突然の訃報に接し、深い悲しみとともに「香典はいくら包めばいいのか」「香典袋はどう書けば失礼にならないか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。葬儀や告別式は、故人との最後のお別れの場であり、ご遺族にとっても非常に大切な儀式です。だからこそ、大人として恥ずかしくない正しいマナーで、心からの哀悼の意を伝えたいものです。
結論から申し上げますと、香典の相場は「故人との関係性」と「あなたの年齢」によって明確に決まります。例えば、最も一般的な友人の相場は5千円〜1万円、親族であれば1万円〜10万円と幅広くなります。しかし、単に金額さえ合っていれば良いというわけではありません。袋の選び方、表書きの書き方、そして受付での渡し方まで、一連の所作すべてに「故人を悼む心」を表現するための作法が存在します。
この記事では、厚生労働省認定の1級葬祭ディレクターである私が、業界歴20年の経験に基づき、教科書的なマナーだけでなく「現場で実際に通用する正解」を徹底解説します。金額相場の早見表から、不祝儀袋の正しい書き方、受付でのスマートな渡し方まで、失礼にならないための全マナーを網羅しました。
この記事でわかること
- 【早見表】関係性・年齢別の香典金額相場(親族・友人・会社関係)
- 【図解】恥をかかない香典袋の書き方と漢数字の使い分け
- 受付での正しい渡し方とふくさ(袱紗)のマナー
急な参列で準備に時間がない方も、この記事を読めば、自信を持って故人をお送りすることができるようになります。ぜひ最後まで目を通し、マナーへの不安を解消してください。
【30秒で解決】関係性・年齢別 香典の金額相場早見表
香典の金額を決める際、最も重要な要素は「故人との血縁の濃さ」と「あなた自身の社会的地位(年齢)」です。一般的に、血縁が濃いほど、また年齢が上がるほど包む金額は高くなります。ここでは、忙しい方のために一目でわかる相場早見表を作成しました。まずはご自身の該当する箇所を確認し、目安となる金額を把握してください。
ただし、この表はあくまで全国的な平均相場です。地域や親族間の独自のルール(「一律〇万円」など)が存在する場合は、そちらを優先することがトラブル回避の鉄則です。
| 故人との関係 | 20代 | 30代 | 40代以上 |
|---|---|---|---|
| 祖父母 | 1万円 | 1万〜3万円 | 3万〜5万円 |
| 両親 | 3万〜5万円 | 5万〜10万円 | 10万円〜 |
| 兄弟姉妹 | 3万〜5万円 | 3万〜5万円 | 5万円〜 |
| おじ・おば | 1万円 | 1万〜2万円 | 1万〜3万円 |
| その他親戚 | 3千〜1万円 | 3千〜1万円 | 3千〜3万円 |
| 友人・知人 | 5千円 | 5千〜1万円 | 5千〜1万円 |
| 友人の親 | 3千〜5千円 | 3千〜5千円 | 3千〜1万円 |
| 勤務先の上司 | 5千円 | 5千〜1万円 | 1万円〜 |
| 同僚・部下 | 5千円 | 5千〜1万円 | 1万円〜 |
| 取引先関係 | 5千円 | 1万円 | 1万円〜 |
| 隣人・近所 | 3千〜5千円 | 3千〜5千円 | 5千〜1万円 |
※上記の金額は目安です。地域性や過去の付き合いの深さにより変動します。
祖父母・両親・兄弟姉妹など【親族】の場合
親族の葬儀における香典は、相互扶助の意味合いが強く、他の関係性に比べて高額になる傾向があります。特にご自身が喪主以外の立場で、両親や兄弟姉妹を送る場合は、相応の金額を包むことが求められます。
祖父母の場合
20代の孫であれば1万円が相場ですが、30代以上で自立している、あるいは既婚者の場合は3万円〜5万円程度包むことも珍しくありません。特に幼少期に同居していたり、養育費の援助を受けていたりするなど、関係が深かった場合は多めに包む傾向があります。
