野球の試合中、一瞬にしてスタジアムの空気が変わるプレーがあります。それが「ダブルプレー(併殺・ゲッツー)」です。
結論から申し上げますと、ダブルプレーとは「一連のプレーで攻撃側の選手2人をアウトにすること」を指します。守備側にとっては、ピンチを一気に脱出し、相手の攻撃の流れを断ち切る最高のビッグプレーです。一方で攻撃側にとっては、チャンスが一瞬で潰える最悪の展開とも言えます。
この記事では、元社会人野球の内野手として数々のダブルプレーに関わってきた私が、以下の3つのポイントを中心に徹底解説します。
- 初心者でも分かるダブルプレーの基本的な意味と仕組み
- 実況でよく聞く「6-4-3」「4-6-3」などの数字の意味
- 元選手が教える、プロの凄技や観戦が10倍楽しくなる注目ポイント
ルールブックの定義だけでなく、グラウンドレベルで選手が何を考え、どのような高度な技術を使っているのかまで深掘りします。これを読めば、次の試合観戦で「ナイスゲッツー!」と叫ぶタイミングが完璧に分かるようになるはずです。
野球の「ダブルプレー」基礎知識!ゲッツーとの違いは?
このセクションでは、まず野球用語としての「ダブルプレー」の定義を明確にし、よく耳にする「ゲッツー」との違いや、試合における重要性について解説します。
ダブルプレー(併殺)の定義と成立する条件
ダブルプレー(Double Play)、日本語で「併殺(へいさつ)」とは、公認野球規則において「守備側が一連の動作で2人の攻撃側プレーヤーをアウトにすること」と定義されています。ここでの重要なキーワードは「一連の動作」という点です。
例えば、ノーアウトランナー一塁の場面で、バッターが内野ゴロを打ちました。ショートがボールを捕り、二塁へ送球して一塁ランナーをアウトにし、さらに二塁ベースに入ったセカンドが一塁へ転送してバッターランナーもアウトにする。これが最も典型的なダブルプレーです。この間、プレーは途切れることなく連続して行われています。
成立するための条件としては、以下の要素が揃う必要があります。
- アウトカウント:ノーアウト(無死)またはワンアウト(一死)であること。ツーアウト(二死)からは3つ目のアウトを取った時点でイニングが終了するため、ダブルプレーは成立しません。
- ランナーの状況:塁上に少なくとも1人のランナーがいること。ランナーがいない状態でバッターがアウトになっても、それは単なる「ワンアウト」です。
- 打球の性質:多くの場合、内野ゴロ、ライナー、または外野フライがきっかけとなります。
初心者のうちは「2つ同時にアウトになること」と覚えておいて問題ありませんが、厳密には「連続したプレーの中で2つのアウトが成立すること」と理解しておくと、後述する複雑なケースも理解しやすくなります。
「ゲッツー」や「併殺打」とは何が違うの?(用語の使い分け)
野球中継を見ていると、「ダブルプレー」という言葉と同じくらい、あるいはそれ以上に「ゲッツー」という言葉を耳にすると思います。また、記録上の用語として「併殺打」という言葉も出てきます。これらは基本的に同じ事象を指していますが、ニュアンスや使われる場面が異なります。
まず「ゲッツー」ですが、これは英語の“Get Two”(2つ取れ!)から来た和製英語に近い俗語です。守備側の選手同士が「ゲッツー狙うぞ!」「ゲッツーシフト!」と声を掛け合う際によく使われます。意味としてはダブルプレーと全く同じですが、より現場の掛け声や会話で使われるカジュアルな表現と言えるでしょう。
一方、「併殺打(へいさつだ)」は、公式記録上の用語です。バッターがゴロを打ってダブルプレーになった場合、そのバッターには「併殺打」という記録がつきます。これは打率を下げるだけでなく、チームのチャンスを潰したというネガティブな指標としても扱われます。ただし、ライナーで飛び出したランナーがアウトになった場合や、バント失敗によるダブルプレーなどは、バッターに「併殺打」の記録がつかない場合もあります。
まとめると、以下のようになります。
| 用語 | 意味・ニュアンス | 使用シーン |
|---|---|---|
| ダブルプレー | 正式名称。2つのアウトを取るプレー全般。 | 実況、解説、一般的な会話 |
