不動産の売買や相続、会社の設立や銀行口座の開設など、人生やビジネスの重要な局面で突然必要になるのが「登記簿謄本(登記事項証明書)」です。「急いで取得しなければならないのに、法務局に行く時間がない」「種類が多くてどれを選べばいいかわからない」と焦ってしまう方は少なくありません。
結論から申し上げますと、登記簿謄本の取得は、わざわざ法務局の窓口に並ぶ必要はありません。手数料が最も安く、24時間いつでも申請可能な「オンライン請求」を利用するのが賢い選択です。また、申請時に迷いがちな書類の種類についても、基本的には「全部事項証明書」を選んでおけば、ほぼすべてのケースで問題なく受理されます。
本記事では、長年にわたり登記実務に携わってきた現役の司法書士が、初めての方でも迷わず最短で登記簿謄本を取得できるよう、以下の3つのポイントを中心に徹底解説します。
- 目的別・絶対に失敗しない「登記簿謄本(登記事項証明書)」の正しい種類の選び方
- 手数料が最大120円安くなり、移動時間もゼロになる「オンライン請求」の具体的な操作手順
- 手元に届いた不動産・法人登記簿の正しい見方と、知っておくべき専門用語のやさしい解説
この記事を読みながら操作を進めれば、デスクから一歩も動くことなく、必要な書類を確実に手配することができます。専門用語の壁を取り払い、誰でもスムーズに手続きができるようサポートしますので、ぜひ最後までお付き合いください。
登記簿謄本(登記事項証明書)とは?知っておくべき基礎知識
「銀行から『登記簿謄本』を出してくださいと言われたけれど、ネットで調べると『登記事項証明書』という言葉ばかり出てきて混乱している」。これは、私が実務の現場で頻繁に耳にする相談です。まずは、この用語の違いや、そもそも登記簿とはどのようなものなのか、その基礎知識を整理しておきましょう。ここを理解しておくと、申請時のミスを大幅に減らすことができます。
現役司法書士のアドバイス
「私たち専門家の間でも、会話の中ではいまだに『謄本(とうほん)』と呼ぶことが一般的です。しかし、正式な書類申請の場面では『登記事項証明書』という名称を使います。言葉は違いますが、指している実体は同じですので安心してください。ただし、提出先によっては『3ヶ月以内のもの』など有効期限の指定があることがほとんどですので、取得前に必ず確認する癖をつけましょう。」
「登記簿謄本」と「登記事項証明書」の違いは?
多くの方が疑問に思う「登記簿謄本」と「登記事項証明書」の違いですが、結論から言えば「内容は同じ」ものです。この呼び方の違いは、登記所(法務局)における事務処理がコンピュータ化された歴史に由来しています。
かつて、登記情報は紙のバインダー(登記簿)に手書きやタイプライターで記載され、保管されていました。その内容を証明するために、登記官が紙の原本をコピー(謄写)し、認証印を押したものが「登記簿謄本」でした。「謄本」とは、原本の内容をすべて写した文書という意味です。
その後、法務局のIT化が進み、登記情報は磁気ディスク(データ)としてコンピュータで管理されるようになりました。このデータ化された内容を用紙に出力し、証明文を付したものが現在の「登記事項証明書」です。現在、日本全国のほとんどの法務局でコンピュータ化が完了しているため、私たちが手にするのは基本的に「登記事項証明書」となります。
しかし、長年の慣習から、銀行の担当者や不動産業者、そして私たち司法書士も、便宜上「謄本」と呼ぶことが多いのです。提出先リストに「商業登記簿謄本」と書かれていても、法務局で「登記事項証明書」を取得して提出すれば全く問題ありません。
「法人登記」と「不動産登記」の2大分類
登記簿には大きく分けて2つの種類があります。自分がどちらの情報を必要としているのかを明確にすることが、取得の第一歩です。
一つ目は「商業・法人登記」です。これは「会社(法人)」そのものに関する身分証明書のようなものです。株式会社や合同会社などの商号(会社名)、本店所在地、代表取締役の氏名・住所、資本金の額、事業の目的などが記載されています。会社設立時はもちろん、法人口座の開設、取引先との契約締結、補助金の申請などで必要となります。
二つ目は「不動産登記」です。これは土地や建物といった「不動産」に関する物理的な状況と権利関係を記録したものです。どこにどのような土地や建物があるのか(所在、面積、構造など)に加え、誰が所有しているのか、担保(住宅ローンなど)に入っているかどうかが記載されています。不動産の売買、相続手続き、住宅ローンの借り換えなどで必要になります。
オンライン請求システムでは、入り口でこの「商業・法人」と「不動産」を選択する必要がありますので、ご自身の目的を再確認しておきましょう。
誰でも取得可能?委任状やプライバシーについて
「他人の土地の登記簿を勝手に見てもいいのだろうか?」「会社の登記簿を取るのに社長の委任状は必要なのか?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。
