第二種電気工事士は、未経験・文系・独学でも正しい戦略があれば十分に合格可能です。しかし、多くの受験者が「技能試験(実技)」の壁にぶつかり、涙をのんでいるのも事実です。この記事では、累計300名以上の初心者を指導し、合格へと導いてきた現役講師である筆者が、最短ルートで合格するための勉強法とスケジュールを完全解説します。
この記事でわかること
- 初心者が「計算問題を捨てて」筆記試験を突破する効率的な戦略
- 独学合格のカギを握る「技能試験」の工具選びと練習のコツ
- 申し込みから免状交付まで、迷わず進める合格ロードマップ
まずは、なぜ今この資格を取得すべきなのか、その価値と将来性から紐解いていきましょう。
第二種電気工事士とは?取得する3つのメリットと将来性
「今の仕事に将来性を感じない」「手に職をつけて給料を上げたい」と考えている方にとって、第二種電気工事士は間違いなく最強のコストパフォーマンスを誇る資格です。国家資格でありながら受験資格の制限がなく、取得すれば即戦力として評価される稀有な存在だからです。ここでは、具体的なメリットとキャリアへの影響について深掘りします。
そもそも何ができる資格?仕事内容と独占業務
第二種電気工事士は、経済産業省が管轄する「電気工事士法」に基づく国家資格です。この資格を持つことで、一般住宅や小規模な店舗、事業所などの「一般用電気工作物(600V以下)」の電気工事を行うことが法的に認められます。
具体的には、以下のような作業が可能になります。
- 新築住宅の屋内配線工事(ケーブルを壁の中に通す作業など)
- コンセントの増設や交換、スイッチの位置変更
- 照明器具の取り付けや交換、ダウンライトの設置
- エアコンの設置に伴う専用コンセントの増設工事
これらはすべて「電気工事士」の独占業務であり、無資格者が行うことは法律で厳しく禁じられています(違反した場合、懲役または罰金が科せられます)。DIYがブームになっていますが、自宅のコンセント交換であっても無資格で行うことは違法です。この「法による独占性」こそが、資格取得者の仕事を安定させ、価値を保証している最大の理由です。
また、電気工事は一度施工すれば終わりではなく、建物の老朽化に伴う改修やリフォーム、家電製品の進化に合わせた設備更新など、継続的な需要が発生します。AIやロボット技術が進化しても、複雑な現場の状況に合わせてケーブルを配線し、器具を取り付ける職人の手仕事は、当面の間代替されることはないでしょう。
年収アップとキャリアパス|未経験からの転職市場価値
資格を取得することで得られる経済的なメリットは明白です。多くの設備会社や電気工事会社では、第二種電気工事士の保有者に対して「資格手当」を支給しています。相場としては月額5,000円から20,000円程度が一般的ですが、これだけで年間6万円から24万円の年収アップにつながります。
さらに、未経験からの転職市場においても、この資格は強力な武器となります。ビルメンテナンス業界、リフォーム業界、家電量販店の設置工事部門、太陽光発電設備の施工会社など、活躍の場は多岐にわたります。特にビルメンテナンス(設備管理)の求人では、「第二種電気工事士必須」または「あれば尚可」という条件が非常に多く見られます。
キャリアパスとしては、まずは現場で実務経験を積み、その後、より大規模な工事(工場やビルなど)が可能になる「第一種電気工事士」を目指すのが王道です。また、実務経験を積んだ後には「電気工事業」として独立開業する道も開かれています。一人親方として独立し、ハウスメーカーの下請けやエアコン工事などで年収1,000万円以上を稼ぐ職人も珍しくありません。
第一種電気工事士との違い(工事範囲と受験資格)
よくある質問として「いきなり第一種を目指すべきか、第二種から取るべきか」というものがあります。結論から言えば、未経験者は迷わず「第二種」から挑戦してください。
第一種電気工事士は、工場やビルなどの「最大電力500キロワット未満の需要設備」の工事が可能となる上位資格です。試験自体の難易度が高いだけでなく、免状の交付(資格証をもらうこと)には実務経験が必要となります。一方、第二種電気工事士には受験資格の制限が一切なく、年齢・学歴・実務経験に関係なく誰でも受験し、合格すればすぐに免状を受け取ることができます。
