突然の訃報に接し、深い悲しみの中で準備を進めなければならない状況、お察しいたします。「香典袋はどれを選べばいいのか」「表書きは薄墨で書くべきか」「中袋の金額はどう書くのが正解か」。普段頻繁に行うことではないからこそ、いざという時に迷ってしまうのは当然のことです。
結論から申し上げますと、香典袋は「包む金額に見合った袋」を選び、四十九日前であれば「御霊前(浄土真宗を除く)」とし、薄墨の筆ペンで書くのが基本です。この基本ルールさえ押さえておけば、大きなマナー違反にはなりません。
しかし、相手の宗教や地域の慣習、あるいは手持ちの筆記用具の状況など、現実は教科書通りにいかないことも多々あります。そこで本記事では、葬祭ディレクター1級の資格を持つ私が、現場での経験に基づき、「失敗しないための香典袋の準備」について、基本からイレギュラーな対応まで徹底的に解説します。
この記事でわかることは以下の3点です。
- 【図解・表】表書き・中袋(金額・住所)の正しい書き方と筆ペンのコツ
- 金額・宗教別に失敗しない香典袋の選び方(コンビニ対応)
- お金の入れ方や袱紗(ふくさ)の包み方など、当日恥をかかないマナー
スマートフォンで確認しながら、そのまま書き進められるように構成しています。故人を偲ぶ大切な場において、あなたが自信を持って参列できるよう、最後までサポートさせていただきます。
【早見表あり】失敗しない香典袋の選び方|金額と宗教がポイント
香典袋(不祝儀袋)を用意する際、最初に直面するのが「種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」という問題です。文房具店やコンビニの棚には、水引が印刷されたシンプルなものから、豪華な飾り紐がついた大きなものまで様々並んでいます。
ここで最も重要な判断基準は、「包む金額」と「袋の格」を合わせること、そして「相手の宗教」に合わせることの2点です。中身の金額に対して袋が豪華すぎたり、逆に高額を包むのに印刷の袋を使ったりすることは、マナーとして好ましくありません(「不釣り合い」とみなされます)。
まずは、以下のマトリクス図(早見表)を見て、ご自身が用意すべき香典袋のタイプを特定してください。
▼【金額別・宗教別】香典袋の選び方マトリクス表
| 包む金額 | 水引の種類 | 袋の特徴・選び方 | 宗教別の注意点 |
|---|---|---|---|
| 3,000円 ~5,000円 |
印刷された水引 (黒白・双銀) |
最も簡易的なタイプ。 コンビニでも購入可。 包みが封筒状になっているもの。 |
仏教:蓮の絵OK 神道・キリスト:無地・白 |
| 10,000円 ~30,000円 |
実物の水引 (黒白・双銀) |
水引が実際に結ばれているタイプ。 奉書紙(上包み)と中袋のセット。 最も一般的。 |
仏教:蓮の絵OK 他:無地・白 ※関西は黄白の場合あり |
| 30,000円 ~50,000円 |
双銀の水引 (7本~10本) |
高級和紙を使用。 紙質が厚く、サイズも一回り大きい。 黒白よりも「双銀」が格式高い。 |
全宗教共通で「双銀」が無難。 蓮の絵は仏教のみ。 |
| 100,000円 以上 |
双銀・装飾付き (大判) |
手のひらより大きい大判サイズ。 水引も複雑なデザインや太いもの。 中袋も特厚。 |
高級和紙の無地が基本。 桐箱入りの場合も。 |
包む金額で決まる!水引と袋の種類の選び方
香典袋選びで最も失敗しやすいのが、「とりあえず高い袋を買っておけば失礼がないだろう」という思い込みです。これは誤りです。例えば、3,000円や5,000円の香典を包むのに、豪華な双銀の水引がついた大判の袋を使うことは、「中身が少ないのに見栄を張っている」あるいは「常識知らず」と受け取られかねません。逆に、3万円以上包むのに印刷の水引の袋を使うのも、相手を軽んじているように見えてしまいます。