結論をお伝えすると、登記情報は「誰でも、理由を問わず取得可能」です。登記制度の本来の目的は、権利関係を広く一般に公示(公開)することで、取引の安全を守ることにあります。もし、不動産の所有者が誰かわからなければ、安心して土地を買うことはできませんし、会社の実態がわからなければ取引を行うことができません。
そのため、取得にあたって正当な理由を説明する必要もなければ、所有者や代表者の委任状も一切不要です。窓口や郵送で請求する場合でも、請求する人の身分証明書の提示は原則として求められません(※大量請求など特殊な事情がある場合を除く)。
つまり、気になる隣の土地の所有者を調べたり、取引先の会社の役員構成を確認したりすることは、法的に認められた正当な権利なのです。ただし、取得した情報の取り扱い、特に個人情報が含まれる場合については、プライバシーの観点から慎重に扱うモラルが求められます。
【失敗しない】登記簿謄本4つの種類と選び方
登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する際、最もつまずきやすいのが「種類の選択」です。申請書やオンライン画面には「全部事項証明書」「現在事項証明書」「一部事項証明書」など似たような選択肢が並んでおり、どれを選べばよいか迷ってしまいます。
もし種類を間違えてしまうと、提出先で「これでは情報が足りないので、取り直してください」と突き返されてしまい、手数料と時間を無駄にしてしまうことになります。ここでは、ペルソナの皆様が二度手間にならないよう、正しい種類の選び方を解説します。
現役司法書士のアドバイス
「私が新人補助者だった頃、上司から『この土地の謄本を取ってきて』と頼まれ、何も考えずに『現在事項証明書』を取得したことがあります。しかし、その案件は過去の抵当権を調査する必要があり、履歴が載っていない現在事項証明書では役に立ちませんでした。結局、自腹で『全部事項証明書』を取り直す羽目になりました。皆様にはそのような無駄な出費をしてほしくありません。迷ったら『全部』を選ぶ、これが鉄則です。」
結論:迷ったら「全部事項証明書」を選べば9割OK
種類の選択で迷った時の結論は非常にシンプルです。「全部事項証明書(法人の場合は履歴事項全部証明書)」を選択してください。これが最も情報量が多く、過去から現在に至るまでの経緯が網羅されている「万能な証明書」だからです。
提出先が特定の指定をしていない限り、全部事項証明書を提出して「情報が多すぎるからダメだ」と言われることはまずありません。逆に、他の種類を選んで情報が不足するリスクの方が圧倒的に高いのです。したがって、特別な事情がない限り、デフォルトで「全部事項証明書」を選ぶようにしましょう。
種類① 全部事項証明書(履歴事項全部証明書)
内容:
現在効力を持っている情報に加えて、過去一定期間(法人の場合は原則3年前の属する年の1月1日以降)の変更履歴が記載されています。例えば、不動産であれば過去の所有者の移転経緯や、抹消されたローンの情報などが確認できます。法人の場合、過去の役員や商号変更の履歴も載っています。
用途:
不動産売買、賃貸借契約、相続、住宅ローン審査、法人の口座開設、許認可申請、契約締結時の相手方調査など、ビジネスや生活のあらゆる場面で利用される最もスタンダードな証明書です。
種類② 現在事項証明書
内容:
その名の通り、「現時点で効力がある情報のみ」が記載されています。過去に誰が所有していたか、以前の商号は何だったか、といった履歴情報はカットされています。
用途:
現在の会社役員構成だけを証明したい場合や、現在の不動産所有者だけを確認したい場合など、情報をシンプルに見せたい時に使われます。しかし、提出先によっては「過去の経緯が確認できない」として受理されないケースもあるため、あえてこれを選ぶメリットは少ないと言えます。
注意点:
例えば、会社の本店移転をした直後に、移転前の住所とのつながりを証明したい場合、現在事項証明書では前の住所が載っていないため証明できません。このようなケースでは必ず「履歴事項全部証明書」が必要です。
種類③ 一部事項証明書・閉鎖事項証明書
これらは特殊な事情がある場合にのみ取得するものです。
一部事項証明書:
登記記録の情報量が膨大な場合に、必要な部分だけを抜粋したものです。例えば、大規模なマンションの敷地権付き区分建物で、自分の部屋の情報だけが必要な場合や、会社で支店の情報だけが必要な場合などに使われます。
閉鎖事項証明書(閉鎖謄本):
データの閉鎖(情報の抹消や移転など)が行われた、過去の記録です。建物を取り壊した(滅失登記)、会社を清算した、あるいはコンピュータ化される前の古い手書きの情報を確認したい場合に取得します。相続で数代前の権利関係を遡って調査する場合や、歴史的な土地の利用状況を調べる際などに必要となります。
▼ クリックで展開:目的別・種類の選び方フローチャート
ご自身の状況に合わせて、以下の質問に答えてみてください。
- Q1. 過去に存在した会社や、取り壊された建物の情報が必要ですか?
