顔や身体にある「ほくろ」は、チャームポイントとして愛されることもあれば、コンプレックスの原因として深く悩まれることもあります。特に、年々大きくなってきたり、盛り上がってきたりするほくろに対して、「取りたいけれど、傷跡が残ったらどうしよう」「失敗して逆に目立つのは怖い」と不安を抱えている方は非常に多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、ほくろ除去で後悔しないためには、ご自身の「ほくろの深さと種類」を正確に診断し、それに適した治療法を選択することが何よりも重要です。安易に「手軽で安いから」という理由だけでレーザー治療を選ぶと、再発を繰り返したり、深い凹み(陥没変形)が残ったりする原因となります。美しい仕上がりを目指すためには、「形成外科専門医」による診断と、皮膚の構造を熟知した技術が不可欠です。
本記事では、形成外科専門医としての15年以上の臨床経験と、10,000件を超える皮膚腫瘍の手術実績に基づき、ほくろ除去に関する真実を包み隠さず解説します。インターネット上にはメリットばかりを強調した情報も散見されますが、ここでは医療の現場だからこそ語れる「リスク」や「リアルな経過」についても詳細にお伝えします。
この記事を読むことで、以下の3点が明確になります。
- ほくろの種類別に最適な4つの除去方法と、それぞれのメリット・デメリット
- 術後のリアルな経過写真やタイムラインで理解する、ダウンタイムと傷跡の治り方
- 保険適用と自費診療の料金相場、および失敗しないクリニック選びの基準
正しい知識を身につけ、納得のいく治療法を選ぶことで、長年のコンプレックスから解放され、自信を持って素肌を見せられる毎日を手に入れましょう。
ほくろ除去を考える前に知っておくべき「種類」と「悪性の見分け方」
「ほくろを取りたい」と考えたとき、多くの方がいきなり「どのレーザーが良いか」「費用はいくらか」を調べ始めます。しかし、医師の立場から最も強調したいのは、まず最初に「そのほくろは、本当に取って良いものか?」「悪性の可能性はないか?」を確認することの重要性です。
一般的に「ほくろ」と呼ばれているものは、医学的には「色素性母斑(母斑細胞母斑)」という良性の腫瘍です。しかし、中にはほくろに酷似した「皮膚がん(悪性黒色腫など)」が混ざっているケースが稀に存在します。これを見逃して美容目的のレーザー治療を行ってしまうと、がん細胞を刺激して転移を早めたり、正しい診断を遅らせたりする取り返しのつかない事態になりかねません。
まずは、ご自身のほくろがどのようなタイプなのか、そして危険なサインが出ていないかを知ることから始めましょう。
日本形成外科学会認定専門医のアドバイス:まずは「ダーモスコピー」での診断を
見た目が普通のほくろであっても、専門医が肉眼で見るだけでは診断が難しいケースがあります。そのため、必ず「ダーモスコピー」という特殊な拡大鏡検査を行っているクリニックを受診してください。ダーモスコピーを使えば、皮膚の奥にある色素の分布パターンを詳細に観察でき、切除する前に良性か悪性か(メラノーマや基底細胞癌の疑いがないか)を高い精度で判断することができます。自己判断は禁物です。
一般的なほくろ(色素性母斑)の種類と特徴
良性のほくろ(色素性母斑)は、メラニン色素を作る「母斑細胞」が増殖してできたものです。これらは、母斑細胞が存在する皮膚の深さによって、大きく3つのタイプに分類されます。この分類は、後述する「最適な治療法」を選ぶ上でも非常に重要な指標となります。
- 境界母斑(きょうかいぼはん):
皮膚の浅い部分(表皮と真皮の境界)に母斑細胞が集まっているタイプです。見た目は平らで、色は黒〜茶褐色をしており、直径は数ミリ程度のものが一般的です。子供や若年層に多く見られますが、成人でも新たにできることがあります。浅い位置にあるため、レーザー治療での除去が比較的容易で、跡も残りにくい傾向にあります。 - 複合母斑(ふくごうぼはん):
