皮膚の極度な乾燥や、治りかけの浅い褥瘡(床ずれ)に対して、医師から「ローションガーゼで処置してください」と指示が出ることがあります。しかし、いざ処置をしようとした時、あなたは自信を持ってその手順を実践できているでしょうか。
「ガーゼはどれくらい濡らせばいいの?びちゃびちゃでいいの?」
「交換しようとしたらガーゼが傷口に張り付いていて、患者さんが痛がってしまった」
「上から何を貼って固定すればいいのか迷う」
このような疑問やトラブルは、臨床現場で非常に多く聞かれます。ローションガーゼは、単に保湿剤をガーゼに染み込ませるだけの単純なケアではありません。水分量や固定方法をひとつ誤れば、逆に皮膚をふやかしてしまったり(浸軟)、乾燥して傷を広げてしまったりするリスクがある、専門的なケア技術です。
この記事では、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)としての臨床経験に基づき、ローションガーゼの効果を最大化するための正しい手順を徹底解説します。結論として、ローションガーゼは保湿剤の効果を密封療法(ODT)によって最大化し、重度のドライスキンや浅い褥瘡を改善する強力なケア技術です。正しい知識と技術を身につけ、患者さんの苦痛を取り除きましょう。
この記事でわかること
- 写真を見るような具体性でわかる!失敗しないローションガーゼの作り方と「ひたひた」の目安量
- 剥がす時に痛がらせないための交換手順と、万が一固着してしまった時の裏ワザ
- 認定看護師が現場で実践している観察ポイントと、絶対にやってはいけない禁忌事項
ローションガーゼとは?適応となる皮膚状態とODTの仕組み
ローションガーゼの具体的な作り方に入る前に、まずは「なぜこのケアが必要なのか」という根本的な目的と仕組みを理解しておきましょう。手技の手順だけを覚えても、その根拠を理解していなければ、患者さんの皮膚状態が変化した時に適切な対応ができません。
ローションガーゼ法は、医学的には「密封療法(ODT:Occlusive Dressing Technique)」の一種として位置づけられます。これは、薬剤を塗布した患部をフィルムやガーゼなどで覆って密封することで、薬剤の経皮吸収率を高め、治療効果を強力にする方法です。
現役皮膚・排泄ケア認定看護師のアドバイス
「『ただ保湿剤を塗る』のと『ローションガーゼを行う』のでは、目的と強度が全く異なります。このケアは治療的側面が非常に強いため、漫然と続けるのではなく、皮膚状態の変化(改善または悪化)を毎日評価することが重要です。『なんとなく良さそうだから』で続けていると、過剰な水分で皮膚がふやけてしまうトラブルも招きかねません。」
ローションガーゼ(ODT)の3つの効果
ローションガーゼを行うことで、単なる塗布と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか。主な効果は以下の3点に集約されます。
1. 角質水分量の劇的な増加
通常、皮膚に塗った保湿剤は時間とともに蒸発したり、衣服に擦れて取れてしまったりします。しかし、ローションを含ませたガーゼで覆い、さらにその上からフィルム等で密封することで、水分の蒸発を物理的に遮断します。これにより、角質層(皮膚の最表面)が水分で満たされ、ガサガサに硬くなった皮膚が柔らかくなります。これは、お風呂上がりの皮膚が柔らかいのと同じ原理を、局所的に長時間作り出すイメージです。
2. 薬剤浸透性の向上
皮膚には本来、外部からの異物侵入を防ぐ「バリア機能」が備わっています。しかし、密封療法によって角質層が十分に水和(水分を含んでふやけた状態)されると、細胞間の結合が一時的に緩みます。これにより、保湿ローションに含まれる有効成分(ヘパリン類似物質など)が、角質層の奥深くまで効率よく浸透するようになります。ステロイド外用薬などの吸収率を高める際にも応用される原理です。
3. 創面の保護とクッション性