| 併殺(へいさつ) | ダブルプレーの日本語訳。 | 新聞記事、ルールブック |
| ゲッツー | “Get Two”由来の現場用語。 | 選手間の掛け声、ファンの会話 |
| 併殺打 | 打者に記録される成績項目。 | スコアブック、個人成績表 |
なぜ守備側は喜び、攻撃側はガッカリするのか?(試合への影響力)
ダブルプレーは、単にアウトが2つ増えるという以上の大きな意味を試合にもたらします。野球は「流れ(モメンタム)」のスポーツと言われますが、ダブルプレーはその流れを劇的に変える力を持っているのです。
守備側にとってのメリットは計り知れません。例えば「ノーアウト満塁」という大ピンチの場面を想像してください。ここでヒットを打たれれば2点、3点と入る可能性があります。しかし、ここで内野ゴロによるダブルプレー(ホーム→一塁、あるいは二塁→一塁)が成立すれば、一瞬にして「ツーアウト」となり、ランナーも減ります。ピッチャーの投球数も節約でき、精神的な重圧から解放されます。ベンチに戻る守備陣の足取りは軽くなり、その後の攻撃のリズムも良くなることが多いのです。
逆に攻撃側にとっては悪夢です。「ノーアウトランナー一塁」で、これからチャンスを広げようという場面。ヒットエンドランや盗塁など様々な作戦が考えられる中で、最悪の結果がダブルプレーです。ランナーがいなくなり、アウトカウントが一気に2つ増える。チャンスが一瞬で「チェンジ目前」の状況に変わってしまうため、ベンチの雰囲気は重くなり、相手チームに主導権を渡してしまうことになります。
【詳細解説】ダブルプレーによる状況の変化(クリックして展開)
ダブルプレーが成立する前と後で、状況がどれほど劇的に変化するかを比較してみましょう。
| 状況 | プレー前(例) | プレー後(ダブルプレー成立) |
|---|---|---|
| アウトカウント | 無死(0アウト) | 二死(2アウト) |
| ランナー | 一塁(得点圏への期待大) | 走者なし(チャンス消滅) |
| 得点期待値 | 高い(約0.8〜0.9点) | 極めて低い(約0.1点以下) |
| ピッチャー心理 | 「打たれたらどうしよう」という不安 | 「よし、あと一人!」という自信 |
元社会人野球内野手・野球指導アドバイザーのアドバイス
「ダブルプレーが成立した瞬間、守備側の内野手たちは言葉では言い表せないほどの高揚感に包まれます。特にピッチャーにとっては『野手に助けられた』と強く感じる瞬間であり、チームの結束力が一気に高まるプレーなんです。逆に攻撃側としては、ダブルプレーだけは絶対に避けたい。だからこそ、ランナーは必死にスライディングをして守備を崩そうとしますし、バッターは全力で一塁へ走るのです」
実況の「6-4-3」とは?守備位置の番号を解読しよう
野球中継の実況アナウンサーが「ショートゴロ、6-4-3と渡ってダブルプレー!」と叫んでいるのを聞いたことはありませんか? 初心者の方にとって、この数字の羅列は暗号のように聞こえるかもしれません。しかし、この数字の意味を知るだけで、野球観戦の解像度は一気に上がります。
このセクションでは、野球のポジション番号と、それを組み合わせたダブルプレーのパターンについて解説します。
野球のポジションには「番号」がついている(1番〜9番の解説)
野球のスコアブック(記録)をつける際、各ポジションを漢字で書くと手間がかかるため、世界共通で「守備番号」が割り振られています。背番号とは全く関係なく、ポジションごとに固定された番号です。
まずはこの番号を覚えてしまいましょう。基本的には、ピッチャーから始まってバッテリー、内野、外野という順序で番号が振られています。
- 1:投手(ピッチャー)
- 2:捕手(キャッチャー)
- 3:一塁手(ファースト)
- 4:二塁手(セカンド)
- 5:三塁手(サード)
- 6:遊撃手(ショート)
- 7:左翼手(レフト)
- 8:中堅手(センター)
- 9:右翼手(ライト)
ここで注意が必要なのが、「4(セカンド)」と「6(ショート)」の関係です。グラウンド上の並び順で見ると、一塁(3)→二塁(4)→三塁(5)となりそうですが、ショート(6)がサード(5)とセカンド(4)の間に位置するため、番号順と実際の並び順が少し直感的ではありません。これは野球の歴史の中でショートというポジションが後から生まれた経緯などが関係していますが、とりあえずは「セカンドは4、ショートは6」と丸暗記してしまいましょう。
