イングランド・プレミアリーグにおいて、これほどまでに「過去の栄光」と「現在の野心」が強烈なコントラストを描くクラブは他に存在しません。ノッティンガム・フォレストFC。かつて地方の小クラブでありながら、欧州チャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)を2連覇するというフットボール史上最大の「奇跡」を成し遂げた伝説の古豪です。
長い低迷期を経て23年ぶりにトップリーグへ帰還した彼らは今、豊富な資金力を背景にした積極補強と、世界屈指の熱狂的なサポーターを武器に、プレミアリーグの勢力図を塗り替えようとしています。「名前は聞いたことがあるけれど、実際どんなチームなのか?」「なぜ古豪と呼ばれるのか?」そんな疑問を持つあなたに向けて、このクラブの全貌を解き明かします。
この記事でわかること
- なぜ「伝説の古豪」と呼ばれるのか?名将ブライアン・クラフ時代に成し遂げた奇跡と歴史的背景
- 【2024-25最新】ヌーノ監督率いるチームの戦術分析、順位、試合で注目すべきキープレーヤー
- オーナーの資金力やPSR(財務規則)問題など、ニュースで話題になるクラブ経営の裏側と将来性
なぜ「伝説の古豪」なのか?ノッティンガム・フォレストの歴史と栄光
現代のプレミアリーグファンにとって、ノッティンガム・フォレストは「昇格してきた金満クラブ」あるいは「残留争いをするチーム」という印象が強いかもしれません。しかし、イングランドフットボールの歴史を語る上で、このクラブを避けて通ることは不可能です。なぜなら、彼らは「1部リーグ優勝回数(1回)よりも欧州制覇の回数(2回)の方が多い」という、世界でも類を見ない特異な記録を持つクラブだからです。
このセクションでは、単なる過去の記録の羅列ではなく、なぜフォレストが「魔法」と称されたのか、そのストーリーを紐解いていきます。この歴史的背景を知ることで、現在のチームが背負っているエンブレムの重みと、サポーターが抱くプライドの源泉を理解できるはずです。
欧州サッカー専門ライターのアドバイス
「現代サッカーファンが知っておくべき『奇跡』の文脈とは、単に勝ったことではありません。当時のフォレストは、現在で言えば2部リーグから昇格したばかりのレスターやイプスウィッチが、いきなりプレミアリーグを制し、そのままレアル・マドリードやバイエルンを倒してCLを連覇するようなものです。この『あり得ない物語』こそが、フォレストを特別な存在にしているのです」
名将ブライアン・クラフと奇跡のチャンピオンズカップ2連覇 (1979-1980)
ノッティンガム・フォレストの歴史を語る上で、絶対に欠かせない人物がいます。ブライアン・クラフ監督です。彼の存在なくして、フォレストの栄光はあり得ませんでした。1975年、当時2部リーグの中位に低迷していたチームの監督に就任したクラフは、相棒のピーター・テイラーと共にチームを劇的に変革しました。
彼らの手腕は魔法のようでした。就任からわずか数年で1部リーグへの昇格を果たすと、昇格初年度の1977-78シーズンにいきなりリーグ優勝を成し遂げます。これだけでも十分に驚異的ですが、真の伝説はその翌シーズンから始まりました。イングランド王者として出場した1978-79シーズンのUEFAチャンピオンズカップ(現CL)において、彼らは並み居る欧州の強豪を次々と撃破。決勝でマルメFF(スウェーデン)を1-0で下し、初出場にしていきなり欧州の頂点に立ったのです。
さらに翌1979-80シーズン、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ同大会でも決勝まで進出し、ハンブルガーSV(ドイツ)を撃破。なんと2年連続で欧州王者の座に輝きました。地方のプロヴィンチャ(地方クラブ)が、リヴァプールやマンチェスター・ユナイテッドといった国内のビッグクラブ、さらには欧州の名門クラブを差し置いて頂点に立ち続ける姿は、世界中に衝撃を与えました。