両親の場合
ご自身が喪主を務める場合は香典を出す必要はありませんが、別世帯を持っていて喪主ではない子供の立場であれば、5万円〜10万円が目安となります。配偶者の親(義理の両親)の場合も同額が基本です。ここは「家」としての付き合いになるため、夫婦で相談して決定しましょう。
兄弟姉妹の場合
3万円〜5万円が中心的な相場です。ご自身が若く独身であれば3万円、40代以上で社会的地位がある場合は5万円以上包むのが一般的です。親族間では「兄弟は一律5万円」といった取り決めを事前にしているケースも多いため、必ず他の兄弟や親戚に確認を入れることを強くお勧めします。
友人・知人・恩師の場合
友人や知人の場合、相手との親密度によって金額を調整します。あまりに高額すぎると、ご遺族が香典返し(返礼品)に困ってしまうため、相場通りの金額を包むことが相手への配慮にもなります。
一般的な友人
5千円が最も標準的な金額です。学生時代の友人や、最近あまり会っていなかった知人であればこの金額で失礼にはなりません。
親友・恩人
「家族同然の付き合いだった」「人生の恩師である」といった特別な関係の場合は、1万円〜3万円を包むこともあります。ただし、友人関係で3万円以上包むケースは稀ですので、1万円程度に留め、供花(お花)を別途贈るなどして弔意を表す方法も検討すると良いでしょう。
友人のご家族
友人の親御さんが亡くなった場合、面識がなければ参列しないことも多いですが、参列する場合は3千円〜5千円が相場です。近年では3千円という金額は香典返しを考慮すると少なすぎると感じる方も増えており、5千円を包むのが無難な傾向にあります。
上司・同僚・部下・取引先など【会社関係】の場合
ビジネスシーンでの香典は、個人の気持ちだけでなく「会社の代表」としての側面や、社内規定が関わってくるため注意が必要です。
直属の上司・同僚
5千円〜1万円が相場です。個人的に大変お世話になった上司であれば1万円、同僚であれば5千円が一般的です。20代の若手社員であれば、無理をせず5千円で問題ありません。
部署での連名
「〇〇部一同」として連名で出すケースも多々あります。この場合、一人当たり1千円〜3千円程度を集め、キリの良い金額(1万円、2万円など)にして包みます。詳細は後述の「会社関係・代理・連名で出す場合の特有マナー」で解説しますが、お返しを辞退する旨を添えるなどの配慮が必要です。
取引先関係
取引先の担当者や役員の場合、会社名義で出すか個人名義で出すかによって異なりますが、個人で参列する場合は5千円〜1万円が目安です。社長や役員クラスの葬儀となると、会社として供花や弔電を手配することが多いため、上司や総務担当への確認が必須です。
隣人・町内会など【近所】の場合
ご近所付き合いの深さや、町内会のルールによって大きく異なります。一般的には3千円〜5千円が相場です。
町内会によっては「香典は一律3千円」「班長が集めてまとめて渡す」といった独自の取り決めがある場合が非常に多いです。勝手に個別に高額な香典を持っていくと、かえって和を乱すことになりかねません。訃報が届いた時点で、まずは班長や近所の顔役に「皆さんはどうされますか?」と相談するのが最も賢明な判断です。
金額を決める際の注意点(「4」や「9」を避けるなど)
香典の金額を決める際、絶対に避けるべき数字と、配慮すべきマナーがあります。これは「死」や「苦」を連想させる数字を避けるという、日本古来の言霊信仰に基づくマナーです。
▼詳細:死数・苦数を避けるマナーについて
避けるべき金額
- 4(死)のつく金額:4千円、4万円などは絶対に避けます。
- 9(苦)のつく金額:9千円、9万円も同様に避けます。
偶数は避けるべき?