以下の表に、第一種と第二種の違いをまとめました。
| 項目 | 第二種電気工事士 | 第一種電気工事士 |
|---|---|---|
| 工事範囲 | 一般住宅、小規模店舗など (600V以下の一般用電気工作物) |
工場、ビルなど (500kW未満の自家用電気工作物) ※第二種の範囲も含む |
| 受験資格 | なし(誰でも受験可能) | なし(誰でも受験可能) |
| 免状交付条件 | 試験合格のみ | 試験合格 + 実務経験3年 (※以前は5年でしたが短縮されました) |
| 試験難易度 | 易しい〜普通 | 普通〜やや難しい |
このように、第一種は試験に合格しても実務経験がないと免状がもらえません(合格証のみ発行されます)。まずは第二種を取得して業界に入り、働きながら実務経験を積んで第一種を目指すのが最も効率的なキャリアアップのルートです。
現役電気工事士・資格指導インストラクターのアドバイス
「現場では『ニ種を持っていて当たり前』という空気がありますが、逆に言えば持っているだけで『最低限の知識と安全意識がある』とみなされ、信頼度が大きく変わります。無資格の見習い期間は、どうしても雑用が中心になりがちですが、資格があれば早い段階で工具を持たせてもらえます。未経験からの転職や昇給交渉において、これほどコストパフォーマンスの良い『パスポート』はありません。迷っているなら、まずはここからスタートしましょう。」
第二種電気工事士試験の概要と仕組み【最新版】
試験に合格するためには、敵を知ることが第一歩です。第二種電気工事士試験は独特の制度やスケジュールで行われるため、仕組みを正しく理解していないと、申し込み忘れや準備不足で不合格になってしまう可能性があります。ここでは、試験センターの公式情報に基づき、試験の流れと合格基準を解説します。
試験日程の流れ(上期試験・下期試験)
第二種電気工事士試験は、年に2回、「上期試験」と「下期試験」が実施されています。以前は年1回の受験チャンスしかありませんでしたが、現在は制度が変わり、上期と下期の両方を受験することも可能です(ただし、上期で合格した場合は下期を受ける意味はありません)。
大まかなスケジュール感は以下の通りです。
- 上期試験
- 申し込み:3月中旬〜4月上旬
- 筆記試験:5月下旬
- 技能試験:7月下旬
- 下期試験
- 申し込み:8月中旬〜9月上旬
- 筆記試験:10月下旬
- 技能試験:12月下旬
重要なポイントは、「筆記試験から技能試験までの期間が約1.5〜2ヶ月しかない」という点です。筆記試験が終わってから技能の練習を始めると、時間が足りなくなるケースが多発します。また、近年導入された「CBT方式(Computer Based Testing)」により、筆記試験を指定された期間内の好きな日時に、テストセンター(パソコンが設置された会場)で受験できるようになりました。CBT方式を選ぶと、試験結果がその場でわかるため、早めに技能試験の対策に移れるという大きなメリットがあります。
「筆記試験」の出題形式と合格基準
筆記試験は、電気理論、配線設計、施工方法、検査方法、法令などの分野から出題されます。形式は「四肢択一式」で、4つの選択肢から正解を1つ選ぶマークシート方式(またはCBT画面での選択)です。
特筆すべきは、その合格基準の明確さです。全50問が出題され、1問2点の100点満点中、60点(30問正解)以上で合格となります。これは相対評価(上位〇%が合格)ではなく、絶対評価です。つまり、周りの受験生のレベルに関係なく、自分が60点を取れば必ず合格できるのです。
また、過去に出題された問題(過去問)と全く同じ、あるいは数値を変えただけの類似問題が非常に多く出題される傾向があります。そのため、満点を目指して分厚い教科書を隅から隅まで読むよりも、過去問を繰り返し解くほうが圧倒的に効率的です。
「技能試験」の出題形式と合格基準
筆記試験を突破した人だけが挑めるのが、最大の難関である「技能試験」です。この試験では、電動工具や材料を使って、実際に配線作業を行います。