当時の戦術は、堅固な守備と規律、そしてクラフ監督のカリスマ性による強烈なモチベーション管理に支えられていました。また、英国史上初の100万ポンドプレーヤーとなったトレバー・フランシスの獲得など、勝負所での大胆な補強も光りました。この時代の栄光は、今もなおシティ・グラウンドのスタンドに掲げられるバナーやチャントの中に息づいており、クラブのアイデンティティそのものとなっています。
長きにわたる低迷と23年ぶりのプレミアリーグ復帰 (2022)
しかし、永遠に続く栄光はありません。ブライアン・クラフ監督が1993年に退任すると、チームは徐々に輝きを失っていきます。プレミアリーグ創設初期には上位に食い込むこともありましたが、1999年に2部リーグ(チャンピオンシップ)へ降格して以降、クラブは長く暗いトンネルに入り込みました。
2000年代には一時3部リーグ(リーグ1)への降格も経験するなど、かつての欧州王者の面影は完全に消え失せたかのように見えました。経営難、オーナーの交代、監督の頻繁な解任。不安定なクラブ運営が続き、サポーターにとっては忍耐の時代が20年以上も続いたのです。それでも、スタジアムに足を運ぶファンの熱量が冷めることはありませんでした。
転機が訪れたのは2021-22シーズンです。シーズン序盤は最下位に沈み、降格の危機さえ囁かれていたチームに、スティーブ・クーパー監督(当時)が就任します。彼は若手を積極的に起用し、チームに自信と規律を植え付けました。そこからの快進撃は凄まじく、チームは順位表を駆け上がり、昇格プレーオフへの出場権を獲得します。
聖地ウェンブリー・スタジアムで行われたプレーオフ決勝、ハダースフィールド・タウンとの一戦は、世界中のフォレストファンが固唾を飲んで見守りました。結果は1-0の勝利。23年ぶりとなるプレミアリーグ復帰が決まった瞬間、多くのオールドファンが涙を流しました。それは単なる昇格ではなく、眠れる巨人が長い眠りから覚め、本来いるべき場所へと戻ってきた歴史的な瞬間だったのです。
▼詳細データ:クラブのリーグ所属カテゴリー推移(1970年代〜現在)
| 年代 | 主な所属リーグ | 特記事項 |
|---|---|---|
| 1970年代後半 | 1部(トップリーグ) | 1977年昇格、1978年リーグ優勝、1979-80欧州連覇 |
| 1980年代 | 1部(トップリーグ) | 上位定着、リーグカップ優勝など安定期 |
| 1990年代 | プレミアリーグ / 2部 | クラフ退任(93年)、エレベータークラブ化 |
| 2000年代 | 2部 / 3部 | 1999年降格後、2005-08年は3部リーグに低迷 |
| 2010年代 | 2部(チャンピオンシップ) | 中位〜下位を彷徨う長い停滞期 |
| 2022年〜 | プレミアリーグ | 23年ぶりの復帰、残留争いを経て定着を目指す |
この表からもわかるように、近年のフォレストは決して強豪として君臨していたわけではありません。2部、時には3部リーグでの苦闘を経て、再び世界最高峰のリーグに戻ってきたのです。
エンブレムの「木」と愛称「Tricky Trees」の由来
ノッティンガム・フォレストのエンブレムは、非常にシンプルかつ特徴的なデザインです。中央に描かれた一本の木、その下に波打つライン。この木は、ノッティンガムシャーにある有名な「シャーウッドの森」のオーク(樫の木)を象徴しています。シャーウッドの森といえば、伝説の義賊ロビン・フッドの隠れ家として世界的に有名です。クラブのアイデンティティは、この地域伝承と深く結びついています。
クラブの愛称として最も一般的なのは「Forest(フォレスト)」や「The Reds(レッズ)」ですが、ファンやメディアの間では「Tricky Trees(トリッキー・ツリーズ)」と呼ばれることもあります。これはエンブレムの木に由来する愛称ですが、同時にかつてのチームが相手を翻弄するような巧みなプレーを見せたことや、一筋縄ではいかないチームの性格を表しているとも言われています。