最も基本!「6-4-3」のダブルプレー(ショート→セカンド→ファースト)
「6-4-3(ロク・ヨン・サン)のダブルプレー」とは、ボールがショート(6)→セカンド(4)→ファースト(3)の順に渡って成立したダブルプレーのことです。
具体的な動きを見てみましょう。
- バッターがショート方向へゴロを打ちます。
- ショート(6)が捕球し、二塁ベースへ入ってきたセカンドへ送球(トス)します。
- セカンド(4)が二塁ベースを踏んでボールを捕り、一塁ランナーをアウトにします。
- その勢いのまま、セカンドが一塁へ送球します。
- ファースト(3)がボールを捕り、バッターランナーをアウトにします。
これが「6-4-3」です。右バッターが引っ張った強いゴロなどでよく見られる、最もオーソドックスで美しい形の一つです。ショートの軽快な捕球と、セカンドの素早い転送が見どころです。
二塁手の見せ場!「4-6-3」のダブルプレー(セカンド→ショート→ファースト)
次は「4-6-3(ヨン・ロク・サン)」です。これはボールがセカンド(4)→ショート(6)→ファースト(3)と渡ります。
具体的な動きは以下の通りです。
- バッターがセカンド方向へゴロを打ちます。
- セカンド(4)が捕球し、二塁ベースへ入ってきたショートへ送球(トス)します。
- ショート(6)が二塁ベースを踏んで一塁ランナーをアウトにします。
- ショートが一塁へ送球し、ファースト(3)が捕球してバッターランナーもアウトにします。
「4-6-3」の場合、ショートは走り込みながらベースに入り、一塁ランナーのスライディングを避けながら一塁へ強いボールを投げなければなりません。身体能力と強肩が求められる、ショートの見せ場でもあります。
サードの強肩が光る「5-4-3」のダブルプレー(サード→セカンド→ファースト)
「5-4-3(ゴー・ヨン・サン)」は、サード(5)→セカンド(4)→ファースト(3)の流れです。
サードゴロの場合、二塁ベースまでの距離が長いため、サードには長い距離を正確かつ強く投げる力が求められます。また、受けるセカンドも長い距離の送球を捕って素早くターンしなければなりません。「5-4-3」が綺麗に決まると、内野守備の堅さを強く印象づけることができます。
その他のパターン(3-6-3、1-6-3など)
他にも様々な組み合わせがあります。例えばピッチャーゴロからの「1-6-3(イチ・ロク・サン)」や、ファーストゴロからの「3-6-3(サン・ロク・サン)」などです。
「3-6-3」は少し複雑です。ファースト(3)がゴロを捕って二塁へ投げ、ベースに入ったショート(6)がアウトにし、再び一塁ベースに戻ったファースト(3)、あるいはベースカバーに入ったピッチャー(1)へ投げ返すというプレーです(ピッチャーがカバーに入った場合は3-6-1となります)。
【一覧表】よくあるダブルプレーの守備番号組み合わせリスト(クリックして展開)
| 表記 | ボールの動き(選手) | よくある打球 |
|---|---|---|
| 6-4-3 | 遊→二→一 | ショートゴロ |
| 4-6-3 | 二→遊→一 | セカンドゴロ |
| 5-4-3 | 三→二→一 | サードゴロ |
| 3-6-3 | 一→遊→一 | ファーストゴロ(一塁手がベースに戻る) |
| 3-6-1 | 一→遊→投 | ファーストゴロ(投手がベースカバー) |
| 1-6-3 | 投→遊→一 | ピッチャーゴロ(ショートがベースカバー) |
| 1-4-3 | 投→二→一 | ピッチャーゴロ(セカンドがベースカバー) |
| 2-6-3 | 捕→遊→一 | キャッチャー前のゴロ |
【図解】ダブルプレーが成立する3つの代表的パターン
ダブルプレーには、大きく分けて3つの成立パターンがあります。「ゴロ」「ライナー」「フライ」のどの打球かによって、ランナーの動きやアウトになる理由が異なります。ここを理解すると、「なぜ今アウトになったの?」という疑問が解消されます。