母斑細胞が表皮と真皮の両方にまたがって存在しているタイプです。境界母斑が進行したもので、中央部分がやや盛り上がっているのが特徴です。色は濃い黒色から褐色まで様々です。根が少し深くなっているため、表面だけを削っても再発するリスクがあり、治療法の選択には慎重さが求められます。 - 真皮内母斑(しんぴないぼはん):
母斑細胞が皮膚の深い部分(真皮内)にのみ存在するタイプです。色は皮膚と同じ色(肌色)や淡い褐色をしていることが多く、ドーム状に大きく盛り上がっています。時には表面に毛が生えていることもあります。根が深いため、レーザーで無理に取り除こうとすると深い穴が開いてしまい、凹みが残るリスクが高くなります。外科的な切除やくり抜き法が適しているケースが多いです。
要注意!悪性黒色腫(メラノーマ)の初期症状「ABCDルール」
ほくろと見分けがつきにくい皮膚がんの代表格が「悪性黒色腫(メラノーマ)」です。これは非常に進行が早く、転移しやすい恐ろしい病気ですが、早期に発見して適切に切除すれば治癒が望めます。ご自身のほくろが以下の「ABCDルール」に当てはまらないか、セルフチェックを行ってみてください。
- A (Asymmetry) 非対称性:
ほくろの形を半分に折ったとき、左右や上下が非対称である場合。良性のほくろは通常、円形や楕円形で対称性があります。 - B (Border) 境界の不鮮明さ:
ほくろと周囲の皮膚との境目がギザギザしていたり、ぼやけていたりして、はっきりしない場合。良性のものは境界がくっきりとしています。 - C (Color) 色調の不均一:
黒、茶色、青、赤、白などが混ざり合い、色ムラがある場合。良性のほくろは均一な色調をしていることがほとんどです。 - D (Diameter) 直径の大きさ:
直径が6mm(鉛筆の太さ程度)を超える場合。ただし、6mm以下でも悪性の可能性はあるため、大きさだけで安心はできません。
これらに加えて、最近は「E (Evolving) 変化」も重要視されています。急に大きくなった、色が変わった、出血やかゆみがあるといった変化が見られる場合は、直ちに専門医を受診する必要があります。
除去すべきほくろ・除去しないほうがよいほくろの判断基準
医学的な観点から「除去すべき」と判断されるほくろと、美容的な観点から「除去してもよい」とされるほくろ、そして「安易に手を出さないほうがよい」ほくろがあります。
除去を推奨するケース(保険適用になる可能性が高い):
悪性の疑いがあるもの、洗顔や着替えの際に引っかかって出血を繰り返すもの、視界を遮るもの(眼瞼周辺など)、急激に大きさや形状が変化しているものは、医学的に除去が推奨されます。これらは病理検査を行う必要があるため、切開手術などが選択されます。
美容目的で除去可能なケース:
良性と診断された上で、見た目のコンプレックスになっているもの。これらは自費診療となりますが、最新のレーザー機器や手術手技を用いることで、傷跡を最小限に抑えて除去することが可能です。
慎重な判断が必要なケース:
非常にサイズが大きい(巨大型色素性母斑など)場合や、ケロイド体質の方の胸部や肩などのほくろです。無理に除去すると、元のほくろよりも目立つ大きな傷跡やケロイドが残るリスクがあります。この場合は、除去するメリットとデメリットを天秤にかけ、医師とよく相談する必要があります。
詳細情報:良性ほくろと悪性腫瘍の特徴比較表
| 特徴 | 良性のほくろ(色素性母斑) | 悪性黒色腫(メラノーマ)など |
|---|---|---|
| 形状 | 円形、楕円形で対称的 | いびつで非対称 |