水引(みずひき)の色と結び方についても基本を押さえておきましょう。
- 結び方:必ず「結び切り(あわじ結び)」を選びます。これは、一度結んだらほどけないことから、「二度と繰り返さないでほしい(不幸は一度きりで良い)」という意味が込められています。蝶結びは「何度あっても良い(出産や入学など)」慶事用ですので、絶対に使用してはいけません。
- 色:一般的には「黒白(くろしろ)」が基本です。金額が上がると、すべて銀色の「双銀(そうぎん)」が使われます。
- 地域差(関西など):京都や大阪などの関西地方や北陸の一部では、法要(四十九日以降)や、場合によっては通夜・告別式でも「黄白(きしろ)」の水引を使う文化があります。ただし、全国的な参列者が集まる葬儀であれば、黒白や双銀を選んでも失礼にはあたりません。
宗教・宗派による違い(仏式・神式・キリスト教式)
相手の宗教がわかっている場合は、その宗教に適したデザインの袋を選びます。しかし、訃報の段階では宗教が不明なことも多いでしょう。その場合は、「無地」で「黒白または双銀の水引」の袋を選ぶのが最も安全です。
- 仏教(仏式):
- 袋のデザイン:無地、または「蓮(ハス)の花」が薄墨で描かれたものや型押しされたものが使えます。蓮は仏教の象徴ですので、他宗教ではNGです。
- 水引:黒白、双銀。
- 神道(神式):
- 袋のデザイン:必ず「無地」を選びます。蓮の絵は不可です。
- 水引:双銀、双白(白一色)、黒白。
- キリスト教式:
- 袋のデザイン:「百合(ユリ)の花」や「十字架」が描かれた専用の封筒(水引なし)が正式です。
- 水引:基本的に水引は使いませんが、手に入らない場合は「無地の白封筒」または「双銀の水引(無地袋)」で代用することが広く許容されています。黒白の水引は避ける傾向にあります。
コンビニや100均で買う際の注意点とおすすめ商品
急な訃報で、深夜や早朝にコンビニエンスストアや100円ショップで香典袋を購入することもあるでしょう。これ自体は全く失礼ではありません。最近のコンビニ等の商品は質も良く、急場をしのぐには十分です。
ただし、購入時には以下の点に注意して商品を手に取ってください。
- パッケージの「目安金額」を必ず確認する
商品の裏面やパッケージの端に、「目安:3,000円~10,000円」などと記載されています。ご自身が包む予定の金額と合致しているか確認してください。 - 「御霊前」と印刷済みのものを選ぶか、無地を選ぶか
多くの商品には、最初から「御霊前」「御仏前」などの短冊が入っています。宗教が不明なら、「御霊前」の短冊が入っているもの、または無地の短冊が入っているものを選びましょう。浄土真宗であることが確実な場合は「御仏前」が必要ですので、短冊の種類を確認してください。 - 筆ペンも同時に購入する
香典袋だけ買って、書くものがボールペンしかないという事態は避けましょう。コンビニには「薄墨(うすずみ)」と「濃墨(こずみ)」が一本になったツインタイプの筆ペンが売られていることが多いので、これを1本買っておくと非常に便利です。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「金額と袋の『格』が合っていないと失礼になる理由、それは『相手への敬意のバランス』が崩れるからです。中身が10万円なのに印刷の袋では『準備を怠った』印象を与え、中身が5千円なのに豪華な袋では『袋負け』してしまい、受け取ったご遺族が香典返し(お返し)の品を選ぶ際に『高額なものをいただいたのでは?』と無用な混乱を招く原因にもなります。袋選びは、単なる形式ではなく、ご遺族への配慮の一つなのです。」
香典袋の「表書き」の書き方|御霊前・御仏前の使い分け