パターン1:フォースダブルプレー(ゴロを打って一塁・二塁でアウト)
これまで説明してきた「6-4-3」などは、全てこの「フォースダブルプレー」に分類されます。最も頻繁に発生するパターンです。
仕組み:
- 状況:ノーアウトまたはワンアウトで、ランナーが一塁にいる(満塁や一・二塁も含む)。
- ルール:バッターがゴロを打つと、バッターは走者となって一塁へ進まなければなりません。すると、もともと一塁にいたランナーは押し出される形で二塁へ進まなければならなくなります。これを「フォースの状態」と呼びます。
- アウトの取り方:フォースの状態にあるランナーをアウトにするには、ランナーにタッチする必要はありません。ボールを持った野手が、そのランナーが進むべき次の塁(この場合は二塁)を踏むだけでアウトになります。
つまり、野手はボールを捕って二塁ベースを踏み(1つ目のアウト)、そのまま一塁へ送球してバッターランナーより早く一塁手が捕球する(2つ目のアウト)ことで、ダブルプレーが完成します。
パターン2:ライナーでのダブルプレー(飛び出した走者が戻れずアウト)
鋭い打球(ライナー)が野手の正面に飛んだ場合に起こりやすいパターンです。
仕組み:
- 状況:ランナー一塁などで、ヒットエンドランがかかっていたり、ランナーが不用意にリードを大きく取っていたりする場合。
- プレーの流れ:バッターが鋭いライナーを打ちます。一塁ランナーは「ヒットだ!」と思ってスタートを切ります。しかし、打球は野手(例えばファースト)にダイレクトで捕球されます(1つ目のアウト)。
- 帰塁義務:フライやライナーが捕球された場合、ランナーは一度元の塁に戻ってタッチしなおさなければなりません(リタッチの義務)。
- 結末:飛び出してしまったランナーが元の塁に戻るより早く、野手がその塁にボールを送るか、自ら踏むと、ランナーはアウトになります(2つ目のアウト)。
このケースは一瞬で終わるため、観客も何が起きたか分からずに「えっ?」となることが多いプレーです。
パターン3:フライでのダブルプレー(タッチアップ失敗や判断ミス)
外野フライなどで起こるダブルプレーです。いわゆる「タッチアップ」に関連するプレーです。
仕組み:
- 状況:ノーアウトまたはワンアウト、ランナー三塁などで外野フライが上がった場合。
- プレーの流れ:外野手がフライを捕球します(1つ目のアウト)。三塁ランナーは捕球の瞬間を見届けてからホームへスタートを切ります(タッチアップ)。
- クロスプレイ:外野手が強肩で、素晴らしい送球(レーザービーム)をホームへ返球します。キャッチャーがボールを捕り、滑り込んでくるランナーにタッチしてアウトにします(2つ目のアウト)。
また、ランナーがフライ捕球前に飛び出してしまい、戻りきれずにアウトになるケースもこのパターンに含まれます。
元社会人野球内野手・野球指導アドバイザーのアドバイス
「初心者がまず見るべきは『ランナーの動き』です。打球が飛んだ瞬間、ランナーがどう動いているか。ゴロなら『進まなければならない』のでフォースプレーになりますが、ライナーやフライなら『戻らなければならない』あるいは『捕球後にスタート』という判断になります。このランナーの義務の違いが分かると、ダブルプレーの種類が自然と見えてきますよ」
少し複雑な「リバース」と「特殊なケース」を分かりやすく解説
基本を押さえたところで、少しマニアックですが知っていると自慢できる「応用編」のダブルプレーを紹介します。ニュースのハイライトなどで「リバースダブルプレー」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「リバースフォースダブルプレー」とは?(順番が逆になるケース)
通常のダブルプレー(6-4-3など)は、「前のランナー(二塁でアウト)」→「バッターランナー(一塁でアウト)」の順番で成立します。しかし、この順番が逆になるのが「リバースフォースダブルプレー」です。
よくあるのは、ファーストゴロのケースです。
- ファーストがゴロを捕り、すぐに一塁ベースを踏んでバッターランナーをアウトにします(1つ目のアウト)。
- その後、二塁へ送球します。
- ショートが二塁ベースに入ってボールを捕り、一塁から走ってきたランナーにタッチしてアウトにします(2つ目のアウト)。