技能試験の特徴は、「事前に公表された13問の候補問題の中から、必ず1問が出題される」という点です。試験センターは毎年、その年度に出題する13パターンの配線図(単線図)を事前に公開しています。試験当日は、そのうちのどれか1つが出題され、制限時間40分以内に作品を完成させなければなりません。
合格基準は非常にシビアです。「作品が電気的に正しく接続され、かつ寸法や形状が規定通りであること」が求められます。もし1箇所でも重大なミス(欠陥)があれば、その時点で不合格となります。これを「欠陥による失格」と呼びます。例えば、配線の色を間違える、電線が抜けてしまう、被覆を剥きすぎて中の銅線が露出している、といったミスはすべて一発アウトです。
試験スケジュールの全体像まとめ
- 受験申し込み(インターネットまたは郵送)
- 筆記試験対策(約1〜2ヶ月)
- 筆記試験本番(60点以上で合格)
- 技能試験対策(約1.5〜2ヶ月・工具と材料の準備必須)
- 技能試験本番(40分一本勝負・欠陥なしで合格)
- 合格発表&免状申請
難易度は高い?合格率データと「文系・未経験」の壁
「自分は文系で数学が苦手だけど大丈夫か?」「不器用だから実技ができるか不安」といった悩みを持つ方は多いでしょう。ここでは、客観的なデータと、実際の受験生が感じる「体感難易度」の両面から解説します。
過去5年の合格率推移と偏差値イメージ
第二種電気工事士の合格率は、国家資格の中では比較的高い水準で推移しています。
- 筆記試験の合格率: 平均して約60%前後
- 技能試験の合格率: 平均して約70%前後
ただし、これは「筆記に受かった人のうちの70%が技能に受かる」という意味であり、ストレートで合格する確率は全体の40〜50%程度となります。偏差値で言えば「40〜45」程度とされており、しっかりと対策をすれば誰でも合格圏内に入ることができる試験です。
しかし、この数字に油断してはいけません。毎年数万人が不合格になっているのも事実です。落ちる人の多くは「勉強不足」か「技能試験の練習不足」のどちらかです。逆に言えば、正しい努力を裏切らない試験でもあります。
「数学・物理」が苦手でも大丈夫?計算問題の真実
文系出身者が最も恐れるのが「電気理論の計算問題」です。オームの法則や合成抵抗、電力計算など、高校物理レベルの計算が求められます。
しかし、ここで断言します。計算問題が全く解けなくても合格は可能です。
なぜなら、全50問のうち計算問題が出題されるのは例年「数問〜10問程度」だからです。残りの40問以上は、写真を見て工具の名前を答える問題や、配線図記号の意味を問う問題、法令などの「暗記問題」です。仮に計算問題を全て捨てて0点だったとしても、暗記分野で8割正解できれば、余裕で合格ラインの60点を超えられます。
実際に私が指導した生徒の中には、分数の計算すら怪しいレベルの方もいましたが、計算問題を最初から「捨て問」と割り切り、暗記問題に全力を注ぐことで見事に合格しています。
独学合格は無理?未経験者がつまずくポイント
独学での合格は十分に可能です。実際、受験者の半数以上は独学で挑んでいると言われています。しかし、未経験者が独学でつまずきやすいポイントが明確に2つあります。
1つ目は「技能試験の正解がわからないこと」です。筆記試験はマークシートなので正誤がはっきりしていますが、技能試験は自分で作った作品が「欠陥」に該当するかどうか、自分では判断しにくいのです。
2つ目は「工具の扱いに慣れていないこと」です。普段ペンチやドライバーを握らない人が、いきなり40分で完璧な配線を行うのは至難の業です。
現役電気工事士・資格指導インストラクターのアドバイス
「合格率が高いからといって『簡単』だと油断すると落ちます。特に技能試験は、手先の器用さよりも『手順の暗記』と『欠陥の回避』が勝負です。実は、文系の方こそ論理的に手順を組み立てる技能試験が得意なケースも多いのです。不器用だからといって諦める必要はありません。正しい練習を繰り返せば、必ず手は動くようになります。」
【筆記試験】計算を捨てて60点を取る「効率的勉強法」
ここからは、具体的な対策に入ります。まずは筆記試験です。ペルソナであるあなたは「働きながら」「短期間で」合格したいはずです。そのためには、満点を目指す勉強ではなく、最短で60点を確保する「割り切り戦略」が必要です。