袋を用意したら、次は表書き(おもてがき)です。ここが最も緊張する瞬間かもしれません。書き損じを防ぐためにも、まずは別の紙で一度練習してから本番に臨むことをおすすめします。
表書きには、大きく分けて「上段(名目)」と「下段(名前)」の2つの要素があります。
「御霊前」と「御仏前」どちらを書く?四十九日と宗派のルール
水引の上段に書く言葉は、宗教や時期によって異なります。間違えやすいポイントですので、以下の基準で判断してください。
- 基本は「御霊前(ごれいぜん)」
仏教(浄土真宗以外)、神道、キリスト教など、多くの宗教で通夜・告別式の際に使える最も一般的な表書きです。「故人の霊(みたま)の前に供える」という意味です。宗教がわからない場合は、「御霊前」とするのが最も無難な選択です。 - 四十九日法要以降は「御仏前(ごぶつぜん)」
仏教では、四十九日をもって霊が仏になると考えられています。そのため、四十九日法要や一周忌などでは「御仏前(御佛前)」と書きます。 - 【要注意】浄土真宗は最初から「御仏前」
浄土真宗(本願寺派、大谷派など)では、「亡くなると同時に阿弥陀如来の力によって仏になる(即身成仏)」という教えがあります。「霊」として彷徨う期間がないため、通夜・告別式の時点から「御霊前」は使わず、「御仏前(ごぶつぜん)」または「御香典」と書くのが正式なマナーです。
※相手の宗派が不明な場合の最適解
訃報の連絡で宗派までわからないことが大半です。その場合は、「御霊前」と書いて持参しても、現代では「マナー違反」と厳しく咎められることはほとんどありません。もしくは、宗教色を消した「御香典」(仏式のみ)や「御花料」(キリスト教式)という書き方もありますが、「御霊前」が最も汎用的です。
水引の下に書く「名前」の書き方(1名・連名・夫婦・会社名)
水引の下段には、贈り主(あなた)の名前を書きます。フルネームで、上段の文字よりも少し小さめに書くのがバランスよく見せるコツです。
| パターン | 書き方のポイント |
|---|---|
| 個人(1名) | 中央にフルネームで記載します。姓だけでは同姓の親戚などと区別がつかないため、必ず名を添えます。 |
| 夫婦連名 | 世帯主(夫)の氏名を中央右寄りに書き、その左側に妻の名前(名のみ)を添えます。 ※近年は夫婦別姓や共働きでそれぞれの関係で出す場合、それぞれ個別の封筒を用意するか、フルネームを2行で並べて書くことも増えています。 |
| 連名(3名まで) | 目上の人を一番右に書き、順に左へ並べます。順位がない場合は五十音順にします。 バランスを考え、3名までが限度です。 |
| 連名(4名以上・団体) | 表書きには代表者の氏名を中央に書き、その左下に「他一同」または「外一同」と小さく書きます。 重要:全員の氏名、住所、個別の金額を書いた「別紙(明細)」を必ず中に入れます。これがないと、お返しの際に遺族が困ります。 |
| 会社名入り | 氏名の右側に、少し小さめの文字で会社名・役職名を書きます。会社として出す場合は、中央に「〇〇株式会社 代表取締役 〇〇〇〇」と書きます。 |
なぜ「薄墨」を使うのか?普通の黒ペンやボールペンはNG?
香典の表書きは、「薄墨(うすずみ)」の筆または筆ペンで書くのが正式なマナーです。
- 薄墨の意味
「悲しみの涙で墨が薄まってしまった」「急なことで墨を磨る時間もなく駆けつけた」という哀悼の意と急ぐ気持ちを表現しています。 - 普通の黒墨(濃墨)はいつ使う?
四十九日法要以降は、心の整理がついたという意味合いから、通常の濃い黒墨を使います。また、中袋(住所や金額)については、読みやすさを優先して濃い黒ペン(サインペンやボールペン)で書いても問題ありません。 - ボールペンやサインペンは許されるか?