かつては「割り切れる数字=縁が切れる」として偶数(2万円など)を避ける傾向がありましたが、近年では2万円はペア(夫婦)を連想させるとして許容されるようになっています。ただし、2万円を包む際は、お札の枚数を調整する配慮が必要です。
連名で端数が出た場合
例えば3人で3千円ずつ集めて合計9千円になってしまった場合は、誰かが千円多く出して合計1万円にするか、別途千円札を追加して調整します。「9千円」という金額そのものを避けることを最優先してください。
1級葬祭ディレクターのアドバイス
「金額で迷った時、一番確実なのは『周囲に合わせる』ことです。特に親族間では『うちは昔からこの金額』という暗黙の了解があることが非常に多いです。私自身、現場で『自分だけ少なくて肩身が狭かった』あるいは『多すぎて逆に恐縮された』という親族間のトラブルを何度も目にしてきました。見栄を張る必要はありません。兄弟や従兄弟、あるいは地域の年長者に『今回はいくら包みますか?』と率直に相談することが、最もトラブルが少なく、故人を安らかに送るための知恵と言えます。」
香典袋(不祝儀袋)の正しい選び方
金額が決まったら、次に行うべきは「香典袋(不祝儀袋)」の購入です。コンビニや文具店に行くと多種多様な袋が並んでおり、どれを選べば良いか迷うかもしれません。ここで重要な原則は、「中に入れる金額と、袋の格を合わせる」ということです。
中身が5千円なのに、豪華な水引がついた高級和紙の袋を使うのは「袋負け」と言われ、マナー違反とされます。逆に、3万円以上包むのに印刷された水引の袋を使うのも失礼にあたります。
包む金額によって袋の種類を変える(水引・印刷)
金額に応じた適切な袋の選び方をチャートにまとめました。パッケージに「目安金額」が記載されていることも多いですが、以下の基準を覚えておくと間違いありません。
| 包む金額 | 選ぶべき香典袋の特徴 | 水引の種類 |
|---|---|---|
| 〜5千円程度 | 水引が袋に直接印刷されているタイプ | 黒白(印刷) |
| 1万円〜3万円 | 水引が実物の紐で結ばれているタイプ(スタンダードな黒白) | 黒白 または 双銀 |
| 3万円〜5万円 | 高級和紙を使用し、水引が銀色のみのタイプ | 双銀 |
| 10万円以上 | 大判で厚みがあり、装飾が凝っている高級タイプ | 双銀(大判) |
水引の色は、一般的に関東では「黒白」、関西では「黄白」が使われることがあります。ただし、全国的に「黒白」であれば失礼にはなりませんので、迷ったら黒白を選びましょう。結び方は、二度と不幸が繰り返さないようにという意味を込めた「結び切り(あわじ結び)」のものを選びます。「蝶結び」は何度あっても良いお祝い事に使うものなので、絶対に使用してはいけません。
宗教・宗派による表書きと水引の違い(仏式・神式・キリスト教)
香典袋の表書き(上段の文字)は、故人の宗教によって異なります。相手の宗教が事前にわかっている場合は、それに合わせたものを用意するのが最高のマナーです。
| 宗教・宗派 | 表書き(上段) | 水引・袋の特徴 |
|---|---|---|
| 仏教全般 | 御霊前 / 御香典 / 御香料 | 黒白の水引 (蓮の花の絵柄入りも可) |
| 浄土真宗 | 御仏前 / 御香典 | 黒白の水引 (御霊前は使用しない) |
| 神道(神式) | 御玉串料 / 御榊料 / 御神前 | 双銀 または 双白の水引 (蓮の絵柄はNG) |
| キリスト教 | 御花料 / 献花料 | 水引なし または 白封筒 (十字架や百合の絵柄) |
「御霊前」と「御仏前」の使い分け(四十九日が境界線)
よくある疑問として「御霊前(ごれいぜん)」と「御仏前(ごぶつぜん)」の使い分けがあります。これは仏教の教えに基づいています。
- 御霊前: 故人がまだ「霊」の状態である期間に使います。通夜、葬儀・告別式から四十九日の法要前まではこちらを使います。
- 御仏前: 四十九日を過ぎて「仏」になった後に使います。四十九日法要や一周忌などの法事ではこちらを使います。
