突然の訃報に接したとき、多くの人が「何と声をかければよいのか」「失礼があってはいけない」という不安を感じるものです。特にお悔やみの言葉は、普段使い慣れない表現が多く、相手との関係性や宗教、伝える手段(対面・メール・LINE)によっても適切なマナーが異なります。
結論から申し上げますと、お悔やみの言葉で最も大切なのは、流暢な敬語や形式的な美しさよりも「相手の悲しみに寄り添う心」と「マナー違反(忌み言葉など)を避ける最低限の配慮」です。どれほど丁寧な言葉でも、相手の宗派でタブーとされる表現を使ってしまったり、傷心の方を追い詰めるような励ましをしてしまっては、逆効果になりかねません。
本記事では、葬祭ディレクターとして3,000件以上の現場に立ち会ってきた筆者が、急な訃報にも慌てず対応できるよう、以下の3点を中心に徹底解説します。
- 上司・友人・取引先など、相手との関係性に合わせたそのまま使えるお悔やみ文例
- 「重ね言葉」や宗教ごとのNGワードなど、絶対に避けるべきタブー
- LINEやメールで訃報を受けた際の返信マナーと、香典・供花の判断基準
いざという時に、あなた自身の「心」が正しく相手に届くよう、具体的な文例とプロの視点を交えてお伝えします。ぜひ参考にしてください。
【急ぎの方へ】お悔やみの言葉の基本構成と「まず伝えるべき一言」
訃報は予期せぬタイミングで届くものです。仕事中であったり、移動中であったりと、じっくりと言葉を選んでいる余裕がない場合も多いでしょう。しかし、焦って不適切な言葉を送ってしまうことは避けなければなりません。まずは、どのような相手、どのような状況でも使える「お悔やみの言葉の基本型」を理解しておきましょう。
お悔やみのメッセージは、長く書く必要はありません。むしろ、悲しみの中にいるご遺族に対しては、長文のメッセージを読む負担をかけないよう、簡潔にまとめるのがマナーです。基本的には以下の4つの要素で構成します。
| 構成要素 | 内容・役割 | 文例 |
|---|---|---|
| 1. お悔やみの言葉(挨拶) | 訃報に接した驚きと、故人の死を悼む気持ちを伝えます。 | 「この度は、誠にご愁傷様でございます。」 「突然の悲報に接し、驚いております。」 |
| 2. 慰め・共感 | 遺族の悲しみに寄り添う言葉を添えます。 | 「ご家族の皆様のお悲しみはいかばかりかと拝察いたします。」 |
| 3. いたわり・気遣い | 看病の疲れや、葬儀準備の忙しさにある遺族の体調を気遣います。 | 「どうかご無理をなさいませんように。」 「お力落としのことと存じますが、ご自愛ください。」 |
| 4. 結び | 故人の安らかな眠りを祈る言葉や、返信不要の旨で締めます。 | 「心よりご冥福をお祈り申し上げます。」 「返信は不要です。」 |
この4つのステップを意識すれば、大きくマナーを外すことはありません。特に重要なのは「3. いたわり・気遣い」です。定型的な挨拶だけでなく、残された方々の心身を案じる一言があるだけで、受け取る側の印象は大きく変わります。
誰にでも使える基本のフレーズ(口頭・メール共通)
相手との関係性に関わらず、最も汎用的で間違いのないフレーズをご紹介します。これらは口頭で伝える場合でも、メールやLINEで送る場合でも使用可能です。
- 「この度は誠にご愁傷様でございます。心よりお悔やみ申し上げます。」
最もスタンダードな表現です。「ご愁傷様」は相手(遺族)に対する同情や慰めの気持ちを表し、「お悔やみ」は故人の死を悼む気持ちを表します。 - 「この度は突然のことで、言葉もありません。心から哀悼の意を表します。」
「言葉もありません」というフレーズは、悲しみの深さを表現するのに適しています。「哀悼の意を表します」はやや書き言葉的な表現ですが、フォーマルなメールや弔電では頻繁に使われます。 - 「思いがけないお知らせに驚いております。私にできることがあれば、何なりとお申し付けください。」
親しい間柄や、仕事関係でサポートが必要な場合に有効です。ただし、社交辞令で終わらせず、本当に手伝えることがある場合に使うのが誠実です。
「ご愁傷様です」と「お悔やみ申し上げます」の使い分け
よく混同されがちなのが「ご愁傷様です」と「お悔やみ申し上げます」の使い分けです。どちらも弔事の挨拶として正解ですが、厳密にはニュアンスと適した場面が異なります。
