コーナーでじっくりと観察することができます。
ここでは、メンダコだけでなく、同じ深海に住む貴重な生物たちも合わせて展示されていることが多く、深海生態系全体を学ぶことができるのも大きなポイントです。
| 水族館名 | 所在地 | 特徴・強み | アクセス |
|---|---|---|---|
| 沼津港深海水族館 | 静岡県沼津市 | 遭遇率No.1 駿河湾直結で搬入状態が良好。 深海生物特化型施設。 |
JR沼津駅よりバス約15分 |
| サンシャイン水族館 | 東京都豊島区 | 飼育記録保持 過去に76日間の長期飼育に成功。 冬のイベントが充実。 |
池袋駅より徒歩約10分 |
| 新江ノ島水族館 | 神奈川県藤沢市 | 研究連携 JAMSTECとの共同研究。 詳細な解説展示が魅力。 |
小田急江ノ島線 片瀬江ノ島駅 徒歩3分 |
遭遇率を上げるために!メンダコ展示の「時期」と「確認方法」
「水族館に行けばいつでも会える」わけではありません。メンダコは季節限定の展示であり、しかもその期間は非常に短いです。せっかく遠出したのに「展示終了」の札を見て肩を落とすことがないよう、ベストな時期と確実な確認方法を伝授します。
狙い目は「1月〜3月」!海水温が下がる冬限定の理由
メンダコに会える確率は、1月から3月の冬場にピークを迎えます。これ以外の季節(春〜秋)は、ほぼ展示されていないと考えてください。
元水族館飼育員のアドバイス
「なぜ冬限定なのかというと、これは『底引き網漁』の操業期間と、海水温の関係にあります。メンダコを捕獲する底引き網漁は、多くの地域で9月から5月頃まで行われますが、水温が高い時期は、網を深海から海面へ引き上げる途中で、表層の温かい海水に触れてメンダコが弱ってしまうのです。表層の水温もしっかり下がる真冬の時期だけが、メンダコを生きたまま水族館へ運べる唯一のチャンスなのです」
また、多くの深海生物は5月頃から禁漁期に入るため、物理的に捕獲ができなくなります。したがって、ゴールデンウィークや夏休みに水族館へ行っても、メンダコには会えません。冬の寒さが厳しい時期こそが、深海生物観察のホットシーズンなのです。
「行ってみたら展示終了」を防ぐ!出発前の公式SNSチェック術
メンダコの命は非常に儚いです。「昨日までは元気だったのに、今朝急に死んでしまった」ということが日常茶飯事です。そのため、旅行ガイドブックの情報や、数日前のブログ記事をあてにしてはいけません。
出発当日の朝、必ず水族館の公式X(旧Twitter)やInstagramのストーリーズを確認してください。
各水族館の飼育スタッフは、メンダコの状態をリアルタイムで発信しています。「本日は展示を中止します」「バックヤードで静養中です」といった告知が出ている場合は、残念ながら見られません。逆に「本日搬入しました!」「元気に泳いでいます」という投稿があれば、その日がチャンスです。電話での問い合わせは業務の妨げになることもあるため、まずはSNSでの公式発表をチェックするのがマナーであり、最も確実な方法です。
> Image here|各水族館の公式X(旧Twitter)での「展示開始/終了」告知のサンプルイメージ
水族館でメンダコを120%楽しむための観察ガイドとマナー
念願叶って、水族館の水槽の中にメンダコを見つけた時。興奮して思わず駆け寄りたくなる気持ちを抑え、彼らを驚かせないように観察することが大切です。ここでは、メンダコをより深く楽しみ、かつ彼らの命を守るための観察マナーをご紹介します。
基本は「動かない」?じっくり観察するポイント
水槽の中のメンダコは、おそらく皆様が想像しているよりも「動かない」はずです。海底の岩や砂の上に、ペタリと張り付いてじっとしていることが多いでしょう。
「動かないなぁ、つまらないなぁ」と思わないでください。それこそが彼らの自然な姿なのです。じっと目を凝らして観察してみてください。
- 呼吸の動き: じっとしていても、体の一部がゆっくりと膨らんだり縮んだりして、呼吸をしている様子が分かるかもしれません。