ただし、浄土真宗だけは教義上、亡くなってすぐに仏になると考えるため、通夜・葬儀の段階から「御仏前」を使用するのが正式なマナーです。
1級葬祭ディレクターのアドバイス
「『相手の宗派なんてわからない』というケースがほとんどだと思います。そんな時に最も安全で汎用性が高いのが『御香典』という表書きです。これは『お香をお供えする代わりのお金』という意味で、仏教の多くの宗派で違和感なく受け入れられます。また、市販の香典袋には『御霊前』と印刷されたものが多く売られていますが、浄土真宗の方に『御霊前』でお渡ししても、参列者のマナー違反として目くじらを立てられることは現場感覚としてはまずありません。あまり神経質になりすぎず、迷ったら『御霊前』か『御香典』を選べば大丈夫です。」
【図解】恥をかかない香典袋(表書き・中袋)の書き方
香典袋の選び方がわかったら、次は書き方です。ここでの最大のポイントは「薄墨(うすずみ)」を使うことと、中袋への記入を漏らさないことです。書き損じを恐れるあまり緊張してしまうかもしれませんが、丁寧に書かれた文字であれば、多少の癖字でも気持ちは伝わります。
筆記用具のマナー:薄墨の筆ペンを使う理由
香典袋の表書きには、薄墨の筆ペンを使用するのが正式なマナーです。これには「悲しみの涙で墨が薄まってしまった」「急なことで墨を磨る時間もなく駆けつけた」という哀悼の意味が込められています。
コンビニや文具店では、慶事用(濃い黒)と弔事用(薄墨)がセットになった「ツインタイプ」の筆ペンが売られていますので、一本持っておくと便利です。サインペンやボールペンは、事務的な印象を与えてしまうため、外袋(表書き)への使用は極力避けましょう。
【外袋】表書きの名前の書き方(個人・夫婦連名・3名以上の連名・会社名)
水引の下段中央に、あなたの氏名をフルネームで記入します。上段の「御霊前」などの文字よりもやや小さめに書くとバランス良く見えます。
Image here|外袋の書き方見本図解
(※イメージ解説:水引の中央上部に「御霊前」、下部に「氏名」を配置。連名の場合は右から目上の順に書く配置図)
- 個人の場合: 中央にフルネームで書きます。
- 夫婦連名の場合: 中央に夫の氏名を書き、その左側に妻の名前のみを書きます。夫婦で参列する場合や、妻側の親戚の葬儀などの場合に用います。
- 3名までの連名: 目上の人を一番右(中央)にし、順に左へ書き進めます。順位がない友人の場合は五十音順で右から書きます。
- 4名以上の連名: 全員の名前を書くと見づらくなるため、代表者の氏名を中央に書き、その左側に「外一同」または「他〇名」と書き添えます。全員の氏名、住所、金額を書いた別紙(明細)を中袋に入れます。
- 会社名を入れる場合: 氏名の右側に少し小さく会社名を記入します。
【中袋】金額の書き方と「大字(旧字体)」一覧
中袋の表面中央には、包んだ金額を縦書きで記入します。この際、数字の改ざんを防ぐために「大字(だいじ)」と呼ばれる旧字体の漢数字を使うのが正式なマナーです。普通の漢数字(一、二、三)でもマナー違反とまでは言われませんが、大字を使うことでより丁寧な印象を与えます。
金額の書き出しには「金」、末尾には「圓(または円)」をつけます。
例:「金 壱萬圓」「金 伍千円」など(「也」はつけてもつけなくても構いません)。
| 算用数字 | 通常の漢数字 | 大字(旧字体)※推奨 |
|---|---|---|
| 1 | 一 | 壱 |
| 2 | 二 | 弐 |
| 3 | 三 | 参 |
| 5 | 五 | 伍 |
| 10 | 十 | 拾 |
| 千 | 千 | 阡(千でも可) |
| 万 | 万 | 萬 |
| 円 | 円 | 圓(円でも可) |
【中袋】住所と氏名の書き方(裏面の左下に記載)
中袋の裏面、左下のスペースには、必ずあなたの郵便番号、住所、氏名を記入してください。
これは、ご遺族が後日、香典返しを送ったり、お礼状を書いたりする際に必要となる非常に重要な情報です。ここが空白だと、ご遺族が「誰からの香典かわからない」「お返しができない」と困ってしまいます。