勉強時間の目安と配分(トータル50〜100時間)
未経験者が合格レベルに達するために必要な勉強時間は、一般的に50時間から100時間と言われています。1日1時間の勉強で2〜3ヶ月、1日2時間なら1.5ヶ月程度です。
効率的な時間配分としては、以下を推奨します。
- 暗記分野(鑑別・図記号・法令):全体の7割
- 過去問演習:全体の3割
- 計算問題:0割(余力があれば公式暗記のみ)
通勤電車や休憩時間などのスキマ時間を活用して暗記アプリや単語帳を眺め、帰宅後のまとまった時間で過去問を解くスタイルが最強です。
優先順位1位:写真鑑別と配線図記号を完璧にする
最初に手をつけるべきは、「鑑別(かんべつ)」と呼ばれる写真問題と、「配線図記号」です。これらは「知っているか知らないか」だけの問題であり、勉強すればするほど点数に直結します。
例えば、ペンチの写真が出て「これは何に使う工具か?」を選ぶ問題や、コンセントの記号を見て「正しい名称」を選ぶ問題が出ます。これらは後の技能試験でも必須の知識となるため、ここで完璧にしておくと一石二鳥です。テキストの最初の方に載っている写真一覧を、何度も見て目に焼き付けましょう。
優先順位2位:配線図問題の読み方をマスターする
試験の後半(30問目〜50問目あたり)には、実際の建物の配線図を見て答える問題が20問ほど出題されます。ここは配点が大きく、かつパターンが決まっています。
「複線図(配線の詳細図)」が書けなくても解ける問題がたくさんあります。例えば、「このマークの場所に設置する機器はどれか?」「この工事で使うケーブルの種類はどれか?」といった問題です。コンセント、スイッチ、照明器具の図記号ルールさえ覚えておけば、パズルのように解くことができます。
優先順位3位:過去問を「答えごと」覚える反復練習
ある程度知識がついたら、ひたすら過去問を解きます。ここで重要なのは、「過去問の選択肢や図を、答えごと覚えてしまう」ことです。
電気工事士試験では、過去10年分の問題から全く同じ問題が繰り返し出題されます。「この写真が出たら、答えは『二重天井用』だ」と反射的に答えられるレベルまで反復してください。過去問サイトやアプリを活用し、10年分を3周回せば、本番で「見たことある問題ばかり」という状態になります。
筆者おすすめの筆記対策ツール
- 過去問対策アプリ: スマホで手軽にできる無料アプリが多くリリースされています。移動中の学習に最適です。
- イラストが多いテキスト: 文字ばかりの専門書は挫折の元です。漫画やイラストで解説している初心者向けのテキストを1冊購入しましょう。
- YouTube解説動画: 特に配線図記号や複線図の書き方は、動画で見ると理解が早まります。
【技能試験】独学一発合格のための「工具・材料」準備
筆記試験が終わったら(あるいは勉強と並行して)、技能試験の準備を始めなければなりません。技能試験は「道具への投資」が合否を分けます。「何を買えばいいかわからない」という方のために、絶対に失敗しない選び方を伝授します。
必須アイテム:指定工具セットの選び方
技能試験には、持参しなければならない「指定工具」があります。ペンチ、ドライバー(プラス・マイナス)、電工ナイフ、ウォーターポンププライヤー、圧着ペンチ、メジャーなどです。
これらをホームセンターで1つずつバラ買いするのは絶対にやめてください。規格が合わなかったり、試験で使いにくいサイズだったりするリスクが高いからです。必ず、工具メーカー各社から販売されている「電気工事士技能試験対応工具セット」を購入してください。
特に、HOZAN(ホーザン)などの有名メーカーが出しているセットには、「VVFストリッパー」という時短ツールが含まれているものが多く、これがあるかないかで作業効率が劇的に変わります。VVFストリッパーは、ケーブルの被覆をワンアクションで剥ける魔法の工具です。電工ナイフでちまちま剥いていると、40分の制限時間にはまず間に合いません。合格者の9割以上がこのストリッパーを使用しています。
練習用部材セットは必要?1回分・2回分・3回分どれを買う?