表書きにボールペンを使うのは、基本的にマナー違反とされています。事務的な印象を与え、敬意が感じられないためです。どうしても筆ペンがない場合は、太めの黒サインペンで代用することもありますが、できる限りコンビニ等で筆ペン(薄墨)を入手することをおすすめします。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「『宗教が全くわからない、聞ける雰囲気でもない』という相談をよく受けます。その場合の最も無難な表書きは、やはり『御霊前』です。浄土真宗の方に『御霊前』を出してしまっても、参列者のマナーとして『故人を悼む気持ち』があれば、決して失礼だと怒られるようなことではありません。形式にこだわりすぎて参列を躊躇するより、まずは駆けつけることが大切です。」
香典袋の「中袋(中包み)」の書き方|金額・住所・横書き対応
表書き以上に実務的で、かつ遺族にとって重要な情報源となるのが「中袋(なかぶくろ)」です。中袋には、包んだ金額と、贈り主の住所・氏名を正確に記載する必要があります。ここが抜けていると、遺族は「誰からいくら頂いたか」が分からず、香典帳の整理やお返しの手配ができなくなってしまいます。
表面:金額の正しい書き方と「大字(旧字体)」早見表
中袋の表面、中央部分には包んだ金額を縦書きで記します。この際、数字の改ざんを防ぐため、また格式を重んじるために「大字(だいじ)」と呼ばれる漢数字の旧字体を使うのがマナーです。
通常の漢数字(一、二、三)でも間違いではありませんが、線一本で数字を書き換えられてしまうため、慣習として大字が推奨されています。金額の頭には「金」、末尾には「圓(円)」「也(なり)」をつけます。「也」はつけてもつけなくても構いません。
▼【保存版】よく使う漢数字(旧字体)変換リスト
| 算用数字 | 通常漢数字 | 大字(旧字体)※推奨 | 書き方の例 |
|---|---|---|---|
| 3,000 | 三千 | 参阡(または参千) | 金 参阡圓 |
| 5,000 | 五千 | 伍阡(または伍千) | 金 伍阡圓 |
| 10,000 | 一万 | 壱萬 | 金 壱萬圓 |
| 20,000 | 二万 | 弐萬 | 金 弐萬圓 |
| 30,000 | 三万 | 参萬 | 金 参萬圓 |
| 50,000 | 五万 | 伍萬 | 金 伍萬圓 |
| 100,000 | 十万 | 拾萬 | 金 拾萬圓 |
※「円」は「圓」と書くのが正式ですが、最近は「円」でも問題ありません。
※「阡(千)」は「千」のままでも許容されますが、「壱、弐、参、伍、萬」は積極的に使いましょう。
裏面:住所と氏名の書き方(郵便番号は書くべき?)
中袋の裏面には、必ず郵便番号、住所、氏名を書きます。表書き(外袋)に名前を書いたからといって省略してはいけません。遺族が香典の整理をする際、外袋と中袋を分けてしまうことが多いため、中袋に情報がないと誰のものか分からなくなるからです。
- 位置:裏面の左下に縦書きで記入します。
- 郵便番号:書いたほうが親切です。「〒」マークを使い、算用数字で横書きしても、漢数字で縦書きしても構いません。
- 筆記具:中袋に関しては、筆ペン(薄墨)である必要はありません。文字が潰れて読めなくなるのを防ぐため、黒のサインペンやボールペン(濃墨)を使って、はっきりと読みやすく書くことが推奨されます。
【ケース別】中袋がないタイプや横書き欄がある場合の書き方
市販の香典袋には様々なタイプがあります。状況に合わせて柔軟に対応しましょう。
- 中袋がないタイプ(封筒型)の場合
簡易的な印刷の香典袋には中袋がついていないことがあります。その場合は、袋の裏面の左下に、住所と金額を直接記入します。金額の書き方は「金 伍阡圓」のように縦書きします。 - 横書きの記入欄がある場合
中袋に「金額:___円」「住所:___」といった横書きのプリント枠がある場合は、無理に縦書きにする必要はありません。枠に従って、算用数字(10,000円など)や普通のペンで記入してください。枠があるのに旧字体や筆ペンで書くと、かえって読みにくくなることがあります。
筆ペンが苦手な人へ!きれいに見せるコツと代用ペンの可否
「字に自信がない」「筆ペンだと震えてしまう」という方も多いでしょう。上手に見せるためのちょっとしたコツがあります。
- 文字の間隔を詰める:文字と文字の間が開きすぎると間延びして見えます。少し詰め気味に書くとまとまりが出ます。
- 「御霊前」を大きく、「名前」を小さく:名前を謙虚なサイズにすることで、全体のバランスが整います。
