スマートフォンのアプリを開いたとき、あなたの親指はどこにありますか?おそらく画面の下半分、自然とタップしやすい位置に置かれているはずです。
アンダーナビ(正式名称:ボトムナビゲーション、またはタブバー)は、この「親指の定位置」にアプリの最重要機能を配置し、ユーザーを迷わせることなく目的の画面へと導くための羅針盤です。画面下部に3つから5つのアイコンが並ぶこのUIは、単なるメニューリストではありません。アプリの回遊率、継続率、そして最終的なコンバージョンに直結する、UI設計における心臓部と言っても過言ではないのです。
しかし、現場では「項目は何個まで入れていいのか?」「ハンバーガーメニューとの使い分けは?」「ラベル(文字)は必要なのか?」といった疑問が絶えません。不適切な設計は、ユーザーにストレスを与え、アプリのそっと閉じる原因となります。
この記事では、以下の3点を中心に、シニアUI/UXデザイナーの視点から解説します。
- アンダーナビの正しい定義と、ハンバーガーメニューとの決定的な使い分け基準
- ユーザーを迷わせないための「項目数」と「ラベル」に関する設計ルール
- iOS/Android公式ガイドラインに基づいた、エンジニアに伝わる実装仕様
今日から使える具体的な設計の鉄則を学び、ユーザーの指先に「正解」を届けましょう。
アンダーナビ(ボトムナビゲーション)の基礎知識と名称の整理
UIデザインの現場において、用語の定義を正しく理解することは、チーム内のコミュニケーションロスを防ぐ第一歩です。「アンダーナビ」という言葉は、実は日本独自の現場用語として定着している側面があり、グローバルスタンダードなガイドラインやエンジニアとの会話では、より正確な名称を用いる必要があります。まずは、このUIパーツが何と呼ばれ、なぜこれほどまでに重要視されているのか、その本質的な理由を紐解いていきましょう。
シニアUI/UXデザイナーのアドバイス
「私が関わったプロジェクトでも、『下のメニュー』『フッター』『ドック』など、メンバーによって呼び方がバラバラで混乱を招いたことが何度もありました。特にエンジニアに対しては、iOS向けなら『タブバー』、Android向けなら『ボトムナビゲーション』と使い分けることで、実装イメージの齟齬を劇的に減らすことができます。共通言語を持つことは、良いデザインを作るための土台なのです」
正式名称は?「ボトムナビゲーション」と「タブバー」の違い
一般的に「アンダーナビ」と呼ばれている画面下部のナビゲーションバーですが、OSごとの公式ガイドラインでは明確に名称が異なります。ここを混同すると、実装時の挙動や推奨されるデザインルールを見誤る可能性があります。
まず、Googleが提唱するMaterial Design(Android)においては、「Bottom navigation(ボトムナビゲーション)」と定義されています。これは、アプリ内のトップレベルの遷移先(デスティネーション)を3つから5つ表示するためのコンポーネントです。特徴として、タップ時のリップルエフェクト(波紋のような反応)や、選択されたアイコンが強調されるアニメーションなどが規定されています。
一方、AppleのHuman Interface Guidelines(iOS)では、「Tab bars(タブバー)」と呼ばれます。機能的な役割はボトムナビゲーションとほぼ同じですが、iOSの文化として、半透明の背景(すりガラス効果)や、アイコンとラベルの厳密な配置ルールなど、独自の作法が存在します。
