ビジネスシーンで飛び交う「リスケ」という言葉。あなたも一度は耳にしたり、あるいは無意識に使ったりしているかもしれません。しかし、この言葉には「使って良い相手」と「絶対に使うべきではない相手」の明確な境界線が存在することをご存知でしょうか。
結論から申し上げますと、「リスケ」は「リスケジュール(日程再調整)」の略語であり、親しい間柄以外では使用を避けるべき言葉です。さらに重要な事実として、金融業界において「リスケ」は「返済猶予」を指す非常に深刻な用語でもあります。文脈を誤ると、単なる日程変更のつもりが「会社の経営危機」と勘違いされかねないリスクすら孕んでいるのです。
この記事では、企業研修講師として数多くの新入社員・中堅社員の指導にあたってきた筆者が、以下の3点を徹底的に解説します。
- 「リスケ」の正しい意味と、金融用語と混同される致命的なリスク
- 上司や取引先に失礼にならない、評価を上げる「丁寧な言い換え表現」一覧
- 急なトラブルでも慌てない、状況別にそのまま使える「日程変更依頼」のメール・電話テンプレート
言葉一つで信頼を失うこともあれば、逆にトラブル対応の誠実さで信頼を深めることもできます。ぜひこの記事を参考に、プロフェッショナルとしての言葉選びをマスターしてください。
「リスケ」の意味とは?ビジネスと金融で異なる2つの定義
「リスケ」という言葉は、使用される業界やシチュエーションによって、その重みと意味合いが180度異なります。多くのビジネスパーソンが日常的に使う「スケジュールの変更」という意味だけでなく、経営や経理の現場では「企業の存続に関わる重大な局面」を指す言葉として使われています。
このセクションでは、まず言葉の定義を正確に理解し、なぜこの言葉を不用意に使うことがリスクになり得るのか、その背景を深掘りして解説します。「たかが略語」と侮っていると、思わぬところで恥をかくだけでなく、所属する組織の信用さえも傷つけてしまう可能性があります。正しい知識を身につけ、TPO(時・場所・場合)に応じた使い分けができるようになりましょう。
ビジネスシーンにおける「リスケ」:日程の再調整
一般的にビジネスの現場で使われる「リスケ」は、英語の「reschedule(リスケジュール)」を短縮した和製英語的な表現です。意味は文字通り「スケジュールの再調整」「計画の組み直し」を指します。
具体的には、以下のようなシーンで頻繁に使用されます。
- 会議の開始時刻を1時間遅らせたい場合
- 悪天候や交通機関の乱れにより、訪問予定を別日に変更する場合
- プロジェクトの納期(マイルストーン)を見直す場合
- ダブルブッキングが発覚し、一方のアポイントを調整する場合
このように、日常業務における「時間の変更」全般を指す便利な言葉として定着しています。特にIT業界や広告業界、スタートアップ企業など、スピード感が重視される職場では、社内チャットツールなどで「明日のMTG、リスケでお願いします」といったやり取りが日常茶飯事となっています。
しかし、忘れてはならないのは、これがあくまで「略語」であるという点です。「スマートフォン」を「スマホ」、「プレゼンテーション」を「プレゼン」と言うのと同様に、略語にはどうしても「砕けたニュアンス」「軽い印象」が伴います。友人同士の会話であれば親しみを込めた表現として機能しますが、ビジネスという公的な場、特に上下関係や利害関係が存在する場面では、この「軽さ」が「相手への敬意不足」と受け取られる原因となります。
また、「リスケ」という言葉には、「変更する」という事実のみが含まれており、「申し訳ない」という謝罪のニュアンスは含まれていません。そのため、依頼する側が「リスケしてください」とだけ伝えると、受け取る側は「こちらの都合を無視して、作業的に時間を動かそうとしている」と感じてしまうのです。これが、ビジネスシーンで「リスケ」がトラブルの種になりやすい根本的な理由です。
金融業界における「リスケ」:返済条件の変更(貸付条件の変更)
一方で、金融業界や企業の財務部門において「リスケ」という言葉が出た場合、それは会議の日程変更などという生易しい話ではありません。ここでのリスケは、「リスケジュール」の略であることに変わりはありませんが、その対象は「借入金の返済スケジュール」です。