乾燥した皮膚や浅い褥瘡は、非常にデリケートです。衣服の縫い目やシーツの摩擦といった些細な刺激でも、容易に傷ついてしまいます(スキンティア)。厚みのあるガーゼで覆うことは、保湿だけでなく、物理的なクッションとなって外部刺激から脆弱な皮膚を守る役割も果たします。
適応となる主な皮膚トラブル(乾燥・褥瘡)
ローションガーゼは万能ではありません。適応となる状態と、そうでない状態を見極めることがケアの第一歩です。主に以下の状態で高い効果を発揮します。
- 重度のドライスキン(乾皮症):
単にカサついているだけでなく、皮膚が粉を吹いたようになり(落屑)、亀裂が入って痛みや痒みを伴う状態。高齢者の下腿(すね)や背中によく見られます。 - d1〜d2程度の浅い褥瘡:
皮膚の赤みが消えない状態(発赤)や、水疱が破れて浅く皮がむけた状態(びらん)。真皮までの浅い損傷で、滲出液(ジュクジュクした液)が少ないか、乾燥傾向にある場合に適しています。 - 硬くなった角質(角化症):
踵(かかと)や肘などの角質が厚く硬くなり、ひび割れている場合。
※重要:感染徴候がある創傷には原則禁忌
最も注意すべき点は、「感染している傷には絶対に行ってはいけない」ということです。密封療法は、湿度と温度を保つため、細菌にとっても増殖しやすい環境(培養器のような状態)を作ってしまいます。発赤、腫れ、熱感、痛み、膿などが見られる場合は、直ちに中止し、医師の指示を仰ぐ必要があります。これについては後述のセクションで詳しく解説します。
軟膏処置との使い分け基準
現場では「軟膏を塗るだけでいいのか、ローションガーゼまでするべきか」迷うことがあるでしょう。以下の比較表を参考に、患者さんの状態に合わせて選択してください。
▼詳細解説:ローションガーゼ vs 軟膏塗布 使い分け比較表
| 項目 | 軟膏・クリーム単純塗布 | ローションガーゼ(ODT) |
| 主な目的 | 日常的な保湿、軽度の乾燥対策 | 強力な保湿、薬剤の深部浸透、創傷治癒促進 |
| 保湿力 | 中〜高(基剤による) ※時間経過で低下しやすい |
極めて高い ※長時間持続する |
| 手間・コスト | 手軽、安価 | 手間がかかる、材料費(ガーゼ代等)がかかる |
| 適応症例 | 軽度〜中等度の乾燥肌 予防的スキンケア |
重度の乾燥、亀裂、浅い褥瘡 「塗ってもすぐ乾く」場合 |
| リスク | 塗り忘れ、衣服への付着 | 過度な浸軟(ふやけ)、細菌感染の助長、あせも |
基本的には、単純塗布で改善が見られない場合や、乾燥が著しく進行している場合に、ステップアップとしてローションガーゼを選択すると良いでしょう。
【写真解説】失敗しないローションガーゼの準備と作り方
ここからは、いよいよ実践編です。ローションガーゼの成否を分けるのは、実は「準備」の段階です。特に水分の含ませ加減(濡らし具合)は、少なすぎれば傷にくっつき、多すぎれば周囲の皮膚をふやかしてしまいます。この「適正な水分量」の感覚を掴むことが、プロの技と言えます。
必要な物品リストと選び方
まずは必要なものを揃えましょう。清潔操作を行うため、物品はトレーなどにまとめておくとスムーズです。
- ガーゼ:
滅菌された医療用ガーゼを使用します。サイズは患部に合わせて選びますが、一般的には30cm×30cmのものを折りたたんで使います。
【プロの推奨】不織布タイプがおすすめ
綿のガーゼ(織布)よりも、不織布(不織布ガーゼ)の方が、繊維が傷口に残りにくく、保水性も高いため扱いやすいです。また、剥がす時の刺激も比較的少ない傾向にあります。 - 保湿ローション:
医師から処方されたものを使用します。代表的なものは「ヘパリン類似物質ローション」や「尿素ローション」です。場合によっては生理食塩水を使用することもあります。 - 固定用テープ・フィルム:
二次ドレッシングとして使用します。皮膚が弱い方には、剥離刺激の少ないシリコンテープや、通気性のあるフィルムドレッシングを用意しましょう。 - 清潔な膿盆(のうぼん)またはトレー:
ガーゼを広げてローションを含ませるための受け皿です。家庭であれば、清潔な小皿で代用可能です。 - 清潔な手袋・ハサミ:
感染予防のため、使い捨て手袋を着用します。ハサミはアルコール綿で消毒しておきます。
ガーゼの折り方と厚みの目安
ガーゼは、ただ広げて貼れば良いわけではありません。「厚み」を持たせることが非常に重要です。
1. 患部の大きさに合わせてカットまたは折りたたむ
患部より一回り(約1〜2cm)大きいサイズになるように調整します。小さすぎると患部全体を覆えませんし、大きすぎると健康な皮膚までふやかしてしまいます。
2. 数枚重ねて「層」を作る
ガーゼは1枚ペラペラの状態では使用しません。必ず3枚〜5枚程度重ねて厚みを出します。
なぜ重ねる必要があるのでしょうか?理由は2つあります。
一つは「保水タンク」としての役割です。厚みがあるほどローションを多く保持でき、長時間乾燥を防げます。
もう一つは「クッション」としての役割です。外部の衝撃から創部を守るためには、ある程度の厚みが不可欠です。
「ひたひた」とはどれくらい?適正水分量の黄金比
ここが最も質問の多いポイントです。「ひたひたに濡らす」と言われますが、具体的にはどの程度でしょうか。
NG例:少なすぎる(絞った雑巾レベル)
ガーゼ全体が湿ってはいるが、持ち上げても水滴が落ちない状態。これでは貼付してから数時間で体温により乾燥してしまい、ガーゼが創部に固着(張り付く)してしまいます。剥がす時に激痛を伴い、せっかく再生した皮膚を剥ぎ取ってしまう最悪のパターンです。
NG例:多すぎる(水浸しレベル)
持ち上げるとジャバジャバと液が流れ落ちる状態。これでは貼付した後に液垂れを起こし、衣類やシーツを汚します。また、患部周囲の健康な皮膚まで過剰にふやけてしまい(浸軟)、皮膚が白く脆くなって新たなトラブル(スキントラブル)の原因になります。
OK例:適正量(ポタッ…ポタッ…レベル)
清潔なトレーの上でガーゼにローションをかけ、指で軽く押して全体に馴染ませます。ガーゼの端をピンセット等で持ち上げた時、「ポタッ……ポタッ……」とゆっくり滴り落ちる程度がベストです。ガーゼ全体が透き通るように見え、繊維の奥まで水分が行き渡っていることを確認してください。
現役皮膚・排泄ケア認定看護師のアドバイス
「業務効率化のために『作り置き』をしたいという声をよく聞きますが、これは推奨できません。水分を含んだガーゼは細菌が繁殖しやすい絶好の環境です。原則として『使用直前に作成』してください。どうしても事前に準備が必要な場合(訪問看護など)は、清潔操作を徹底し、ジッパー付き保存袋に入れて冷蔵庫で保管し、24時間以内に必ず使い切るルールを厳守しましょう。」
効果を最大化する貼り方と固定(二次ドレッシング)のコツ
最高のローションガーゼを作れても、貼り方や固定方法が間違っていれば効果は半減します。特に「すぐに剥がれてしまう」あるいは「蒸れて痒くなる」といった問題は、この段階での工夫で解決できます。
患部への乗せ方と密着テクニック
作成したローションガーゼを患部に乗せる際は、「密着」を意識します。
まず、気泡が入らないように、ガーゼの端からゆっくりと置いていきます。乗せた後、手袋をした指やピンセットの背を使って、ガーゼの上から優しくなでるようにして、創面の凹凸にガーゼを沿わせます。特に褥瘡などで皮膚にくぼみがある場合は、浮いてしまわないようにしっかりと底面に接触させることが重要です。ここが浮いていると、そこだけ乾燥して治癒が遅れます。
踵(かかと)や肘、仙骨部などの骨が出っ張っている部位や可動部は、ガーゼに切り込み(スリット)を入れるとフィットしやすくなります。放射状に切り込みを入れることで、球体のような部位でも包み込むように貼付できます。
二次ドレッシング(上から覆うもの)の選び方
ローションガーゼの上から何を貼って固定するか(二次ドレッシング)は、皮膚の状態と生活環境によって使い分けます。
▼図解:皮膚状態別・二次ドレッシング選定フローチャート