「ご愁傷様(ごしゅうしょうさま)です」は、本来「心の傷を憂える」という意味があり、遺族に対する慰めの言葉です。そのため、基本的には口頭での挨拶に適しています。葬儀の受付や、遺族に対面した際の第一声として使います。メールやLINEなどの文章で使っても間違いではありませんが、やや会話的な印象を与えることがあります。
一方、「お悔やみ(おくやみ)申し上げます」は、「故人の死を残念に思い、弔う」という意味です。こちらは口頭だけでなく、メール、手紙、弔電などの書き言葉としても非常に適しています。文章で伝える場合は「お悔やみ申し上げます」を主軸にすると、落ち着いた印象になります。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「短い言葉にこそ『いたわり』を込めることが重要です。葬儀の現場でご遺族を見ていると、長々とした挨拶よりも、目を見て静かに『この度は、お疲れが出ませんように…』と声をかけられた時のほうが、ふっと表情が和らぐことがあります。形式的な『ご愁傷様です』の後には、必ず相手の体調や心情を気遣う一言を添えてみてください。それだけで、あなたの言葉は『マナー』から『優しさ』へと変わります。」
【関係性別】そのまま使えるお悔やみの言葉・メール文例集
お悔やみの言葉を選ぶ際、最も悩むのが「相手との距離感」です。上司に対して友人のような言葉遣いは失礼ですし、親しい友人に他人行儀すぎる敬語を使うと、かえって冷たい印象を与えてしまいます。
ここでは、相手との関係性別に、そのままコピーして使える文例を用意しました。メールやLINEで送る際の「件名」の例も併せて記載していますので、状況に合わせて調整してご活用ください。
【会社・仕事関係】上司・部下・同僚への文例(クリックして展開)
職場関係の場合、公的な立場としてのマナーと、共に働く仲間としての気遣いのバランスが重要です。業務連絡が必要な場合は、お悔やみの言葉の後に簡潔に付け加えます。
上司のご家族が亡くなった場合
件名:【お悔やみ】〇〇部 佐藤(自分の氏名)より
本文:
〇〇課長
この度は、ご尊父様(お父様の場合)のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
突然のことで、〇〇課長のお悲しみはいかばかりかと拝察いたします。
お仕事のことは私どもで分担して進めますので、どうかご心配なさいませんようお願い申し上げます。
ご家族の皆様も、どうぞご自愛ください。
本来であれば拝眉の上お悔やみを申し上げるべきところ、メールにて恐縮ですが、略儀ながらお悔やみ申し上げます。
※返信は不要です。
同僚・部下のご家族が亡くなった場合
件名:お悔やみ申し上げます(〇〇部 佐藤)
本文:
〇〇さん
ご母堂様(お母様の場合)の突然の訃報に接し、大変驚いています。
心よりお悔やみ申し上げます。
今は何よりもご家族とのお別れの時間を大切にしてください。
業務のフォローはチーム全員で行いますので、安心して休んでくださいね。
何か手伝えることがあれば、遠慮なく連絡してください。
ご冥福をお祈りいたします。
(返信は気にしないでください)
【取引先・社外】担当者やその家族へのフォーマルな文例(クリックして展開)
取引先へのメールは、会社の代表として送る意識が必要です。失礼のないよう、敬語や敬称(ご尊父様、ご母堂様など)を正しく使いましょう。
取引先担当者本人が亡くなった場合
件名:【お悔やみ】株式会社〇〇 営業部 佐藤健一
本文:
株式会社△△
総務部 ご担当者様
(または、故人の所属部署の皆様)
貴社 〇〇様の突然の悲報に接し、驚きと悲しみを深くしております。
生前、〇〇様には多大なるご厚情を賜り、ご指導いただきましたこと、深く感謝申し上げます。
すぐにでも駆けつけたい気持ちでいっぱいですが、遠方のため(または事情により)かなわず、誠に残念でなりません。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
略儀ながらメールにて謹んでお悔やみ申し上げます。
取引先担当者のご家族が亡くなった場合
件名:【お悔やみ】株式会社〇〇 佐藤健一
本文:
株式会社△△
営業部 〇〇様
この度は、ご母堂様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。