| 境界 | 鮮明で滑らか | 不鮮明、ギザギザしている |
| 色 | 均一(黒、褐色、肌色) | 色ムラがある(濃淡が混在) |
| 大きさ | 6mm以下のことが多い | 6mm以上になることが多い |
| 経過 | 変化は緩やか、または変化なし | 数ヶ月単位で急激に変化する |
【徹底比較】ほくろ除去の4つの治療法と選び方
ほくろが良性であると診断されたら、次はいよいよ具体的な除去方法の選択です。現在、医療機関で行われている主な治療法は大きく分けて4つあります。「炭酸ガスレーザー」「電気メス」「くり抜き法」「切開縫合法」です。
患者様からよく「一番跡が残らない方法はどれですか?」と聞かれますが、これに対する正解は「ほくろの大きさ、深さ、場所によって異なる」です。小さなほくろにメスを入れるのは過剰ですし、逆に大きくて深いほくろにレーザーを照射し続けるのは再発や凹みの原因となります。
このセクションでは、各治療法のメカニズムと適応を徹底的に比較し、あなたが選ぶべき最適な方法を導き出します。
治療法一覧と比較:レーザー治療 vs 切開手術
まずは4つの治療法の全体像を把握しましょう。以下の比較マトリクスは、一般的な傾向をまとめたものです。ご自身のほくろのサイズや重視するポイント(ダウンタイムの短さか、再発率の低さか)と照らし合わせてみてください。
| 治療法 | 適応サイズ | 痛み | ダウンタイム | 再発リスク | 傷跡の特徴 | 費用目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 炭酸ガスレーザー | 平ら・小〜中 (3mm以下推奨) |
少 (麻酔あり) |
短 (約1〜2週間) |
中 (深部残存時) |
浅い凹み、赤み (目立ちにくい) |
安価 |
| 電気メス | 盛り上がり (5mm程度まで) |
中 (局所麻酔) |
中 (約2週間) |
中 | 熱損傷による凹み (やや残りやすい) |
安価〜中 |
| くり抜き法 | 深さがある (5mm程度まで) |
中 (局所麻酔) |
長 (2〜3週間) |
低 | 小さなニキビ跡 のような凹み |
中(保険適応可) |
| 切開縫合法 | 大きい・深い (5mm以上) |
中 (局所麻酔) |
抜糸まで1週間 赤み数ヶ月 |
極低 (完全除去) |
一本の白い線 (シワに馴染む) |
高(保険適応可) |
【炭酸ガスレーザー(CO2)】盛り上がったほくろ・小さいほくろに最適
現在、美容クリニックで最も主流となっているのが炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)による治療です。このレーザーは、細胞内の水分に反応して熱エネルギーを発生させ、瞬間的に組織を蒸散(気化)させてほくろを削り取ります。
メリット:
出血がほとんどなく、周囲の正常な皮膚へのダメージを最小限に抑えられるため、傷の治りが早いのが最大の特徴です。直径3mm以下の平らなほくろや、わずかに盛り上がったほくろであれば、ほとんど跡を残さずにきれいに治すことができます。施術時間も1個あたり数分と短時間で済みます。
デメリット・注意点:
レーザーは「削る」治療であるため、ほくろの細胞が皮膚の深いところ(真皮深層や皮下組織)まで達している場合、全て取り切ろうとすると深く削りすぎてしまい、クレーター状の凹みが残るリスクがあります。逆に、凹みを恐れて浅く削ると、奥に残った細胞が再増殖して「再発」します。この「深さの見極め」が医師の技術力を左右します。
詳細解説:炭酸ガスレーザーの仕組み
炭酸ガスレーザーの波長(10,600nm)は水分への吸収率が高く、照射した瞬間に組織を蒸発させます。同時に熱凝固作用によって毛細血管を閉じるため、出血を抑えることができます。最近では「スキャナ機能」を搭載した機種もあり、均一な深さで精密に削ることが可能になっています。施術後は、擦り傷のような状態になり、そこから新しい皮膚が再生して治っていきます。