ここで重要なのは、「タッチが必要になる」という点です。最初のアウトでバッターランナーがいなくなったため、一塁ランナーには「二塁へ進まなければならない義務(フォースの状態)」が消滅します。そのため、二塁ベースを踏むだけではアウトにならず、ランナーの体にボール(またはボールを持ったグラブ)をタッチしなければならないのです。
一塁手がベースを踏むタイミングと投げるタイミングの判断が非常に難しく、また受けるショートもタッチプレーが必要になるため、難易度の高いプレーです。
三振ゲッツー(三振+盗塁死など)
バッターが打たなくてもダブルプレーは成立します。代表的なのが「三振ゲッツー」です。
例えば、ランナー一塁でバッターが三振(1つ目のアウト)。その瞬間に一塁ランナーが盗塁を試みており、キャッチャーが二塁へ送球して盗塁を阻止(2つ目のアウト)。これも立派なダブルプレーです。守備側にとっては「打たせずに2アウトを取る」という最高の結果になります。
守備妨害によるダブルプレー(ランナーが守備を邪魔した場合)
これは少し珍しいケースですが、ルール上非常に厳格に定められています。
例えば、ダブルプレー崩しのために一塁ランナーが意図的に野手に向かってスライディングをしたり、送球を邪魔するために手を上げたりした場合、審判は「守備妨害(インターフェアランス)」を宣告します。
この場合、妨害をしたランナーがアウトになるのはもちろん、その妨害がなければアウトにできたであろうとみなされ、バッターランナーもアウトになります。つまり、妨害行為に対するペナルティとしてダブルプレーが強制的に成立させられるのです。
元社会人野球内野手・野球指導アドバイザーのアドバイス
「リバースダブルプレーの時、一塁手は一瞬の判断を迫られます。『先にベースを踏んでから投げるか』『投げた後にベースに戻るか』。先にベースを踏むと、二塁でのプレーがタッチプレーになり難易度が上がります。そのため、あえてベースを踏まずに二塁へ投げ(3-6-3)、フォースプレーのままダブルプレーを狙うことも多いんです。一塁手の頭脳プレーに注目してみてください」
ダブルプレーの間に得点は入る?間違いやすいルール判定
「ノーアウト満塁でダブルプレーになったけど、その間に3塁ランナーがホームインした。これって得点は入るの?」
これは少年野球の親御さんや初心者の方から非常によく受ける質問です。実は、アウトの取り方によって得点が認められる場合とそうでない場合があります。
基本原則:フォースプレーで3アウト目の場合は「得点なし」
最も重要な原則を覚ましょう。「第3アウトがフォースアウトの場合、そのプレー中にランナーがホームベースを踏んでいても得点は認められない」というルールです。
例:1アウト満塁、内野ゴロ(6-4-3のダブルプレー)
- ショートが捕球し二塁へ送球(2アウト目)。
- その間に3塁ランナーがホームイン。
- セカンドが一塁へ転送しバッターアウト(3アウト目)。
この場合、3塁ランナーがどんなに早くホームを駆け抜けていても、3つ目のアウトがバッターの一塁アウト(フォースアウト)であるため、得点は「ゼロ」です。アピールも必要なく、自動的に無得点となります。
例外:タッチプレーやリバース時の「第3アウト」のタイミング
一方で、第3アウトがフォースアウトではない場合(タッチアウトなど)は、「アウトの成立」と「ホームイン」のどちらが早かったか(タイムプレイ)で判定されます。
例:1アウト一・三塁、一塁ランナーが挟まれた場合
- 一塁ランナーが飛び出し、一・二塁間で挟殺プレー(ランダウン)になる。
- その間に3塁ランナーがホームへ走る。
- 3塁ランナーがホームイン。
- その直後に一塁ランナーがタッチアウト(3アウト目)。
この場合、第3アウトはタッチアウトであり、フォースアウトではありません。したがって、ホームインがタッチアウトより早ければ得点は認められます。
犠牲フライでのダブルプレー(タッチアップ)と得点の関係
1アウト満塁で外野フライが上がり、3塁ランナーがタッチアップしてホームイン、しかし2塁ランナーが飛び出していて帰塁できずにアウト(3アウト目)になった場合はどうでしょうか?