Web制作の文脈では「フッターメニュー」や「固定フッター」と呼ばれることもありますが、ネイティブアプリのUI設計においては、「ボトムナビゲーション」または「タブバー」と呼ぶのが適切です。これらは単なるリンク集ではなく、アプリの「主要な部屋」を行き来するためのドアのような存在だからです。
なぜ画面下部なのか?「親指の可動域(Thumb Zone)」と操作性
なぜ、モバイルアプリの主要なナビゲーションは画面上部ではなく、下部に集中しているのでしょうか。その答えは、人間工学に基づいた「Thumb Zone(サムゾーン/親指の可動域)」という概念にあります。
スティーブン・フーパー氏の研究によれば、スマートフォンを片手で操作する際、親指が自然に届く範囲(Natural Zone)は画面の下半分、特に中央から下部にかけてのアーチ状のエリアに限られます。逆に、画面の上部は「Stretch Zone(頑張れば届く範囲)」や「Hard Zone(届かない範囲)」となり、操作するには持ち手を変えるか、もう片方の手を使う必要があります。
近年のスマートフォンは画面の大型化が進んでおり、6インチを超えるデバイスも珍しくありません。この状況下で、画面上部にメニューを配置することは、ユーザーに身体的な負担を強いることになります。「戻る」ボタンが左上にあるだけでストレスを感じた経験はないでしょうか。アンダーナビは、ユーザーが最も楽な姿勢で、最も頻繁に使う機能にアクセスできるよう設計された、極めて合理的なUIパターンなのです。
アンダーナビが適しているアプリ・適さないアプリの特徴
すべてのアプリにアンダーナビが適しているわけではありません。アプリの構造や目的に応じて、最適なナビゲーションパターンを選択する必要があります。
アンダーナビが最も力を発揮するのは、「並列な関係にある主要機能が3〜5つ存在し、ユーザーがそれらを頻繁に行き来するアプリ」です。例えば、SNSアプリ(タイムライン、検索、通知、プロフィール)や、ECアプリ(ホーム、検索、カート、お気に入り、マイページ)などが典型例です。これらの機能はどれも重要度が高く、ユーザーはアプリ利用中に何度も画面を切り替えます。ワンタップで瞬時に遷移できるアンダーナビは、こうした回遊型のアプリに不可欠です。
一方で、アンダーナビが適さないケースもあります。一つは、「単一のタスクに集中させるツール系アプリ」です。例えば、電卓、カメラ、特定のゲームなどは、画面を広く使う必要があり、常駐するメニューは邪魔になります。また、「機能の優先順位に極端な差がある場合」や「主要機能が2つ以下、あるいは6つ以上ある場合」も、アンダーナビ以外の選択肢(ハンバーガーメニューやタブメニューなど)を検討すべきです。
補足:Webサイトにおけるアンダーナビ(フッターメニュー)の扱い
ネイティブアプリだけでなく、モバイルWebサイトでもPWA(Progressive Web Apps)的な挙動が求められる場合、下部固定メニューを採用するケースが増えています。特にECサイトやメディアサイトでは、アプリのような操作感を提供することで回遊率を高める効果があります。
ただし、Webブラウザ(SafariやChrome)には、画面下部に独自のツールバー(戻るボタンやURLバー)が存在します。Webサイトでアンダーナビを実装する場合、これらブラウザのUIと干渉しないよう、スクロール時の挙動や高さ(z-index含む)の調整に細心の注意が必要です。二重のバーが表示されると画面が狭くなり、かえってUXを損なうリスクがあるためです。
ハンバーガーメニュー vs アンダーナビ!どっちを使うべき?