パターンA:乾燥が極めて強い場合 → フィルムドレッシング
透明なポリウレタンフィルムなどで全体を覆います。密閉性が最も高く、保湿効果が最大化されます。ただし、汗をかきやすい夏場などは蒸れて「あせも」や「浸軟」の原因になるため、こまめな観察が必要です。
パターンB:皮膚がふやけ気味(浸軟)の場合 → 通気性テープ・包帯
ガーゼの四隅を紙テープや不織布テープで止める、あるいは包帯で巻く方法です。適度な通気性があるため、過度な湿潤を防げます。ただし、フィルムに比べて乾燥しやすいので、交換頻度を上げるか、ローションを多めにする必要があります。
パターンC:オムツ内でズレやすい場合 → ネット包帯の併用
仙骨部などは、オムツの上げ下げでガーゼがズレたりめくれたりしやすい場所です。テープで固定した上から、さらに伸縮性のあるネット包帯を使用したり、大きめのパッドで覆ったりして、摩擦によるズレを防止します。
貼付時間の目安とスケジューリング
「一日中貼りっぱなし」はリスクがあります。基本的には「1日1回〜2回」の交換が推奨されます。
- 交換のタイミング:
入浴や清拭(体を拭く)のタイミングに合わせるのが最も効率的です。古いガーゼを剥がして洗い流し、清潔な状態で新しいものを貼ることができます。 - 貼付時間:
基本的には24時間貼付しても問題ありませんが、夏場や発汗が多い場合は、1日2回(朝・晩)交換することで、皮膚の清潔を保ち、感染リスクを下げることができます。 - 長時間放置のリスク:
数日間交換せずに放置すると、ガーゼ内で細菌が爆発的に増殖したり、ローションが乾燥してガーゼがカチカチに固まり、皮膚に食い込んで新たな傷を作ったりすることがあります。必ず毎日交換しましょう。
患者さんを泣かせない!痛くない剥がし方と交換時のケア
ローションガーゼのケアで患者さんが最も恐怖を感じるのは「剥がす時」です。乾燥して固着したガーゼを無理やり剥がす行為は、拷問にも等しい痛みを与え、せっかく形成された新しい皮膚組織(上皮)を破壊してしまいます。このセクションは、患者さんとの信頼関係を守るために最も重要なパートです。
現役皮膚・排泄ケア認定看護師のアドバイス
「私も新人時代、乾燥したガーゼを『バリッ』と剥がして出血させてしまい、患者さんに『痛い!』と叫ばれた苦い経験があります。もしガーゼが張り付いていたら、絶対に無理に引っ張らないでください。生理食塩水や微温湯をガーゼの上からたっぷりとかけて、十分にふやかしてから『皮膚を押さえつつ、ゆっくり』剥がしましょう。急がば回れ、です。」
交換手順のステップバイステップ
1. 既存ガーゼの除去(剥離刺激を抑える)
まず、固定しているテープを剥がします。この時、皮膚を引っ張り上げないように、テープを折り返すようにして180度の角度でゆっくり剥がします。
次にガーゼを剥がしますが、抵抗を感じたらすぐにストップします。ガーゼの上から微温湯(ぬるま湯)や生理食塩水をかけ、十分に湿らせて柔らかくしてから、ゆっくりと除去します。
2. 創部・周囲皮膚の洗浄
古いローションや滲出液、垢などを洗い流します。基本的には、よく泡立てた石鹸(弱酸性が望ましい)で優しく泡洗浄し、微温湯で十分に洗い流します。ゴシゴシこする必要はありません。洗浄後は、清潔なタオルやキッチンペーパーで水分を優しく押さえるように拭き取ります。
3. 皮膚状態の観察
新しいガーゼを貼る前に、必ず観察します。
「昨日に比べて赤みは引いているか?」
「周囲の皮膚が白くふやけていないか?」
「嫌な臭いや膿はないか?」
これらをチェックし、記録に残すことが治療の第一歩です。
4. 新しいローションガーゼの貼付
前述の手順で作った新しいガーゼを貼付します。
「ガーゼが張り付く」を防ぐための対策
毎回ガーゼが張り付いてしまう場合は、現在のケア方法が乾燥のスピードに追いついていません。以下の対策を講じてください。
- ローションの量を増やす: 単純ですが効果的です。滴る寸前まで量を増やします。