この場合も「タイムプレイ」となります。2塁ランナーがアウトになる瞬間よりも前に、3塁ランナーがホームベースを踏んでいれば得点は認められます。逆に、2塁ランナーのアウトの方が早ければ無得点です。審判がしっかりと見て判定します。
【判定フローチャート】得点が認められるかどうかの見分け方(クリックして展開)
3アウト目でチェンジになった際、そのプレー中にランナーがホームインしていた場合:
- Q1. 第3アウトはバッターの一塁アウト、またはフォースアウトですか?
- YES → 得点は認められません(無得点)
- NO → Q2へ
- Q2. 第3アウトが成立するより「前」にランナーはホームを踏みましたか?
- YES → 得点は認められます
- NO → 得点は認められません
元選手が教える!プロの「ここ」を見ると観戦が10倍面白い
ここからは、実際にグラウンドに立っていた元内野手の視点で、プロのダブルプレーの「凄み」を解説します。テレビ画面では一瞬で終わってしまうプレーの中に、どれほど高度な技術が詰め込まれているかを知ると、観戦の楽しみ方がガラリと変わります。
0.1秒を削る「握り替え」の職人芸
ダブルプレーは時間との戦いです。打ってからバッターが一塁に到達するまで、左打者の俊足選手なら4秒を切ります。このわずかな時間の間に、捕球、送球、捕球、送球を完了させなければなりません。
そこで重要になるのが、ボールをグラブから利き手に持ち替える「握り替え」の速さです。プロの内野手は、ボールを捕った瞬間に、いや捕る前から右手をグラブに添え、捕球と同時にボールを掴んでいます。さらに、縫い目に指をかける動作も一瞬で行います。
特に二遊間(セカンド・ショート)の選手は、「当て捕り」といって、グラブのポケットの深い部分ではなく、土手(手のひらに近い硬い部分)にボールを当て、跳ね返りをそのまま右手で掴むような高度な技術を使うこともあります。実況で「持ち替えが速い!」と言われたら、この職人芸が決まった証拠です。
ピボットマン(ベースに入る選手)の足運びと身のこなし
ダブルプレーの要となるのが、二塁ベースに入って送球を中継する選手、通称「ピボットマン」です。6-4-3ならセカンド、4-6-3ならショートがピボットマンになります。
彼らの足運びに注目してください。ベースを踏む足は右足か左足か、ベースのどの位置を踏んでいるか。これらは状況によって使い分けられています。さらに、捕球してから一塁へ投げるまでの体の回転(ターン)の速さは芸術的です。空中でジャンプしながら投げる「ジャンピングスロー」は、派手に見せるためではなく、勢いを殺さずに素早く投げるための合理的な技術なのです。
走者のスライディングを回避する「恐怖心」との戦い
私が現役時代、最も神経を使ったのがこれです。一塁ランナーはダブルプレーを阻止するために、二塁ベースに向かって強いスライディングをしてきます。ルールで危険なタックルは禁止されましたが、それでも至近距離で大人が突っ込んでくる迫力は相当なものです。