- 目の動き: 大きな黒い目は、時折キョロリと動くことがあります。意外とこちらの様子を伺っているのかもしれません。
- 色の変化: リラックスしている時と警戒している時で、体の赤色が微妙に変化することがあります。
数分、あるいは数十分粘っていると、ふとした瞬間に「耳(ヒレ)」をパタパタさせたり、フワリと浮き上がったりするレアなシーンに出会えるかもしれません。
【厳守】フラッシュ撮影は絶対NG!メンダコを守るためのルール
ここで最も重要な警告をします。カメラやスマートフォンのフラッシュ撮影は絶対に禁止です。
元水族館飼育員のアドバイス
「深海生物にとって、カメラの強力なフラッシュは『殺人光線』にも等しいストレスです。普段真っ暗な世界に住んでいる彼らの目は光に非常に敏感で、強い光を浴びるとショック状態で死んでしまうことさえあります。また、オートフォーカス補助光(撮影前に出る赤い光や白い光)もOFFにしてください。あなたのその一枚の写真が、メンダコの寿命を縮めることになるのです」
多くの水族館では、深海生物エリアは照明を落として暗く設定されています。写真が撮りにくい環境ですが、それは生き物を守るためです。撮影する際は、必ずフラッシュが発光しない設定になっているか確認し、液晶画面の明るさも落として、ガラス面に張り付かずに少し離れて撮影するのがスマートなマナーです。
運が良ければ見られるかも?「浮遊」する瞬間の待ち方
メンダコが泳ぐ(浮遊する)瞬間を見たいなら、「給餌の時間」や「閉館間際」が狙い目かもしれません。
飼育員さんがスポイトなどで餌を与えようとするタイミングで、反応して動くことがあります。また、館内の照明がさらに暗くなる閉館間際や、人が少なくなって静かになった時間帯に、ふと活動を始めることもあります。水槽の前で騒がず、静かに気配を消して待つことが、彼らの警戒心を解き、美しい遊泳シーンを見せてもらうコツです。
飼えないならグッズで愛でよう!自宅で楽しむメンダコ
本物のメンダコを飼育することはできませんが、その愛らしさを手元に置いておく方法はあります。最近では、メンダコ人気に伴い、非常にクオリティの高いグッズや、癒やしの映像コンテンツが充実しています。飼育の苦労や罪悪感なしに、メンダコ愛を満たす方法をご提案します。
リアルさ重視?かわいさ重視?人気のぬいぐるみ・フィギュア
水族館のミュージアムショップやオンラインストアでは、多種多様なメンダコグッズが販売されています。
- リアルフィギュア: 生物学的な構造まで忠実に再現されたフィギュアは、大人のコレクションに最適です。裏側の吸盤の配列や口の位置まで精巧に作られており、観察用としても楽しめます。
- モチモチぬいぐるみ: メンダコの柔らかい質感を再現した、モチモチ素材のぬいぐるみが大人気です。抱き枕サイズのものもあり、自宅のソファに置いておけば、いつでもあのかわいいフォルムに癒やされます。
- キッチングッズ: メンダコの形をした茶こしや、吸盤を利用したスマホスタンドなど、実用的なアイテムも増えています。
これらを購入することは、水族館の運営支援や深海生物の研究費支援にも繋がります。「飼う」のではなく「グッズを集める」ことで、メンダコを応援しましょう。
癒やし効果抜群!YouTubeで見れる高画質メンダコ動画
「やっぱり動いている姿が見たい」という時は、YouTubeなどの動画サイトを活用しましょう。沼津港深海水族館やサンシャイン水族館などの公式チャンネルが、4K高画質で撮影したメンダコの遊泳動画をアップロードしています。
自宅のテレビの大画面で、部屋を暗くしてこれらの動画を流せば、そこはもうプライベート深海水族館です。BGMに環境音楽を流せば、本物を飼育するよりも遥かにリラックスできる極上の癒やし空間が完成します。餌やりの手間も、水温管理の心配もありません。これが、現代における最も賢い「メンダコとの暮らし方」と言えるでしょう。
メンダコに関するよくある質問 (FAQ)