- ガーゼの枚数を増やす: 厚みを増すことで保水力を高めます。
- 交換頻度を見直す: 24時間持たないのであれば、12時間ごとに交換します。
- サンドイッチ法(※要医師相談): ガーゼの創面に当たる側に、ワセリンやプラスチベースなどの油分を薄く塗布してからローションを含ませる、あるいはガーゼの上に軟膏を塗ってから貼ることで、離解性(剥がれやすさ)を高めるテクニックです。
周囲皮膚の「浸軟(ふやけ)」対策
逆に、周囲の皮膚が白くふやけてしまっている場合は、水分過多です。
- ガーゼサイズの見直し: 患部ギリギリのサイズに小さくカットします。
- 撥水性クリームの活用: 患部の周囲(健康な皮膚)にワセリンや撥水性クリームを塗っておくことで、ローションが周囲に広がるのを防ぎ、健康な皮膚を保護できます。
- 一時中断の判断: 浸軟がひどい場合は、一度ODTを中止し、通常の軟膏塗布や通気性の良いガーゼ保護のみに切り替えて、皮膚を乾燥させる時間を設けることも必要です。
絶対にやってはいけない「禁忌」とトラブル対応
ローションガーゼは効果が高い反面、使い方を誤ると重篤なトラブルを引き起こします。以下の状況では実施してはいけません。
感染徴候がある創傷への使用禁止
これが最大の禁忌です。密封療法は、細菌にとっても快適な「温かくて湿った環境」を提供してしまいます。
- 感染のサイン: 創部や周囲が赤く腫れ上がっている、熱を持っている、ズキズキ痛む、ドロっとした膿が出ている、悪臭がする。
- 対応: 直ちにローションガーゼを中止し、医師に報告してください。感染創には、洗浄と抗菌作用のある軟膏(ゲーベンクリームやユーパスタなど)や、浸出液を吸収するドレッシング材への変更が必要となります。
壊死組織がある場合
創面が黒いカサブタ(黒色壊死)や、黄色いドロドロした組織(黄色壊死)で覆われている場合、ローションガーゼ単独では効果が薄い、あるいは感染リスクが高まることがあります。壊死組織がある場合は、デブリードマン(壊死組織の除去)や、壊死組織を溶かすための専用の軟膏処置が優先されることが多いです。自己判断でODTを行わず、WOCナースや医師に相談しましょう。
かゆみ・発赤が出た場合の対応(接触皮膚炎)
ローションガーゼを開始してから、「痒みが強くなった」「貼っていた形に赤くなった」という場合は、使用しているローションやテープに対するアレルギー(接触皮膚炎)の可能性があります。
現役皮膚・排泄ケア認定看護師のアドバイス
「『良かれと思って』漫然と続けることが一番のリスクです。1週間続けても改善が見られない、あるいは悪化した場合は、ケア方法が合っていない可能性があります。勇気を持って中止し、医師や上長に報告・相談しましょう。早期の軌道修正が、患者さんの皮膚を守ります。」
在宅・家族指導への応用ポイント
病院では看護師が行いますが、在宅療養ではご家族やヘルパーさんがケアを担うこともあります。専門的な手技を、いかに安全かつ簡易的に指導できるかが鍵となります。
家族でもできる!簡易版作成手順
ご家族に指導する際は、完璧な清潔操作(滅菌手袋など)を求めるのは現実的ではありません。「これだけは守ってほしい」というポイントを絞って伝えます。
- 手洗いの徹底: 処置の前後には必ず石鹸で手を洗うこと。
- 清潔な環境: ガーゼを置くお皿は、洗って乾かした清潔なものを使うか、食品用ラップを敷いてその上で作業してもらう。
- 水道水の使用可否: 医師の指示によりますが、洗浄は微温湯のシャワーや、ペットボトルに入れた水道水で洗い流すだけで十分効果的であることを伝えます。
訪問看護が入らない日の管理方法
毎日訪問看護が入れるわけではありません。訪問がない日の対応を決めておく必要があります。
- 交換できない日は「保湿クリームのみ」:
ご家族が高齢で細かい作業が難しい場合、「訪問の日は看護師がローションガーゼ、家族だけの日は保湿クリームをたっぷり塗るだけ」というように、ハードルを下げたプランを提案します。 - 写真付き手順書の作成:
口頭説明だけでなく、実際の物品の写真を貼った手順書をベッドサイドに置いておくと、ご家族やヘルパーさんが迷わずに済みます。
現場の疑問を解決!ローションガーゼQ&A
最後に、現場の看護師さんからよく寄せられる細かい疑問にお答えします。
Q. ヒルドイドローション以外(化粧水など)でも代用できますか?
A. 基本的には医師の処方薬を使用してください。
市販の化粧水は、香料や防腐剤が含まれており、傷ついた皮膚には刺激となる可能性があります。市販薬で代用する場合は、薬剤師に相談の上、添加物の少ない敏感肌用の保湿ローションや、白色ワセリンなどを選択するのが無難です。
Q. ガーゼの代わりにティッシュやコットンを使ってもいいですか?
A. 推奨されません。
ティッシュペーパーは水に濡れるとボロボロになり、繊維が創部に残って感染の原因(異物)になります。コットン(脱脂綿)も繊維が残りやすいです。必ず医療用の不織布ガーゼを使用してください。緊急避難的に代用する場合は、キッチンペーパーの方がまだ繊維残りが少ないですが、あくまで一時的な処置に留めてください。
Q. ステロイド軟膏と併用する場合はどういう順番ですか?
A. 一般的には「ステロイド塗布 → ローションガーゼ」の順です。
強い炎症がある場合、ステロイド軟膏を患部に塗布し、その上からローションガーゼで覆うことで、ステロイドの吸収率を高める(ODT効果)手法が取られることがあります。ただし、これはステロイドの副作用も強く出る可能性があるため、必ず医師の具体的な指示(混合診療の規定含む)に従ってください。
▼詳細解説:混合使用時の注意点
ステロイド外用薬と保湿剤の重ね塗り順序については諸説ありますが、ODT効果を狙う場合、先にステロイドを塗布し、その上からローションガーゼで覆うことで吸収率を高める手法が一般的です。逆に、広範囲に保湿剤を塗ってから、炎症部位にだけステロイドを重ねる方法もあります。目的によって順序が変わるため、自己判断せず主治医の指示を確認してください。
まとめ:正しいローションガーゼ法で患者さんのQOLを守ろう
ローションガーゼは、正しい知識と技術を持って行えば、カサカサで痒みに苦しむ患者さんの皮膚を劇的に改善できる、看護師にとって強力な武器となります。しかし、その効果の裏には「感染」や「固着」といったリスクも潜んでいます。
最後に、明日からのケアで必ず確認してほしいポイントをチェックリストにまとめました。
現役皮膚・排泄ケア認定看護師のアドバイス
「ローションガーゼは、正しく行えば劇的に皮膚状態を改善できる強力なケアです。カサカサだった肌が潤い、患者さんの『痒い』という訴えが減ることは、看護する私たちにとっても大きな喜びです。ぜひこの記事の手順をマスターして、自信を持ってケアにあたってください。」
ローションガーゼ実施手順・最終チェックリスト
- [ ] 観察: 感染徴候(発赤・腫脹・膿)がないか確認したか?
- [ ] 水分量: ガーゼは持ち上げた時に「ポタッ」と落ちるまでヒタヒタに含ませたか?
- [ ] サイズ: 患部より一回り大きいサイズにカットし、3〜5枚重ねて厚みを出したか?
- [ ] 密着: 貼付時に気泡を抜き、凹凸にしっかりフィットさせたか?
- [ ] 固定: 皮膚状態に合わせた二次ドレッシング(フィルムorテープ)を選択したか?
- [ ] 計画: 次回の交換時間を決め、古いガーゼを剥がす時の「ふやかし」準備を想定しているか?
このチェックリストを心に留め、患者さん一人ひとりの皮膚状態に合わせた丁寧なケアを実践してください。
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