ピボットマンは、送球を捕り、ベースを踏み、一塁へ正確に投げなければなりませんが、同時に足元のランナーを避けなければ怪我をします。プロの選手は、スライディングが来ることを予測し、あえてジャンプして避けたり、ベースの端を使って接触を回避したりしています。この「恐怖心」に打ち勝ち、平然とプレーを成立させる精神力こそが、プロの凄みなのです。
元社会人野球内野手・野球指導アドバイザーの体験談
「ショートを守っていて4-6-3のダブルプレーを狙う時、セカンドからのトスを受けながら、視界の端で一塁ランナーが迫ってくるのが見えます。スパイクの裏が見える距離です。『削られる(接触する)かも』という恐怖が一瞬よぎりますが、そこで怯むと送球が逸れます。接触覚悟で踏み込んで、投げ終わった後にランナーを飛び越える。あの瞬間の緊張感と、アウトを取った時の達成感は、内野手だけの特権ですね」
少年野球を始めたお子さんへの指導ポイント
お子さんが野球を始めて、ダブルプレーに挑戦する時期が来たら、どのようなアドバイスをすれば良いでしょうか。プロのような高度な技術を教える前に、まずは基本的な心構えと安全面を伝えることが大切です。
最初は「1つずつアウトを取る」ことから始めよう
子供たちはプロの真似をして「ゲッツー」を取りたがりますが、焦って両方ともセーフになってしまう(オールセーフ)のが一番もったいない結果です。
まずは「確実に1つのアウトを取る」ことを徹底させましょう。「無理そうなら一塁だけでいいよ」「まずは二塁で確実にアウトを取ろう」と声をかけ、アウトを積み重ねる大切さを教えます。確実な捕球と送球ができるようになって初めて、スピードへの挑戦が始まります。
内野手なら知っておきたい「ベースの入り方」の基本
セカンドやショートを守るお子さんには、ベースへの入り方を教えます。大切なのは「ベースの真上で待たない」ことです。ベースをまたぐようにして待つのではなく、ベースの後ろや横から走り込んで入るイメージです。
止まった状態で待つと、送球が逸れた時に対応できませんし、ランナーとの接触のリスクも高まります。「走りながらベースに入って、ボールを呼び込む」感覚を、キャッチボールの延長で練習してみましょう。
声掛けの重要性(「ゲッツー!」と声を出す意味)
技術以上に大切なのが「声」です。打球が飛ぶ前に「ゲッツーあるよ!」「二塁いこう!」と声を掛け合うことで、内野手全員の意識が統一されます。
特にショートとセカンドは、「誰がベースに入るのか」の連携が命です。打球が飛んだ瞬間に「オーライ!(俺が捕る)」「ベース!(ベースに入れ)」といった指示を出し合う癖をつけることが、ダブルプレー成功への第一歩です。
元社会人野球内野手・野球指導アドバイザーのアドバイス
「子供たちがダブルプレーを成功させるために一番大切なことは、『準備』です。ピッチャーが投げる前に『もしここにゴロが来たら、あそこに投げる』とイメージできているかどうか。成功した時は『ナイスプレー!』と褒めるだけでなく、『よく準備できていたね』と、その前の思考プロセスを褒めてあげてください。そうすれば、野球脳がどんどん育ちますよ」
ダブルプレーに関するよくある質問(FAQ)