最後に、メンダコについてよく寄せられる質問にお答えします。疑問を完全に解消して、スッキリとした気持ちで水族館へ向かいましょう。
Q. メンダコの値段はいくらですか?販売されていますか?
A. 一般には販売されていません。
稀に観賞魚ルートに乗ることがあるかもしれませんが、価格をつける以前に、輸送中に死んでしまうリスクが高すぎるため、ペットショップで売られることはまずありません。水族館同士のやり取りや、研究機関への納入が主であり、一般人が購入できる機会はないと考えてください。もし闇ルートのような場所で見かけたとしても、絶対に手を出してはいけません。100%死なせてしまうことになります。
Q. 日本以外の海外でも見られますか?
A. メンダコ(Opisthoteuthis depressa)は日本近海に多い種類です。
メンダコは主に日本の本州から九州にかけての太平洋側の深海に生息しています。海外にも似た種類の「オオメンダコ」や「ダンボ・オクトパス(ジュウモンジダコ)」などがいますが、私たちがイメージするあの赤いメンダコは、日本の水族館で見るのが世界で最も確実です。
Q. メンダコに似ている他の深海生物はいますか?
A. 「センベイダコ」などがよく間違えられます。
元水族館飼育員のアドバイス
「底引き網には、メンダコによく似た『センベイダコ』というタコも入ります。メンダコよりもさらに平べったく、まさに煎餅のような姿をしています。また、『オオメンダコ』はメンダコより一回り大きく、少しゴツゴツした印象です。水族館によってはこれらを比較展示していることもあるので、耳の形や吸盤の並び方など、マニアックな違いを見比べてみるのも面白いですよ」
まとめ:メンダコは「飼う」より「会いに行く」が正解!儚い命を目に焼き付けよう
最後までお読みいただき、ありがとうございます。メンダコの愛らしい姿の裏にある、過酷な深海環境への適応、デリケートすぎる体、そして飼育の難しさについて、ご理解いただけたでしょうか。
「飼えない」という事実は残念に感じるかもしれませんが、それは彼らが「深海という特別な場所でしか生きられない高貴な存在」であることの裏返しでもあります。だからこそ、水族館のガラス越しに出会えるあの一瞬が、何にも代えがたい貴重な体験となるのです。
元水族館飼育員のアドバイス
「私たち飼育員は、メンダコの命を1日でも長く繋ぐために、毎日必死で水槽と向き合っています。それは、お客様に『かわいい』と言ってもらうためだけでなく、まだ謎に包まれた彼らの生態を解明し、未来へ繋ぐためでもあります。水族館でメンダコを見かけたら、その向こう側にいるスタッフの努力と、何より懸命に生きているメンダコの生命力に、心の中で拍手を送っていただければ幸いです」
さあ、冬のシーズンはすぐそこです。今度の休日は、以下のチェックリストを確認して、深海のアイドルに会いに行きませんか?
- [ ] 今は1月〜3月の「メンダコシーズン」ですか?
- [ ] 出発当日の朝、水族館の公式SNSで「展示中」であることを確認しましたか?
- [ ] カメラのフラッシュ設定は「OFF」になっていますか?
- [ ] 飼えない代わりに、お気に入りのメンダコグッズをお迎えする準備はできていますか?
水槽の中でパタパタと泳ぐ彼らの姿は、きっとあなたの心に深く残り、忘れられない思い出になるはずです。ぜひ、その目で「深海の奇跡」を目撃してください。
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