ご生前のお姿を偲び、心よりご冥福をお祈りいたします。
お仕事ご多忙の折とは存じますが、ご無理をなさいませんよう、どうぞご自愛ください。
本来であれば参上してお悔やみを申し上げるべきところ、略儀ながら書中(メール)にてお悔やみ申し上げます。
※なお、本メールへのご返信はお気遣いなさいませんようお願い申し上げます。
【友人・知人】親しさを込めつつ失礼のない文例(クリックして展開)
親しい友人であっても、親族が亡くなった際は普段通りのフランクすぎる言葉は避けます。しかし、あまりに他人行儀だと距離を感じさせてしまうため、「丁寧語(です・ます)」を基本にしつつ、温かみのある言葉を選びましょう。
友人の親が亡くなった場合(LINE・メール共通)
件名:(LINEの場合は不要)
本文:
〇〇(友人名)、お父様のこと、本当に驚きました。
心からお悔やみ申し上げます。
お父様には、学生時代に家に遊びに行かせてもらった時など、温かく接していただいたことを思い出します。
〇〇も看病で大変だったと思うし、疲れが出ないように気をつけてね。
今は返信とか気にせず、ご家族との時間を大切にしてね。
何か必要なものや、手伝えることがあればいつでも連絡して。
友人の配偶者や子供が亡くなった場合
件名:(LINEの場合は不要)
本文:
突然のお知らせに、言葉が見つかりません。
〇〇(友人名)の気持ちを考えると、胸が張り裂けそうです。
今はただ、心からご冥福をお祈りします。
辛い時だと思うけれど、どうか無理しないで。
落ち着いたら、またいつでも話を聞くからね。
返信は不要です。
【親戚・身内】少し崩しても良いラインと丁寧な表現の境界線(クリックして展開)
親戚関係の場合、普段の付き合いの深さによって言葉を選びます。疎遠な親戚には礼儀正しく、親しい親戚には思い出話を交えるなどして、故人を偲ぶ気持ちを伝えます。
親しい叔父・叔母などが亡くなった場合
件名:〇〇(自分の名前)です。お悔やみ申し上げます。
本文:
叔父様のご逝去の知らせを聞き、驚いています。
小さい頃、夏休みにお会いした時の優しい笑顔が忘れられません。
叔母様も、どうかお力を落とされませんように。
遠方のためすぐに伺えず申し訳ありませんが、心よりご冥福をお祈りしています。
ご葬儀の日程など、決まりましたら教えてください。
私にできることがあれば何でも言ってくださいね。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「定型文にプラスしたいのが『相手の体調を気遣う』一文の魔法です。葬儀の準備や手続きは想像以上に体力を消耗します。特に冬場や季節の変わり目などは、『寒暖差が激しい折、どうかお体ご自愛ください』といった一文があるだけで、張り詰めた遺族の心がふっと緩むことがあります。文例をそのまま使うだけでなく、ぜひ今の季節や相手の状況に合わせた『いたわり』を付け加えてみてください。」
LINEやメールでお悔やみを伝えてもいい?手段別のマナーと注意点
かつては「お悔やみは対面か手紙で伝えるもの」とされていましたが、通信手段の発達した現代においては、メールやLINEでお悔やみを伝えることも一般的になりつつあります。しかし、すべてのケースで許容されるわけではありません。相手との関係性や状況に応じた「ツールの使い分け」が重要です。
メールでお悔やみを送る際のマナー(件名・タイミング・敬称)
ビジネス関係や、電話がつながらない場合、遠方で参列できない場合にはメールが有効です。
- 件名は一目で分かるように:
「【お悔やみ】株式会社〇〇 佐藤健一」のように、開封しなくても内容と差出人が分かるようにします。遺族は葬儀対応で多忙なため、「お久しぶりです」などの件名は避けましょう。 - タイミング:
訃報を知ったらできるだけ早く送ります。ただし、深夜や早朝に送る場合は、通知音で相手を休ませない配慮が必要です(予約送信機能を使うか、文頭に「夜分遅くに失礼いたします」と添える)。 - 敬称のルール:
メールなどの書き言葉では、故人の敬称に注意が必要です。- 父 → ご尊父(そんぷ)様、お父様
- 母 → ご母堂(ぼどう)様、お母様
- 夫 → ご主人様、ご夫君(ふくん)様
- 妻 → ご令室(れいしつ)様、奥様
LINE(ライン)で送る場合の注意点(スタンプはOK?既読スルーは?)