正式には「貸付条件の変更」と呼ばれ、銀行などの金融機関から融資を受けている企業が、資金繰りの悪化などを理由に、当初の契約通りの返済が困難になった際に行う交渉や措置のことを指します。
具体的には以下のような措置を依頼することを意味します。
- 毎月の返済額を減額してもらう(元金返済の据え置き)
- 返済期間を延長してもらう
- 金利の支払いは続けるが、元本の返済を一時的にストップしてもらう
企業が銀行に「リスケ」を申し出るということは、すなわち「約束通りにお金を返せなくなりました」と宣言することに他なりません。これは金融機関から見れば「経営状態が悪化している」「倒産のリスクが高まっている」というシグナル(合図)となります。一度リスケを行うと、その企業は「要注意先」として管理され、新規の融資を受けることが極めて困難になります。
つまり、金融の世界における「リスケ」は、企業の延命措置であり、経営者にとっては苦渋の決断を伴う非常にネガティブで深刻な用語なのです。この背景を知らずに、経営者や銀行出身者が同席する場で「ちょっとリスケしましょうか」と軽く口にすることが、どれほど場違いで危険なことか、想像に難くないでしょう。
【要注意】経営者に「リスケ」と言うと「倒産危機」と勘違いされるリスク
前述の通り、「リスケ」には「日常的な日程変更」と「深刻な返済猶予」という、天と地ほども異なる2つの意味が存在します。この「意味の二重性」が、ビジネスコミュニケーションにおいて重大な誤解を生むリスクとなります。
例えば、あなたが取引先の社長に対して、納期の遅れを相談しようとして次のように言ったとします。
「社長、ご相談があるのですが、今回の件、少しリスケさせていただけないでしょうか?」
あなたの意図は「納品日を数日ずらしたい」という単純なものでしょう。しかし、資金繰りに日々頭を悩ませている経営者や、財務知識の豊富な役員がこれを聞いた瞬間、脳裏には「資金ショート?」「支払い遅延の相談か?」という疑念がよぎる可能性があります。特に、文脈が曖昧なメールや、電話の第一声でこの言葉を使うと、相手を不必要に動揺させてしまいます。
言葉は、発する側の意図ではなく、受け取る側の知識や背景によって解釈されます。相手が金融知識に明るい人であればあるほど、「リスケ」という言葉に対して敏感に反応します。無用な誤解を招き、会社の信用を損なわないためにも、この言葉が持つ「二面性」を常に意識しておく必要があります。
Callout (Danger)|「リスケ」の文脈による意味の違い比較表
- ビジネス文脈:会議・納期・訪問の日程延期(日常業務レベル)
→ 影響範囲:担当者間のスケジュール調整- 金融文脈:借金返済の延期・条件変更(経営危機・倒産予備軍)
→ 影響範囲:企業の社会的信用、資金調達能力※不用意に使うと「資金繰りが危ない会社なのか?」という疑念を抱かれ、取引縮小に繋がるリスクがあります。
[企業研修講師のアドバイス:言葉の選択が招く「無用な誤解」について]
ビジネスの現場、特に経営層や経理担当者が同席する場で安易に「リスケ」と口にすることは避けるべきです。実際にあった事例ですが、営業担当者がクライアントの役員に対して「プロジェクト全体のリスケ」を提案した際、役員が顔色を変えて「御社、そんなに状況が悪いのか?」と問い返してきたことがあります。
これは、役員の方が金融機関出身で、「リスケ=経営破綻への入り口」という強烈なイメージを持っていたために起きたすれ違いでした。相手の脳内に一瞬でも「資金繰りの悪化?」という疑念を抱かせることは、営業担当としてリスク管理が甘いと言わざるを得ません。言葉は受け取り手の背景によって意味が変わることを理解し、誤解の余地のない「日程の再調整」という表現を使うのがプロの流儀です。
ビジネスで「リスケ」は失礼?使える相手と正しい言い換えマナー
「リスケ」の意味とリスクを理解したところで、次に気になるのが「じゃあ、具体的に誰になら使っていいのか?」「上司やお客様には何と言えばいいのか?」という点でしょう。ビジネスコミュニケーションにおいて、相手との関係性に応じた言葉の使い分けは、仕事のスキル以上に評価を左右する重要な要素です。
このセクションでは、ペルソナであるあなたが職場で迷わず判断できるよう、「使っても良い相手・ダメな相手の境界線」を明確にし、さらに評価を高めるための「丁寧な言い換え表現」を網羅的に紹介します。明日からのメールや会話ですぐに使える実践的な内容ですので、ぜひ習得してください。