【電気メス】熱で組織を削り取る(近年はレーザーが主流)
電気メス(高周波メス)は、高周波電流の熱を利用してほくろの組織を焼き切る・削り取る方法です。かつては主流でしたが、炭酸ガスレーザーの普及により、現在では選択される頻度が減っています。
特徴:
炭酸ガスレーザーよりも熱によるダメージが周囲に及びやすいため、傷の治りがやや遅くなったり、熱傷による瘢痕(跡)が残りやすかったりする傾向があります。ただし、盛り上がりが強いほくろをスライスして平らにする際などには有効な場合もあります。費用面ではレーザーよりも安価に設定されているクリニックが多いです。
【くり抜き法】深さのあるほくろを円形に切除する
くり抜き法(パンチ切除)は、専用の円筒状のメス(トレパン)を使って、ほくろを皮膚の深い部分まで円形にくり抜く方法です。鼻や小鼻の周りなど、皮膚が硬く、切開して縫い合わせると変形しやすい場所にある、比較的小さく深いほくろに適しています。
特徴:
ほくろの細胞を根こそぎ取り除くため、再発率はレーザーよりも低くなります。くり抜いた後の穴は、通常は縫合せず、軟膏を塗って自然に塞がるのを待ちます(二次治癒)。傷が塞がるまでに2〜3週間ほどかかりますが、最終的にはニキビ跡のような小さな凹みとして落ち着きます。場合によっては、巾着の口を絞るように糸で寄せて縫うこともあります。
【切開縫合法】大きなほくろを完全に除去し、線状の傷にする
直径が5mmを超える大きなほくろや、深部まで達しているほくろ、悪性の疑いがあり病理検査が必要なほくろに対して行われる、最も確実な方法です。木の葉型(紡錘形)に皮膚を切り取り、皮膚のシワのラインに合わせて丁寧に縫い合わせます。
形成外科医の技術の見せ所:
「切ると傷跡が残る」と思われがちですが、実は大きなほくろを無理にレーザーで削って大きな凹みを作るよりも、切開して一本の細い線にした方が、最終的には目立たなくなるケースが多いのです。形成外科医は「RSTL(皮膚割線)」という皮膚のシワの方向を熟知しており、そのラインに沿って切開し、真皮縫合(中縫い)という高度な技術を用いて皮膚にかかる緊張を減らすことで、傷跡を極限まで目立たなくさせます。
日本形成外科学会認定専門医のアドバイス:再発を防ぐ「切開法」の選択基準
レーザーは手軽で魅力的ですが、深いほくろに対して無理に行うと、取り残しによる再発や、深く削りすぎることによる「凹み(陥没変形)」のリスクが跳ね上がります。特に再発を繰り返すと、組織が硬くなり(瘢痕化)、次の治療が難しくなります。5mmを超えるものや、明らかに盛り上がって根が深そうなものは、急がば回れで「切開法」を選択した方が、結果的に「再発なし」「きれいな一本線」という満足度の高い仕上がりになることが多いのです。
術後の「傷跡」と「ダウンタイム」のリアルな経過
ほくろ除去を検討している方にとって、最も気になるのが「術後の経過」でしょう。「いつからメイクができるのか?」「赤みはいつ消えるのか?」「本当に跡は消えるのか?」といった不安は尽きません。
ここでは、きれいな仕上がりのために患者様自身が知っておくべき、術後のリアルな経過とケア方法を時系列で解説します。ほくろ除去は「取って終わり」ではなく、「取った後のケア」で仕上がりの8割が決まると言っても過言ではありません。
治療直後〜1週間:保護テープと軟膏処置の重要性
状態:
レーザーやくり抜き法の場合、治療直後はほくろがあった場所が「穴(皮膚欠損)」になっています。少し血が滲むことがありますが、すぐに止まります。切開法の場合は、糸で縫合された状態です。
ケア方法:
この時期に最も重要なのは「乾かさないこと」です。傷口を乾燥させると、かさぶたができて治りが遅くなり、跡が残りやすくなります。これを防ぐために「湿潤療法」を行います。具体的には、処方された軟膏をたっぷりと塗り、その上から肌色の保護テープ(マイクロポアテープなど)を貼って、常に湿った環境を保ちます。
テープは基本的に貼りっぱなしで過ごし、洗顔や入浴もテープの上から行います。剥がれたら貼り替えますが、無理に剥がす必要はありません。この「テープ生活」が約10日〜14日間続きます。ここを我慢できるかが勝負です。
1ヶ月〜3ヶ月:赤みが目立つ時期(炎症後色素沈着)の乗り越え方
状態:
皮膚が再生して穴が塞がると(上皮化)、テープは不要になります。しかし、この時期の傷跡はピンク色〜赤色をしており、場合によっては一時的に茶色っぽく濃くなることがあります。これを「炎症後色素沈着」と呼びます。「失敗したのではないか?」「再発したのではないか?」と不安になる時期ですが、これは傷が治る過程で必ず起こる正常な反応です。
ケア方法:
この時期の肌は、生まれたての赤ちゃんのようにデリケートです。わずかな紫外線でも過剰に反応して、頑固なシミ(色素沈着)を作ってしまいます。外出時は必ず日焼け止めを塗り、可能であればUVカット効果のあるテープを使用するなど、徹底的な遮光を行ってください。コンシーラーやファンデーションで隠すことは可能です。
半年〜1年:傷跡が白く成熟し、目立たなくなるまで
状態:
赤みや色素沈着は、時間の経過とともに徐々に薄くなっていきます。個人差はありますが、3ヶ月〜6ヶ月ほどかけて肌色に近い色に戻り、最終的には周囲の皮膚とほとんど見分けがつかない状態、あるいはわずかに白っぽい成熟瘢痕(せいじゅくはんこん)となります。
切開法の傷跡も、当初は赤く硬さがありますが、半年ほどかけて柔らかく、白い線へと変化し、シワに紛れて目立たなくなります。
部位別のダウンタイムの違い(顔、体、鼻周りなど)
傷の治りやすさは部位によって異なります。
- 顔:血流が良いため治りが早く、傷跡もきれいになりやすい部位です。特に頬や額は目立ちにくくなります。
- 鼻・口周り:よく動かす部位であるため、テープが剥がれやすく、安静を保ちにくい場所です。そのため、やや赤みが長引く傾向があります。また、鼻の頭などは皮膚が硬く、くり抜き法後の凹みが平らになるまで時間がかかることがあります。
- 体(腕・背中など):顔に比べて皮膚のターンオーバーが遅いため、赤みや色素沈着が消えるまでに顔の2倍以上の期間(1年以上)がかかることが珍しくありません。また、ケロイドや肥厚性瘢痕になりやすい部位でもあるため、注意が必要です。
画像:術後経過のタイムライン図解
(直後の穴 → 上皮化(皮が張る) → 赤み(炎症後色素沈着) → 肌色に戻るまでの変化イメージ)
※読者の皆様は、このプロセスが数日で終わるものではなく、数ヶ月単位で完成していくものだと理解してください。
日本形成外科学会認定専門医のアドバイス:紫外線対策が仕上がりを左右する
ほくろ除去後の肌は非常にデリケートです。傷が治った直後のピンク色の皮膚に紫外線を浴びると、体が防御反応を起こしてメラニンを過剰に作り、濃いシミ(色素沈着)になって残ってしまいます。これを防ぐため、最低でも3ヶ月、できれば半年は遮光テープや日焼け止めでの徹底ガードが必要です。「傷跡が残った」と言う方の多くは、この時期の紫外線対策が不十分だったケースが見受けられます。
ほくろ除去の費用相場と保険適用の条件
治療を検討する際、やはり気になるのは費用です。ほくろ除去には「健康保険が使える場合」と「自費診療(自由診療)になる場合」があり、費用が大きく異なります。この違いを正しく理解しておきましょう。
「保険適用」になるケースとは?(悪性の疑い・機能障害)