工具だけでなく、練習用のケーブルやスイッチ、コンセントなどの「材料(部材)」も必要です。これもセット販売されているものを購入するのが鉄則です。
部材セットには「1回セット(全13問を1回ずつ練習できる量)」「2回セット」「3回セット」などがあります。予算との兼ね合いになりますが、未経験者には「2回セット」を強く推奨します。
- 1周目: 手順を覚えるための練習。失敗したり、切りすぎて短くなったりするため、材料を消耗します。
- 2周目: 時間を計って本番形式での練習。
1回分だと、最初の練習で失敗した際に材料が足りなくなり、買い足しに行く手間が発生します。安心を買う意味でも、2回分がベストバランスです。
複線図対策と参考書の選び方
技能試験では、問題用紙に書かれた「単線図(シンプルな図面)」を、実際にケーブルをつなぐための「複線図(詳細な設計図)」に書き換える能力が求められます。この書き方をマスターするために、技能試験専用のテキストを一冊用意しましょう。
テキストは、全13問の候補問題について、複線図の書き方からケーブルの切断寸法、組み立て手順まで写真付きで解説しているものを選んでください。最近は、テキストと連動したYouTube動画を公開している出版社も多く、動画を見ながら一緒に手を動かすのが最強の独学スタイルです。
現役電気工事士・資格指導インストラクターのアドバイス
「『安い工具でなんとかしよう』というのは、初心者が最も陥りやすい罠であり、不合格への特急券です。特にケーブルの被覆を剥く『VVFストリッパー』の性能と、圧着ペンチの使いやすさは、試験時間の5〜10分を左右します。40分しかない試験で10分の差は致命的です。合格後の現場でもそのまま使えるプロ仕様の工具ですから、ここは絶対にケチらず、良いものを買ってください。」
【技能試験】40分で完成させるための実践テクニックと欠陥対策
道具が揃ったら、いよいよ実践練習です。技能試験はスポーツと同じで、頭で分かっていても手が動かなければ意味がありません。ここでは、合格ラインの40分以内に完成させるための具体的なテクニックと、絶対にやってはいけない「欠陥」について解説します。
「複線図」を3分で書くトレーニング
試験が始まったら、まず最初にやるべきは「複線図を書くこと」です。これを書かずにいきなりケーブルを切り始めると、高確率で誤配線します。
目標は、どの問題が出ても「開始3分以内」に複線図を書き上げることです。そのために必要なのは以下の3点です。
- 電源からの白線・黒線のルールを暗記する: 「スイッチとコンセントには黒」「器具とコンセントには白」といった基本ルールを体に染み込ませます。
- 色分けをする: 3色ボールペンを使い、白線はそのまま、黒線は黒、赤線は赤で書くとミスが激減します。
- 候補問題13問を暗記する: 全13問の複線図を、何も見ずに書けるようになるまで毎日練習してください。
基本作業の時短術(ランプレセプタクル・のの字曲げ)
技能試験で最も時間がかかり、かつ欠陥になりやすいのが「ランプレセプタクル」への結線作業です。電線の先を輪っか状にする「のの字曲げ」という技術が必要になります。
この作業をスムーズに行うコツは、VVFストリッパーの先端についているペンチ機能を活用することです。また、輪っかが右巻きになるように注意してください(左巻きだとネジを締めた時に輪が広がってしまい、欠陥となります)。
もう一つの難関が「リングスリーブの圧着」です。圧着ペンチの柄には「小・中・大」などの刻印があり、接続する電線の太さと本数によって使い分ける必要があります。例えば、「1.6mmが2本なら『小』」「2.0mm1本と1.6mm2本なら『小』」といった組み合わせを、理屈ではなく表として丸暗記しましょう。刻印間違いは一発で不合格になります。
一発アウト!絶対にやってはいけない「重大欠陥」事例集
技能試験の採点は減点方式ではなく、「欠陥が1つでもあれば不合格」という方式です。どれだけ綺麗に作れても、1箇所のミスで全てが終わります。代表的な欠陥事例を挙げます。
- 誤配線: スイッチを入れても電気がつかない、またはショートする配線。
- リングスリーブの刻印間違い: 規定サイズと異なるダイスで圧着している(例:〇で圧着すべきところを小で圧着)。
- 心線の傷・被覆の噛み込み: ケーブルの銅線に深い傷が入っている、または被覆が端子台に噛み込んでいる。
- 器具の破損: スイッチやコンセントの枠を割ってしまう、端子台のネジをねじ切ってしまう。
- 未完成: 制限時間内に完成していない。
これらの欠陥を防ぐためには、作業後の「見直し」が不可欠です。
現役電気工事士・資格指導インストラクターのアドバイス
「多くの受験者が『完成させること』に必死で、見直しを忘れます。しかし、人間は必ずミスをします。残り3分で見直しができるよう、普段の練習では35分で組み上げるタイムアタックを行ってください。特に『増し締め(ネジの緩み確認)』と『配線の色チェック』は、最後に必ず行うルーティンにしましょう。見直しで救われる命(合格)は本当に多いのです。」
独学 vs 通信講座 vs 講習会|あなたに合うのはどれ?