LINEは手軽なツールですが、その分「軽すぎる」と受け取られるリスクがあります。以下の点に注意しましょう。
- 相手を選ぶ:
普段からLINEでやり取りしている友人や、かなり親しい同僚であれば問題ありません。しかし、上司や取引先、年配の方に対してLINEで訃報の返信をするのは、マナー違反と捉えられる可能性が高いため避けるべきです。 - スタンプは原則NG:
どれほど悲しい表情のスタンプであっても、お悔やみの場面では「ふざけている」「手抜き」と感じる方がいます。基本的にはテキストのみで送りましょう。どうしても使う場合は、派手なアニメーションや音の出るものは避け、お祈りのイラストなど極めてシンプルなものに留めます。 - 「既読スルー」を許容する:
遺族は多くの連絡に対応しています。既読になっても返信がないのは「読んだが返信する余裕がない」状態です。「返信まだ?」と催促するのは絶対NGです。
電話や手紙(お悔やみ状)が適しているケースとは
デジタルな手段が普及しても、アナログな手段の重みは変わりません。
- 電話:
近親者や特に親しい間柄で、すぐに駆けつけられない場合は電話で直接声を伝えます。ただし、相手が忙しい可能性があるため、「今、少しだけお時間よろしいですか?」と確認し、長電話は避けて手短に切り上げます。 - 手紙(お悔やみ状):
香典を郵送する場合や、メールでは軽すぎると感じる目上の方に対しては、手紙が最も丁寧です。便箋は白無地(一重のもの)を使い、薄墨の筆ペンや万年筆で書くのが正式なマナーです。
弔電(電報)を送るべき状況と手配の基本
葬儀に参列できない場合、メールだけでなく「弔電」を送るのが社会人としてのマナーです。特に会社関係や取引先の場合、メールだけでは略儀とみなされることがあります。
- 送るタイミング:
通夜の前日〜通夜の開始前までに届くように手配します。遅くとも告別式の開始前には必着です。 - 宛名:
基本的には「喪主」宛てに送ります。喪主の名前が不明な場合は「故 〇〇様 ご遺族様」とします。
| 相手との関係 | 対面・電話 | メール | LINE | 弔電・手紙 |
|---|---|---|---|---|
| 親族・親友 | ◎(推奨) | ○ | ○ | ◎(参列不可時) |
| 上司・目上の方 | ○(状況による) | ○ | △(避ける) | ◎ |
| 同僚・友人 | ○ | ◎ | ○ | ○ |
| 取引先 | △(担当者による) | ◎ | ×(NG) | ◎(会社として) |
知らないと恥をかく!絶対に使ってはいけない「忌み言葉」とNGマナー
お悔やみの言葉には、不幸が重なることを連想させたり、直接的な表現を避けたりするための「忌み言葉(いみことば)」というルールがあります。悪気はなくても、これらの言葉を使ってしまうと「常識がない」「縁起が悪い」と思われてしまいます。特に文章に残るメールや手紙では、細心の注意が必要です。
不幸が続くことを連想させる「重ね言葉」
同じ言葉を繰り返す「重ね言葉」は、「不幸が繰り返される」ことを連想させるため、弔事では厳禁です。
- × たびたび、しばしば(度々不幸が来る)
- × 重ねて、ますます(不幸が重なる)
- × 次々、再び、再三(次もまた不幸がある)
- × いろいろ、わざわざ
【言い換え例】
「たびたびお見舞いに行けず…」→「なかなかお見舞いに行けず…」
「重ねてお悔やみ申し上げます」→「心よりお悔やみ申し上げます」
直接的な表現を避ける「言い換え」のルール
「死」や「苦しみ」を直接連想させる言葉も避けるのがマナーです。柔らかい表現に言い換えます。
- × 死ぬ、死亡 → ご逝去、永眠、他界
- × 生きていた頃 → お元気だった頃、ご生前
- × 急死 → 突然のこと、急なこと
- × 苦しむ、迷う(成仏できないことを連想させるため)
励ましの言葉がプレッシャーになることも
遺族を元気づけようとして使う言葉が、かえって負担になることがあります。
- × 「頑張って」「元気出して」