UI設計の初期段階で最も議論になるのが、「ハンバーガーメニュー(左上の三本線アイコン)」と「アンダーナビ」のどちらを採用すべきか、という問題です。かつてはハンバーガーメニューが全盛の時代もありましたが、現在はアンダーナビへの移行がトレンドとなっています。しかし、ハンバーガーメニューが完全に不要になったわけではありません。両者の特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。
決定的な違いは「情報の並列性」と「頻度」
この二つを使い分ける最大の判断基準は、コンテンツの「重要度」と「利用頻度」です。
アンダーナビは、「高頻度」かつ「重要度が同等」な機能へのアクセスに使います。ユーザーがアプリを開くたびに必ず使う機能、あるいはセッション中に何度も切り替える機能は、隠さずに常に画面下部に露出させておくべきです。これにより、ユーザーは「今どこにいるか」「他に何ができるか」を常に認識できます。
対してハンバーガーメニューは、「低頻度」または「二次的」な機能の格納場所として適しています。例えば、「設定」「ヘルプ」「利用規約」「ログアウト」などは、重要ではありますが、毎日使うものではありません。これらをアンダーナビに配置すると貴重なスペースを占有してしまいます。普段は隠しておき、必要な時だけ呼び出すドロワー(引き出し)形式が理にかなっています。
比較でわかる!ナビゲーションパターンの選び方フローチャート
どちらを採用すべきか迷った際は、以下の比較表を参考に、自社アプリの機能構造と照らし合わせてみてください。
| 比較項目 | アンダーナビ (Bottom Nav) | ハンバーガーメニュー (Side Drawer) |
|---|---|---|
| 視認性 | 高い(常に表示されている) | 低い(タップするまで中身が見えない) |
| アクセス速度 | ワンタップ(最速) | ツータップ以上(開く→選ぶ) |
| 項目数 | 3〜5個に限定 | 制限なし(スクロールで多数配置可能) |
| 情報の優先度 | トップレベルの主要機能(並列) | 二次的な機能、設定、履歴など |
| UXの強み | 回遊性の向上、現在地の把握 | 画面スペースの節約、情報の網羅 |
| 弱点 | 画面領域を狭める、項目数が限られる | 機能の発見性が低い(機能が見落とされる) |
両方を併用する「ハイブリッド型」の設計事例
実際のアプリ開発では、アンダーナビとハンバーガーメニューを併用する「ハイブリッド型」が解となるケースも多々あります。主要な4つの機能をアンダーナビに配置し、左上のハンバーガーメニュー(またはプロフィールアイコン)の中に設定やサブ機能を収納するパターンです。
この構成のメリットは、頻繁に使う機能へのアクセス性を確保しつつ、膨大な機能群を整理して格納できる点にあります。例えば、多くのニュースアプリやSNSアプリでは、タイムラインや検索は下部に、アカウント設定や保存済み記事リストは上部のメニュー内に配置されています。
シニアUI/UXデザイナーのアドバイス
「ハイブリッド型を採用する際、最も陥りやすい罠が『動線の重複』です。例えば、アンダーナビにも『マイページ』があり、ハンバーガーメニュー内にも『プロフィール編集』があるといった状態です。ユーザーは『どっちを押せばいいの?』と迷ってしまいます。併用する場合は、アンダーナビは『コンテンツの消費・回遊』、ハンバーガーメニューは『アプリ自体の設定・管理』といった具合に、役割を明確に分断することが鉄則です」
【UI設計の核心】失敗しないアンダーナビ設計 5つの鉄則
アンダーナビの導入を決めたとしても、その詳細設計を誤れば効果は半減します。ここでは、数多くのアプリ改善プロジェクトから導き出された、絶対に守るべき5つの設計ルールを解説します。これらは単なる見た目の話ではなく、認知心理学やユーザビリティテストの結果に基づいた「使いやすさの法則」です。
鉄則1:項目数は「3つ〜5つ」を死守する理由
アンダーナビの項目数は、最低3つ、最大5つにするのが絶対的なルールです。これはGoogleのマテリアルデザインガイドラインでも強く推奨されています。
2つ以下の場合は、タブバーを使うよりも画面上部のタブや単純なボタン配置の方がスペース効率が良い場合が多いです。逆に6つ以上になると、スマートフォンの横幅(特にiPhone SEや小型Android端末)に対して各項目のタップエリアが極端に狭くなり、誤操作(隣のボタンを押し間違える)が頻発します。
また、認知心理学的にも、人間が瞬時に把握できる情報の塊(チャンク)は「4±1」と言われています。選択肢が多すぎると、ユーザーは選ぶことを負担に感じ、直感的な操作ができなくなります。機能を絞り込むことは、勇気のいる決断ですが、使いやすさを守るためには避けて通れません。