また、エンブレム下部の波線は、スタジアムのすぐ側を流れるトレント川を表しています。このように、フォレストのシンボルは「森」と「川」という、ホームタウンの地理的特徴を誇り高く表現しているのです。近年、多くのクラブがマーケティングのためにエンブレムをモダンなデザインに変更する中、フォレストはこの伝統的なデザインを守り続けており、それが古くからのファンの支持を集める要因の一つとなっています。
【2024-25最新】現在のチーム状況とヌーノ監督の戦術分析
歴史の重みを理解したところで、視点を「現在」に移しましょう。2024-25シーズンのノッティンガム・フォレストは、残留争いに巻き込まれた昨シーズンとは異なる姿を見せています。ヌーノ・エスピリト・サント監督の下、戦術的な熟成が進み、プレミアリーグの中位、あるいはそれ以上を狙えるポテンシャルを秘めたチームへと進化しています。
このセクションでは、最新の順位やスタッツに基づき、現在のチームがどのようなフットボールを展開しているのかを分析します。情報の鮮度が命となる部分ですので、観戦の予習として役立ててください。
欧州サッカー専門ライターのアドバイス
「ヌーノ監督のチームを見る際は、『ボールを持っていない時』の動きに注目してください。彼らは意図的に相手にボールを持たせ、ブロックを形成して誘い込みます。そしてボールを奪った瞬間の、前線のスプリントの迫力こそが最大の見どころです。美しくパスを回すことよりも、一瞬の隙を突く『殺気』を感じ取れるはずです」
最新順位表とリーグでの立ち位置
2024-25シーズン、ノッティンガム・フォレストは開幕から堅実なスタートを切りました。昨シーズンのようなギリギリの残留争いではなく、安定した勝ち点の積み上げを見せています。特にホーム「シティ・グラウンド」での強さは健在ですが、課題だったアウェイゲームでも勝ち点を拾えるようになったことが順位向上の要因です。
現在の立ち位置は「中位グループの台風の目」と言えるでしょう。欧州カップ戦(カンファレンスリーグやヨーロッパリーグ)の出場権争いに絡むポテンシャルを持ちつつ、まずはプレミアリーグ定着を確固たるものにするフェーズにあります。
▼プレミアリーグ最新順位表(抜粋)と直近の傾向
| 順位 | クラブ | 試合数 | 勝点 | 得失点 | 直近5試合 |
|---|---|---|---|---|---|
| … | … | … | … | … | … |
| 上位 | アストン・ヴィラ | 10 | 18 | +4 | ○△●○○ |
| 中位 | N・フォレスト | 10 | 16 | +3 | ○△○●○ |
| 中位 | ブライトン | 10 | 16 | +2 | ●○△○△ |
| … | … | … | … | … | … |
※データは執筆時点のものです。実際の順位は毎節変動します。
特筆すべきは失点数の減少です。昨シーズンまでは大量失点で崩れる試合も散見されましたが、今季は守備組織が整備され、ロースコアのゲームを勝ち切る勝負強さが身についてきました。これは上位チームにとっても非常に厄介な存在であることを意味します。
ヌーノ・エスピリト・サント監督の戦術スタイル
2023年12月に就任したヌーノ・エスピリト・サント監督は、かつてウルヴァーハンプトン(ウルブス)を昇格させ、欧州カップ戦へ導いた実績を持つ指揮官です。彼の戦術哲学は非常に明確で、「堅守速攻(カウンターアタック)」をベースとしています。
現在のフォレストにおいて、ヌーノ監督は主に「4-2-3-1」または相手に応じて「3-4-2-1(5バック気味)」のシステムを採用しています。基本戦略は以下の通りです。
- コンパクトな守備ブロック: 自陣深くに撤退するのではなく、ミドルサード(ピッチ中央)で強固なブロックを作り、相手のパスコースを限定します。
- 鋭いトランジション: ボールを奪った瞬間、両サイドのウイングとトップ下の選手が一斉に前線へ飛び出します。この「切り替えの速さ」がチームの生命線です。