「リスケ」を使っても良い相手・ダメな相手の境界線
結論から言うと、ビジネスにおいて「リスケ」という言葉を使って良いのは、「対等な立場」かつ「気心の知れた関係」に限られます。それ以外の相手に対しては、基本的に使用NGと考えておくのが無難です。
以下に、具体的な相手別の判定基準を整理しました。
| 相手との関係性 | リスケ使用判定 | 理由と注意点 |
|---|---|---|
| 社外・取引先(担当者) | NG | たとえ仲が良くても、社外の人に対して略語を使うのはビジネスマナー違反。メールが転送され、相手の上司が見る可能性も考慮すべき。 |
| 社外・取引先(役員・上層部) | 絶対NG | 失礼にあたるだけでなく、前述の「金融リスケ」との混同リスクが高いため、信用問題に関わる。 |
| 社内・上司・先輩 | NG | 目上の人に対する略語の使用は、「学生気分が抜けていない」「敬意がない」と判断される要因になる。 |
| 社内・同僚(同期) | OK | 日常的な業務連絡であれば問題なし。ただし、深刻なトラブルの相談時などは避けたほうが真剣味が伝わる。 |
| 社内・部下・後輩 | OK | 指示出しとして使用可能。ただし、上司が多用すると部下も真似をして社外で使ってしまうリスクがあるため、教育的観点からは推奨しない。 |
このように、基本的には「社内の同僚・部下」または「極めて親密なチームメンバー」内でのみ許される言葉だと認識してください。「迷ったら使わない」が鉄則です。
特に注意が必要なのは、普段仲良くしている取引先の担当者とのやり取りです。チャットツールなどでフランクに会話していると、つい「じゃあ来週にリスケで!」と送りたくなりますが、ビジネスである以上、境界線は保つべきです。相手が良くても、そのチャット履歴を第三者が見た時に「なれ合いの関係」と思われてしまうのは、あなた自身のプロとしての評価を下げることになります。
上司や取引先に使うべき「丁寧な言い換え表現」一覧
では、「リスケ」を使わずに、日程変更を依頼したい場合はどのような表現が適切なのでしょうか。相手への敬意を示しつつ、スムーズに意図を伝えるための言い換え表現を、「丁寧度」のレベル別に紹介します。
状況に合わせて、以下の表現を使い分けてください。
【レベル1:標準・社内向け】
- 「日程変更」
最もシンプルで誤解のない表現です。
例:「会議の日程変更をお願いできますでしょうか」 - 「時間の変更」
時間単位の調整の場合に使います。
例:「開始時間の変更を相談させてください」
【レベル2:丁寧・社外担当者向け】
- 「日程の再調整」
「一度決まったものを調整し直す」というニュアンスが含まれ、ビジネスライクで丁寧な印象を与えます。
例:「お打ち合わせの日程について、再調整をお願いしたくご連絡いたしました」 - 「スケジュールの見直し」
プロジェクト全体の進行を変える場合などに適しています。
例:「スケジュールの見直しを提案させていただきます」
【レベル3:最上級・目上の人/謝罪時向け】
- 「日時の改定」
非常に硬い表現ですが、公的な文書や式典などの変更に使われます。 - 「延期」「見合わせ」
中止ではなく、先送りにすることを明確に伝えます。
例:「誠に恐縮ながら、本日のご訪問を延期させていただきたく存じます」 - 「お日取りの変更」
「日程」を「お日取り」と言い換えることで、より柔らかな和語の響きとなり、相手への配慮が伝わります。
例:「勝手なお願いで大変恐縮ですが、お日取りの変更をお願いできませんでしょうか」
Table here|【丁寧度別】リスケの言い換え表現リスト
- (低・NG) リスケ → (中) 日程変更 → (高) スケジュールの再調整をお願いしたく存じます
- (低・NG) ずらして → (中) 時間の変更 → (高) 日時の変更をご相談させていただけますでしょうか
- (低・NG) なしで → (中) キャンセル/中止 → (高) 今回は見合わせとさせていただきたく存じます
「リスケ」というたった3文字を、「スケジュールの再調整」という10文字に置き換える手間。このわずかな手間の差に、相手への敬意(コストを掛けて丁寧に伝えているという事実)が宿ります。目上の人は、その「手間」を見て、あなたの誠実さを評価するのです。