シニアUI/UXデザイナーのアドバイス
「過去にクライアントの要望で無理やり6つのアイコンを並べたことがありますが、結果は散々でした。タップミスによるクレームが増えただけでなく、各アイコンが小さくなりすぎて何の機能か判別できなくなったのです。結局、利用率の低い2つの機能を統合し、4つに減らす改修を行いました。項目数の制限は、物理的な制約であると同時に、プロダクトの価値を研ぎ澄ますための制約だと捉えてください」
鉄則2:ラベル(テキスト)は必須!アイコンのみはNGな理由
「おしゃれでミニマルなデザインにしたい」という理由で、アイコンのみを表示し、テキストラベルを省略するケースが見受けられますが、これは基本的にNGです。
アイコンの意味は、デザイナーや開発者が思っているほどユーザーには伝わりません。「虫眼鏡」が検索、「家」がホームであることは共通認識化していますが、例えば「星マーク」はお気に入りなのか、注目記事なのか、評価なのか、文脈によって意味が変わります。ラベルがないと、ユーザーは「これを押すと何が起きるか」を推測しなければならず、心理的な負荷がかかります。
ニールセン・ノーマン・グループの調査でも、ラベルのあるナビゲーションの方が、アイコンのみの場合よりもタスク完了率が高いことが証明されています。どうしてもスペースがない場合(選択中のみラベルを表示するなど)を除き、「アイコン+テキスト」を基本セットと考えてください。
鉄則3:現在地(アクティブ状態)を明確にデザインする
ユーザーが迷子にならないためには、「今、自分がどのタブにいるのか」が一目でわかる必要があります。これを示すのが「アクティブ状態(Selected state)」のデザインです。
アクティブな項目のアイコンは、色を変える(例:グレーからブランドカラーへ)、塗りつぶす(例:線画から塗りへ)、サイズをわずかに大きくする、といった変化をつけるのが一般的です。特に色は最も強力な視覚的手がかりです。非アクティブな項目は中間的なグレーなどで沈ませ、アクティブな項目だけを鮮やかな色にすることで、コントラストを明確にしましょう。
ラベルについても、アクティブ時は太字にする、色を変えるなどの強調処理を行うことで、視認性がさらに向上します。
鉄則4:バッジ(通知)機能でユーザーのアクションを促す
アンダーナビは、ユーザーにアクションを促すための通知エリアとしても機能します。アイコンの右上に赤い丸や数字を表示する「バッジ(Badge)」機能です。
例えば、SNSアプリの「通知」タブに未読数の数字を表示したり、ECアプリの「カート」タブに商品数や「!」マークを表示したりすることで、ユーザーの注意を引き、タップを誘発することができます。ただし、常にすべてのタブにバッジがついていると、ユーザーは通知に慣れてしまい(オオカミ少年効果)、無視するようになります。本当にユーザーに気づいてほしい重要な更新がある場合のみ、控えめに使用するのがコツです。
鉄則5:タップエリアの確保と誤操作防止のレイアウト
モバイルUIにおいて、指での操作ミスを防ぐための「タップターゲットサイズ」の確保は必須要件です。各OSのガイドラインでは、最低でも44x44pt (iOS) または 48x48dp (Android) のタッチ領域を確保することが推奨されています。
アンダーナビの各項目は横に並んでいるため、隣り合う項目との間隔が狭すぎると誤タップの原因になります。アイコン自体の見た目が小さくても、透明な背景を含めた反応領域(ヒットエリア)は十分に大きく設定する必要があります。特に画面端の項目は、指が届きにくい場合があるため、余白の取り方に注意が必要です。
項目が6個以上になってしまう場合の対処法
「鉄則はわかった。でも、うちのアプリはどうしても主要機能が6つ以上あるんだ!」という悲鳴にも似た相談をよく受けます。多機能なスーパーアプリや、複雑な業務アプリでは珍しいことではありません。しかし、だからといってアイコンを詰め込むのは悪手です。ここでは、あふれた項目をどう処理すべきか、現実的な解決策を提示します。
「その他」タブを活用したドロワーへの格納パターン
最も王道的かつ安全な解決策は、5つ目のタブを「その他(More)」や「メニュー」とし、そこに残りの機能をリスト形式で格納する方法です。
例えば、主要な4つの機能はそのままタブとして配置し、一番右端に「三点リーダー(…)」や「ハンバーガーアイコン」を置きます。これをタップすると、画面全体、あるいはハーフモーダルでメニューリストが開き、そこから2軍、3軍の機能へアクセスできるようにします。FacebookやLINEなどの大規模アプリでも採用されている手法で、ユーザーの学習コストも低く、拡張性が高いのがメリットです。
スクロール可能なタブ(Scrollable Tabs)はアンダーナビで使うべきか?