1級葬祭ディレクターのアドバイス
「『筆ペンがどうしても苦手で、字が潰れて読めなくなってしまう』という相談をよく受けます。そんな時は、中袋に関しては黒のボールペンやサインペンを使っても構いません。中袋はご遺族が事務処理として確認するものですから、達筆であることよりも『誰がいくら包んだか正確に読めること』の方が遥かに重要です。外袋は頑張って薄墨の筆ペンで書き、中袋は読みやすさを優先してペンで書く。これは現場でもよく見られる、理にかなった配慮と言えます。」
お金の入れ方と準備のマナー
香典袋にお金を入れる際にも、独特の作法があります。お祝い事(結婚式など)とは逆のルールが多く存在するため、混同しないよう注意が必要です。
H4-4-1 お札の向き:肖像画は「裏」で「下」向きに入れる
お札を入れる向きには2つのポイントがあります。
- お札の表裏: 香典袋の「表」に対して、お札の「裏(肖像画がない方)」が向くように入れます。これには「悲しみで顔を伏せる」という意味があります。
- お札の上下: 肖像画が印刷されている側を「下(底)」に向けて入れます。取り出した時に肖像画がすぐに見えないようにするためです。
Image here|お札を入れる向きの図解
(※イメージ解説:中袋の裏側から見て、お札の肖像画が見えない面を上にし、かつ肖像画が袋の底側にある状態の図)
新札は使ってはいけない?「折り目」をつける配慮
「香典に新札(ピン札)を使ってはいけない」というマナーを聞いたことがあるかもしれません。これは、新札を使うと「あらかじめ死ぬことを予期して準備していた」かのように受け取られる可能性があるためです。
そのため、使い古したお札(古札)を使うのが一般的です。ただし、あまりに汚れていたり破れていたりするお札は失礼にあたります。適度に使用感のあるきれいなお札を選ぶのがベストです。
お札の枚数は奇数が望ましい理由
包むお札の枚数は、1枚、3枚、5枚といった奇数にするのがマナーです。偶数は「割り切れる=故人との縁が切れる」と連想されるため避ける傾向にあります。
例えば2万円を包む場合、1万円札を2枚入れると偶数(2枚)になってしまいます。気になる場合は、1万円札1枚と5千円札2枚の計3枚にするという方法もありますが、近年では2万円(2枚)に関しては許容されることが多くなっています。
1級葬祭ディレクターのアドバイス
「『手元に新札しかない!』という緊急事態はよくあります。銀行に行く時間もない場合、わざわざ汚れたお札を探す必要はありません。手元の新札に、一度真ん中で折り目をつけてから包めば全く問題ありません。この『折り目をつける』という行為自体が、『急なことで準備が間に合いませんでした』という謙虚な姿勢を表す作法となります。形式にとらわれすぎて参列に遅れるよりも、このひと手間で心を込めることが大切です。」
当日の受付マナーと香典の渡し方
香典袋の準備が整ったら、いよいよ通夜・告別式の会場へ向かいます。受付での振る舞いは、あなた自身の品格を表す場面です。スマートに、そして厳粛に振る舞うための手順をシミュレーションしましょう。
ふくさ(袱紗)の色と包み方(左開き)
香典袋をカバンやスーツのポケットから裸で取り出すのはマナー違反です。必ず「ふくさ(袱紗)」に包んで持参しましょう。ふくさは、袋が汚れたり折れたりするのを防ぐだけでなく、「大切なものを丁重に扱う」という敬意の表れです。
- ふくさの色: 弔事では、紫、紺、グレー、緑などの寒色系を使います。紫色は慶事(お祝い)と弔事(お悔やみ)の両方で使えるため、一つ持っておくと非常に便利です。赤やピンクなどの暖色系は慶事用なので絶対に使用しないでください。
- 包み方(爪付きタイプ以外): 弔事では「左開き」になるように包みます。
- ふくさをひし形に広げ、中央よりやや右寄りに香典袋を置く(表書きが読める向き)。
- 右側の角を中央へ折り込む。
- 下の角を中央へ折り込む。
- 上の角を中央へ折り込む。
- 最後に左側の角を折り込み、余った端を裏へ回す。