単に「見た目が気になるから」という理由だけでは、保険は適用されません。保険が適用されるのは、そのほくろが「病気」や「生活上の支障」として認められる場合です。
保険適用となる具体的な例
- 悪性腫瘍との鑑別が必要な場合:
ダーモスコピー検査などで悪性黒色腫や基底細胞癌などの疑いがあり、切除して病理組織検査を行う必要がある場合。 - 機能的な問題がある場合:
まぶたにあって視野を遮る、洗顔や着替え・ひげ剃りの際に引っかかって出血や痛みを繰り返す、眼鏡やマスクの紐が当たって擦れるなど、日常生活に具体的な支障がある場合。
保険適用の場合、治療費は全国一律で点数が決まっています。3割負担の方の場合、露出部(顔・首・肘から先・膝から下)で直径2cm未満の切除手術であれば、手術代は約5,000円〜6,000円程度です。これに初診料、検査料、処方箋料、病理検査料などが加わり、総額で10,000円〜15,000円程度になることが一般的です。
自由診療(美容目的)の料金相場と計算方法(mm単価)
美容目的での除去(平らなほくろのレーザー治療など)は、全額自己負担の自由診療となります。料金はクリニックによって自由に設定されますが、一般的にはほくろの「大きさ(直径)」で計算されることが多いです。
| サイズ | 炭酸ガスレーザー | 切開法(自費) |
|---|---|---|
| 1mm | 3,000円〜5,000円 | – |
| 3mm | 9,000円〜15,000円 | 20,000円〜30,000円 |
| 5mm | 15,000円〜25,000円 | 30,000円〜50,000円 |
※上記は施術代のみの目安です。別途、初診料(〜3,000円)、麻酔代、薬代、保護テープ代などが加算される場合があります。必ずカウンセリングで見積もりを確認しましょう。
安すぎるクリニックの注意点と「取り放題プラン」の落とし穴
最近では「1個〇〇円」「取り放題プラン」といった格安料金を打ち出すクリニックも増えています。コストを抑えられるのは魅力的ですが、注意点もあります。
まず、安価なプランの場合、施術を行うのが経験の浅い医師であったり、アフターケア(薬代や再診料)が別料金で高額になったりすることがあります。また、「取り放題」は一見お得ですが、一度に多数のほくろを除去すると、顔中がテープだらけになり日常生活に支障をきたしたり、痛みの管理が大変だったりします。さらに、流れ作業のような施術になり、一つ一つの仕上がりの質(凹みや取り残し)が疎かになるリスクも否定できません。「顔」という大切な場所の治療ですから、値段だけで決めず、医師の技術や対応を含めて総合的に判断することをお勧めします。
失敗しない!ほくろ除去クリニックの選び方 5つのポイント
ほくろ除去は比較的ポピュラーな施術ですが、それでも「跡が残った」「再発した」といったトラブルは後を絶ちません。失敗を避け、満足のいく結果を得るためには、クリニック選びが最も重要です。ここでは、形成外科医の視点から、信頼できるクリニックを見極める5つのポイントを伝授します。
「形成外科専門医」または「皮膚腫瘍外科指導医」が在籍しているか
ホームページの医師紹介欄を必ずチェックしてください。「美容外科医」と名乗っていても、そのバックグラウンドは様々です。ほくろ除去において最も信頼できるのは、「日本形成外科学会認定専門医」または「皮膚腫瘍外科指導医」の資格を持つ医師です。これらの医師は、皮膚の解剖学、傷の治癒過程、縫合技術、腫瘍の診断に関する専門的なトレーニングを長年受けており、傷跡をきれいに治すことのプロフェッショナルです。
ダーモスコピーによる診断と病理検査を行っているか