「ドタキャン」との違いと、信頼を損なわないための心構え
日程変更を申し出る際、最も避けなければならないのが「ドタキャン(土壇場キャンセル)」との混同です。リスケジュールはあくまで「別の日程への振り替え」を前提とした前向きな調整ですが、対応を誤ると「ドタキャンされた」という悪印象だけが残ります。
信頼を損なわないための心構えとして、以下の3要素を必ずセットにして伝えることを意識してください。
- 明確な理由と謝罪:「なぜ変更が必要なのか」を正直かつ簡潔に伝え、相手の時間を確保してもらったことへの感謝と謝罪を述べます。
- 代替案の提示:単に「無理になりました」ではなく、「〇日か〇日であれば可能です」と、次のアクションをこちらから提示します。これにより「会う意思がある」ことが伝わります。
- 迅速な連絡:変更が必要とわかった時点で、1分1秒でも早く連絡します。直前になればなるほど、相手の被害(移動時間や準備)は大きくなります。
[企業研修講師のアドバイス:評価を下げる「軽いリスケ」と信頼を守る「重いリスケ」]
「リスケでお願いします」とチャット一行で済ませる若手社員が増えていますが、これは典型的な「軽いリスケ」であり、相手の確保していた時間を奪うという認識が希薄に見え、評価を大きく下げます。「自分のために相手がスケジュールを空けて待っていてくれた」という事実を想像してください。
信頼を守る「重いリスケ」とは、言葉の丁寧さだけでなく、「申し訳なさ」と「具体的なリカバリー策」がセットになっているものです。私は研修でよく伝えますが、日程変更をお願いするということは、相手に「貸し」を作る行為です。その貸しを返すためには、再設定した日程での商談や会議で、期待以上の成果や準備を見せることが求められます。「日程を変えてでも会ってよかった」と思わせるまでが、リスケジュールのマナーだと心得てください。
【コピペOK】日程変更(リスケ)を依頼するメール・電話テンプレート
急なトラブルや体調不良、ダブルブッキングの発覚などで、どうしても日程を変更しなければならない場面は誰にでも訪れます。そんな時、焦って失礼なメールを送ってしまっては、火に油を注ぐことになりかねません。
ここでは、状況別にそのままコピー&ペーストして使える(もちろん、細部は状況に合わせて修正してください)メールと電話のテンプレートを用意しました。モバイルからでも使いやすいよう構成していますので、緊急時の「お守り」として活用してください。
メールか電話か?連絡手段の判断基準
テンプレートを使う前に、まず「メールで送るべきか、電話すべきか」を正しく判断する必要があります。この判断を誤ると、メールを送ったのに相手が見ておらず、待ち合わせ場所に相手が来てしまうといった最悪の事態を招きます。
連絡手段判断フローチャート
- アポイント当日 〜 前日営業時間外:
- 【電話(必須)】 + メール
※メールだけでは相手が見ない可能性があるため、必ず電話で直接伝えます。繋がらない場合は留守電を残しつつメールを送ります。- アポイント前日営業時間内 〜 数日前:
- 【メール】(相手がメールを常時確認するタイプの場合)
※基本はメールでOKですが、返信がない場合は電話で確認します。- 1週間以上前:
- 【メール】
※余裕があるため、メールでの調整がスムーズです。
【社外・取引先】フォーマルな日程変更依頼メール
最も気を使う、取引先への日程変更依頼です。丁寧な言葉遣いと、相手の手間を減らすための配慮(代替案の提示)が不可欠です。
[折りたたみ:社外向けメール例文(丁寧な謝罪と代替案提示)]
件名:【お詫びとご相談】〇月〇日のお打ち合わせ日程の変更について(株式会社〇〇 氏名)
本文:
株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の[自分の氏名]でございます。
この度は、〇月〇日(〇)14:00より予定しておりました
お打ち合わせの日程について、ご相談させていただきたくご連絡いたしました。
大変恐縮ながら、[緊急のトラブル対応 / やむを得ない事情]により、
お約束の日時にお伺いすることが難しくなってしまいました。
貴重なお時間を確保していただいたにも関わらず、