- フェルトペンタイプの筆ペンを使う:毛筆タイプ(穂先が柔らかいもの)は扱いが難しいです。ペン先が硬いフェルトペンタイプや、筆文字サインペンなら、普段のペンの感覚で書くことができます。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「中袋への住所書き忘れ、これが実は遺族を一番困らせる『隠れマナー違反』No.1です。葬儀後は膨大な事務処理に追われますが、住所がないとお礼状が出せず、古い年賀状を探したり知人に問い合わせたりと、多大な手間をかけてしまいます。達筆である必要はありません。ボールペンで構いませんので、住所と氏名は『誰が見ても読める字』で丁寧にお書きください。」
お金の入れ方と包み方のマナー|お札の向きと新札の扱い
表書きの準備ができたら、お金を包みます。ここにも「弔事ならでは」の作法があります。慶事(結婚式など)とは逆のルールが多いので注意が必要です。
お札の向きは「裏向き」が基本?肖像画の位置を図解
香典にお札を入れる際は、「顔を伏せる」=「悲しみで顔を上げられない」という意味を込めて、お札の向きを揃えます。
- お札の表裏:肖像画(福沢諭吉や渋沢栄一など)がある方が「表」、ない方が「裏」です。
- 入れる向き:「お札の裏側」が「中袋の表側(金額を書いた面)」に来るように入れます。つまり、中袋の表から見て、お札が裏向きになっている状態です。
- 上下の向き:肖像画が「底(下)」に来るように入れます。封を開けた時に、肖像画が最初に見えないようにするためです。「顔を伏せて、さらに下を向く」と覚えると良いでしょう。
※2枚以上入れる場合は、すべてのお札の向きを揃えてください。
新札はNG?手持ちが新札しかない場合の対処法
結婚式のご祝儀では「新札(ピン札)」を用意するのがマナーですが、香典では新札はNGとされています。「あらかじめ不幸が起きることを予想して準備していた」と思わせないためです。
基本的には、使い古したお札(旧札)を使います。ただし、あまりにも汚れていたり、破れかけているお札は失礼にあたるため避けましょう。
手元に新札しかない場合の対処法:
現代ではATMでおろすと新札が出てくることも多く、旧札を用意できないこともあります。その場合は、新札にわざと折り目をつけてから包めば問題ありません。お札の中央で一度折り、さらに端を少し折るなどして、「使用感」を出してから中袋に入れます。
外包みの折り順(上から下か、下から上か)と慶事との違い
中袋を外包み(奉書紙)で包む際、裏側の折り返し方(重なり方)に厳格なルールがあります。これを間違えると「慶事(お祝い)」の意味になってしまうため、大変失礼になります。
- 正しい折り方(弔事):
「上側の折り返し」を「下側の折り返し」の上に重ねます。
意味:「悲しみが流れ落ちるように」「頭を垂れて哀悼する」 - 間違った折り方(慶事):
下側を上に重ねる(受け口にする)。これは「幸せを受け止める」という意味で、結婚式などで使います。
覚え方として「喜びは上向き(下を折って上へ)、悲しみは下向き(上を折って下へ)」と記憶しておくと、現場で迷いません。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「お札の枚数に関して、『4(死)』や『9(苦)』のつく金額や枚数は避けるべきという『忌み数』の考え方があります。例えば4,000円や9,000円は避けます。しかし、連名で集めた結果、合計が2万円(偶数は割れるため避ける説もあるが、2万は一般的)や、どうしても端数が出る場合などは、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。ただ、個人で包む場合は、3千円、5千円、1万円、3万円、5万円、10万円といった切りの良い数字にするのがマナーです。」
【関係性別】香典の金額相場と準備のポイント
「いくら包めばいいのか」は、故人や遺族との関係性、そしてあなたの年齢によって変わります。少なすぎると失礼ですが、多すぎても「香典返し」の負担を遺族にかけてしまうため、相場を守ることが大切です。
▼【関係性×年代別】香典金額相場リスト
| 故人との関係 | 20代 | 30代 | 40代以上 |
|---|---|---|---|
| 両親・義父母 | 3万~5万円 | 5万~10万円 | 10万円~ |
| 兄弟・姉妹 | 3万~5万円 | 5万円 | 5万円~ |
| 祖父母 | 1万円 | 1万~3万円 | 3万~5万円 |
| おじ・おば | 1万円 | 1万~2万円 | 1万~3万円 |