前述の通り、術前の診断は命に関わるほど重要です。カウンセリングの際に、ダーモスコピー(拡大鏡)を使ってしっかりと診察してくれるかを確認しましょう。また、切除したほくろを病理検査(顕微鏡での詳しい検査)に出す体制が整っているかも重要です。これを行わないクリニックは、万が一悪性だった場合に見逃すリスクがあります。
カウンセリングで「リスク」と「再発」について説明があるか
「絶対に跡は残りません」「1回で完璧に取れます」といった、良いことしか言わない医師は要注意です。誠実な医師であれば、「レーザーでも多少の凹みや赤みのリスクがあること」「再発の可能性があること」「部位によっては切開の方がきれいになること」など、ネガティブな情報も含めて説明します。リスクを隠さずに話してくれる医師こそ、信頼に値します。
料金体系が明瞭か(麻酔代やアフターケア代が含まれているか)
表示価格は安くても、実際にカウンセリングに行くと「麻酔代は別」「薬代は別」「テープ代は別」と加算され、最終的に高額になるケースがあります。ホームページや事前の問い合わせで、施術代以外にかかる費用を含めた総額を確認しましょう。再発時の保証制度(リタッチ制度)があるかどうかも確認ポイントの一つです。
症例写真が豊富で、加工されていないか(経過写真があるか)
SNSなどの症例写真は、直後の赤みを消すなどの加工がされている場合があります。信頼できる症例写真は、肌の質感や毛穴まで鮮明に見えるものです。また、施術直後の「きれいな状態」だけでなく、1週間後、1ヶ月後、半年後といった「経過」を追った写真が掲載されているクリニックは、治療結果に自信と責任を持っている証拠と言えます。
日本形成外科学会認定専門医のアドバイス:医師の技術を見極める質問
カウンセリングでは、遠慮せずに医師に質問を投げかけてみてください。例えば、「もし再発したらどうなりますか?」「この大きさならレーザーと切開、先生ならどちらを勧めますか?」と聞いてみてください。この質問に対して、マニュアル通りの回答ではなく、あなたの肌の状態やライフスタイルを考慮した上で、メリット・デメリットや修正対応について誠実に答えてくれる医師を選びましょう。
よくある失敗・トラブルと対処法
医療行為である以上、トラブルのリスクをゼロにすることはできません。しかし、事前にどのようなトラブルが起こり得るかを知っておくことで、早期発見や適切な対処が可能になります。
ほくろが再発してしまった場合(再手術のタイミング)
レーザー治療後、数ヶ月〜数年して、同じ場所に黒い点が再び現れることがあります。これは、深部に残っていた母斑細胞が再増殖したためです。特に、再発を恐れて深く削りすぎることを避けた場合に起こりやすい現象です。
対処法:
再発した場合、すぐに再照射するのではなく、半年程度あけて皮膚の状態が落ち着いてから再治療を行うのが一般的です。何度も再発を繰り返す場合は、レーザーでは取りきれない深さにあると考えられるため、切開法への切り替えを検討します。
除去後の凹み(クレーター)が治らない場合
レーザーで深く削りすぎたり、術後に感染を起こしたりすると、皮膚が再生しきれずに凹んだままになることがあります(陥没変形)。
対処法:
軽度であれば、時間の経過とともに皮膚が再生して目立たなくなりますが、深い凹みが残った場合は治療が難しくなります。対処法としては、再度その部分を切除して縫い合わせる(切除縫合)か、ヒアルロン酸注入やフラクショナルレーザーなどで凹みを目立たなくする治療が行われます。
傷跡がケロイド・肥厚性瘢痕になってしまった場合
体質や部位(胸、肩、背中など)によっては、傷跡が赤く盛り上がり、痒みや痛みを伴う「肥厚性瘢痕」や「ケロイド」になることがあります。
対処法:
ステロイド含有のテープ(ドレニゾンテープなど)を貼ったり、ステロイド注射を傷跡に打ったりして、盛り上がりを抑える治療を行います。ケロイド体質の方は、事前に医師に伝えておくことが非常に重要です。