直前のご連絡となり、多大なるご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。
もし可能であれば、下記の日程にて再調整をお願いできませんでしょうか。
【代替案の候補】
1. 〇月〇日(〇) 10:00 〜 12:00
2. 〇月〇日(〇) 14:00 〜 17:00
3. 〇月〇日(〇) 13:00 〜 15:00
上記日程でご都合が悪い場合は、
〇〇様のご都合の良い日時を2〜3候補いただけますと幸いです。
こちらの都合で誠に勝手なお願いとは存じますが、
何卒ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
————————————————–
署名
————————————————–
【社内・上司】報告と相談を兼ねた日程変更メール
上司への連絡は、謝罪も重要ですが、「なぜ変更が必要か(理由)」と「業務への影響がないか」を論理的に伝えることが求められます。
[折りたたみ:上司向けメール例文(理由の明確化と再調整の提案)]
件名:【相談】〇月〇日 定例ミーティングの日程変更のお願い(氏名)
本文:
〇〇部長
お疲れ様です。[自分の氏名]です。
〇月〇日(〇)10:00から予定しております
定例ミーティングについて、日程の変更をお願いしたくご連絡いたしました。
【理由】
現在対応中の〇〇案件にて、クライアントより緊急の修正依頼が入ったため、
明日の午前中いっぱい、その対応に当たる必要が生じました。
【変更希望日時】
部長のスケジュールを確認いたしましたところ、
同日の午後または翌日午前中が空いておりましたので、
以下のいずれかで再設定させていただくことは可能でしょうか。
1. 〇月〇日(〇) 15:00 〜 16:00
2. 〇月〇日(〇) 09:00 〜 10:00
ご多忙の折、お手数をおかけし申し訳ございません。
ご指示いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
【緊急時】電話で日程変更を伝える際の会話スクリプト
当日や直前の変更は、メールではなく電話が基本です。相手が電話に出た瞬間から、謝罪の気持ちを声のトーンに乗せて伝えることが重要です。
[折りたたみ:直前の変更をお願いする際の電話トークスクリプト]
自分:「いつもお世話になっております。株式会社〇〇の[自分の氏名]です。今、お電話よろしいでしょうか?」
相手:「はい、大丈夫ですよ」
自分:「ありがとうございます。実は、本日14時からのお約束の件なのですが、大変申し訳ございません。急な[トラブル対応 / 体調不良]により、どうしてもお伺いすることができなくなってしまいました。」
(ポイント:まずは結論と謝罪をはっきりと伝える)
相手:「そうですか、それは大変ですね」
自分:「貴重なお時間を空けていただいたのに、直前のご連絡となり本当に申し訳ございません。もしよろしければ、日を改めてお伺いさせていただきたいのですが、来週の〇曜日か〇曜日のご都合はいかがでしょうか?」
(ポイント:相手に考える隙を与えないよう、すぐに代替案を出す)
相手:「それなら、来週の〇曜日なら大丈夫です」
自分:「ありがとうございます。では、〇曜日の〇時に改めてお伺いいたします。ご迷惑をおかけしてしまった分、しっかりと準備して参ります。本日は本当に申し訳ございませんでした。失礼いたします。」
[企業研修講師のアドバイス:代替案は必ず「3つ」提示するのが鉄則]
日程再調整を依頼する際、「いつがいいですか?」と相手に丸投げするのはマナー違反です。こちらの都合で変更するのですから、相手がスケジュール帳を確認して悩む手間を減らす義務があります。必ず「3つの候補日時」をこちらから提示しましょう。
「来週の月曜午前、火曜午後、水曜の夕方」のように分散させると、相手も選びやすくなります。これにより、メールの往復回数を減らし、スムーズに再設定が完了します。この「3つの選択肢」を用意できるかどうかが、仕事ができる人とそうでない人の分かれ目になります。
教養として知っておくべき「金融用語のリスケ」の基礎知識
ここまでの解説で、ビジネスシーンにおける日程調整のマナーはご理解いただけたかと思います。ここからは、記事の前半で触れた「金融用語としてのリスケ」について、もう少し詳しく解説します。