- Yes → 「閉鎖事項証明書」
- No → Q2へ
- Q2. マンションの特定の部屋や、会社の支店など、一部の情報だけで十分ですか?
- Yes → 「一部事項証明書」
- No → Q3へ
- Q3. 現在の情報だけでなく、過去の経緯(前の住所や役員など)も必要ですか? または、よくわからないので確実なものが欲しいですか?
- Yes → 「全部事項証明書(履歴事項全部証明書)」 ★推奨
- No → 「現在事項証明書」(※用途が限定的なので注意)
登記簿謄本を取る3つの方法と手数料・スピード比較
登記簿謄本を取得する方法は、大きく分けて3つあります。かつては法務局の窓口に行くのが当たり前でしたが、現在はインターネットを活用した取得方法が整備され、コストも時間も大幅に節約できるようになりました。ここでは、それぞれの方法の特徴と手数料、メリット・デメリットを比較し、なぜオンライン請求が最強の選択肢なのかを解説します。
現役司法書士のアドバイス
「私の顧問先の企業様でも、以前は総務の方が毎回タクシーを使って法務局まで行っていました。しかし、オンライン請求を導入した結果、年間で数万円単位の手数料削減と、何十時間もの業務時間短縮に成功しました。『もっと早く知っておけばよかった』という声は後を絶ちません。個人の方でも、1通取得するだけで100円以上の差が出ますから、使わない手はありません。」
方法① オンライン請求(郵送受取・窓口受取)
自宅やオフィスのパソコンからインターネット経由で申請し、取得する方法です。受け取り方は「指定の住所への郵送」か「最寄りの法務局窓口での受け取り」を選べます。
- 手数料:
- 郵送受取:500円(最安)
- 窓口受取:480円(さらに安いが、取りに行く手間がかかる)
- メリット:
- 窓口請求(600円)に比べて手数料が安い。
- 24時間申請可能(システムの稼働時間は平日8:30〜21:00だが、申請情報の作成はいつでも可)。
- 郵送受取なら、移動時間も交通費もゼロ。
- デメリット:
- 初回のみID登録などの初期設定が必要。
- 郵送の場合、手元に届くまで1〜3日程度かかる(速達オプションあり)。
方法② 法務局窓口での取得
直接、法務局(登記所)に出向いて申請書を記入し、その場で受け取る従来の方法です。
- 手数料: 600円
- メリット:
- 申請から10〜20分程度で、その場で即日入手できる。
- 申請書の書き方や不明点を係員に直接質問できる。
- デメリット:
- 手数料が最も高い。
- 平日の日中(8:30〜17:15)しか開いていない。
- 移動時間や交通費がかかる上、混雑時は待ち時間が発生する。
方法③ 郵送請求
申請書をダウンロードして記入し、返信用封筒と収入印紙を同封して法務局へ郵送する方法です。
- 手数料: 600円 + 往復の郵便料金
- メリット:
- インターネット環境がなく、法務局も遠い場合に有効。
- デメリット:
- 手間が最もかかる(切手や印紙の購入、封筒の用意)。
- 往復の郵送日数がかかるため、手元に届くまで1週間程度見ておく必要がある。
- 記入ミスがあった場合、やり取りにさらに時間がかかる。
| 比較項目 | ①オンライン請求(郵送受取) | ②法務局窓口 | ③郵送請求 |
|---|---|---|---|
| 手数料(1通) | 500円(最安) | 600円 | 600円 + 送料 |
| 取得スピード | 1〜3日(速達可) | 即日 | 1週間程度 |
| 手間・移動 | ◎ 自宅で完結 | △ 移動必須 | × 封筒・印紙準備 |
| 対応時間 | 平日8:30〜21:00 | 平日8:30〜17:15 | ポスト投函は随時 |
| おすすめ度 | ★★★★★(推奨) | ★★★(急ぎの場合) | ★ |
比較の結果、「今すぐ(数分以内に)欲しい」という緊急事態でない限り、コストと手間の両面で「オンライン請求・郵送受取」が圧倒的に優れています。次項では、このオンライン請求の具体的な手順を解説します。
【推奨】オンライン請求(かんたん証明書請求)の具体的な手順
それでは、最もおすすめである「オンライン請求」の具体的な操作手順を解説します。正式名称は「登記・供託オンライン申請システム」と言いますが、一般の方向けの簡易機能として「かんたん証明書請求」というメニューが用意されています。これを使えば、専用ソフトのインストールなどは不要で、Webブラウザだけで完結します。
お手元にパソコンをご用意の上、以下のステップに沿って進めてみてください。
現役司法書士のアドバイス