遺族はすでに葬儀の準備や悲しみへの対応で十分に頑張っています。これ以上どう頑張ればいいのかと追い詰めてしまう可能性があります。「ご無理をなさらないで」「お体を大切に」といった言葉を選びましょう。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「良かれと思って使いがちなNGワードの代表が『大往生でしたね』です。たとえ90歳、100歳で亡くなられたとしても、遺族にとっては『もっと長生きしてほしかった』『もっと何かできたのではないか』という後悔や悲しみがあるものです。他人が寿命を評価するような言葉は避け、『長生きされて、立派な方でしたね』『安らかに旅立たれたのですね』といった、故人を称える表現に留めるのが賢明です。」
【宗教・宗派別】お悔やみの言葉のタブーと正しい表現
日本のお葬式は仏教形式が多いですが、神道(神式)やキリスト教の場合もあります。宗教によって「死」に対する考え方が根本的に異なるため、使う言葉も変わります。「ご冥福をお祈りします」は万能だと思われがちですが、実は仏教以外では使わない言葉です。
仏教(浄土真宗など)での注意点
一般的に使われる「ご冥福をお祈りします」は、「死後の世界(冥土)での幸福を祈る」という意味です。しかし、浄土真宗では「亡くなると同時に阿弥陀如来に導かれて極楽浄土へ行き、仏になる(即身成仏)」という教えがあるため、冥土をさまよう期間がありません。そのため、「ご冥福」という言葉は使いません。
- 浄土真宗での言い換え:
「哀悼の意を表します」「心よりお悔やみ申し上げます」
※相手の宗派がわからない場合は、「お悔やみ申し上げます」を使うのが最も無難です。
神道(神式)の場合の言葉選び
神道では、故人は家の守り神(御霊・みたま)になると考えられています。「成仏」「供養」「冥福」といった仏教用語は使いません。
- NGワード:成仏、供養、冥福、往生
- 適切な表現:
「御霊(みたま)のご平安をお祈りいたします」
「御霊が安らかでありますようお祈り申し上げます」
キリスト教の場合の言葉選び
キリスト教(カトリック・プロテスタント)では、死は「神の御元に召されること」であり、永遠の命の始まりと捉えられます。そのため、「お悔やみ(死を残念がること)」という言葉自体があまり適さない場合があります。
- NGワード:お悔やみ、ご愁傷様、成仏、供養、冥福
- 適切な表現:
「安らかな眠りをお祈りいたします」
「神の御元で安らかに憩われますようお祈りいたします」
「ご昇天を悼み、心よりお祈り申し上げます(カトリック)」
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「私が若手時代、キリスト教式の葬儀でご遺族に『この度はご愁傷様でございます』と深々と頭を下げてしまったことがあります。ご遺族は優しく微笑んで『ありがとうございます、でも父は神様に呼ばれて天国へ行ったので、喜びの日でもあるんですよ』と仰いました。その時、自分の勉強不足を深く恥じました。相手の信じる世界観を尊重することこそが、本当の『お悔やみ』なのだと痛感した出来事です。事前に宗教がわかる場合は、ぜひその教えに寄り添った言葉を選んでみてください。」
こんな時どうする?状況別お悔やみQ&A
現代の葬儀事情は多様化しており、家族葬や直葬(火葬のみ)も増えています。マニュアル通りにいかないイレギュラーな状況での判断基準をQ&A形式で解説します。
Q. 「家族葬」で行うと連絡があった場合、お悔やみや香典はどうする?
A. 原則として、案内にある指示に従います。
家族葬の案内状や連絡に「香典・供花・弔電を辞退します」と明記されている場合は、何も送らず、参列も控えるのがマナーです。無理に送ると、後日のお返し(香典返し)の手間を遺族にかけてしまいます。
もし「辞退」の記載がない場合は、送っても構いませんが、念のため幹事や担当者に確認すると安心です。お悔やみのメールや手紙を送ることは問題ありません。
Q. 葬儀が終わった後に訃報を知った場合の対応は?
A. まずはお悔やみの手紙かメールを送りましょう。
「ご逝去を知らず、お悔やみが遅れましたことをお詫び申し上げます」と一言添えます。その上で、親しい間柄であれば「後日、改めてお線香をあげに伺ってもよろしいでしょうか」と尋ねるのも良いでしょう。いきなり自宅を訪問するのは、遺族の負担になるため避けてください。