「自分は営業職だから関係ない」と思われるかもしれませんが、取引先企業の信用状態を把握したり、自社の経営状況を理解したりする上で、この知識は強力な武器になります。ビジネスパーソンとしての教養(リテラシー)を高めるために、基本的な仕組みを押さえておきましょう。
銀行融資におけるリスケ(リスケジュール)の仕組み
金融用語の「リスケ(リスケジュール)」とは、正式には「貸付条件の変更」と言います。企業が銀行から融資を受ける際、「毎月〇〇万円ずつ、〇年かけて返済します」という契約(金銭消費貸借契約)を結びます。しかし、業績悪化などでこの約束通りの返済ができなくなった場合、銀行にお願いして返済計画を組み直してもらうことがあります。これがリスケです。
最も一般的な方法は「元金返済の据え置き」です。例えば、毎月「元金100万円+利息10万円」を返済していた企業が、リスケによって「1年間は利息10万円のみの支払いでOK(元金は0円)」にしてもらうケースなどです。これにより、企業は手元の現金(キャッシュフロー)の流出を抑え、その間に経営再建を図ることができます。
かつては「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」という法律があり、中小企業のリスケ申し込みに柔軟に応じるよう金融機関に努力義務が課されていました。現在はこの法律は期限切れとなっていますが、金融庁の方針により、引き続き銀行は企業のリスケ相談に真摯に対応する姿勢をとっています。
企業がリスケを行うメリットとデメリット(信用毀損リスク)
企業がリスケを選択するには、それ相応の覚悟が必要です。メリットとデメリットを理解しておきましょう。
メリット:
- 倒産の回避:返済負担を減らすことで、手元の資金枯渇(資金ショート)を防ぎ、会社を存続させることができます。
- 経営改善の時間確保:資金繰りに追われる時間を減らし、本業の立て直しに集中する時間が生まれます。
デメリット:
- 新規融資が受けられなくなる:これが最大のリスクです。リスケ中は「正常な返済ができていない状態」とみなされるため、原則として銀行からの追加融資はストップします。
- 信用格付けの低下:銀行内部での格付け(債務者区分)が下がり、「要注意先」や「破綻懸念先」として扱われます。
- 経営への介入:銀行に対し、定期的な試算表の提出や経営改善計画の進捗報告が義務付けられ、経営の自由度が下がります。
取引先から「リスケ中」と聞いたらどう動くべきか
もし、あなたの取引先の担当者や経営者が、ふとした会話で「実は今、銀行とリスケの交渉中で…」と漏らした場合、あなたはどうすべきでしょうか。
これは、その取引先が「資金繰りに困っている」という明確なサインです。もちろん、すぐに倒産するわけではありません(むしろ倒産を避けるためにリスケをしているのです)。しかし、営業担当者としては以下の点に注意する必要があります。
- 売掛金の回収管理:支払いの遅延が発生しないか、入金サイト(支払いまでの期間)の延長を打診されないか注意深く見守る。
- 在庫の調整:大量発注があった場合、過剰在庫にならないか、本当に支払い能力があるかを確認する。
- 上司への報告:「取引先がリスケ中である」という情報は、自社の与信管理部門にとって極めて重要な情報です。速やかに上司に報告し、取引限度額の見直しなどが必要か判断を仰ぎましょう。
[企業研修講師のアドバイス:取引先の信用状態を察知するアンテナ]
もし取引先の担当者がふと「今、銀行とリスケの交渉中で…」と漏らした場合、それは単なる日程調整の話ではありません。会社の資金繰りが逼迫しているサインの可能性があります。言葉の意味を正しく理解していることで、リスク管理や上司への報告内容が変わってきます。
「リスケ」という言葉一つから、相手の懐事情まで推察できる。これが、言葉の定義を深く知っているビジネスパーソンの強みです。単語の表面的な意味だけでなく、その裏にあるビジネスの力学まで想像力を働かせてみてください。
よくある質問(FAQ)
最後に、「リスケ」や日程調整に関して、研修の現場でもよく質問される内容をQ&A形式でまとめました。細かい疑問を解消して、自信を持って対応できるようになりましょう。