画面上部のタブメニューのように、アンダーナビ自体を横スクロールさせて項目を増やす手法(Scrollable Bottom Navigation)はどうでしょうか?
結論から言うと、アンダーナビでの横スクロールは避けるべきです。アンダーナビは「固定された定位置」であることが信頼の証であり、隠れているメニューを探すためにスクロール操作を強いるのは、発見性を著しく低下させます。また、スワイプ操作が画面内のコンテンツ(カルーセルなど)の操作と競合し、誤動作を招くリスクもあります。主要機能へのアクセスは、あくまで「ワンタップ」であるべきです。
ユーザー行動データに基づいた「断捨離」と優先順位付け
UIデザインのテクニックで解決する前に、そもそも「その機能は本当に1軍なのか?」を疑う必要があります。アクセス解析ツールを用いて、各機能の利用率(タップ数、滞在時間)をデータとして可視化してみてください。
開発チームが「重要だ」と思い込んでいた機能が、実際にはユーザーにほとんど使われていないことは往々にしてあります。データに基づいて「利用率の下位2つをアンダーナビから外し、マイページ内に移動する」といった断捨離を行うことが、結果としてアプリ全体の使いやすさを向上させます。
| 対処法 | メリット | デメリット | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| 「その他」タブへの格納 | 項目数が増えてもレイアウトが崩れない | 格納された機能へのアクセスが1ステップ増える | 高 |
| 機能の断捨離 | UIがシンプルになり、主要機能が際立つ | 社内調整や意思決定のコストがかかる | 高 |
| 横スクロール化 | すべての機能を並列に扱える | 機能が見つけにくく、操作性が悪い | 低 |
シニアUI/UXデザイナーのアドバイス
「機能を削る提案は、ステークホルダー(各機能の担当者)からの反発を招きやすいものです。そんな時こそ、定性的な『見た目』の話ではなく、定量的な『データ』を武器にしてください。『このタブは全ユーザーの2%しか使っていませんが、アンダーナビの20%のスペースを占有しています。これを外して検索ボタンを大きくすれば、全体の回遊率が改善する見込みがあります』と説明すれば、建設的な議論ができるはずです」
iOSとAndroidのガイドライン差異と実装上の注意点
デザイナーが完璧な絵を描いても、実装段階でOSの作法を無視してしまうと、違和感のあるアプリになってしまいます。iOSとAndroidでは、アンダーナビ(タブバー)の仕様に微妙な違いがあります。これらを理解し、エンジニアとスムーズに連携するためのポイントを押さえましょう。
Google Material Design 3 における「Navigation bar」の仕様
最新のMaterial Design 3(M3)では、ボトムナビゲーションは「Navigation bar」と呼ばれ、デザインが刷新されています。以前のバージョンとの大きな違いは、アクティブなアイコンの背景に「ピル型(楕円形)」のインジケーターが表示される点です。
- 高さ: デフォルトで80dp(以前より高くなっています)
- ラベル: アクティブ時のみ表示、常に表示、常に非表示の3パターンが許容されていますが、「常に表示」が推奨されます。
- 挙動: タップ時にピル型の背景が広がるようなアニメーションや、リップルエフェクトが標準で組み込まれています。
Apple Human Interface Guidelines における「Tab bars」の仕様
iOSのTab barsは、より繊細でフラットな印象を与えます。
- 高さ: デバイスによりますが、一般的に49pt(iPhone X以降はホームインジケータ領域を含めて高くなります)。
- 背景: 「Translucency(半透明)」処理が基本です。背面のコンテンツがすりガラス越しにうっすらと見えることで、画面の広がりを感じさせます。