ほくろ除去に関するQ&A
最後に、診察室で患者様から頻繁にいただく質問にお答えします。
Q. 施術中の痛みはどれくらいですか?麻酔は痛い?
Answer: 施術中は局所麻酔が効いているため、痛みは全くありません。唯一痛みを感じるのは、最初に麻酔の注射をする時です。チクリとした痛みと、薬が入ってくる時の押されるような感覚があります。痛みに極端に弱い方には、事前に麻酔クリームを塗って注射の痛みを和らげたり、笑気麻酔を併用したりできるクリニックもありますので、相談してみてください。
Q. 洗顔やメイク、入浴はいつから可能ですか?
Answer: レーザー治療やくり抜き法の場合、当日から洗顔・シャワー・入浴は可能ですが、患部はテープで保護し、極力濡らさないように、あるいは濡れてもすぐに拭いて新しいテープに貼り替えるようにします。テープの上からのメイクは当日からOKです。患部への直接のメイクは、皮膚が再生して上皮化してから(約1〜2週間後)が可能になります。切開法の場合は、抜糸(約1週間後)の翌日から患部を濡らしたりメイクしたりできるようになるのが一般的です。
Q. ほくろ除去クリームや民間療法は効果がありますか?
日本形成外科学会認定専門医のアドバイス:自己処理の危険性
インターネット通販などで見かける「ほくろ除去クリーム」や「もぐさ」などの民間療法は、絶対にやめてください。これらは強酸性や強アルカリ性の薬剤で皮膚を化学的に火傷させて組織を壊死させるものです。深さのコントロールが全くできないため、ほくろが取れないどころか、広範囲の皮膚潰瘍、深いケロイド、感染症などを引き起こし、クリニックでの修正手術すら困難になる悲惨なケースが多発しています。
Q. 一度に何個まで取ることができますか?
Answer: 医学的には個数制限はありませんが、一度にたくさん取ると、術後のテープ処置が大変になり、洗顔やメイクに支障が出ます。また、麻酔の量も増えます。初めての方は、まず目立たない場所の1〜2個から始めて、経過や痛みの程度を確認してから、残りを治療することをお勧めします。慣れている方でも、顔なら5〜10個程度に留めておくのが現実的です。
まとめ:自信を持てる素肌のために、まずは専門医に相談を
ほくろ除去は、単に黒い点を消すだけでなく、長年のコンプレックスを解消し、気持ちを前向きにしてくれる素晴らしい治療です。しかし、顔という大切な部分に手を加える以上、リスクゼロではありません。だからこそ、正しい知識を持ち、信頼できる医師と二人三脚で治療を進めることが大切です。
ほくろ除去で後悔しないための要点振り返り
- 診断が第一:まずはダーモスコピーで「良性か悪性か」を確実に診断する。
- 適切な治療法の選択:小さいほくろはレーザー、大きく深いほくろは切開法など、ほくろの性質に合った方法を選ぶ。
- 術後ケアの徹底:テープ保護による湿潤療法と、3ヶ月以上の徹底した紫外線対策が、傷跡の美しさを決める。
- クリニック選び:安さだけでなく、「形成外科専門医」の有無や、リスク説明の誠実さで選ぶ。
カウンセリング予約前の最終チェックリスト
いざクリニックを予約する前に、以下の項目をチェックして準備を整えましょう。
- [ ] 除去したいほくろの位置と個数を鏡を見て決めた
- [ ] 術後1〜2週間(テープを貼る期間)に、結婚式や重要なプレゼンなどの大切な予定がないか確認した
- [ ] 通える範囲に「日本形成外科学会認定専門医」のいるクリニックがあるか検索し、リストアップした
- [ ] 予算の目安をつけた(保険適用か自費か、総額でいくらか)
- [ ] 質問したいこと(痛み、再発、アフターケアなど)をメモした
あなたの肌の悩みは、専門家の力を借りることで解決できます。まずはカウンセリングに足を運び、専門医の話を聞いてみることから始めてみてください。その一歩が、自信に満ちた新しい自分への入り口となるはずです。
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