「初めてオンライン請求を行う際、多くの方がつまずくのが『ブラウザの設定』と『地番の検索』です。特にMacをお使いの方や、Chrome以外のブラウザをお使いの方は、ポップアップブロックの設定などで画面が進まないことがあります。また、住所と地番は異なるため、事前の地番調査がスムーズな申請の鍵となります。」
手順1:申請者情報の登録(ID取得)
まずは、「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」にアクセスし、申請者IDを取得します。
- 「登記・供託オンライン申請システム」のトップページを開きます。
- 「申請者情報登録」ボタンをクリックします。
- 利用規約に同意し、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、任意のIDとパスワードを入力します。
- 登録したメールアドレスに完了通知が届けば、ID登録は完了です。
このIDは一度作っておけば、次回からはログインするだけで即座に請求が可能になります。会社で利用する場合は、部署の代表メールアドレスなどで登録しておくと引継ぎが楽です。
▼ 推奨環境とブラウザ設定の注意点(クリックで展開)
オンラインシステムはセキュリティが高いため、ブラウザの設定によっては正常に動作しないことがあります。以下の点を確認してください。
- 推奨ブラウザ: Microsoft Edge(Chromium版)、Google Chrome、Firefoxなど。
- ポップアップブロック: 申請書のプレビューや納付画面が新しいウィンドウで開くため、ポップアップブロックを「許可」または「解除」する必要があります。
- 利用可能時間: 平日8:30〜21:00(土日祝日、年末年始はシステムが停止しています)。
手順2:請求書の作成と物件・会社の検索
ログイン後、「かんたん証明書請求」のメニューを選択し、欲しい登記簿を検索して請求書を作成します。
【法人の場合】
「商業・法人」タブを選択し、会社名(商号)と本店所在地で検索します。会社名は「前方一致」や「部分一致」で検索可能です。「株式会社」などの文字を含めず、特徴的な単語だけで検索するとヒットしやすくなります。検索結果から該当する会社を選び、「履歴事項全部証明書」などを選択してカートに入れます。
【不動産の場合】
「不動産」タブを選択し、物件を特定します。ここで最大の注意点は、普段私たちが使っている「住所(住居表示)」と、登記上の「地番」は異なる場合が多いということです。
- 正しい入力例: 〇〇市〇〇町一丁目 123番地4
- 間違った入力例: 〇〇市〇〇町一丁目 5番6号(これは住居表示)
地番がわからない場合は、手元の権利証(登記識別情報通知)を確認するか、法務局に電話をして「住所から地番を教えてほしい」と伝えれば無料で教えてもらえます。また、「ブルーマップ」という地図で調べることも可能です。
手順3:手数料の納付(ネットバンキング・Pay-easy)
必要な証明書をカートに入れ、「請求」ボタンを押すと、「電子納付」の案内が表示されます。以下のいずれかの方法で手数料を支払います。
- インターネットバンキング: 画面上のリンクから各銀行のサイトへ遷移し、即時決済します。
- Pay-easy(ペイジー)対応ATM: 発行された「収納機関番号」「納付番号」「確認番号」をメモし、銀行や郵便局のATMで入力して支払います。
支払いが完了すると、システム上で「納付済み」のステータスに変わります。なお、オンライン請求では領収書は発行されませんが、取引履歴やATMの利用明細が経費精算の証憑(しょうひょう)として利用可能です。
手順4:受取(郵送または窓口)
郵送受取の場合:
納付確認後、法務局から発送されます。通常は1〜3日程度で登録した住所に届きます。急ぎの場合は、実費を追加することで「速達」を指定することも可能です。普通郵便でも驚くほど早く届くことが多いですが、余裕を持って申請しましょう。
窓口受取の場合:
納付手続き完了後、指定した法務局の窓口に行き、申請番号などを伝えて受け取ります。この場合、待ち時間はほとんどありません。
法務局窓口・郵送で取得する場合の手順
「今日中にどうしても必要だ」「ネットの操作が苦手で不安だ」という方のために、従来の法務局窓口や郵送での取得手順についても要点を押さえて解説します。
全国のどこの法務局でも取得可能(交換システム)
以前は、その不動産や会社を管轄する法務局に行かなければ登記簿を取得できませんでした。しかし現在は、コンピュータ化に伴い「登記事項証明書発行請求機(交換システム)」が導入されています。