| 職場の上司・同僚 | 5,000円 | 5,000円~1万円 | 1万円~ |
| 取引先関係 | 5,000円~1万円 | 1万円 | 1万円~ |
| 友人・知人 | 5,000円 | 5,000円~1万円 | 5,000円~1万円 |
| 隣人・近所 | 3,000円~5,000円 | 3,000円~5,000円 | 5,000円~ |
親族・親戚の場合(両親・兄弟・祖父母・おじおば)
親族の場合は、これまでの付き合いの深さによって金額が大きく変動します。特に「自分が喪主ではないが、かなり近い親族」の場合、葬儀費用の一部を負担する意味合いで多めに包むこともあります。親族間で事前に相談し、「孫一同で〇万円」「兄弟は一律〇万円」と取り決めておくのがトラブルを防ぐ最良の方法です。
会社関係・同僚・上司の場合
職場の関係者の場合、個人で出すか、部署や有志でまとめて出すかを確認しましょう。個人で出す場合の相場は5,000円〜1万円が一般的です。特にお世話になった上司であっても、あまり高額すぎるとかえって気を遣わせてしまいます。連名で出す場合は、一人当たり1,000円〜3,000円程度を集め、キリの良い金額にして包みます。
友人・知人・隣人の場合
友人の場合は5,000円〜1万円が相場です。親しい間柄であれば1万円、少し疎遠であれば5,000円程度と考えましょう。隣人や町内会の関係であれば、3,000円〜5,000円程度が一般的です。地域によっては「一律3,000円」などの取り決めがある場合もあるので、近所の方や町内会長に確認すると安心です。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「連名で香典を出す際、例えば5人で1万円を包むと、一人当たり2,000円になります。この場合、香典返しをどうするか(5等分できるお菓子などにするか、辞退するか)を別紙に書き添えておくと、ご遺族の手間が省けます。『尚、お返しのご配慮はなさいませんようお願い申し上げます』と一筆添えて辞退するのも、スマートな気遣いの一つです。」
当日の流れ!香典の持ち運び方と受付での渡し方
香典袋の準備ができたら、あとは当日の振る舞いです。香典袋をそのままカバンやスーツのポケットに入れて持参するのはマナー違反です。袋が折れたり汚れたりするのを防ぐため、必ず「袱紗(ふくさ)」に包んで持参しましょう。
袱紗(ふくさ)の色と包み方・出し方の手順
袱紗には「慶事用(暖色系)」と「弔事用(寒色系)」があります。
- 色:紺、深緑、グレー、紫など寒色系を使います。「紫」は慶弔両用として使えるため、1枚持っておくと非常に便利です。赤やピンク、オレンジなどは慶事用ですので、絶対に使用しないでください。
- 包み方(爪付き・風呂敷タイプ):
- 袱紗をひし形に広げ、中央より少し右寄りに香典袋を置きます(表書きが読める向き)。
- 右の角を中央へ折ります。
- 下の角を中央へ折ります。
- 上の角を中央へ折ります。
- 最後に左の角を折り込み、余った部分を裏へ回すか、爪で留めます。
※「右→下→上→左」の順です。左が一番上に来るようにします(慶事とは逆)。
- 金封袱紗(ポケットタイプ):
ブックカバーのように挟むだけのタイプです。左開きになるように(右側のポケットに香典袋を入れるように)使用します。
袱紗がない場合:
どうしても袱紗がない場合は、地味な色(白、黒、グレーなど)のハンカチで代用します。包み方の手順は風呂敷タイプと同じです。むき出しで持参するよりはずっと丁寧です。
受付での挨拶とお悔やみの言葉(例文あり)
会場に到着したら、受付に向かいます。コートなどは脱いでから列に並びましょう。
- 一礼する:受付の方の前に進み、軽く一礼します。
- お悔やみを述べる:
「この度はご愁傷様です」
「心よりお悔やみ申し上げます」
言葉に詰まる場合や、声が出にくい場合は、無言で深く一礼するだけでも気持ちは伝わります。大きな声でハキハキと挨拶するのは場にそぐわないため、小声でボソボソと話すくらいが丁度良いとされています。 - 香典を渡す:
袱紗から香典袋を取り出します。袱紗は手早くたたみ、受付台の上に置きます(または手に持ちます)。
香典袋の向きを、相手(受付係)から見て文字が読める向き(時計回りに180度回転)に変えます。
「御霊前にお供えください」と一言添えて、両手で差し出します。 - 記帳する:芳名帳(ほうめいちょう)に住所・氏名を記入します。
受付がない場合や、通夜・告別式どちらで渡すかの判断
- 通夜と告別式、どちらで渡す?