最後に、ダブルプレーに関してよく聞かれる疑問や、少し珍しいケースについてQ&A形式で解説します。
Q. トリプルプレー(三重殺)って本当にあるの?確率は?
はい、あります。一連のプレーで3つのアウトを取ることを「トリプルプレー(三重殺)」と呼びます。
例えば、ノーアウト一・二塁でサードゴロ。サードがベースを踏んで(1アウト)、二塁へ送球(2アウト)、さらに一塁へ送球(3アウト)、という「5-4-3」のトリプルプレーなどが考えられます。また、ライナーで飛び出した2人のランナーが戻れずにアウトになるケースもあります。
ただし、発生確率は非常に低く、プロ野球でも年に数回あるかないかというレベルです。もし球場で目撃できたら、宝くじに当たるくらいの幸運だと思ってください。
Q. 1アウト満塁で内野フライが上がった場合はどうなる?(インフィールドフライ)
この場合、審判によって「インフィールドフライ」が宣告されることがあります。
これは、守備側がわざとボールを落としてダブルプレーを狙う(落球してフォースの状態を利用する)というズルイ行為を防ぐためのルールです。インフィールドフライが宣告されると、バッターは自動的にアウトになります。ランナーは進む義務がなくなるため、元の塁に留まっていて大丈夫です。つまり、このルールのおかげで、攻撃側は不当なダブルプレーから守られているのです。
Q. ダブルプレー崩し(危険なスライディング)は禁止されている?
はい、現在は厳しく禁止されています。
かつては、一塁ランナーが二塁手の足を狙ってスライディングし、送球を妨害することが「激しいプレー」として容認されていましたが、選手の怪我防止の観点からルール改正(コリジョンルールやボナファイドスライド・ルール)が行われました。
現在では、ベースに向かって正しくスライディングしなければならず、野手に向かっていくような危険なスライディングは「守備妨害」となり、即座にダブルプレー(バッターランナーもアウト)が宣告されます。
Q. 記録上、打者に「打点」はつくの?
残念ながら、ダブルプレー(併殺打)の間にランナーがホームインしても、バッターに「打点」はつきません。
例えば、ノーアウト満塁から6-4-3のダブルプレーの間に3塁ランナーが生還して1点が入ったとします。チームには得点が入りますが、バッターの記録は「併殺打」のみで、打点はゼロです。これは「アウトを2つ献上したミス」の方が重く見られるためです。
ただし、1アウト満塁からのダブルプレー崩れ(一塁はセーフ)の場合は、バッターは「内野ゴロ(野手選択など)」となり、打点が記録されます。
まとめ:ダブルプレーの仕組みを知って、野球観戦をもっと楽しもう
今回は、野球の華とも言える「ダブルプレー」について、基本的なルールからプロの技術論まで解説してきました。最後に要点を振り返りましょう。
- ダブルプレーとは:一連の動作で2つのアウトを取るビッグプレー。守備側には勢いを、攻撃側には絶望を与える。
- 数字の意味:「6-4-3」はショート→セカンド→ファースト。「4-6-3」はセカンド→ショート→ファースト。ポジション番号(1〜9)を覚えると観戦がスムーズに。
- 3つのパターン:「フォース(ゴロ)」「ライナー(飛び出し)」「フライ(タッチアップ)」の違いを理解すると、審判の判定がよく分かる。
- 得点のルール:第3アウトがフォースプレーなら無得点。それ以外はタイムプレイ。
- プロの凄み:0.1秒を削る握り替えや、恐怖心に打ち勝つピボットマンの動きに注目。
これまでは「あ、ゲッツーだ」と結果だけを見ていたかもしれませんが、これからは「今のショートのトス、絶妙だったな!」「一塁ランナーのスタートが良かったからゲッツー崩れになったね」といった、より深い視点で野球を楽しめるはずです。
ぜひ次回の観戦では、ランナーが出た瞬間に「どのパターンのダブルプレーがありそうか?」を予想しながら見てみてください。野球の奥深さが、もっと面白くなることをお約束します。
元社会人野球内野手・野球指導アドバイザーのアドバイス
「親子でキャッチボールをする際、ぜひ『握り替え』の練習を取り入れてみてください。捕ったらすぐに右手を添える。これだけでボールを投げるまでのリズムが良くなります。ダブルプレーの基礎は、実は普通のキャッチボールの中にすべて詰まっているんですよ」
【チェックリスト】野球用語・ルール理解度確認(クリックして展開)
- [ ] 「6-4-3」のボールの動きがイメージできる
- [ ] フォースアウトとタッチアウトの違いが分かる
- [ ] 「ゲッツー」と「併殺打」の違いを説明できる
- [ ] タッチアップでのダブルプレーの仕組みを知っている
- [ ] インフィールドフライの意味が分かる
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