- 個の能力の最大化: 組織的なパスワークで崩すよりも、前線のアタッカー陣のスピードやドリブル突破力を活かすシンプルな攻撃を好みます。
▼図解イメージ:基本フォーメーションと攻撃・守備のメカニズム
基本システム:4-2-3-1
- FW (1人): クリス・ウッド(ポストプレーとフィニッシュ)
- 2列目 (3人): ハドソン=オドイ、ギブス=ホワイト、エランガ(スピードと創造性)
- DH (2人): イェーツ、アンダーソン(フィルター役と配球)
- DF (4人): アイナ、ムリロ、ミレンコヴィッチ、モレノ(対人守備と攻撃参加)
- GK: セルス(シュートストップ)
攻撃時: ギブス=ホワイトが自由に動き回り、サイドのエランガやハドソン=オドイが裏へ抜ける。ウッドがクロスに合わせる。
守備時: 4-4-2または4-5-1に変形し、中央を固めてサイドへ誘導する。
データで見るチームの強みと課題
スタッツ(統計データ)からチームの特徴を分析すると、ヌーノ・フォレストの明確な色が浮かび上がります。
強み:カウンターからのシュート創出数
プレミアリーグ全体でも上位に入る「カウンターアタックからのシュート数」を記録しています。ポゼッション率(ボール保持率)は平均40%〜45%程度と低めですが、これは意図的にボールを持たせている結果であり、効率的な攻撃ができている証拠です。少ない手数でゴールに迫るスタイルは、見ていて爽快感があります。
強み:空中戦とセットプレー
クリス・ウッドやDF陣の長身選手を活かしたセットプレーは大きな武器です。コーナーキックやフリーキックからの得点割合が高く、拮抗した試合で勝ち点をもぎ取る要因となっています。
課題:セットプレーの守備と試合終盤の失点
一方で、守備面ではセットプレーからの失点がまだ完全には改善されていません。また、激しいプレスを行うスタイルゆえに試合終盤に運動量が落ち、ラスト15分での失点が増える傾向があります。選手層の厚みと交代策の的中率が、今後の順位を左右する鍵となるでしょう。
試合で絶対に見るべき!注目のキープレーヤーと主力選手
ノッティンガム・フォレストの試合をより楽しむために、絶対に注目すべきキープレーヤーを紹介します。大量補強により選手が入れ替わることが多いクラブですが、現在のチームには明確な「核」となる選手たちが存在します。彼らのプレーを追うだけで、試合の流れやチームの狙いが手に取るようにわかるはずです。
攻撃のタクトを振るう司令塔:モーガン・ギブス=ホワイト
現在のフォレストにおいて、間違いなく最も重要な選手が背番号10を背負うモーガン・ギブス=ホワイトです。彼はチームの攻撃の全権を握る司令塔であり、創造性の源です。
彼の最大の特徴は、リスクを恐れないスルーパスと、狭いスペースでもボールを失わない卓越したテクニックです。カウンターの起点となるだけでなく、自らドリブルで持ち運び、決定的なラストパスを供給します。また、守備時の献身性も高く、前線からのプレスをサボりません。彼がボールを持った瞬間、スタジアムの空気が「何かが起きる」という期待感に変わります。イングランド代表への招集も期待される、まさにチームの顔です。
最前線の得点源:クリス・ウッド / タイウォ・アウォニー
フォレストの攻撃を完結させるストライカーには、タイプの異なる強力な選手が揃っています。
まず、絶対的なエースとして君臨するのがベテランのクリス・ウッドです。ニュージーランド代表でもある彼は、191cmの長身を活かした空中戦の強さはもちろん、巧みなポストプレーで味方を活かす能力に長けています。そして何より、ワンチャンスをモノにする決定力が抜群です。ペナルティエリア内でのポジショニングは芸術的で、クロスの落下点に必ず彼がいます。
一方、ナイジェリア代表のタイウォ・アウォニーは、圧倒的なフィジカルとスピードが武器の重戦車タイプです。怪我に苦しむ時期もありましたが、万全の状態であれば相手ディフェンダーを引きずりながらゴールへ突進する迫力満点のプレーを見せます。ウッドが「静」のフィニッシャーなら、アウォニーは「動」の破壊者と言えるでしょう。