両方に参列する場合は、「通夜」で渡すのが一般的です。告別式では受付で「通夜で済ませております」と伝え、記帳のみ行います。告別式のみ参列する場合は、もちろん告別式で渡します。 - 受付がない場合(家族葬など)
受付が設けられていない場合は、拝礼の際に祭壇(焼香台)に置くか、遺族に直接手渡します。祭壇に置く際は、文字が自分から読める向き(自分側が下)で置くのが基本です(仏様に向けてお供えするため)。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「受付での所作は、意外と見られています。最もスマートなのは、自分の番が来る直前に袱紗から香典袋を取り出して袱紗の上に重ねて持ち、順番が来たらスムーズに向きを変えて差し出すことです。受付の前でゴソゴソとカバンを探ったり、袱紗から出すのに手間取ったりしないよう、列に並んでいる間に準備を整えておきましょう。」
香典袋に関するよくある質問(FAQ)
最後に、現場でよく耳にする「これってどうなの?」という疑問にお答えします。
Q. 香典袋に水引が印刷されているものは失礼ですか?
A. 金額によります。
3,000円~5,000円、高くても1万円程度までなら、印刷の水引でも全く失礼ではありません。むしろ少額なのに立派な水引がついている方が不自然です。ただし、3万円以上包む場合は、実物の水引がついた袋を選びましょう。
Q. 中袋に金額を書く欄が横書きになっていますが、算用数字でもいいですか?
A. はい、算用数字で大丈夫です。
横書きの欄(「金___円」)がある場合は、「金 5,000 円」や「10,000」のように算用数字(アラビア数字)で書くことが想定されています。無理に漢数字で書く必要はありません。
Q. 会社名義で出す場合、名刺を貼っても良いですか?
A. 貼るための加工がある場合や、地域によってはOKですが、基本は手書きです。
一部の香典袋には名刺ポケットがついているものがあります。また、法人関係の参列が多い社葬などでは名刺を出すのが通例です。しかし、一般的な個人葬では、名刺を貼るだけでなく、表書きや中袋にもしっかりと記入するのが丁寧なマナーです。名刺はあくまで補助的なものと考えましょう。
Q. 家族葬と言われましたが、香典は持参すべきですか?
A. 「香典辞退」の明記がなければ持参し、現場で判断します。
訃報の案内に「御香典の儀は固くご辞退申し上げます」と書かれていれば、持参しません。無理に渡すのはマナー違反です。記述がない、または「儀礼的なことは省略」といった曖昧な表現の場合は、念のため用意して持参し、受付の様子を見て(または受付で確認して)判断するのが賢明です。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「最近増えている『香典辞退』のケース。ここで無理に渡そうとするのは、ご遺族の『お返しの手間を省きたい』という意向を無視することになり、かえって迷惑になります。辞退と言われたら、言葉通り受け取り、心からの合掌のみ捧げるのが現代のスマートなマナーです。」
まとめ:マナーは「故人を偲ぶ心」の表現。基本を押さえて参列しましょう
香典袋の選び方から書き方、渡し方まで解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。覚えることが多くて大変に感じるかもしれませんが、以下の3つのポイントさえ押さえておけば、大きな失敗はありません。
- 金額に見合った袋を選び、水引は「結び切り(黒白または双銀)」にする。
- 表書きは「御霊前」(浄土真宗は「御仏前」)、名前はフルネームで書く。
- 中袋には必ず「住所・氏名・金額」を書き、お札は裏向きに入れる。
マナーとは、形式を完璧に守ること自体が目的ではなく、「故人への敬意と、遺族への思いやり」を形にして伝えるための手段です。多少字が曲がってしまっても、筆ペンがなくてサインペンになってしまっても、そこに「お悔やみの気持ち」が込められていれば、それは十分に尊いものです。
この記事が、あなたの不安を取り除き、故人とのお別れの時間を大切に過ごす一助となれば幸いです。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「形式も大切ですが、最後に一番大切なのは『気持ち』です。完璧でなくても、駆けつけて手を合わせる、その行動自体が何よりの供養になります。どうぞ、肩の力を抜いて、心を込めてお見送りをしてきてください。」
▼香典袋準備の最終チェックリスト(出発前に確認!)
- [ ] 香典袋の格(水引の種類)は金額と合っていますか?
- [ ] 表書きは薄墨で、名前(フルネーム)まで書きましたか?
- [ ] 中袋の表に金額(大字推奨)を書きましたか?
- [ ] 【重要】中袋の裏に「住所」と「氏名」を書きましたか?
- [ ] お札の向きは揃っていますか?(肖像画が裏・下)
- [ ] お札は新札ではありませんか?(新札なら折り目をつけましたか?)
- [ ] 袱紗(ふくさ)または地味な色のハンカチを用意しましたか?
- [ ] 数珠(じゅず)は持ちましたか?(仏式の場合)
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