Q. 英語で「リスケ」はどう表現すればいいですか?
英語圏のビジネスでも “reschedule” は一般的に使われますが、よりフォーマルな場面や、延期を伝える場合は以下のように使い分けます。
- Reschedule:日程を再調整する(最も一般的)
例:”Could we reschedule our meeting?” - Postpone:延期する(後ろにずらす)
例:”We have to postpone the conference.” - Push back:時間を遅らせる(少しカジュアル)
例:”Can we push back the meeting by 30 minutes?”
海外のクライアントに対しても、理由(reason)と謝罪(apology)を添えるマナーは日本と同じです。
Q. 当日の日程変更(ドタキャン)になってしまう場合の最善の対応は?
やむを得ない事情で当日の変更になる場合は、「スピード」と「誠意」がすべてです。
- まず、直ちに「電話」をかけます。メールだけで済ませるのは絶対にNGです。
- 電話で深く謝罪し、理由を簡潔に伝え、その場で代替案を相談するか、「後ほど改めてメールで候補をお送りします」と伝えます。
- 電話を切った後、すぐに「お詫びメール」を送ります。電話で話した内容を記録に残すとともに、改めて文章で謝罪の意を示すためです。
この「電話+メール」のダブルアクションを行うことで、「本当に申し訳ないと思っている」という姿勢が伝わります。
Q. 相手からリスケを依頼された場合の返信マナーは?
相手から日程変更の依頼があった場合、快く受け入れる姿勢を見せることが、その後の関係構築に役立ちます。嫌味を言ったり、不機嫌な態度を見せるのは得策ではありません。
返信例文:
「ご連絡ありがとうございます。日程変更の件、承知いたしました。どうぞお気になさらないでください。〇〇様のご都合の良い日時で再調整できればと存じます。ご提示いただいた候補日の中では、〇月〇日 14:00が可能です。こちらで再設定させていただきます。」
このように、「お気になさらないでください」と一言添えるだけで、相手の罪悪感を和らげ、あなたの度量の広さを示すことができます。
まとめ:リスケは「言い換え」と「誠意」で信頼に変えられる
ここまで、「リスケ」という言葉の意味から、ビジネスでの適切な言い換え、メールテンプレート、そして金融用語としての背景まで解説してきました。たった3文字の略語ですが、そこにはビジネスコミュニケーションの基本とリスク管理の要諦が詰まっています。
最後に、この記事の重要ポイントをチェックリストとしてまとめました。明日からの業務で実践できているか、確認してみてください。
- 「リスケ」は略語であり、親しい同僚以外(上司・取引先)には使用しない
- 目上の人には「日程調整」「スケジュールの再調整」と言い換える
- 経営層の前では、金融用語(倒産予備軍の返済猶予)と誤解されないよう、特に言葉選びに注意する
- 日程変更を依頼する際は、必ず「謝罪」と「3つの代替案」をセットにする
- 当日の変更や緊急時は、メールだけでなく必ず「電話」で誠意を伝える
日程変更は、ビジネスにおいて避けて通れない事象です。しかし、それを「ただの作業」として処理するか、「信頼を深める機会」として丁寧に対応するかで、あなたの評価は大きく変わります。ぜひ、相手への配慮(Give)を忘れず、スマートな日程調整ができるビジネスパーソンを目指してください。
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