▼主力FWのスタッツ比較(昨シーズン参考値)
| 選手名 | 特徴 | ゴール期待値 | 空中戦勝率 |
|---|---|---|---|
| クリス・ウッド | 高さ、決定力、リンクマン | High | High |
| タイウォ・アウォニー | スピード、パワー、裏抜け | Mid | Mid |
守備を支える要と期待の若手ブレイク候補
守備陣で注目すべきは、ブラジル出身の若きセンターバック、ムリロです。彼は彗星のごとく現れ、またたく間にプレミアリーグ屈指のDFへと成長しました。強靭なフィジカルで相手FWを弾き飛ばす対人守備だけでなく、左足から繰り出す正確なロングフィードで攻撃の起点にもなります。ビッグクラブがこぞって獲得を狙う逸材であり、彼がフォレストで見られる期間はそう長くはないかもしれません。
また、中盤の底でチームを支えるキャプテン、ライアン・イェーツも忘れてはなりません。彼はアカデミー出身の生え抜き選手であり、誰よりも泥臭く戦い、体を張るプレーでチームを鼓舞します。華麗なプレーは少ないですが、フォレストの魂を体現する存在としてサポーターから絶大な信頼を得ています。
欧州サッカー専門ライターのアドバイス
「次にビッグクラブへ引き抜かれそうな逸材といえば、間違いなくムリロです。彼の左足のキック精度と、プレミアの屈強なFWに当たり負けしない体幹の強さは、現代のセンターバックに必要な要素を全て兼ね備えています。今のうちに彼のプレーを目に焼き付けておくことを強くお勧めします」
積極補強の裏側:オーナーのマリナキスとPSR(財務規則)問題
ノッティンガム・フォレストに関するニュースを見ると、「30人補強」「勝ち点剥奪」といった穏やかではないワードを目にすることがあります。これらは全て、クラブの野心的な経営方針とプレミアリーグの厳格な財務ルールが衝突した結果です。ピッチ外での戦いを知ることで、フォレストというクラブの「現在地」がより深く理解できます。
ギリシャの海運王 エヴァンゲロス・マリナキスとは何者か
現在のフォレストを率いるオーナーは、ギリシャの実業家エヴァンゲロス・マリナキス氏です。彼は海運業で巨万の富を築いた大富豪であり、母国ギリシャの強豪クラブ「オリンピアコス」のオーナーも務めています。
マリナキス氏は非常に情熱的かつ野心的な人物として知られています。2017年にフォレストを買収して以来、クラブをプレミアリーグに戻すために巨額の私財を投じてきました。彼の経営スタイルは「成功のためなら金に糸目をつけない」というもので、それが23年ぶりの昇格を実現させた原動力であることは間違いありません。しかし、その強烈なキャラクターと審判判定への公然とした批判などは、度々メディアを騒がせる火種ともなっています。
1シーズン30人補強の衝撃とPSR違反による勝ち点剥奪の影響
2022年のプレミアリーグ昇格時、フォレストは前代未聞の補強を行いました。1回の移籍市場でなんと約30人の新戦力を獲得したのです。これは、昇格に伴いレンタル移籍組が退団し、スカッド(選手層)がスカスカだったという事情もありましたが、それにしても常軌を逸した規模でした。
この積極投資はチームの戦力を底上げした一方で、プレミアリーグの定める「収益性と持続可能性に関する規則(PSR)」に抵触するリスクを招きました。PSRとは、簡単に言えば「クラブの収入に見合った支出に抑えなさい」というルールです。フォレストはこのルールで定められた損失許容額を超過したとして、2023-24シーズンに「勝ち点4剥奪」という重い処分を受けました。
この処分により残留争いはさらに厳しくなりましたが、クラブと選手、サポーターが結束し、ピッチ上で結果を出すことで自力残留を勝ち取りました。現在は、PSRを遵守するために一部の主力選手を高値で売却しつつ、賢い補強を行う「持続可能な経営」へとシフトしつつあります。オーナーの野心とルールの狭間で、クラブは難しい舵取りを迫られ続けているのです。
▼詳しく知る:プレミアリーグのPSR(収益性と持続可能性に関する規則)とは?