Q. 故人との面識がない(友人の親など)場合も言葉をかけるべき?
A. 友人(遺族)に対する労いの言葉をかけましょう。
故人を知らなくても、大切な人を亡くした友人を気遣うことは大切です。「お父様にお会いしたことはないけれど、〇〇さんから素敵なお父様だと聞いていました」など、友人の心情に寄り添うメッセージを送ります。
Q. 返信不要と書かれていたら本当に返信しなくていい?
A. はい、返信しないのがマナーであり優しさです。
「返信不要」とあるのは、遺族が「返信を書く気力や時間がない」「お互いに気を使わせたくない」という意思表示です。ここで律儀に「了解しました。お辛い中ご連絡ありがとうございます」などと返すと、相手に通知がいき、かえって負担になります。既読をつけるだけで十分です。
葬祭ディレクター1級のアドバイス
「遺族の負担を減らす『返信不要』のスマートな添え方として、私は以下の文面をおすすめしています。
『このメールへの返信は不要です。どうかスマホを置いて、ご家族とゆっくり過ごしてください』
単に『返信不要』と書くよりも、なぜ不要なのかという理由(あなたに休んでほしいから)を添えることで、冷たい印象を与えず、相手も甘えやすくなります。」
お悔やみの言葉と一緒に…香典・供花・弔電の判断基準
言葉を伝えた後、次に悩むのが「形あるもの」をどうするかです。関係性や地域の慣習にもよりますが、一般的な判断基準を整理します。
香典の相場と渡すタイミング
香典は、通夜または告別式の受付で渡します。郵送の場合は、現金書留でお悔やみ状を添えて送ります。
- 勤務先の上司・同僚・部下: 5,000円〜10,000円
- 取引先関係: 10,000円〜
- 友人・知人: 5,000円〜10,000円
- 親族: 10,000円〜50,000円(関係の深さによる)
※「4(死)」「9(苦)」のつく金額は避けます。また、新札は「あらかじめ用意していた」と思われるため避け、旧札を使うか、新札に折り目を入れて包みます。
供花・供物を贈る際の手順と確認事項
花を贈りたい場合は、勝手に花屋で手配して送りつけるのはNGです。会場によっては提携業者以外の持ち込みを禁止していたり、統一感を出すために花の種類を指定している場合があります。
- まず、葬儀会場または担当の葬儀社を確認する。
- 葬儀社に電話し、「〇〇家(喪家名)の葬儀に供花を出したい」と伝える。
- 予算や名札の書き方(会社名や連名など)を伝えて発注する。
会社名義で出す場合の社内規定確認ポイント
ビジネス関係の場合、個人の判断で動く前に必ず上司や総務担当に「慶弔規定」を確認しましょう。
- 会社として香典や供花を出す基準はあるか?
- 「〇〇一同」とするか、代表者名で出すか?
- 弔電の宛先や文面に関する指定はあるか?
これらを確認せずに個人で動いてしまうと、会社としての序列や対応の統一性が崩れ、後々トラブルになることがあります。
まとめ:お悔やみの言葉は「形式」よりも「心」を込めて
ここまで、お悔やみの言葉の文例やマナーについて解説してきました。多くのルールやタブーがあり、難しく感じられたかもしれません。しかし、最も大切なことは「完璧な敬語を使うこと」ではありません。
大切なのは、「あなたの悲しみを私も分かち合いたい」「少しでも心が安らぎますように」という思いやりです。多少言葉がたどたどしくても、その心がこもっていれば、必ず相手に伝わります。
最後に、お悔やみのメールやLINEを送信する前の最終チェックリストを掲載します。送信ボタンを押す前に、もう一度だけ確認してみてください。
お悔やみメール送信前チェックリスト
- 忌み言葉は入っていませんか?
(たびたび、重ね重ね、死ぬ、苦しむ、頑張って、など) - 相手の宗教に配慮していますか?
(キリスト教や神道の方に「ご冥福」「供養」などを使っていませんか?) - 件名は分かりやすいですか?
(「【お悔やみ】氏名」など、開封しなくても分かる件名になっていますか?) - 敬称は正しいですか?
(ご尊父様、ご母堂様など、故人への敬意を表す言葉になっていますか?) - 遺族への「いたわり」の言葉は入っていますか?
(「ご自愛ください」「無理なさらないで」など) - 「返信不要」の旨を添えましたか?
(相手の負担を減らすための一言はありますか?)
このチェックリストをクリアしていれば、あなたのメッセージは失礼になることはありません。自信を持って、温かい言葉を届けてあげてください。
あなたの言葉が、悲しみの中にある方にとって、小さな灯りとなることを願っています。
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