ここまで勉強法を解説してきましたが、全てを自分一人でやる自信がない方もいるでしょう。学習スタイルには「独学」「通信講座」「短期講習会」の3つの選択肢があります。それぞれの費用と特徴を比較し、あなたに最適なスタイルを見つけましょう。
コスト重視なら「完全独学」(総額3〜4万円)
最も安上がりに済む方法です。市販のテキストと過去問、工具セット、材料セットを自分で揃えます。
- 費用目安: 受験料(約9,000円)+テキスト代(約3,000円)+工具・材料代(約2〜3万円) = 合計3.5〜4.5万円
- メリット: 費用が安い。自分のペースで学習できる。
- デメリット: わからない時に質問できない。技能試験の作品を誰にもチェックしてもらえないため、自分の欠陥に気づきにくい。
- 向いている人: 自律的に学習計画を立てられる人、YouTubeなどで情報収集が得意な人。
確実性重視なら「通信講座」(+2〜4万円)
ユーキャンなどの通信講座を利用する方法です。教材、動画講義、材料セットがパッケージ化されています。
- 費用目安: 独学費用 + 講座代(3〜6万円)
- メリット: カリキュラムが組まれているので迷わない。技能試験の添削サービス(作品の写真を送って採点してもらう等)がある講座も。
- デメリット: 費用がかさむ。強制力はないため、結局は自分のやる気次第。
- 向いている人: 独学だとサボってしまいそうな人、プロの添削を受けたい人。
短期集中なら「講習会」(+2〜3万円)
土日などに開催される、技能試験対策のセミナーに参加する方法です。1日〜2日で集中的に練習します。
- 費用目安: 独学費用 + 講習費(1日あたり1〜2万円)
- メリット: 講師が直接手元を見て指導してくれるため、悪い癖や欠陥をその場で指摘してもらえる。強制的に練習時間を確保できる。
- デメリット: 開催地が主要都市に限られることが多い。日程が合わないと参加できない。
- 向いている人: 技能試験にどうしても自信がない人、一度プロに直接見てほしい人。
| スタイル | 費用感 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 完全独学 | 低 | コスト最安、自由なペース | 質問不可、自己流の危険性 |
| 通信講座 | 中〜高 | 体系的な教材、添削あり | コスト高、モチベーション維持が必要 |
| 講習会 | 中 | 直接指導、短期集中 | 場所・日程の制約、参加費 |
未経験から合格へ!3ヶ月間の完全ロードマップ
最後に、今日から合格発表の日まで、具体的に何をどう進めればいいのかのロードマップを提示します。この通りに行動すれば、迷うことなく合格へと近づけます。
【1ヶ月目】申し込み〜筆記試験対策(暗記中心)
まずは試験センターの公式サイトで申し込み期間を確認し、受験申し込みを済ませます。これが最初にして最大のハードルです(忘れる人が多いため)。
学習面では、通勤電車でのアプリ学習を習慣化しましょう。配線図記号や写真鑑別などの「暗記系」を徹底的にインプットします。テキストは最初から読み込まず、パラパラと眺めて全体像を把握する程度でOKです。
【2ヶ月目】筆記直前対策&技能の準備
筆記試験の1ヶ月前からは、過去問演習に集中します。過去5〜10年分を繰り返し解き、安定して80点以上取れるように仕上げます。
そして重要なのが、「筆記試験が終わった翌日には、工具と練習セットを注文する」ことです。自己採点で60点を超えていれば、合格発表を待つ必要はありません。技能試験の準備は1日でも早いほうが有利です。
【3ヶ月目】技能試験対策(候補問題13問の周回)
技能試験までの約1.5ヶ月は、ひたすら手を動かします。
- 1週目: 単位作業の練習(ケーブルの被覆剥き、のの字曲げ、リングスリーブ圧着など、パーツごとの作成練習)。
- 2週目〜: 候補問題No.1からNo.13まで、時間を気にせず丁寧に作ってみる。複線図もしっかり書く。
- ラスト2週間: ストップウォッチで時間を計り、40分以内で完成させる「通し練習」。苦手な問題や複雑な問題を重点的に反復する。
- 前日: 道具の手入れ(ドライバーの先が欠けていないか等)と、忘れ物チェック。
現役電気工事士・資格指導インストラクターのアドバイス
「多くの人が筆記試験の合格発表(約1ヶ月後)まで技能の練習を始めませんが、それでは遅すぎます。スタートダッシュが全てです。『自己採点で60点超えていたら即練習開始』これが鉄則です。技能試験までの期間は意外と短いことを忘れないでください。この期間の努力が、一生モノの資格につながります。」
第二種電気工事士に関するよくある質問 (FAQ)