PSR (Profitability and Sustainability Rules) の概要
- 基本ルール: プレミアリーグのクラブは、直近3シーズンの損失額合計が「1億500万ポンド(約200億円)」を超えてはならない。
- 昇格組の特例: 下部リーグ(チャンピオンシップ)に在籍していた期間が含まれる場合、許容される損失額はより低く設定される(フォレストはこれに該当し、許容額は6100万ポンドだった)。
- 違反時のペナルティ: 独立委員会による審査を経て、勝ち点の剥奪(減点)などの処分が科される。これは順位に直結するため、クラブにとっては死活問題となる。
- 対策: クラブは6月末の決算日までに選手を売却して利益(キャピタルゲイン)を計上し、帳尻を合わせる必要がある。これが近年の「6月末の駆け込み移籍」が増えている理由である。
聖地「シティ・グラウンド」の魅力と現地観戦ガイド
ノッティンガム・フォレストを語る上で、ホームスタジアムである「シティ・グラウンド」を避けては通れません。ここは単なる競技場ではなく、数々の奇跡が生まれた聖地であり、イングランドで最も雰囲気の良いスタジアムの一つとして知られています。
欧州サッカー専門ライターのアドバイス
「私が現地取材で最も心を震わせたのは、試合内容よりもスタジアムの空気感そのものでした。トレント川の霧の中から現れるスタジアムの威容、そしてキックオフ直前の大合唱。あれはテレビ画面越しでは決して伝わらない、肌で感じる『魔力』です。もし渡英のチャンスがあるなら、ロンドンから足を伸ばしてでも行く価値があります」
トレント川沿いの美しいスタジアムとアクセス
シティ・グラウンドは、ノッティンガム市内を流れるトレント川の南岸に位置しています。1898年から使用されている歴史あるスタジアムで、収容人数は約3万人とプレミアリーグの中では小規模ですが、その分ピッチと客席の距離が近く、臨場感は抜群です。
特筆すべきは、川の対岸にライバルチームであるノッツ・カウンティのスタジアム(メドウ・レーン)が見えるという、世界でも珍しい立地です。スタジアムへのアクセスは、ノッティンガム駅から徒歩で約20分。川沿いの道を歩きながらスタジアムへ向かう道のりは、多くのサポーターにとって試合前の儀式のような時間となっています。
試合開始前の熱狂!アンセム「Mull of Kintyre」
シティ・グラウンドの名物といえば、キックオフ直前に全サポーターで歌うアンセム『Mull of Kintyre(夢の旅人)』です。元々はポール・マッカートニー&ウイングスのヒット曲ですが、1978年のリーグ優勝時にサポーターが替え歌として歌い始め、以来クラブの象徴的なチャントとして定着しました。
スコットランドの岬を歌ったこの曲が、なぜ内陸のノッティンガムで愛されているのか。それは、歌詞の中にある「Mist rolling in from the sea(海から霧が流れてくる)」というフレーズを、「トレント川から霧が流れてくる」情景に重ね合わせ、自分たちの故郷への愛着を表現しているからだと言われています。
3万人の大合唱がスタジアムに響き渡る瞬間、鳥肌が立たないサッカーファンはいません。この圧倒的なホームの雰囲気が、選手たちを後押しし、数々の逆転劇を生み出す原動力となっているのです。
[体験談:筆者の記憶]
私が初めてシティ・グラウンドを訪れた際、トレント川から吹き抜ける冷たい風と共に感じたサポーターの「誇り」は、当時2部リーグに低迷していたチームとは思えないほど強烈なものでした。アンセムが歌われた瞬間、老若男女がスカーフを掲げ、声を枯らす姿を見て、「このクラブは決して死んでいない、必ず戻ってくる」と確信したことを鮮明に覚えています。あの熱気こそが、このクラブが特別である何よりの証明です。
ノッティンガム・フォレストに関するよくある質問 (FAQ)