- アイコン: 線画(Outline)と塗りつぶし(Filled)を使い分けるのがiOSの伝統です。通常時は線画、選択時は塗りつぶしのアイコンに切り替えることで、状態変化を伝えます。
開発ハンドオフ時にエンジニアに伝えるべき3つのポイント
デザインデータをエンジニアに渡す際、以下の3点を明確にドキュメント化しておくと、実装の手戻りが防げます。
- アイコンの書き出し形式: ベクター形式であるSVG(AndroidはXML、iOSはPDFまたはSVG)で書き出すこと。PNGなどのラスター画像は解像度の違いでぼやけるため避けます。
- アクティブ/非アクティブのスタイル定義: 色コードだけでなく、アイコン自体が切り替わるのか(線画→塗り)、ラベルの太さが変わるのか、明確に指示します。
- セーフエリア(Safe Area)の考慮: 特にiPhone X以降の端末では、画面最下部にホームインジケータ(横線)があります。この領域にボタンが重なると操作できないため、適切なパディング(余白)を含めた高さを指定する必要があります。
参考:SafeAreaとiPhoneのホームインジケータへの対応
iPhone X以降のホームインジケータ(画面下部の横線)と重ならないよう、コンテンツの下部に34pt程度のシステム予約領域が存在します。FigmaやSketchでデザインする際は、この領域を考慮してタブバーの背景を伸ばし、アイコン自体はセーフエリア内に収める設計が必須です。これを忘れると、アイコンが画面の下端ギリギリに配置され、非常に押しにくいUIになってしまいます。
優れたアンダーナビのデザイン事例とトレンド
基本を押さえた上で、ユーザーの目を引き、操作を楽しくさせる最新のデザイン事例やトレンドを見ていきましょう。ただし、奇抜さは使いやすさを損なう諸刃の剣でもあります。バランス感覚が重要です。
ミニマルデザインとアイコンのトレンド(塗りつぶし vs 線画)
近年のトレンドは、装飾を削ぎ落としたミニマルデザインです。影(ドロップシャドウ)を廃し、境界線(ボーダー)のみでエリアを区切る、あるいは境界線すらなくして背景色との差だけで表現するスタイルが増えています。
アイコンに関しては、視認性の観点から「太めの線画」や「ソリッドな塗りつぶし」が好まれています。細すぎる線画は、屋外などの明るい場所で見えにくくなるためです。また、ブランドカラーを単色で使うだけでなく、グラデーションを取り入れたり、デュオトーン(2色使い)で独自性を出すアプリも増えています。
マイクロインタラクションによるフィードバック演出
ユーザーがアイコンをタップした瞬間に、小さなアニメーション(マイクロインタラクション)を挟むことで、操作の手応えと心地よさを提供できます。
例えば、アイコンが少し跳ねる、回転する、色がじわっと広がる、といった演出です。これらは単なる飾りではなく、「あなたの操作を受け付けました」というシステムからのフィードバックとして機能します。心地よいフィードバックは、ユーザーにアプリへの愛着(エンゲージメント)を抱かせる効果があります。
フローティングアクションボタン(FAB)との組み合わせ事例
Googleのマテリアルデザインでおなじみの「FAB(Floating Action Button)」を、アンダーナビの中央に配置するデザインも人気があります。
通常、アンダーナビは平坦な並列関係ですが、中央のボタンだけを大きく、あるいは上に飛び出させることで、「投稿する」「スキャンする」といったアプリの最重要アクション(CVポイント)を強調できます。ただし、この形状は標準のコンポーネントから外れるため、実装コストがかかる点には注意が必要です。
シニアUI/UXデザイナーのアドバイス
「アニメーションは『調味料』と同じです。適量なら素材を引き立てますが、入れすぎると料理を台無しにします。タブを切り替えるたびに過度な動きがあると、ユーザーは待たされていると感じ、ストレスになります。0.2秒〜0.3秒程度の、瞬きする間に終わるくらいのさりげない演出を目指してください」
よくある質問(FAQ)