これにより、例えば「東京に居ながら、北海道の実家の土地の登記簿を取る」といったことが、最寄りの法務局で可能です。管轄を気にする必要はなく、行きやすい法務局へ行けば問題ありません。
交付申請書の正しい書き方
法務局には「登記事項証明書交付申請書」という用紙が置かれています(商業用と不動産用で用紙が分かれています)。
- 住所・氏名: 申請するあなたの情報を記入します。
- 対象の特定:
- 法人なら「商号」「本店」を正確に。
- 不動産なら「地番」「家屋番号」を正確に記入します。ここでも住居表示は使えませんので、事前に調べていくか、法務局に備え付けのブルーマップで確認しましょう。
- 種類: 「全部事項証明書」にチェックを入れます。
- 共同担保目録・信託目録: これらが必要な場合は、該当するチェックボックスにチェックを入れます。通常はチェックなしで構いませんが、金融機関からの指示がある場合は確認が必要です。
収入印紙の購入と貼り方
窓口での手数料(1通600円)は、現金ではなく「収入印紙」で支払います。法務局の中には必ず「印紙売り場」が併設されていますので、そこで必要な金額分の印紙を購入し、申請書の所定の欄に貼付します。割印(消印)は係員が行いますので、自分では押さないようにしてください。
登記簿謄本の見方とチェックポイント
無事に登記簿謄本(登記事項証明書)を取得できたら、次は内容の確認です。登記簿には独特のレイアウトと専門用語が並んでおり、どこを見ればよいか戸惑うかもしれません。ここでは、ビジネスや実務で特に重要となるチェックポイントに絞って解説します。
現役司法書士のアドバイス
「不動産登記簿を見る際、プロである私たちが真っ先に目を通すのは『乙区(おつく)』です。ここには借金の担保(抵当権)など、所有権を脅かす可能性のある権利が記載されているからです。どれだけ立派な土地でも、乙区に怪しげな権利がたくさん付いていれば、取引のリスクは跳ね上がります。まずは『甲区で誰のものか』を確認し、次に『乙区でキレイな物件か』を確認する、この順序を覚えておいてください。」
不動産登記簿の構成(表題部・甲区・乙区)
不動産登記簿は、大きく3つのパートに分かれています。
- ① 表題部(ひょうだいぶ):物理的な現況
- 土地なら「所在」「地番」「地目(宅地、畑など)」「地積(面積)」が、建物なら「構造」「床面積」などが記載されています。ここを見ることで、その不動産がどのようなものかが分かります。
- ② 甲区(こうく):所有権に関する事項
- 「誰がこの不動産の持ち主か」が記載されています。所有者の住所・氏名に加え、「いつ」「どんな原因(売買、相続など)で」所有権を取得したかが分かります。現在の所有者は一番下に記載されています。
- ③ 乙区(おつく):所有権以外の権利に関する事項
- ここが最も重要です。抵当権(住宅ローンの担保)や根抵当権、賃借権など、所有権以外の権利が記載されています。もし「(順位番号)1番抵当権抹消」のように下線が引かれていれば、その権利はすでに消滅しています。下線がないものが、現在生きている権利です。
法人登記簿の構成(商号・本店・役員・目的)
法人登記簿(履歴事項全部証明書)もいくつかの区画(欄)に分かれています。
- 商号区・本店区: 会社の正式名称と住所です。
- 目的区: その会社がどのような事業を行っているかが箇条書きされています。許認可が必要なビジネス(建設業や不動産業など)を始める場合、ここに適切な文言が入っているかが審査されます。
- 役員区: 理事、取締役、監査役などの氏名と、代表者の住所が記載されています。役員の任期満了や辞任、就任などの履歴もここで確認できます。
「登記情報提供サービス」との違い(閲覧のみ)
インターネット上には「登記情報提供サービス」という有料サイトも存在します。これは、PDF形式で登記情報を画面上で確認できるサービス(1通332円)です。
非常に便利ですが、ここから出力されるPDFには法務局の公印(認証文)がありません。あくまで「内容を確認するため(閲覧用)」のものであり、銀行への提出や契約書への添付といった「法的な証明書」としては利用できません。社内での予備調査や、個人的な確認であればこのサービスで十分ですが、公的な手続きには必ず「登記事項証明書」を取得してください。
登記簿謄本に関するよくある質問(FAQ)
最後に、登記簿謄本の取得に関して、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. 登記簿謄本に有効期限はありますか?