最後に、受験生からよく寄せられる質問にQ&A形式でお答えします。
Q. 職業訓練校に通えば無料で取れる?
A. はい、可能です。ハローワークが案内している職業訓練(ポリテクセンターなど)には、電気設備科などのコースがあり、授業料無料で通うことができます(テキスト代などは自己負担)。さらに、条件を満たせば失業給付を受けながら学ぶこともできます。ただし、平日の昼間に半年間通学する必要があるため、現在働いている方には不向きです。求職中の方には最強の選択肢と言えます。
Q. 女性や高齢者でも合格できる?
A. 全く問題ありません。最近は女性の電気工事士も増えていますし、定年退職後の再就職のために60代で取得される方も珍しくありません。第二種電気工事士の試験は、重いものを持ち上げるような力仕事ではなく、配線を正確につなぐ丁寧さが求められます。むしろ、手先が器用で几帳面な女性の方が、技能試験の作品が綺麗な傾向にあります。
Q. 試験会場に持っていくべき時計や持ち物は?
A. 筆記・技能ともに、試験会場に時計がない(または見にくい)場合があります。必ず腕時計を持参してください。ただし、計算機能や通信機能がついたスマートウォッチ等は使用禁止です。シンプルなアナログ時計がベストです。その他、受験票、写真票、筆記用具(HBの鉛筆・消しゴム)を忘れずに。技能試験では工具一式もお忘れなく。
Q. 技能試験で怪我をしたらどうなる?
A. 電工ナイフやニッパーで指を切ってしまうことはよくあります。多少の出血ならそのまま作業を続けられますが、血が止まらない場合や作品に血が付着すると、試験官の判断で止血処置を求められ、大幅なタイムロスになります。念のため、絆創膏を数枚ポケットに入れておくことを強くおすすめします。何より、安全第一で焦らず作業することが大切です。
まとめ:一生モノの国家資格を手に入れよう
第二種電気工事士は、AI時代になっても決してなくならない、現場の職人技を証明する価値ある国家資格です。未経験からでも、正しい戦略で筆記試験を突破し、十分な練習量で技能試験に挑めば、必ず合格への扉は開かれます。
筆記は「計算を捨てる勇気」、技能は「道具への投資と反復練習」。この2つを心に留めて、まずは第一歩を踏み出してください。あなたのキャリアが、この資格をきっかけに大きく飛躍することを応援しています。
要点チェックリスト
最後に、合格に向けた準備が整っているか確認しましょう。
- [ ] 最新の試験日程を確認し、申込期間を手帳に記入したか?
- [ ] 計算問題に時間を使いすぎず、暗記問題で勝負する覚悟はできたか?
- [ ] 技能試験用の工具セットと練習部材にかかる費用(約3〜4万円)を予算に入れたか?
- [ ] 独学でいくか、通信講座や講習会を利用するか、自分に合ったスタイルを決めたか?
準備ができたら、まずは書店で自分に合いそうなテキストを1冊手に取ってみるか、試験センターの公式サイトを覗いてみてください。今日のアクションが、未来の自分を助けることになります。
参考文献・参照元
※本記事の執筆にあたり、以下の公的機関および信頼できる情報源を参照しています。
- 一般財団法人 電気技術者試験センター(試験日程・過去問題・合格基準)
- 経済産業省(電気工事士法・資格の範囲)
- 日本規格協会(JIS規格・図記号)
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