最後に、アンダーナビの設計において、現場で頻繁に挙がる細かい疑問にQ&A形式で答えます。
Q. スクロールした時にアンダーナビを隠してもいいですか?
A. コンテンツへの没入感を優先する場合はOKですが、慎重に。
ニュース記事や商品詳細ページなど、縦に長いコンテンツを読み進める際に、画面を広く使うためにアンダーナビを下へスライドさせて隠す手法(ナビング・バーの格納)があります。これは閲覧体験を向上させますが、他のページへ移動するには一度スクロールバックしてメニューを再表示させる必要があります。回遊性を重視するECアプリやSNSでは、常に表示させておく方が無難なケースが多いです。
Q. アンダーナビの色はブランドカラーにするべきですか?
A. 基本は「白」または「黒(ダークモード)」を推奨します。
背景全体をブランドカラー(例えば赤や青)にすると、常に視界に入るため目が疲れてしまったり、コンテンツの写真や色と喧嘩してしまったりします。背景は無彩色にし、アクティブなアイコンの色でブランドカラーを取り入れるのが、最も洗練され、飽きのこないデザインです。
Q. ログイン前とログイン後でメニューを変えてもいいですか?
A. はい、ユーザーの状態に合わせて最適化すべきです。
ログイン前は「ホーム」「検索」「会員登録」を表示し、ログイン後は「会員登録」を「マイページ」に差し替えるといった動的な変更は有効です。ただし、5つのうち3つが変わるなど、劇的な変化はユーザーを混乱させます。変更は最小限に留め、アプリの骨格が変わったと感じさせない配慮が必要です。
まとめ:ユーザーの指先に「正解」を置くために
アンダーナビ(ボトムナビゲーション)は、アプリの中で最もユーザーの指に近い場所にあるUIです。ここが使いやすければ、ユーザーはストレスなくアプリの世界を旅することができ、結果としてあなたのビジネスが目指すゴールへと到達してくれます。
最後に、優れたアンダーナビを設計するためのチェックリストをまとめました。開発に入る前、あるいはリニューアルの際に、ぜひ確認してみてください。
- 項目数は3つ〜5つに収まっているか?
- アイコンだけでなく、テキストラベルを併記しているか?
- 「今どこにいるか」がわかるアクティブ状態のデザインがあるか?
- タップ領域は十分に確保されているか(44pt/48dp以上)?
- iPhoneのホームインジケータと重ならないよう余白があるか?
- ハンバーガーメニューとの役割分担は明確か?
シニアUI/UXデザイナーのアドバイス
「UIデザインに『絶対の正解』はありませんが、『明らかな不正解』は存在します。それは、ユーザーの身体的・心理的な負担を無視した設計です。ガイドラインを学び、鉄則を守ることは、ユーザーへの思いやりそのものです。ぜひ今日から、あなたのアプリのメニューを見直し、親指に優しい設計を意識してみてください。その小さな改善が、ユーザー体験を大きく変えるはずです」
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