現役司法書士のアドバイス
「法律上、登記簿謄本そのものに有効期限は設定されていません。極端な話、1年前のものでも『1年前の時点ではこうだった』という証明にはなります。しかし、実務の世界では、情報の鮮度が命です。そのため、提出先のルールとして『発行から3ヶ月以内のもの』を求められるケースが大半です。手元に古い謄本があっても、重要な契約の際は取り直すのがマナーであり、リスク管理の基本です。」
Q. コンビニで登記簿謄本は取れますか?
住民票や印鑑証明書はマイナンバーカードを使ってコンビニで取得できるようになりましたが、残念ながら登記簿謄本(登記事項証明書)はコンビニ交付に対応していません(2025年現在)。
法務局に行く時間がない場合は、コンビニではなく、本記事で紹介した「オンライン請求・郵送受取」を利用するのが唯一の解決策です。
Q. 必要な地番・家屋番号がわかりません。どうすればいい?
住所(住居表示)しかわからない場合は、以下の方法で地番を特定してください。
- 法務局に電話する(無料): 管轄の法務局に電話し、「地番照会をお願いします」と伝えて住所を言えば、その場で地番を教えてくれます。これが最も確実で手軽です。
- ブルーマップを確認する: ネット上の有料サービスや、法務局・図書館に備え付けのブルーマップで確認します。
- 登記情報提供サービスの「地番検索」: 同サービス内で、住所から地番を検索できる機能があります(無料ですが登録が必要です)。
まとめ:オンライン請求を活用して、賢く登記簿謄本を取得しよう
本記事では、登記簿謄本(登記事項証明書)の取得方法から種類の選び方、見方までを解説してきました。複雑そうに見える手続きも、ポイントさえ押さえれば決して難しくありません。
最後に、最も重要なポイントを振り返ります。
- 急ぎでなければ、手数料が安く手間もない「オンライン請求・郵送受取」がベストな選択肢です。
- 「今日すぐに必要」という場合のみ、最寄りの法務局窓口へ行きましょう。
- 種類の選択で迷ったら、情報は多いに越したことはないので「全部事項証明書」を選んでください。
- 不動産の場合は「住所」と「地番」が違うことに注意し、事前に地番を調べてから申請しましょう。
現役司法書士のアドバイス
「登記情報は、ビジネスや資産管理における最も基本的かつ重要なデータです。これを正しく取得し、読み解くことができれば、取引の安全性が高まり、無用なトラブルを回避できます。ぜひこの機会にオンライン請求にチャレンジして、スマートな事務処理を実現してください。」
取得方法・種類決定チェックリスト
申請を行う前に、以下の項目を最終チェックしましょう。
- [ ] 提出先が指定する有効期限(「3ヶ月以内」など)を確認しましたか?
- [ ] 法人の「会社名・本店」、不動産の「地番・家屋番号」のメモは手元にありますか?
- [ ] 種類の選択で迷った際、「全部事項証明書(履歴事項全部証明書)」を選択しましたか?
- [ ] オンライン請求の場合、ブラウザのポップアップブロックを解除しましたか?
必要な書類をスムーズに手に入れ、皆様の手続きが無事に完了することを願っています。申請システムの操作や管轄の確認については、「登記・供託オンライン申請システム」や「法務局」の公式サイトを検索してご活用ください。
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