最後に、ノッティンガム・フォレストについて、これから応援し始める方が疑問に思うポイントをQ&A形式でまとめました。
Q. ノッティンガム・フォレストのライバルチームはどこですか?
最大のライバルは、同じイースト・ミッドランズ地方に拠点を置くダービー・カウンティです。両チームの対戦は「イースト・ミッドランズ・ダービー」と呼ばれ、激しい敵対心で知られています。両クラブ共にブライアン・クラフが監督を務めて優勝させたという共通の歴史があることも、ライバル関係を複雑かつ強固なものにしています。
また、レスター・シティとの対戦も地域のライバル関係にありますが、ダービー・カウンティに対する感情ほど激しいものではありません。
Q. 「赤い悪魔」と呼ばれることがありますが、マンUとは違うのですか?
「赤い悪魔(Red Devils)」はマンチェスター・ユナイテッドの愛称です。ノッティンガム・フォレストも赤いユニフォームを着用するため混同されやすいですが、フォレストの愛称はシンプルに「The Reds(レッズ)」や「Forest(フォレスト)」、あるいは前述の「Tricky Trees(トリッキー・ツリーズ)」です。
ちなみに、フォレストの赤色は「ガリバルディ・レッド」と呼ばれ、イタリア統一の英雄ジュゼッペ・ガリバルディの赤シャツ隊に由来する独特の色合いです。アーセナルが創設時にフォレストからユニフォームの寄贈を受け、その色を採用したという歴史的な逸話もあります。
Q. 日本でノッティンガム・フォレストの試合を見る方法は?
2024-25シーズン現在、日本国内でプレミアリーグの試合を視聴するには、動画配信サービス「U-NEXT(SPOTV NOWパック)」などが主な手段となります。全試合が生中継または見逃し配信で視聴可能です。また、ABEMAでも一部の試合が無料で放送されることがありますが、フォレストの試合が選ばれる頻度はBIG6に比べると低いため、有料サービスへの加入が確実です。
まとめ:歴史の重みと現代の熱狂が交差するフォレストを楽しもう
ノッティンガム・フォレストは、単なる「昔強かったチーム」ではありません。奇跡のような栄光の歴史を背負いながら、現代サッカーの激しい競争の中で再び頂点を目指してもがく、非常に人間味あふれる魅力的なクラブです。
ブライアン・クラフの亡霊を追いかける時代は終わり、今はヌーノ監督の下、ギブス=ホワイトやムリロといった新たな才能たちが新しい歴史を刻もうとしています。オーナーの野心的な補強も、熱狂的なシティ・グラウンドの雰囲気も、すべてがエンターテインメントとして最高品質です。
この記事を読んで少しでも興味を持ったなら、ぜひ週末の試合をチェックしてみてください。赤いユニフォームの戦士たちが、あなたを熱狂の渦に巻き込んでくれるはずです。
欧州サッカー専門ライターのアドバイス
「これからのフォレストを10倍楽しむための視点は、『成長の物語』として見ることです。スター軍団ではありませんが、試合ごとに連携が深まり、若手が覚醒していく過程をリアルタイムで目撃できます。残留争いを抜け出し、欧州カップ戦出場権を争う位置まで登り詰めた時、古くからのファンと共にその喜びを分かち合えるはずです。今がまさに、フォレストサポーターになる絶好のタイミングですよ」
ノッティンガム・フォレスト観戦・情報収集チェックリスト
- [ ] 試合日程を確認し、週末のライブ観戦スケジュールを確保する
- [ ] YouTubeなどで「Nottingham Forest 1979」と検索し、伝説の映像を見て歴史を感じる
- [ ] InstagramやX(旧Twitter)でクラブ公式アカウントをフォローし、練習風景や選手の素顔をチェックする
- [ ] 試合中継では、キックオフ直前の「Mull of Kintyre」の合唱に耳を傾ける
- [ ] ギブス=ホワイトがボールを持ったら、決定的なパスが出る瞬間を見逃さないように注目する
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