Step-by-Step Image|弔事用ふくさの包み方手順
(※イメージ解説:右→下→上→左の順に畳んでいくプロセス図解)
受付での一連の流れと挨拶(お悔やみの言葉)
受付に到着したら、以下の手順で香典をお渡しします。
- 一礼する: 受付係の方の前で軽く一礼します。
- お悔やみを述べる: 「この度はご愁傷様でございます」と小声で挨拶します。言葉が出てこない場合は、無言で深く一礼するだけでも十分伝わります。
- ふくさから出す: ふくさを開き、香典袋を取り出します。
- 向きを変える: ふくさを手早く畳んで台にし、その上に香典袋を載せます。そして、相手(受付係)から見て文字が読める向き(反時計回りに180度回転)に変えます。
- 差し出す: 両手で香典袋(ふくさに載せたまま、または袋のみ)を差し出し、「御霊前にお供えください」と一言添えます。
- 記帳する: 芳名帳に住所と氏名を記入します。
香典を郵送する場合の送り方(現金書留)
遠方で参列できない場合は、香典を郵送しても失礼にはなりません。ただし、普通郵便で現金を送ることは法律で禁止されていますので、必ず郵便局の窓口で「現金書留」専用の封筒を購入して送ります。
手順としては、まず香典袋にお金を入れ、表書きなどを全て整えます。その香典袋を、現金書留の封筒に入れます。この時、一筆箋などに「参列できず申し訳ありません」といったお悔やみの手紙を添えると、より丁寧な印象になります。
通夜と告別式、どちらで渡すべきか?
通夜と告別式の両方に参列する場合、香典は「通夜」で渡すのが一般的です。告別式の受付では、記帳のみを行い「昨晩(通夜で)お渡ししました」と伝えれば問題ありません。両方で渡すと「不幸が重なる」とされ縁起が悪いため、どちらか一度だけにします。
1級葬祭ディレクターのアドバイス
「最近増えている『家族葬』や、受付を設けていない小規模な葬儀の場合、香典を渡すタイミングに迷うことがあります。その場合は、焼香の際に祭壇(御霊前)に直接お供えするか、手が空いているご遺族に『お供えさせていただけますか』と声をかけて直接手渡します。ただし、事前に『香典辞退』の案内があった場合は、無理に渡そうとせず、その意向を尊重するのが最大のマナーです。無理に渡すと、お返しの手配などで逆にご遺族の負担を増やしてしまいます。」
会社関係・代理・連名で出す場合の特有マナー
会社員として参列する場合、個人の付き合いとは異なる特有のルールがあります。ここでは、ビジネスパーソンが遭遇しやすいシチュエーション別の対応を解説します。
代理で香典を持っていく場合の記帳方法
上司や夫の代理として参列する場合、受付での記帳方法に注意が必要です。
受付では、本来参列するはずだった人の名前(依頼主)を書き、その名前の下に小さく「代(妻の場合は『内』)」と書き添えます。さらに、その横に実際に参列した代理人(あなた)の名前を書くこともあります。
これにより、後日ご遺族が芳名帳を見た際に「〇〇さんの代理で誰かが来てくれたのだな」と正確に把握できます。
部署一同など連名で出す場合の金額とお返し辞退の配慮
職場の部署単位などで連名で出す場合、一人当たりの金額が千円〜3千円程度になることが多いでしょう。この場合、ご遺族が一人一人に香典返し(半返し)をすると、送料の方が高くなってしまい負担をかけてしまいます。
そのため、連名で少額を包む場合は、「香典返しは辞退いたします」という旨を一筆添えるのがスマートな気遣いです。中袋や別紙に「お返しのご配慮は無用にお願い申し上げます」と書き添えておきましょう。
領収書が必要な場合の依頼方法
会社経費で香典を出す場合、領収書が必要になることがあります。基本的には香典に領収書は発行されませんが、社内規定で必要な場合は、受付でその旨を伝えて発行してもらうことが可能です。
ただし、混雑している受付で「領収書ください」と言うのは無粋に見えることもあります。できれば、あらかじめ自分の名刺の裏などに「領収書発行のお願い(宛名:〇〇株式会社)」と書いておき、香典と一緒に渡すとスムーズです。
よくある質問 (FAQ)
最後に、香典に関する細かな疑問にお答えします。
Q. 香典を辞退されている場合はどうすればいい?
A. ご遺族の意向に従い、何も持参しないのがマナーです。
「辞退」と案内があるのに、「気持ちだから」と無理に渡すのはマナー違反です。香典返しや集計の手間を省きたいというご遺族の事情を察しましょう。どうしても弔意を表したい場合は、後日改めて弔電を送るか、供花が可能か葬儀社に確認する方法があります。
Q. 通夜・葬儀に参列できず、後日渡したい場合は?
A. 弔問のアポイントを取ってから自宅へ伺うか、現金書留で送ります。
葬儀後、数日〜四十九日までの間に自宅へ伺い、お線香をあげてから香典をお渡しします。いきなり訪問するのは迷惑になるため、必ず事前に連絡を入れましょう。遠方の場合は、前述の通り現金書留で送ります。
Q. 袱紗(ふくさ)がない場合はどうすればいい?
A. 小さな風呂敷や、地味な色のハンカチで代用可能です。
ふくさを持っていない場合でも、剥き出しで持っていくよりは、ハンカチで包んでいく方が丁寧です。
1級葬祭ディレクターのアドバイス
「ふくさがない時の代用品として、男性なら紺やグレー、女性なら地味な色合いのハンカチを使ってください。包み方はふくさと同じく『左開き(ひし形に置いて左側を最後に閉じる)』です。受付で渡す直前にハンカチを解き、香典袋を取り出して、ハンカチを畳んで台座代わりにすれば、ふくさを使っているのと変わらない丁寧な所作に見えます。コンビニで香典袋を買う際に、簡易的なふくさが売っていることもありますので、探してみるのも良いでしょう。」
まとめ:マナーを守った香典で、故人への哀悼の意を伝えましょう
香典に関するマナーは多岐にわたり、地域や宗教による違いもあるため、完璧にこなすことは簡単ではありません。しかし、最も大切なのは「形式」そのものではなく、その形式に込められた「故人を偲び、ご遺族をいたわる心」です。
金額が相場通りであること、袋の書き方が丁寧であること、新札に折り目をつけること。これら一つ一つの行動が、言葉にならない「お悔やみのメッセージ」としてご遺族に伝わります。急なことで完璧な準備ができなくても、焦らず、心を込めて準備を進めてください。
最後に出発前の最終確認リストを用意しました。これらをチェックして、自信を持って参列してください。
出発前の香典最終チェックリスト
- 金額は相場通りですか?(4千円、9千円などの忌み数になっていませんか?)
- 香典袋の種類は適切ですか?(金額に見合った袋、結び切りの水引ですか?)
- 表書きは「薄墨」で書きましたか?(宗派に合った表書きですか?)
- 中袋に「住所・氏名・金額」を書きましたか?(裏面の住所書き忘れに注意!)
- お札の向きは揃っていますか?(肖像画が裏側・下向きに入っていますか?)
- ふくさ(または代用のハンカチ)に入れましたか?(左開きになっていますか?)
このリストが全て埋まれば、あなたの準備は完璧です。どうぞ気をつけて行ってらっしゃいませ。
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